『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』(2002) 監督:ジェイ・ローチ 脚本:マイク・マイヤーズ/マイケル・マッカラーズ 出演:マイク・マイヤーズ/マイケル・ケイン/ビヨンセ・ノウルズ/マイケル・ヨーク/セス・グリーン/ロバート・ワグナー/フレッド・サヴェージ/ミンディ・スターリング/ヴァーン・J・トロイヤー
どうにかこうにかギリギリなんとかかろうじて最低限の出来にはなっていた『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』である。その理由は、マイク・マイヤーズが今回はそれなりに真面目に作品に取り組んでいたからであろう。前二作はふざけていたためにまるで面白くなかった。
コメディでふざけていてなんでいけないの?と思われる方もいるかもしれないが、出演者がニヤニヤとにやけているようでは観ている側は白けてしまい笑えない。例えば『ホットショット1、2』はわたしの好きな映画であるが、この作品の中で主演のチャーリー・シーンはひたすら真剣に真面目な表情でバカなことをする。これがもしチャーリー・シーンがニヘラニヘラしていたらどうだろう?まるで面白くないはずだ。もともとはシリアスな役者であるチャーリー・シーンのシリアスな表情とバカな行動とのギャップが笑いを生み出しているのである。
『裸の銃を持つ男』などのレスリー・ニールセンも『禁断の惑星』を観ればわかるように本来は知的な二枚目系の役者である。その彼が真面目な顔でギャグをやるのが面白かったのだ。しかし、どうも最近は「わたしは優秀なコメディアンである」と勘違いしているようで、妙な小細工のある演技をしているのが残念だ。レスリー・ニールセン自身が笑わせようという計算はしない方がいいと思うのだが。
そういった訳で、『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』を一番理解していたのはマイケル・ケインかもしれない。イギリス俳優の奥深さを感じさせる。なにしろ『ハンナとその姉妹』から『ジョーズ'87復讐篇』までこなしてしまう男なのだ。
単に愚鈍な下ネタを連発していた前二作に比べると、それなりに頭を使ったギャグもあった。日本企業の社長との会話のシーンで使われた、字幕ギャグは、わたしの知っている限りではこれまでになかった種類のギャグだ。
しかし、結局最初にいったように“最低限”の作品でしかない。以前にも言ったことがあるが、バカと頭が悪いは違うのだ。『オースチン・パワース』シリーズはひたすら頭の悪い作品である。Dr.イーブルと和解してしまったりと、どうやらこれで打ち止めといったラストであるが正解だろう。マイク・マイヤーズの次回作に期待する、と言いたいところだが期待しない。マイク・マイヤーズはダメだと思う。思い出してみれば、『ウェインズ・ワールド1、2』もまるでダメな作品だった。ロックバカ二人組を主人公にした映画ならば『ビルとテッド』シリーズを観た方がいい。こちらは傑作である。売れる前のキアヌ・リーブスがバカを演じきっている。いや、演じているというよりキアヌ・リーブスはバカなんだと思う。