『Dolls』(2002) 監督:北野武 製作:森昌行/吉田多喜男 脚本:北野武 撮影:柳島克己 美術:磯田典宏 衣裳:山本耀司 編集:北野武/太田義則 音楽:久石譲 出演:菅野美穂/西島秀俊/三橋達也/松原智恵子/深田恭子/武重勉/ホーキング青山
とにかくつらい。でも圧倒的に美しい。そんな映画です。
赤い紐で繋がれた男女が満開の桜の下を彷徨っている。二人は寓話的な存在かと思いきや、他の花見客の反応から実在する人間だとわかる。小学生が紐を引っ張り「つながり乞食~」とはやし立てる。そんなところから物語は始まっていく。
逆玉に乗るために結婚を約束した女性を捨てた男。女性は睡眠薬で自殺を図り一命をとりとめるものの現実から乖離した存在になってしまう。勝手にどこかへ行ってしまおうとする女を男は赤い紐で自らの腰と繋ぐ。そして二人はつながり乞食となり海岸、祭り、楓、そして雪原をさまよい歩く。そして、いろいろな人々とすれ違う。
アイドルが交通事故で顔面に傷を負って引退する。熱狂的な追っかけだった男は彼女の写真集やポスターを見るのに耐えきれずにカッターで自らの目をくり抜く。盲目になった彼は、白い杖をついて彼女に会いに行く。彼は彼女に受け入れられる。
ヤクザの親分がふと昔のことを思い出す。若くまだ堅気だったころ毎週土曜日に恋人と公園で待ち合わせて一緒にお弁当を食べていたことを。数十年ぶりにその公園に行ってみる。ベンチにはお弁当を持ったおばさんが座っている。ただ、おばさんは親分のことを昔の恋人とはわからない。わからないままに二人の間に心の触れあいが生まれる。
しかし、追っかけの男は道ばたで血を流して死ぬ。親分は殺し屋に殺される。
駄目な男達が女性の母性に暖かく抱えてもらい、しかも幸せなまま死んでいくという、男のガキっぷりと女の奥深さ。
つながり乞食の男は自らの人生をかけておかしくなってしまった元恋人の面倒を見たように見えて、最後は女から抱擁され受け入れてもらうのだ。
こうして、人々は歩いていく。その先には死が待ちかまえていた。だが、この死は幸せな甘美なる死かもしれない。
今回の作品はこれまでとは画面の質が違っていて、幻想的な雰囲気が漂っていた。“赤”の色が際だっていたのも北野作品としては珍しい。しかし、たけしは映像の力というのを根本的なところで信じてはいないのではないだろうか。セリフの力に疑問を持ち『あの夏、いちばん静かな海』では主人公二人からセリフを奪い、音楽の力に疑問を持ち『3-4X10月』からは音楽を奪った。それと同じようなものだ。おそらく、たけしは映画の力を信じてはいないのだろう。自分の作品でありながらそれと距離を持ち続けている。
ところでホーキング青山には日本アカデミー賞を取ってもらいたかった。