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『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001) 監督:原恵一 演出:水島努 脚本:原恵一 声の出演:矢島晶子/ならはしみき/藤原啓治/こおろぎさとみ/真柴摩利/林玉緒/一龍斎貞友/佐藤智恵/納谷六朗/高田由美/富沢美智恵/三石琴乃/小林愛/津嘉山正種/関根勤/小堺一機

これまでの作品があくまでも客層の中心が子供でしたが、今回のはかなり大人向けになっている。

春日部市で大阪万博などを集めた20世紀博というのが開催され、しんのすけの両親や他の大人たちは自分の子供時代に夢中になってしまう。そして懐かしさの匂いに誘われて子供にかえってしまい、自分たちの子供であるしんのすけやひまわりのことを忘れていく。正直言って、ここのシーンは怖かった。乱作されている和製ホラーより怖かったくらい。
敵の親玉は『ケンちゃん・チャコちゃん』(子供のは分からんわな~)
ヴァーチャルな過去の空間を作っていて(昭和40年代?)そこには人々が暮らしている。
懐かしさの匂いをタワーからばら撒き世の中を20世紀に戻そうとたくらんでいる。そして大騒動が始まるのだが・・・

結局、しんのすけの妨害で計画に失敗したケン・チャッコは匂いのしない未来を生きるよりかはいっそのこと死を選ぼうとタワーから飛び降りようとする。そこでしんのすけの「ずるいよ」の一言。そして飛ぶ鳩。
くわっ、いいシーンだ。
さらにその「ずるいよ」はちゃんとギャグとして処理されてしまっていいぞ。
鳩が飛び立ったのはその下にあった巣を守るため。巣には母鳩と子鳩という家族がいる。ひょっとしたらチャコのお腹には二人の子供がいるのではと感じたのだがさてどうだろう。チャコが内心でケンと家庭を持ちたいと思っていたのは間違いないのだが。

匂いが重要な過去につながるキーワードになっている。
確かに、匂い=嗅覚は記憶とダイレクトに結びついていて、それを思い出させる。
マルセル・プルーストの大作「うしなわれた時を求めて」は主人公がマドレーヌの香りによって過去を思い出すところから始まり、そして延々全13巻続く。

しんのすけたちが幼稚園の送迎バスをケンの愛車2000GTにぶつけフロントバンパーを壊してしまう。
それに対するケンの台詞が「あいつらは俺の魂を踏みにじりやがった」良いセリフだ。
車はその他にもスバル360の団体やオート三輪などなど。

不況・不景気は続き、倒産する企業やリストラされるサラリーマンは数多い。オウム真理教などのカルト集団が事件を起こしたり、キレた中高生がナイフで人を刺したりする。
そんな時代から目を背け、かといって未来にも希望を持てない。そんな大人たちが、自分たちにとって一番素晴らしかった時代を再び再現してそこに逃げ込む。
その時代は崩壊することがわかっているバブル経済の時代ではなく、町にはまだ人情があり、そして冒頭の大阪万博に象徴されるように未来への夢と希望があふれていた、そんな昭和40年代だった。
過去の思い出に閉じこもって逃避する。それはそれで一つの生き方だろう。
しかし、子供たちはそうはいかない。その時代は、子供たちにとって生まれる以前の単なる過去にしかすぎない。
子供たちは、まだ未来に失望してなどいない。自分たちの今、そして大人になっていく未来を否定されることを拒否する。そしてその未来を奪われることに抵抗(レジスタンス)するのだ。
そして子供たちの戦いが始まる。
戦いの中、過去に逃げていた大人は現在の自分と直面し、青春時代・青年時代・大人時代を思い出し、自分の過ごしてきた時間は無駄ではなかったとそれを受け入れ、そして再び大人に戻る。そのための現在を象徴する匂いが臭い靴という素晴らしさ。
もう逃げ込む過去はない。子供も大人も一緒になって、今をそしてこれからを生きていくのだ。

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