大学の授業で、企業倫理と採算性についてといった内容だったろうか、フォード・ピント事件に関する講義を受けたことがある。
米フォード社は1971年にピント(Pinto)というコンパクトカーを発売した。力を付けてきた日本車対策として短期間で開発され価格も約2000ドルと安価に設定した。その甲斐あってか、ピントはかなり売れたのだが、この車はコンパクトデザイン故に非常に危険な車でもあった。ガソリンタンクを車両最後部に設置することで小型化を実現していたのだが、後続車両から追突された場合にガソリンタンクがずれて燃料漏れを起こし炎上するケースが頻発したのだ。
調査の結果、ガソリンタンクにゴムシートを設置することでほぼ防げることが判明した。必要な部品の値段は一台当たり11ドル。
しかしフォード社は、設計の変更により事故が防止されて賠償金・慰謝料などの支払いが減額される分が試算で49百万ドルと、リコール修理するのに必要な金額137百万ドルより下回るため、当面の間炎上問題に対して積極的な手を打つことなくピントは相変わらず燃えやすいまま走り続けた。そして、最後には訴えられリコールとなり、賠償金なども含めてフォード社は多大なる出費を負うこととなった。これがいわゆる「フォード・ピント事件」である。
人が亡くなった場合に関わる費用と、それを防ぐための費用を比べた場合、金額的に後者が大きいとすれば単純に利益のみを追い求める企業はその問題解決に金を出さない。そこで企業倫理というものが出てくる。企業が社会的存在である限り、倫理に基づいて動く必要があるということだ。
この講義はわたしの大学生活の中で唯一役に立ったモノかもしれない。
もっとも、役に立ったといっても、
映画『トップ・シークレット』(1984)で主人公を追う東ドイツ軍の車両の前にフォード・ピントが駐まっている。兵士は慌てて急ブレーキを踏み、キキキキッーとタイヤが悲鳴を上げる。「ふうっ、大丈夫だったか」とふっと一息つくが、しかしバンパーとバンパーがちょこぉんと接触・・・ドカーーン!と大爆発というシークエンスがあり、そのギャグの意味が分かったってだけのことだが。どんな大学生活やねん!
今回の鳥インフルエンザ流行では、京都府の養鶏業者浅田農産はかなりやばい立場にいる。
最初の鶏の大量死の段階で、素直に鳥インフルエンザの感染を認め保健所などの各行政に助けを乞うていたならばまだしも、死亡は腸炎のためと偽りその後も出荷を続けていた。
もう、企業倫理もへったくれもあったもんじゃない。
素直に鳥インフルエンザの発生を認めて各機関に応援を要請すればよかったのに、社長の頭に血が上ったのか、ひたすら暴走した結果となった。
雪印乳業の食中毒、雪印食品の偽装牛肉、日本ハムの偽装牛肉。で、ここに浅田農産の鳥インフルエンザ。
反省という回路がないのだろうか、この人たちには。
多分、浅田農産って潰れるんじゃないのかなと。最初の段階で隠そうとしなければ、一種の被害者側だったと思うのだが。
この人たちには修理前のフォード・ピントでストックカーレースに出場してもらい、企業倫理の重要さを心底味わってもらってはどうだろうか?