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白線ヘルニアと入院(8)とモンティ・パイソン's 人生狂騒曲

10月8日 - 13時
いよいよ本番の日。手術当日である。
手術室へは病室で寝ていたベッドと共に向かう。階が違うのでエレベーターを使うが、寝台専用のエレベーターは幅は普通のと大差はないが奥行きがある。
手術準備室にはいるとまずは名前の確認された。間違って別の人を開腹してしまったなんてことがないようにだろう。
まずはすでに顔見知りの担当医から「よろしくお願いしますね」とあいさつをされる。どう返して良い物かと一瞬迷ったが、素直に「こちらこをよろしくお願いします」とおじぎをした。その後、麻酔医、看護師からも「よろしくお願いします」とあいさつされる。いや、お願いするのはむしろこちらなのだが。「手術をしてやるぞ」という上の立場からの言葉は控えるということなのだろうが、ちょっときまりが悪い。さすがに土下座はしないが、腰を90度に曲げておじぎしたいぐらいだというのに。
そして服を全て脱ぐように指示され、Tシャツに綿パン、そしてトランクスを脱ぎ真っ裸になるとストレッチャーに横たわった。ストレッチャーでガラゴロと運ばれ手術室へと入っていった。
中央に手術台があり天井から丸いライト板が三つぶら下がっている。いろいろな機器があるようだが横になった状態なのではっきりとは見えなかった。無機質な実験室めいた部屋を想像していたのだが、壁紙などは案外普通の部屋のそれと同じような様子だった。患者に威圧感を与えないようになるべく普通に見せるようにしているのかも知れない。
ストレッチャーに寝たままのわたしを看護師が数人がかりでよいしょっと手術台に移し替える。大怪我をして担ぎ込まれたわけじゃあるまいし、そのぐらい自分で移動しますからとも思ったが、そういうものではないらしい。
頭にゴムで裾がぴっちりと止まる帽子をかぶせられると、手術台から落ちないように両手両足をマジックテープで止められた。ここで「やめろぉ!ショッカー!」と本郷猛(藤岡弘)こと仮面ライダー1号の真似をしようかと思ったが止めておいた。
胸に心電図のセンサーが幾つか付けられ、心臓の鼓動に合わせて「ピーン、ピーン」と電子音が鳴り始めた。うむむ、この心電図装置が病院内で一番高い機器だったりしてな。いわゆる“ピーン・マシーン”(『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』(1983))か。
この“ピーン”が“ピーーーーーーーー”になったりするとえらいことだ。“ピッ、ピッ、ピッ。ピッ、ピッ、ピッ。ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ!”と三三七拍子ぐらい打てないかと力んでみたが心臓は不随意筋なので無理だった。
血液中の酸素をモニターするとかで左手の人差し指にクリップを付けられた。針を刺すわけでもなくただ挟んでいるだけなのにどうして血中酸素濃度が分かるのか不思議だったが、どうやら光を透過させることで測定しているらしい。要は酸素濃度によって血液の色が違うのでそこから算出しているというとこだ。確かに酸素濃度の高い動脈の血は鮮やかな赤だが、酸素濃度の低い静脈の血はどす黒い。しかし、エビやタコの血は青いのだが彼らの場合はどうするのだろうか?えっ、魚屋の店頭でやってたのは手術じゃなくてさばいてたんだって。なるほど。

準備は進み執刀の時は刻一刻と近づいてきた。
昨日、麻酔についてのヒヤリングをした麻酔医が、酸素マスクをわたしの口元にあてる。
もしかするとこれで人生にお別れかも知れない。
やはり、「やめろぉ!ショッカー!」と最後に叫んでおこうか、と強く思った。

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