『ストーカー』(2002) one hour photo
監督:マーク・ロマネク 脚本:マーク・ロマネク 出演:ロビン・ウィリアムズ/コニー・ニールセン/ミシェル・ヴァルタン/ディラン・スミス/エリック・ラ・サール
スーパーのスピード現像写真店で働いている中年男性サイ。
彼の勤めているスーパーは壁も床も白を基調にしている。そして彼の住んでいる家も白い色ばかりで、それは清潔感よりむしろ空虚さを連想させる。色を持っているのはただテレビに映し出される映像と、壁一面に貼られた何百枚もの家族写真だけだ。そこでは現実の部屋の中よりもむしろ写真の中こそがリアリティを持っている。
しかし、その写真の中に彼は写っていない。その家族は彼の家族ではなく、長年彼の勤める店に現像を頼んできたヨーキン家、夫婦と9歳になる少年のもので、彼はいつも自分のために1枚余分に現像しそれを持ち帰っては自室の壁に貼っていったのだ。
彼は写真の中に自分を少年の叔父として登場させる。なぜならば、サイには家族も友人もなく、都会にいながらもまるで無人島に住んでいるかのような絶対的な孤独を味わっているからだ。彼は自分を定義づけるために他人の写真を集め、それを繋ぎ合わせることでかりそめの人生を作り上げた。フリーマーケットで買ってきた古びた白黒写真に写った女性を自分の母親だと彼は紹介する。
彼は空想だけで満足していた。そしてこれからもヨーキン家の親戚として写真と共に生きていくはずだった。だが、現像枚数をごまかしていたのが店長にばれて彼は解雇されてしまう。もはやサイはこれから先のヨーキン家の写真を手に入れることができない。それは彼から未来を奪うことに等しい。もはや彼には心の家族もなく、テレビは色を失い、心の中は商品のないスーパーのように空っぽで、彼は血の涙を流す。
そして彼は“エヴァンゲリオンの量産機”となることを決意する。写真の中に存在する“完璧な家族”を壊そうとする敵を、妻と息子を裏切って浮気をしている夫を銀色の剣で倒すのだ。
オーバーアクト気味なことが多いロビン・ウィリアムスだが、今作では心のバランスを欠いているが決して狂人ではなく耐えきれないような孤独を抱えているサイをかなり抑えて演じている。
後半はサスペンス色が強くなるが、単なるサイコ・スリラーで終わっておらずなかなかに良作。