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『レポマン』 レポマンの人生は緊張の連続だ

『レポマン』(1984) 監督:アレックス・コックス 出演:エミリオ・エステヴェス、ハリー・ディーン・スタントン

レポマンと言っても『バットマン』や『スーパーマン』のようなアメコミヒーローではない。ローンが未払いになっている車の回収業のことだ。“Repossession Man(取り返し屋)”の略である。
 レポマン稼業は、該当者の家を訪ねていっては「あなたの車を回収させていただきます」と鍵をもらって乗って帰ってくるような平和な仕事ではない。見つからないように車に近づき合い鍵を使って勝手に持って帰ってくる。相手によっては暴力に訴えてきたり、時には銃で撃たれることもある。そんなかなりヤバい仕事だ。
この『レポマン』以外でも小説『殴られてもブルース』シリーズの主人公の探偵もレポマンを副業にしており、その仕事内容は映画とほぼ同じだった。どうやら、多少の誇張はあるだろうがかなり本物のレポマンの仕事内容に近いようだ。さすがアメリカ、強引である。と思ったが、日本の消費者金融の取り立てだってかなりのものか。
で、そのレポマンを主人公に、アメリカの現代社会を鋭く描いた問題作・・・などではない。問題作ではあるかもしれないが、かなりブッとんだパンク・ムービーなのである。

主人公のパンク野郎オットー(エミリオ・エステヴェス)は勤務態度の悪さから勤めていたスーパーマーケットを首になり、おまけに彼女を友人に寝取られてしまう。
ふてくされて街を歩いていると、バッドという男(ハリー・ディーン・スタントン)に小遣い銭で車の運転を頼まれる。ところが、バッドはレポマンで車は回収中の物。うやむやのうちにオットーはレポマンの会社で一癖も二癖もある連中と一緒に働くことになる。
ちょっうどその頃、白バイがスピード違反の車を見つけ路肩に停めさせた。運転手の言動が怪しいので警官はトランクを調べることにする。ゆっくりと開くトランク、その中から光があふれ出てそれを浴びた警官は骨になり消え去った。再びトランクは閉まり車はその場を走り去っていく。残されたのは白バイとぶすぶす煙を上げる警官のブーツだけ。
実は、トランクの中身は“宇宙人”の死体で男はそれを政府の施設から盗み出した科学者だったのだ!
だったのだ!じゃねーっつーの。

この宇宙人の死体を乗せた車シェビー・マリブに賞金がかけられたものだから、オットーと仲間や他の同業者もその車を探し始め、例によって黒ずくめの政府の役人や『スチュワーデス物語』に出ていたような銀色の義手の女、宇宙人研究家たちなどが入り乱れての争奪戦になっていく。時折、オットーの元彼女と友人が現れてはコンビニ強盗など悪事をはたらいてるし。
でも、揃いも揃ってバカばかりなので、事態はひたすら混乱していくばかり。
最後には成り行きのままに話は収束し、皆が呆気にとられている中、オットーと整備士を乗せたシェビー・マリブが緑色に輝き始め、ついにはフワリと宙に浮かぶ。そして、街の上を飛び回りついには宇宙へ飛び去っていく・・・
どんなラストだ。うれしいじゃないか。

エミリオ・エステヴェスは父親のマーティン・シーンゆずりの世を拗ねながらもギラギラしている挑発的な目つきが実に良い。
『ブレックファスト・クラブ』(1985)や『セント・エルモス・ファイアー』(1985)などですでにエステヴェスのことは知っていたが、どちらの映画も“かなり”嫌いなばかりにその魅力に気づかなかったのは不覚である。
イギー・ポップによる「ベンベケベケベン」の『レポマンのテーマ』もイカす曲だ。イギー・ポップはその後同じアレックス・コックス監督作の『シド・アンド・ナンシー』に出演している。パンクバンド“セックスピストルズ”のシド・ヴィシャスとその恋人ナンシーを主人公にしたこの破滅的パンク映画を観ると、逆説的にオリバー・ストーンの『ドアーズ』がいかに観るのも語るのも必要がない映画かというのが良く分かる。

DVDの日本語字幕は頭悪いヤツが担当したんじゃないかというデタラメぶり。『サタデー・ナイト・ライブ』が『土曜よるライブ』になっているのには笑えるが、出来ればレンタルビデオ屋を回って昔出ていたビデオ版を借りてきた方がいい。そちらはちゃんとした字幕だ。何故、そのまま使わなかったのか非常に疑問である。今日のタイトルに使っている名セリフ「レポマンの人生は緊張の連続だ」はDVDだともっとしょうもない訳になってるのでほんげぇ~。

監督のアレックス・コックスは超名門オックスフォード大学に籍を置いていたこともある(在学中に映画の道へ進んだため卒業はしてないようだ)パンクな大バカ野郎だ。
特に初期の『レポマン』、『シド・アンド・ナンシー』、『ストレート・トゥ・ヘル』(1987)は独自の作風で非常に刺激的だ。90年代に入ってからは模索し苦しんでる部分もあったようだが、『リベンジャーズ・トラジディ』(2002)で見事復活する。
日本のテレビドラマ版『濱マイク』シリーズ(2002)で1エピソードの演出を担当しているが、『スリー・ビジネスメン』(1997)に永瀬正敏が出演していたのが縁なのだろう。残念なことにそのことを知らなかったので観逃してしまったのが悔やまれる。他のエピソード監督の顔ぶれも豪華だし、林海象はほとんど関わっていなかったようなので、そのうちなんとか観たいものだ。
そういえば『スリー・ビジネスメン』には田口トモロヲも出演していが、田口トモロヲ=ばちかぶり=ボーイズ・ビー・シド・ビシャス!=『シド・アンド・ナンシー』ではないか。これは偶然ではなく必然なのであろう。

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