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『レッド・オクトーバーを追え』

『レッド・オクトーバーを追え』(1990) THE HUNT FOR RED OCTOBER
原作:トム・クランシー 監督:ジョン・マクティアナン 出演:ショーン・コネリー/アレック・ボールドウィン/スコット・グレン/サム・ニール

オープニングの潜水艦の艦橋の上からカメラが空撮でグッと引くところで、すでに大作のスケールを感じて意味もなく映像に感じ入ってしまったわけで、これからの展開に思いをはせて期待に胸を踊らされ、「ダイハードのジョン・マクティアナンだぞ!」と唱えてみたりするわけだけど、どっこいなんてこったい「プレデター」のジョン・マクティアナンじゃないかよ、オリーブ!などと心の中で叫ぶはめに(だって、ほんとに叫んだら周りの観客の迷惑になるだろ?)なってしまい、映画「レッド・オクトーバー」は魚雷をそのドテッ腹に喰らって、マリワナ海溝にその巨体を沈め、ついに限界圧力をこえて圧壊して潰れ、海の藻屑と成り果てたのであります。
なぜ、「レッド・オクトーバー」が撃沈されなければならなかったのか?
その最大の原因は人間が面白くないということでありましょう。
魅力のあるキャラクターがほとんど皆無じゃないか!
レッド・オクトーバーの副官(サム・ニール!)にモンタナに住みたいなどと言わせて、無個性化しがちなソ連側の登場人物に人間味をだそうという意図は分かるのだが、余り効果をあげているとはいえないだろう。確かに、原作のただの”ロシアのバカ者”扱いよりは良くなっているが。原作者のトム・クランシーって、小説が書けなきゃただのソ連嫌いだぜ、きっと。
看板たるショーン・コネリーだが、妙に大物ぶって余り良くない。
そしてなお、この映画の中で最も面白味がないのが主人公たるライアン(アレック・ボールドウィン)というんじゃもうどうしようもない。スマートに演じたつもりだろうが、結果として無個性になってしまっている。
飛行機恐怖症という設定(ダイハードのブルース・ウイルスもそうだったね、そりゃ原作でもそうだけどさ。)もサスペンスを盛り上げるといったお義理程度にしか使われておらず、原作においては飛行機が怖いという事だけでなく、任務中に事故にあってその後の人生に狂いが生じた男という描き方をされていたのに、その重みの部分が描かれていない。
とにかく、時間の経過につれてだんだんとボロボロになって頭はボサボサ、ヒゲはボウボウという演出こそが、ありきたりで はあるがこの映画の場合一番ふさわしいだろう。ところがライアン君はあろうことか大騒ぎの真っ最中にノンビリと風呂になど入って、ヒゲまで剃ってやがるのだ。これでは緊張感も何もないではないか。寝る間も惜しいはずだぞ!
レッド・オクトーバーに深海救助艇で乗り込む所でもすっきりピカピカ、制服にアイロンまでかけてある。
このオシャレさんが!
短い時間の間に次々と状況が変わって、数少ない情報をもとに答えを見つけ出す主人公のアナリスト、という構図ではないぞ。
そういった点に関して、この作品はミスが多く、アメリカ側、ソ連側、ダラス、レッド・オクトーバーなどと場面が切り替わってもテンションが上がってこない。

とまあ、さんざんにこけおろしたが、ここまで言うのはやはり期待が大きかったからであろう。
予告編でうかがえたスケール、緊張感、サスペンス!そりゃ、興奮しますよ。ジョン・マクティアナンにも若干の不安こそあれ、やはり期待していたしね。
娯楽サブマリンアクションとしても、軍事ポリティカルフィクションとしても中途半端だったわけだ。
娯楽物としては、見せ場がヘリコプターでのダラスへの乗り移りとラスト近くの銃撃戦と魚雷戦ぐらいで物足りなさを感じるし、軍事物としては余りにもいい加減な状況設定と話の展開でハードさが足りない。
どだい、2時間少々で描ききれる物ではなかったのだろう。ならば、せめて娯楽アクションとして成功して欲しかった。悲しい。あー悲しい。
それにしても、あの潜水艦の妙な広さは何だったんだろう?潜水艦と言うよりは限りなく宇宙船に近いセットであった。船内でのカメラワークには疑問有り。もしかして撮影のためにあすこまで広くなってしまったんだろうか?それとも最近の潜水艦はあんなに居住性がいいのだろうか?息苦しさを感じさせてくれない潜水艦物なんてはじめてだ。
あーもっと面白くなったはずだったのに!とグチを言いながら、私は「深く静かに潜行せよ」と「Uボート」と「緯度ゼロ大作戦」でも観ていようと思います。

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