『スペース・カウボーイ』(あえて言うなら『スペースカウボーイズ』)(2000) 監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド/トミー・リー・ジョーンズ/ドナルド・サザーランド/ジェームズ・ガーナー/マーシャ・ゲイ・ハーデン
「僕が69歳になっても愛してくれるかい?」って歌っていたのはビートルズだったような気がするが、(違ったらすみません)もしも、わたしが69歳になったらいったい何をしているのだろう。
結婚して、子供と孫ぐらいいて、定年退職して隠居でもしているのだろうか。
とりあえず、宇宙飛行士になっていることはないだろう。
しかし、イーストウッドはのん気に隠居なんかしていない。宇宙飛行士になって空に飛んでいくのだ。
40年前、チンパンジーにアメリカ初の宇宙飛行士の座を奪われた4人の男たちが、2000年の今年、ロシアの衛星修理のために再びチームを組む。
その名もチーム・ダイダロス。
主演の4人、クリント・イーストウッド(フランク)は1930年生まれ。ドナルド・サザーランド(ジェリー)は1934年生まれ。ジェームズ・ガーナー(タンク)は1928年生まれ。トミー・リー・ジョーンズ(ホーク)はかなり若くて(このメンバーの中ではだけど)1946年生まれ。
このジジイたち4人組が主役のジジイムービー!!
うー、燃えるぜ!!
「あいかわらず、ジジイ役者が好きですね」
何を言うんだ。20代、30代なんてガキガキ。男優はやっぱ40過ぎてからだよね。
このジジイたちは歳はとっても心は悪ガキ。
若手宇宙飛行士からの健康ドリンクの差し入れにはベビーフードでお返しし、TVのインタビューショーにはサングラスをかけて出てくる始末。酒場の前では殴り合いのケンカ。健康診断でみんな全裸のシーンでは、女医さんが入って来た時にみんな慌てて前を隠しているのに、女好きの(とはいえみんな女好きなのだが)ジェリーは前を隠そうともしない。
まったく困った不良ジジイ達だ。
さすが、宇宙を目指すカウボーイ達だぜ。
だから邦題も本当は『スペースカウボーイズ』であるべきなんだよな。
この映画の中、冒頭とラストの2回『Fly Me to the Moon』が出てきますが、これはすごく重要です。
冒頭で誰が歌っていたかは覚えて置いてください。2回目(ラストシーン)のは感動で涙が出ました。男泣きです。
これは命がけで月に行った男の話でもあるんですよ。なぜ最後のシーンでトミー・リー・ジョーンズはヘルメットのサンバイザーを下ろしているのか。まず間違いなく死んでいるのでしょうが、では最後に顔に浮かべたのはどんな表情だったのか。わたしは満足げな笑みだったと思いますが、その死に顔を見せずに、観客の想像力に任せる。すべてを説明はしようとしないイーストウッド。ここに関するとらえ方の違いでこの作品に対する解釈は大きく変わってくるでしょう。
すべての宇宙飛行士にとって月に行くというのは夢。他の三人の仲間が果たせないその夢をただ1人実現したトミー・リー・ジョーンズ。
『アルマゲドン』などと同じように見てる人もいるかもしれませんが、あんな安易な自己犠牲ではありません。
そこんとこ重要。
演出的には、最近のコテコテの感動路線をあえて避けるかのように、ここはじっくり描くだろうと思うところをあっけなく終わらせてしまっていたりして、イーストウッドが観客と一緒に楽しんでいるのが伝わってきます。イーストウッドの演出にはますます円熟味が増してきてますね。
カメラもアップはほとんど使わず、引き気味の画が多くて気持ちいい感じです。
不良ジジイバンザイ!!男は60代からだぜ!!
あー、わたしもイーストウッドのようなジジイになりたい。
あと、パンフレットの700円はちょっと高いですが、ファン必見です。
「クリント・イーストウッド小辞典がいいですね」
男の声、それも渋めのオヤジ声で歌ってこその『Fly Me to the Moon』。
この曲を女性に歌わせたカルト的人気があった某アニメとその監督は、やはりそこを分かってませんな。