『ニッポニア・ニッポン殺人事件』
鍵のかけられた密室でキンが死亡していた。
死因は頭部挫傷だった。
監視カメラのあるこの部屋で、いったい何者がいかにしてキンの頭部を鈍器で殴り殺したのか?
佐渡島に繰り広げられる謎を解き明かせるのは名探偵神宮寺照彦しかいない・・・
なんつったりしてな。
日本最後のトキであったキンは、生後1年に満たない幼鳥の頃に捕獲され、以後35年の生涯を佐渡トキ保護センターで過ごした。
保護センターの檻の中は環境としては快適でエサの心配もなかった。猫、犬、そして人間などの天敵に襲われることもなかった。
だが、自由もなかった。
限られた空間の中で、常にセンターの職員やカメラに監視される毎日だった。
そして、35年の年月が流れた。
トキにとって36歳というのは人間の100歳以上にも相当する。
老いたキンは自らの死期を悟った。
そして心臓が止まるその前に、残された力を振り絞ってキンは空へと舞い上がった。
もしも危険で過ごしにくい自然の中で生きていたらいつでもキンの物であった大空へ。
キンの肉体は保温室の扉にぶつかり、そして床に落ちた。
だが、その魂は佐渡島の空へと飛び立っていったのだろう。
鳥は力一杯空を飛ぶ。キンは最後の最後にその鳥にとって当たり前のことが出来たのだろう。
なんとなく『刑務所のリタ・ヘイワース』(映画化名『ショーシャンクの空に』)の主人公アンディを思い出すのはわたしだけだろうか。
なんつったりしてな。