津山三十人殺し 筑波昭 新潮OH!文庫
このところ『八つ墓村』や『龍臥亭事件』を読んでいたのも、本屋で手に取ったこの一冊がきっかけ。
昭和13年の岡山県の山村で22歳の若者都井睦雄が一夜に行った大量殺人。その被害者たるやなんと30人!後に人はこの事件のことを『津山事件』と呼ぶようになった・・・
映画『八つ墓村』(1977・1996)である程度は知っていたが、この『津山三十人殺し』は小説ではなくドキュメンタリー。関係者のほとんどが睦雄の手にかかって死んでおり、犯人の睦雄自身も犯行後猟銃で胸を撃ち抜いて自殺しているので、インタビューのたぐいはほとんどない。そりゃそうだ、恐山のイタコを連れてくるってわけにもいかないだろうし。
かわりに、当時の新聞、警察・検察・裁判所関係の文書、医者、学校に残っていた記録などなどの膨大な記録から事件を浮き彫りにしている。
単純に殺人事件だけを扱っているのではなく、本の半分以上をついやして、生まれた時から22歳で自害するまでの睦雄の生涯を一種伝記に仕立てている。そのことによって、睦雄がどのような環境で育ったか、回りからどのような扱いを受けてきたかがわかる。もちろん、それは資料をもとに推測したものにすぎないのだけど。
「十で神童、二十歳で只の人」的な若者が、戸数二十三という山間僻地の田舎村で生まれ育った。自分自身についての幻想や村人との関係で心のきしみを大きくし、夜這いの風習の残る中で裏の人間関係にも縛られた。肥大した自我と現実との差に苦しみ、全てが筒抜けの村の中では居場所が無くなっていくのにほかに逃げ出す先もない。悩みを打ち明け分かってくれる相手もいない。グツグツと睦雄の内圧はギリギリまで高まっていく。
そしてついにある日「俺を馬鹿にした奴は皆殺しだぁぁ!」
9連発に改造したブローニング12番口径猟銃、日本刀一振り、短刀で武装した。そして睦雄が電線を切ったため暗闇になった村の中でも明かりに困らぬようハチマキで頭の左右に懐中電灯をくくりつけた。遠目ではまるで鬼のような姿で飛び出し、次から次へと民家に押し入っては殺戮を繰り広げたのだ。
ある老人を「お前はおれの悪口を言わなかったからな」と殺さぬでおいたりと、睦雄の殺しは決して無差別殺人ではなかったようだ。自分を馬鹿にしたり悪口を言った相手だけを血の餌食にしていったのだ。ただ、狭い村だけにほぼ皆殺し状態になってしまった。睦雄の精神状態を考えると、別段普通にしていたのに勘違いさえ殺された人もいたことだろう。
メインの凶器はブローニングの12番。12番という以上1/12ポンドの鉛球を撃つ散弾銃だと思うのだが、どうもそのところどの作品でもはっきり書かれていない。12番で撃つスラッグショット(一発弾)あるがそんなんで撃たれた日にゃ・・・。
もしも散弾銃だとしたら『龍臥亭事件』でキーワードになっているダムダム弾はありえないことになる。ダムダム弾は弾頭の鉛を露出させて削ったり切れ目を入れたものだからね。ま、あの小説はどーでもいいようなんでどーでもいいんですが。
映画『八つ墓村』や山岸涼子の『負の暗示』だと使ってるのは普通のライフルタイプの猟銃のようです。連発式の散弾銃というとポンプアクション式がまず頭に浮かぶんですがどう見てもそれではない。謎です。12番のショットガンといえば、『ターミネーター』でシュワルツェネッガーがぶっ放してたスパスと同じ口径。銃身はライフルよりずいぶんと太いんですけどね。
ま、個人的感想としては、「田舎はイヤ」