『バックドラフト』(1991) 監督:ロン・ハワード 出演:カート・ラッセル、ウィリアム・ボールドウィン
消防士を尊敬する。こと日本において、人のために自らを危険にさらしている職業で、一番危険と日常的に向かい合っているのが消防士ではないだろうか。
これまでに何度か実際の火事に遭遇し、今にして思えばはた迷惑だったろうが野次馬として最前列で燃えさかる建物を見たことがある。木造家屋に襲いかかった炎は圧倒的で、消防士が必死に放水してもなかなかその勢いを弱めなかった。最前列とは言ってももちろんかなり距離をおいた場所に立っていたのだが、放射される熱がジリジリと肌を焼いた。エネルギーを発しながら燃えさかる炎は恐ろしく、そして何故か心を捕らえる。
「これ以上は絶対近づきたくねぇっ!」とわたしは強く感じたが、その火の間近で消火活動に励む消防士。怖くないのだろうか?いや、やはり本当は怖いのだがそれを意志の力で押さえつけているのだろう。すごい。
そんな、消防士たちを主人公にしたのがこの『バックドラフト』
随所になかなかいい物を感じさせるのだが、バックドラフトを用いる連続放火魔というサスペンスを持ち込んでしまったばかりに、全体としてのまとまりがない失敗作になってしまった。
そもそもが、火災現場で死んだ父親の意志を継いで腕利きの消防士になっている兄と、父親の死を目撃したことがトラウマとなりさらに兄に対してコンプレックスを抱いている弟というメインの話の主軸があるのだから、それ以上に余計なネタをあれもこれもと放り込む必要はないのだ。
シカゴ中で一番厳しい分署の消防士たちが現場で消火活動をする姿や、仕事明けに酒場で一杯やっているところ、その家族たちなどのエピソードを上手く活かしていき、そして最後に大火災を持ってくれば個人的にはそれで充分だ。ショッキングな出来事が起こることがドラマの必要条件ではないというのに。
だが、現在のハリウッド映画としてそれでは物足りないということになってしまうのだろう。
ともあれ、がっしりした顎にえらの張ったカート・ラッセルと、たれ目軟派顔のウィリアム・ボールドウィンとでは、どうしたって兄弟には見えない。かといって、カート・ラッセルの代わりにアレック・ボールドウィン(ウィリアムの兄)をキャスティングされては困るが。腕利きの消防士という役柄は絶対に無理だ。
その他にはドナルド・サザーランド、スコット・グレン、J・T・ウォルシュ、ロバート・デニーロなど魅力的な出演陣が顔を揃える。それぞれに良いのだが、これまた全体で見てみると個々バラバラでまとまっていないのが惜しい。
火事のシーンはスクリーン越しに熱が伝わってくるような迫力だ。火事マニアの人は放火などしないでこの作品を観て頭を冷やすように。