『デルタ・フォース』(1985)のパンフレット 監督メナハム・ゴーラン 主演チャック・ノリス
1985年のイスラムテロリストによるTWA機ハイジャック事件をヒントにして制作された作品。登場する航空会社が“ATW”という名前なのは実にそのまんま。『エグゼクティブデシジョン』(1996)と同じ今くテレビで放映するにはちょっとやばい内容である。
チャック・ノリスを始めとする対テロ特殊部隊デルタ・フォースの連中がアラブ人ハイジャッカー達をこてんぱんに叩きのめす。監督のメナハム・ゴーランはパレスチナ生まれのイスラエル人で、そもそも制作会社の今は無きキャノンフィルムは確かイスラエル資本だったはず。そういった点を考えると「UZIをかまえたチャックかっこいい」とか「バズーカをかまえたリー・マービンが渋い」とか「偉いさん役が実に似合うぜロバート・ヴォーン」とか「やっぱ出てたかジョージ・ケネディ」とか単純に言ってちゃいかんのかなぁともちょっと思うがちょっとだけだ。現実世界は現実世界、娯楽映画は娯楽映画という割り切りも一種のバランス感覚だ。
デルタ・フォースは実在のアメリカ軍特殊部隊。世界最強と言われるイギリスのSASをモデルにしていると言われるが、映画のデルタ・フォースはおそらく本物とはあまり関係がない。UZIサブマシンガンは使ってないと思うし防弾性能0の装甲無しバギーも使っていないだろう(と思ったらバギーは使っているらしい。デルタ・フォースの作戦は相手の虚をついて一気に突入、終了後即退散なので小回りのきくバギーは状況によってかなり便利だそうだ)。
なにより、マシンガンや小型ミサイルを発射し後部にグレネードランチャーまで装備したスーパーバイクは絶対持っていない。あのね、『メガ・フォース』(1982)じゃないんだから。
ラストでは親玉相手にチャック・ノリスの空手殺法が炸裂するが、いかんせん相手が普通の役者なんで格闘になっておらず、ひたすらにチャックが弱い者をいじめているようで爽快感がない。やはり1対1の格闘アクションはある程度互角じゃないとダメだ。ともあれ、リアルなコマンド物を期待するとかなり裏切られるんで、そこら辺は注意が必要だ。
良い意味でトンチキな(わたしはそう思う)デルタ・フォース側に比べると、ハイジャック機内は結構シリアスな描写がなされている。ま、ハイジャックされているのに呑気にしてるヤツはいないんでしょうが、ナチのユダヤ人収容所にいたことがあるユダヤ人乗客いたり(ハイジャッカーにパスポートを提出する時の手首の数字の刺青は名シーン)、ソ連から亡命してきたロシア人が名前からユダヤ人に間違えられたりする。ハイジャッカーと乗客の間に挟まれる形となったフライトアテンダントのドイツ人女性が「あなたたちのやっていることはナチと同じよ」と叫ぶ。それなりに人間ドラマが成立しているのだが、アクション部分とあまりにスタイルが違うのでまるで別々の2本の映画をつないでしまったような感もある。
細かいことを考えると色々ある作品だが、なによりリー・マービンの遺作なので必見ではあろう。一流のB級俳優であった。