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『ザ・サムライ』 ハリァァヤー!

『ザ・サムライ』(1986)

監督:鈴木則文 製作:鈴木則文 原作:春日光広 脚本:志村正浩/鈴木則文 撮影:苧野昇 特殊メイク:原口智生
出演:中村繁之/松本典子/大沢樹生/朝丘雪路/堀江しのぶ/相田寿美緒/宍戸錠/渡辺裕之/菅原文太

いやー、この作品は傑作だと思うわけですよ。マジでマジで。
前半は割と普通の学園コメディなのですが(常に日本刀を携えたアナクロ男子が主人公で、女体アレルギーを治すためにレオタード姿の同級生たちが踊るのを間近で見て耐えるというのが“普通”なのかは疑問が残りますが)、中盤に主人公のライバルでハイテク好き外国好きな転校生南藩都来が垂直離着陸戦闘機ハリヤーに乗って登場する辺りから良い意味でどんどん道を踏み外していきます。
このハリアー、フルスケールで作られていて合成無しで校庭に着陸します。『トゥルーライズ』(1994)の8年先を行ってます。絶対この映画を観てるなジェームズ・キャメロン。と誰だ、クレーンで吊っているワイヤーがバレバレだとか言ってるのは。そういうときは脳にフィルターをかけて、目には見えてるけど頭の中に映った映像では取り除かれていることにするべきです。ワイヤーが見えるという重箱の隅など、実物大のハリヤーという非日常が高校の校庭という日常に、いかにも当然といった顔で着陸するインパクトの前ではどうでもいいことです。それに『ブレード・ランナー』(1982)のスピナーだって、ハリソン・フォードを乗せて発進するシーンでは雨で上手く隠しているもののワイヤーが丸見えです。まだCG処理でワイヤーを消すといった技術がなかった時代なのですから、文句を言っても意味がありません。
他にも、文化祭で作ることになった映画に全長3メートルはある茶坊主人形が出てきたり(もっとも主人公の妄想としてですが)、原作で主人公の顔が変形するのと特殊メイクで再現していたりと、プログラムピクチャーで低予算であったろうにも関わらず色々工夫が凝らされています。
オープニングで主人公血祭武士が剣豪荒木又右衛門になった夢を見ており、鍵屋の辻での32人斬りが再現されます。わたしの記憶だとこのシーンは1カット長回しだったんですが、10数年ぶり観直したら違ってました。長回しのカットはあるんですけどね。ストーリーには関係しないおまけ的シーンであるのに、中村繁之が町中を走りながら敵をばっさばっさ斬り倒していく様はなかなかにかっこよく、『あずみ』なんかよりはるかに上です。
なに気に豪華キャストでして、主人公の母親が朝丘雪路(好演)、その母親に惚れて結婚を申し込むのが宍戸錠(任侠)、チンピラに絡まれている主人公を助ける流れ者が菅原文太(トラック野郎)、そして主人公のグラマーな姉が堀江しのぶ(合掌)。
血祭武士の中村繁之と南藩都来の大沢樹生は当時ジャニーズ事務所なので、ジャニーズ映画でもあったりします。セーラー服を着て「クセになっちゃう」とか言ってる大沢樹生が後に光GENJIの一員として一大アイドルになるとは誰が思ったでしょうか。
かなりごちゃ混ぜでところどころ破綻もしていますが、それを補ってなお余りある魅力を持ったバカ映画。さすが鈴木則文です。

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