『スタートレックV新たなる未知へ』(1989)のパンフレット 監督・主演:ウィリアム・シャトナー 出演:レナード・ニモイ
スポック役のレナード・ニモイが監督したシリーズ4作目『故郷への長い道 スタートレック4』(1986)が作品的・興行的両面で成功を治めたのがきっと悔しかったのだろう、5作目の『新たなる未知へ』(1989)ではカーク船長のウィリアム・シャトナーが初監督としてメガホンを取ることになった。
きっと、「俺にも監督やらせろ」とごり押ししたに違いない。ウィリアム・シャトナー本人のことは知らないが、ジェームズ・T・カークの事なら再放送で観た『宇宙大作戦』からの長い付き合いだ。
『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの沖田艦長や古代の様に部下に厚く信頼されているわけでもなく、頭が切れたり知識が豊富なわけでもなく、その場の勢いや勘などで回りの迷惑考えずに猪突猛進に突き進む短躯猪首な男。そう、そういうヤツさ、カークってのは。
スポックの腹違いの兄であるバルカン星人が悪事を企み、(中略)で色々あったあげく宇宙の果てにある誰も越えることの出来なかった大障壁の向こうにある伝説の惑星にたどり着くエンタープライズ。
見渡す限り荒野のその惑星に降り立ったカーク達。突然大地が揺れるとあふれんばかりの光と共に“神”が現れ彼らに話しかける。
「わたしは全知全能の存在だ。よくぞ試練として与えた大障壁を越えてここまで来た。我が知恵を宇宙の隅々まで広げたい。そのためにお主らの宇宙船を使わせてくれ」
神の重々しい威厳にすっかり圧倒されている面々。(旧約聖書でモーゼがシナイ山で燃える柴の中の神と会話するくだりがあるが、それをイメージしたのではないだろうか)
だが、場の雰囲気など一切考えずにカークが“神”に疑いの質問をする。
「ちょっと、ちょっと質問させてください。全能の神だったら何で宇宙船が必要なんですか」
「おいおい、よせよ。神に無礼だろ」とDr.マッコイが止めに入るが、気にせず続けるカーク。
「神だったら宇宙船なんかいらないでしょ」「あんた本当に神なんですか」「神だって言うならその証拠を見せてください」
全くもって不遜な口ぶり。証拠見せろってあんた小学生のケンカか。
さすがに怒った神は「これが証拠だ」と目からビームを発してカークを吹き飛ばす神。
だが、「神だとしたら何故怒る?神だったらこれぐらいで怒らないだろ」とカークはめげない。
そんな彼を見て仲間達も次第に神を疑い始め、ついに神はその正体を現す。大障壁は人類への試練ではなく、神を称す謎の精神生命体を幽閉する牢獄で、もし宇宙船を渡していたら宇宙が危なかったのだ。
ひねくれ者で何でも疑ってかかり、ちょっとそっとでは信用しない。そんなイヤな男だったからこそ宇宙は救われた。まったく、そういうヤツさ、カークってのは。