『ドカベン』(1977)
監督:鈴木則文 企画:太田浩児 原作:水島新司 脚本:掛札昌祐 撮影:出先哲也 美術:藤田博 編集:田中修 音楽:菊池俊輔
出演:橋本三智弘/高品正広/永島敏行/川谷拓三/マッハ文朱/渡辺麻由美/吉田義夫/水島新太郎/南利明/佐藤蛾次郎/水島新司
ドカベンこと山田太郎がライオンズ入りした『ドカベン プロ野球編』のことは知っていたが、今はさらに進んで「2004年、夢開幕!! 土井率いる東京スーパースターズと小次郎率いる四国アイアンドッグスの新球団同士がいきなり激突!!」の『ドカベン スーパースターズ編』になっているそうだ。それで近鉄の身売り話について水島真司が四国四県で近鉄を買い取りフランチャイズを四国に移せばいいとか言ってたわけか。しかし、21世紀になっても『ドカベン』が連載してるとは思わなんだ。「すでに21世紀」というのもなんだか古くさい言い回しになってしまったが。
70年代に大ブームを巻き起こし、少年たちを野球へ野球へと走らせた『ドカベン』(週刊少年チャンピオンにて'74~'81に連載)は、当然のごとく映画化されている。製作したのは東映、そしてマンガ原作モノと来れば鈴木則文である。
誰もが、ギラギラと太陽の照らす中、白球が飛び交い、ユニフォームを着た選手たちがグラウンドを走り、バットの快音が響く、そんな映画を予想していたはずだ。
だが、85分の映画の中で野球をするシーンが登場するのはラストの数分間だけ。残りは何をやっているかというと柔道だ。太陽がギラギラどころか屋内である。ユニフォームじゃなく道着で、グラウンドじゃなく畳である。何故?何故なんだぁ~?
いや、真面目な話、連載当初の『ドカベン』は確かに柔道マンガなのであった。夏目房之介の『消えた魔球』(双葉社)によると「さよう、誰しも『ドカベン』を野球漫画として記憶している。(中略)が、この『ドカベン』、実は全篇の8分の1までは柔道漫画であった。」とのことで全48巻中最初の6巻の山田太郎や岩鬼は柔道をやっていたのだ。だから話の順番から言えば1作目であるこの映画が柔道モノになるのは間違ってはいない。間違ってはいないが残念なことに2作目はなかったし、そもそも続編を予定していたかも怪しい。主人公山田太郎を演ずるのは公募で選ばれた橋本三智弘。オーディションといえば聞こえは良いが、外見が山田太郎に似ているだけの単なる素人である。寡黙で口数の少ない役だから何とかなっていたものの、脇役ならともかく劇場公開作の主役に普通は素人を持ってこない。この時点ですでに後のことは考えていない、“一発ネタ”なわけだ。
そして、おそらくは野球より柔道のシーンを撮る方が楽だというのがあるだろう。柔道の試合場ならばセットの中に作ることができるが、グラウンドは無理だ。それゆえロケに頼らざるを得ず、天候などに左右されてしまうし、日中しか撮影が出来ない。また、選手にしても野球は両チーム合わせて最低18人。そしになにより、観客席に観客エキストラが必要でこれを集めるのが大変。ジャニーズ事務所のアイドル主演作ならば若いお姉ちゃんやあまり若くないお姉ちゃんが集まってくれだろうが、『ドカベン』の顔ぶれではちょっと難しい。お姉ちゃんたちに受けそうなのは永島敏行ぐらいだが、この作品がデビュー作だから当時はまだ知名度がない。
こんな具合に「おいおい」とツッコみを入れたいネタは多いが、そこをパワフルに突き進む鈴木演出には見せられてしまう。いや、この人はパワフルとかではなく、本当はものすごく上手い人なのかも知れない。タイアップであろうコカコーラの赤い看板をバックにした公園(だったか?)での決闘。柔道大会決勝戦でライバルの心をよぎる今は亡き妹の思い出と、妹の遺影と、山田太郎の妹サチ子のカットバック。笑いものにする点ばかりを探して、これらの胸を打つシーンを見落としたりしてないだろうか。
とはいえ、いきなりみんなで野球部に入部し、原作者水島真司が演ずる監督のノックを受け、
監督「(岩鬼に向かって)なんじゃお前は、不細工な面しおってからに」
岩鬼「おんどれが描いたんやろが」
と来た日にはわたしは降参である。
岩鬼役の高品正広はひょっとして高品格の関係者だろうか?