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恐怖の納屋橋劇場

 名古屋は伏見の名宝会館の隣に納屋橋劇場という二番館があった。 三本立ての上映で二本が主に日本の旧作、そして一本がなぜかポルノ映画。 そんな劇場だからかホモのハッテン場でもあって、なかなか近寄りがたいものがあった。
 しかし、三隅の『座頭市物語』やマキノ雅弘『昭和残侠伝・死んで貰います』などがスクリーンで観られる機会は名古屋なんぞに住んでいるとなかなかない。
 そこでわたしは新しいパンツをはくと(なんでや!)一路納屋橋劇場を目指すのであった。

  二番館だけ合って料金は半額ぐらいだったろうか。
 一歩場内に足を踏み入れると、他の客の視線がこちらに集まった気がした。人の入りは三分といったところか。平日昼間としては多いように思う。映画館でのわたしの指定席、前から三分の一のほぼ真ん中に座る。場内が暗くなり、サウナなどの絵の動かない予告が始まる。
 と、左の席に人が座る。ちらりと見やると少し頭の寂しい中年男だ。
 空席の方が多い場内。わたしの横に座る理由・・・それは・・・

 自慢ではないがこの10年ほど前のわたしはなかなかいい男だった。
 多少筋肉質で髪はスポーツ刈りに短く刈り上げていた。
 今にして思えば格好の標的にされるのも無理なかったのかもしれない。

 映画が始まってしばらくするとわたしの太ももに左からおっさんがそろそろと手を伸ばしてくる。
 それを邪険に払いのける。しかし、数分するとまた手が伸びてくる。また払いのける。
 これを延々繰り返した。
 「やめろよ」とか声で注意しろよと思われるかもしれないが場内の雰囲気がそれを許してくれないのだ。
 長い戦いもわたしが男の手を思いっきりつねりあげることで終わった。恐らくしばらくはアザが残ったことだろう。
 映画はちょうど健さんが悪党どもの根城に長ドスを手に乗り込んでいくところだった。
「いけー、健さん。やっちめぇ」
 手に汗握り映画にのめり込もうとしたわたしの太ももに右側からソロソロと手が伸びてきた。
 右側の席を見るとそこには二十歳過ぎの学生とおぼしき男が・・・

 以後何度か行ったことがあるが常に敗北を背負って帰ることになった。
 女性は日常的にあんな目にあっているのだろうか?だとしたらなんとも大変なものであることよなぁ。
 痴漢やノゾキなんかはみんなまとめて納屋橋劇場に送り込んじまおう。どんなにおぞましい行為であるか身を以て知ってもらおうじゃないか。

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コメント (4)

通りすがり:

納屋橋劇場ですが、あそこは前方半分がハッテン場、
映画目当ての客は後ろ半分というのが暗黙の了解でした。

東森時音:

通りすがりさん

>前方半分がハッテン場、
>映画目当ての客は後ろ半分というのが暗黙の了解でした。

なるほどそういうルールだったんですか。
自分は上に書いている通り前から1/3ぐらいの席に
座っていましたから、そのルールに従えば
映画よりもむしろそういう目的出来ていると
解釈されてもしょうがなかったんですね。
もう20年ほど早くそれを知っていれば、
観たい映画を結構やってくれていたんで
もうちょっと通ったと思います。

上野のゲイ映画専門館だと、
席に座らずに後ろに立っているのが
映画でない方を目的の客だと聞いていましたし、
前の方で映画を観るのが好きなのでダブルパンチとなりました。

昨日は大学時代のシネマ研究会仲間と久しぶりに集まって
名古屋駅周辺で飲み会をやりました。
わたしは今、他県に住んでいてお盆の里帰りをしているところなんですが
名駅周辺の変わり様に驚きました。
1990年を中心に通った映画館がどれも無くなっている!
名古屋松竹はまぁ潰れて当然な感じでしたが
名鉄メルサから大通りを挟んで反対側のビルに入っていた
幾つもの映画館がない。
というより、そもそもビル自体が再開発で無くなってる。
車でヘラルド開館の前を通ったら、フェンスで囲まれて
廃墟のおもむき。ヘラルドが倒産したのは新聞で読んでいましたが
実際に見るとショックです。
ということはゴールド・シルバー劇場もないのでしょうね。

そして、納屋橋劇場ももはやないとのこと。
一度でも行っておいたのは思い出になります。

ただの映画好き:

東森さま こんばんは
初めて書込みをさせていただきます。

納屋橋劇場…懐かしいですね~。
私も全く同じメに遭いましたよ。
私の場合は、増村保造監督の「黒の超特急」が見たくて入ったのですが…。
(文章にも書かれていたとおり、名古屋では古い邦画なんてメッタに上映されないんですよね)
当時、全くそんな場所だとは知らなかったのでビックリ!
同じように、腿をソロソロと…。
何度もサレたので、わざとそいつの足を踏んで席を替えたのですが、
そこでもソロソロと…。
集中して見れませんでした。(涙)

でも、それも今となっては貴重な体験?です。
スクリーンも大きかったし、昭和30年代の映画館の雰囲気を味わえましたし…。

ちなみにその他の上映作品は、『!〔ai-ou〕』アイ・オーという邦画と、『異常快感 恥知らず』(笑)というピンク映画です。

東森時音:

ただの映画好きさん

ゲイの人にはハッテン場であることは常識だったんでしょうが、映画館の見た目ではそんなの分からないですからね。
向こうにしてみたらこちらが場違いなんですが、せめて一度拒否した時点で止めて欲しかった。

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