2009年12月アーカイブ

B000KIX9BO.jpg『トゥモロー・ワールド』(2006) CHILDREN OF MEN 109分 アメリカ/イギリス UNIVERSAL PICTURES、STRIKE

監督:アルフォンソ・キュアロン 製作:マーク・エイブラハム、エリック・ニューマン、ヒラリー・ショー、トニー・スミス、イアイン・スミス 製作総指揮:アーミアン・バーンスタイン、トーマス・A・ブリス 原作:P・D・ジェイムズ 脚本:アルフォンソ・キュアロン、ティモシー・J・セクストン 撮影:エマニュエル・ルベツキ プロダクションデザイン:ジェフリー・カークランド、ジム・クレイ 衣装デザイン:ジェイニー・ティーマイム 編集:アルフォンソ・キュアロン、アレックス・ロドリゲス 音楽:ジョン・タヴナー
出演:クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン、キウェテル・イジョフォー、チャーリー・ハナム、クレア=ホープ・アシティ、パム・フェリス、ダニー・ヒューストン、ピーター・ミュラン、ワーナ・ペリーア、ポール・シャーマ、ジャセック・コーマン、エド・ウェストウィック

 ある週、流産する妊婦が多かった。翌週はもっと多かった。そしてもっともっと。ついに世界中で子供が生まれなくなった。
 それから18年が過ぎた2027年、世界は秩序を失い、イギリスは強力な軍事力を用いてなんとか国家の形を保っていた。
 主人公のセオ(クライヴ・オーウェン)は元活動家。現活動家でかつての恋人のジュリアン(ジュリアン・ムーア)から通行証の都合を依頼される。その通行証は妊娠した黒人女性のためのものだった。

 リアルな戦闘シーンが展開される中で、一人の妊婦、後に赤ん坊と母親を守るというストーリー。長回しを基調とした映像は、映画の中に入ってしまったかのよう。長回しのシーンでレンズに血しぶきが付いたシーンは臨場感があった。
 ジュリアンはジュリアン・ムーアというビッグネームが演じているにも関わらず、前半であっけなく死にます。そのあっけなさが怖い。ゲスト出演だったのかね、これは。それにしてもジュリアン・ムーアの劣化振りは目を覆いたくなるものがある。
 対してヒッピーもどきのマイケル・ケインが白髪の長髪で良い演技を見せてくれます。"イチゴせき"いっぺん吸ってみたいな。ビートルズの音楽をかけるシーンでは涙が出てきます。最後は主人公をかばって射殺されてしまいますが、男だなぁ。マイケル・ケインの出ているシーンで自殺薬という市販薬が登場しますが、それだけ人生に絶望している時代なのでしょう。
 ビートルズも流れるがキングクリムゾンも流れる。
 オープニングで人類最年少の少年が殺されたというニュースが流れて、そのことで子供が生まれなくなっていることを示す上手い演出。そして爆破テロと時代の雰囲気が伝わってくる。
 不満なのが黒人女性キー(クレア=ホープ・アシティ)の出産シーン。セスが介添えを務めるのだがこれがあっけなくころっと生まれてしまう。そんなに簡単に生まれないだろう。ヘソの緒を切った描写もないし、仮に切るにしても出産場所には清潔な刃物があるようには思えない。
 こうして生まれた女の子を連れて歩くと、収容所の収容員たちが一斉に静まりかえり、そして祈りを上げながら寄ってくる。
 表に出ると、政府軍の連中も銃を持つ手を休め「撃つな、撃ち方止め!」と上官が叫び、兵士が十字を切るなどするシーンは感動的だ。
 赤ん坊は希望だ。人類にとって後を継ぐべき存在だ。とても大切な宝である。本来ならば無関係なはずの主人公が命を賭けてキーを守り抜こうとしたわけだ。
 イギリスらしいどんよりと曇った曇り空が印象的だ。木々や海まで重苦しい。
 収容所のシーンは本当にヘビーで、バスから無理矢理降ろされたキーに付いてきた助産婦のオバサンが生きているかは怪しいものだ。だがそんな中でも人間はたくましく生きている。
 ディストピア物の佳作であろう。それ故に暗くて重くてしょうがないのだが。
『トゥモロー・ワールド』という邦題は決して悪くはないのだが原題の『CHILDREN OF MEN』に比べると格段に劣る。さすが配給が東宝東和。
 監督は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』のアルフォンソ・キュアロン。他には同じメキシコ出身監督と言うこともあろうがギレルモ・デル・トロの『パンズ・ラビリンス』の製作もやっている。

B001E7TS4M.jpg『スター・トレック/宇宙大作戦シーズン2』(1967-1968) STAR TREK 1300分 アメリカ CBS TELEVISION

製作:ジーン・L・クーン、フレッド・フリーバーガー、ジョン・メレディス・ルーカス、ジーン・ロッデンベリー 製作総指揮:ジーン・ロッデンベリー 音楽:アレクサンダー・カレッジ
出演:ウィリアム・シャトナー、レナード・ニモイ、デフォレスト・ケリー、ジェームズ・ドゥーアン、ジョージ・タケイ、ニシェル・ニコルス、ウォルター・コーニッグ、メイジェル・バレット、クリスティーン・チャペル

 比較的SFしていたシーズン1と比べるとスペースオペラ的側面が強くなったシーズン2である。スペオペである。
 お気に入りのエピソードはエンタープライズ号に大使としてスポックの両親が乗る話。バルカン人の価値観が分かって面白い。
 ある惑星に降りたらそこの細菌のせいでどんどん老化が進んでいく話。カーク、スポック、ドクター・マッコイ全員がどんどん年寄りになっていく。だから指揮官自ら先陣を切って惑星に乗り込むのは止めろと言うのだ。痴呆が進んで同じ命令を繰り返したりどんどん頑固になっていく(もともと頑固だが)カーク船長はついに船長を解任されてしまう。代わりに文官が代理船長になるが実戦になって慌てふためき、カークに救われる。やはりエンタープライズの船長はカークじゃなきゃ。
 トリブルという毛糸玉状のペットがどんどん増殖してエンタープライズ中トリブルだらけになる話。
 地球人が置いていった1920年代のシカゴのギャングに関する本に影響され、ギャング世界になってしまった星の話。通行人がみんなトミーガンを抱えているのが笑える。
 平和な惑星にクリンゴンがフリントロック式銃を持ち込み、苦渋の結果としてカークも敵対する部族にフリントロック式銃100挺を与える。こうして平和な惑星は戦場となった。
 行方不明になっていた歴史研究家がある惑星で発見されるが、その歴史研究家の影響でその星はナチスの形態を取っていた。
 カークがパラレルワールドの地球で合衆国憲法をとく話。

 全体的に派手な話が増えている。
 カークは相変わらず猪突猛進で女たらしだ。
 スポックもだいぶと人間味が出てきた。
 とにかくエピソード数が多いので、1日1本観ても1ヶ月近くかかる。案外とコストパフォーマンスがいい。

p-1021.jpg『アバター』(2009) AVATAR 162分 アメリカ 20th CENTURY FOX
 
監督:ジェームズ・キャメロン 製作:ジェームズ・キャメロン、ジョン・ランドー 製作総指揮:コリン・ウィルソン、レータ・カログリディス 脚本:ジェームズ・キャメロン 撮影:マウロ・フィオーレ プロダクションデザイン:リック・カーター、ロバート・ストロンバーグ 衣装デザイン:デボラ・スコット 編集:スティーヴン・リフキン、ジョン・ルフーア、ジェームズ・キャメロン 音楽:ジェームズ・ホーナー シニア視覚効果監修:ジョー・レッテリ
出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーヴァー、スティーヴン・ラング、ミシェル・ロドリゲス、ジョヴァンニ・リビシ、ジョエル・デヴィッド・ムーア、CCH・パウンダー、ウェス・ステューディ、ラズ・アロンソ

『タイタニック』の売り上げに満足して、その売り上げで余生を送るつもりかと思われたジェームズ・キャメロンが帰ってきた。しかもものすごい映像をひっさげて。
 まさに画面を観るではなくそこに存在する物を観る感覚であった。
 オレが観たのはもちろん3D版。ちなみにある方の助言に従って日本語吹替版である。
 視力が落ちて去年から車の運転時や映画を観る時などには眼鏡をかけるようになっているのでメガネの上に3Dメガネをかける形。XpanD方式の液晶シャッター式だったのでメガネがごつくて重い。大村崑は「うれしいとメガネが落ちるんです」だが、こちらは映画に熱中しているとメガネが落ちてきてうっとおしい。3Dも進化したが、このメガネ問題だけはまだまだ残っていくのだろう。
 日本語吹き替えに関しては、テレビの洋画劇場で映画を覚えた年代なので外人顔が日本語をしゃべっていても何ら問題がない。
 しかしこれはまさに映像革命である。これまでの3D映画で手前に飛び出てくるというのはよくあったが、この作品からは奥行きが感じられる。その奥行きが上下になると高低差を表すことになる。この作品は高い木の上や崖の上から下を見下ろすカットが多いが、遙か下に見える大地は確かに足のすくむような距離を感じさせる。高所恐怖症じゃなくてよかった。
 3D映画によくある露骨にナイフや矢が画面を飛び出すカットは少なく、むしろあえて抑えたんだろうなと思わせる。
 近くの劇場では2D版しかやってないからと言う人は、時間と金を使っても3D版をやっている劇場まで足を伸ばした方が良い。それもなるべく前の席。
 このオレ自身も片道1時間かけて行ってきた。ちなみにまだ正月休みに入る前の平日だというのに場内満員。冬休みと言うことで子供も多かった。「すげーすげー」とやかましかったが、こういうやかましいはなんか嬉しい。
 でもジェームズ・キャメロン。オレは頻尿でしかも閉所恐怖症なんだよ。2時間42分は正直長かった。予告も入れると3時間。また予告が長いんだ。上映が終わると同時にダッシュでトイレに駆け込んだね。
 でも、予告でティム・バートンの3D映画『アリス・イン・ワンダーランド』の予告を3Dで観られて良かった。こいつも観に行くぞ。
 Blu-rayで画質は良くなっても現状ではまだ赤青セロハン式以外のフルカラーの3D映画は映画館の専売特許。Blu-rayも3Dの規格が決まったそうだが、どうやらプレイヤーだけじゃなくてテレビまで買い換えなきゃいけないらしい。
 2年前に買った42インチの東芝レグザをそうそう買い換えられませんよ。10年は使う予定なんだから。

 映像技術に比べるとストーリーの方はごくシンプル。場所は森の惑星パンドラ。1キロ20億の鉱石の上に原住民族ナヴィが集団で暮らしており、人間側としてはなんとか彼らをどかしたい。出来れば平和的にと言うのが表向きにあって、そこで主人公ジェイク(サム・ワーシントン)の遺伝子をグレース博士(シガーニー・ウィーヴァー)が操作してナヴィの分身(アバター)を作り説得に当たらせる。
 ジェイクはネイティリという族長の娘と出会い、いつしか恋に落ちる。
 指揮官のマイルズ大佐(スティーヴン・ラング)はついにしびれを切らしてナヴィ達を襲い始める。最初はやられっぱなしのナヴィだが、ジェイクが伝説の空飛ぶ翼竜を飼い慣らすことで信頼を集め、各部族を集めて反撃に出る。といったものである。
 ナヴィはネイティブアメリカンの象徴だろう。自然賛歌、反戦主義まったく持ってシンプルである。
 だが考えてみれば、あの大ヒット作『タイタニック』だって「男女がいちゃいちゃして、船が沈む話でしょ」なのだ。
 この映画に関してはこの映像がほぼ全てで、ストーリー云々はあまり気にする必要がない気がする。
 ジェイクは海兵隊員だが事故で車椅子という設定で、上半身はちゃんと肉が付いているのに、両足は筋肉がそげ落ちて細いという描写があって、細かいところまで描かれている。あれはCGだろうか。本当に車椅子の役者かと思ったが、サム・ワーシントンがそんなはずはない。
 女性ヘリパイロットのトゥルーディが実に味のある役で、死にっぷりも見事なものであった。合掌。ただなぜジェイクの側に付いたのかは説明不足である。
 左右両ローターのヘリコプターは『ターミネーター』に出てきた物に良く似ている。そして『エイリアン2』のパワーローダーを思わせるパワードスーツがガッツンガッツン編隊を組んで歩く。マイルズ大佐も敵ながら憎たらしくて格好いい。こちらの死にっぷりも良い。メカのデザインは流石ジェームズ・キャメロンだけのことはある。
 終盤のナヴィ対人類の対決シーンは実に迫力満点で、平和なシーンとの切替がちゃんと出来ている。
 個人的には聖なる気の精霊とかいうフワフワとした白いクラゲ状の物体の質感が一番気に入っている。

B002N7DGOK.jpg『続・黄金の七人/レインボー作戦』(1966) IL GRANDE COLPO DEI SETTE UOMINI D'ORO 101分 イタリア

監督:マルコ・ヴィカリオ 製作:マルコ・ヴィカリオ 脚本:マルコ・ヴィカリオ 撮影:エンニオ・グァルニエリ 音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ、カルロ・ルスティケリ
出演:フィリップ・ルロワ、ロッサナ・ポデスタ、ガストーネ・モスキン、モーリス・ポリ、マヌエル・ザルゾ、ガブリエル・ティンティ、ジャンピエロ・アルベルティーニ、ダリオ・デ・グラッシ

 ジープが入ったコンテナ型の小型潜水艇や木のように伸びてくる特殊梯子、暗視鏡にボクシンググローブ発射バズーカ、ジェット噴射で空を飛ぶ装置など面白い小道具が山のように出てくる。
 様々なアイテムにはアンテナが付いている物が多く、そのアンテナがクルクルと回転しているところに時代を感じてしまう。
 しかし、前作と比べると勢いが落ちたような気がするのは気のせいか。

 ローマのカタコンベを利用して地下鉄を引き地下から銀行の金庫をそのまま貨物として盗み出した黄金の七人。強奪と輸送を同時に行える良い計画だ。しかし、出口で謎の組織に捕まってしまう。
 その組織はアメリカで、南米の独裁国家、キューバのカストロ議長をモデルとしたと思われる人物を誘拐してミサイル発射基地について尋問するのが目的だった。
 見事任務を達成した七人はサイドビジネスとばかりに7000トンの金塊を積んだ船を強奪したのであった。前作は7トンの金塊だったからなんと1000倍。

 教授の愛人ジョルジァ(ロッサナ・ポデスタ)が相変わらず美しい。コロコロ変わる色っぽい衣装に、瞳の色もカラーコンタクトレンズで変わる。7色に変わるからレインボー作戦。彼女は将軍を誘惑する大きな役割を担っていて、前作以上の大活躍。
 今回も教授とジュルジァ以外のキャラクターの印象が薄いのが残念だ。各国から集められた犯罪のプロなのだからもっと特色があっても良さそうな物なのだが。教授はやはりイギリス人なんだ。
 ルパン三世を思わせる奇想天外な盗みのシーンは相変わらず面白い。
 終盤には奪った金塊を独り占めしようとする人物が出てくるのは前作と同じ。「俺が3500トン、お前が3500トン。残りは0だ」7000トンの金塊が積まれた中での銃撃戦がなかなかの迫力だ。しかし贅沢な銃撃戦である。
 小島に積み上げた金塊をアメリカ艦隊が狙って沖合に停泊しており、今回もラストは失敗かと思ったが裏をかいて見事に成功。今回は七人の勝ちであった。
 と思いきや、ものの見事にジョルジァに裏切られ。最後に勝つのは女であった。そして銀行の金庫に収められたその金塊を奪い返そうとまた道路工事に見せかけて計画を始める七人。
 毎回、計画は上手く行くのに人間の欲にやられて教授の水も漏らさぬ計画はパーになってしまう。人の心まで読めないのが教授の欠点か。
『黄金の七人』シリーズは犯罪映画なのに、最後には失敗してしまうというのがミソである。犯罪は割に合わないという反犯罪映画でもあるのだろうか。
 それにしても教授の犯罪計画の成功率はどれぐらいなのだろうか。どうもシリーズを見ている限りあまり高くはなさそうだ。失敗談の話も出てくるし。その代わり当てる時にはどかんと大きく当てるのではないだろうか。

B002N7DGOA.jpg『黄金の七人』(1965) SETTE UOMINI D'ORO 91分 イタリア

監督:マルコ・ヴィカリオ 製作:マルコ・ヴィカリオ 脚本:マルコ・ヴィカリオ、マリアノ・オゾレス、ノエル・ギルモア 撮影:エンニオ・グァルニエリ 音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ
出演:フィリップ・ルロワ、ロッサナ・ポデスタ、ガストーネ・モスキン、ガブリエル・ティンティ、ホセ・スアレス

 コメディ仕立ての銀行泥棒映画。
 スイス銀行の近くで道路工事が始まった。この工事、実は銀行の大金庫襲撃を企んだ物だった。
 教授というあだ名のブレイン(フィリップ・ルロワ)が指揮する中、六人の犯罪のプロたちが地面に穴を開け、水道管を通り、大金庫の地下に穴を開けたのだ。そして7トンの金塊をベルトコンベアで地上に上げる。
 上手く行ったかに見えた計画だったが、金を独り占めしようとする人物が現れて......

 出てくる度に違う衣装を着ているルパン三世の峰不二子的存在のジョルジア(ロッサナ・ポデスタ)が美しい。扇情的な服装や毛皮が実に似合う。そして悪女でもある。
 完璧なはずの計画が人間の欲によって崩れていく様は、人間の業を見るようである。この騙し合いがが面白い。六人は教授がパスポートに細工をしてスイスに足止めを食い、その隙に教授はジョルジアと金を山分けにするつもり。しかしジョルジアはその教授を裏切る。どんでん返しに次ぐどんでん返し。
 ベルトコンベアで無造作に金塊を運ぶところはまさにルパン三世。金塊の山また山なのだ。
 それにしても真鍮と言うことでスイスからイタリアへ列車で金塊を運ぶのだが、どう見ても金塊で真鍮には見えないと思うんだが。
 スイス銀行から金塊を盗み出す方法も大がかりかつリアルで、本当にこんな方法で銀行泥棒をやる人間が現れるのではないかと思ってしまった。
「ちゃらららちゃららら、ちゃーららららら」のテーマ曲が軽快に響く。音楽担当のアルマンド・トロヴァヨーリは良い仕事をしている。
 教授とジョルジア以外のキャラクター、特に六人のキャラクターが書き分けられていないのが残念か。全員の名前がAから始まるというのは面白いが、それぞれに特技があるとかもっと特徴を持たせても良かったのでは。
 ラストは意外な結末。犯罪は割に合わないと言わんばかりに偶然から金塊はすべてパーになってしまう。それでもこりない七人組。ジョルジアも入れると八人か。最後にはまた新しい銀行泥棒に取りかかっている。
 でもなんで『黄金の七人』なんだろうね、先ほども言ったようにジョルジアも入れると八人なのにさ。語呂が良いからか。それとも教授と黄金の七人という意味なのだろうか。
 1965年という年月を感じさせないオシャレでポップな犯罪映画である。
 DVDにはテレビ放映時の吹替も収録されていて、それも嬉しい一本。この手の映画はベテラン声優の吹替で観るのも悪くない。

B002AQTCWY.jpg『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(2008) HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE 154分 イギリス/アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:デヴィッド・イェーツ 製作:デヴィッド・ハイマン、デヴィッド・バロン 製作総指揮:ライオネル・ウィグラム 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:ブリュノ・デルボネル クリーチャーデザイン:ニック・ダドマン 視覚効果監修:ティム・バーク 特殊メイク:ニック・ダドマン プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 衣装デザイン:ジェイニー・ティーマイム 編集:マーク・デイ 音楽:ニコラス・フーパー
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ジム・ブロードベント、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、ワーウィック・デイヴィス、マイケル・ガンボン、アラン・リックマン、マギー・スミス、ティモシー・スポール、デヴィッド・シューリス、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、マーク・ウィリアムズ、ジェシー・ケイヴ、フランク・ディレイン、ヒーロー・ファインズ=ティフィン、トム・フェルトン、イヴァナ・リンチ、ヘレン・マックロリー、フレディ・ストローマ、デヴィッド・ブラッドリー、マシュー・ルイス、ナタリア・テナ、ジェマ・ジョーンズ、ケイティ・ルング、デイヴ・レジーノ

 シリーズ最新作。前半は思春期の恋愛話が多くを占める。ロンには彼女が出来ているが、実は内心ハーマイオニーが好き。前作で東洋系の女の子と別れたハリーはロンの妹ジニーとどうやら怪しい仲になっている。男女七人ホグワーツ物語なんである。恋愛パートはストーリー上あまり意味はないのにかなり時間を取って描いている。青少年ハリーたちを描きたかったのだろう。でも時間を取りすぎ。女の子は男の子のことしか考えていないのか?
 今回のキーワードは"謎のプリンス"(THE HALF-BLOOD PRINCE)、意訳もはなはだしいと思うのだが劇中ではこの"THE HALF-BLOOD PRINCE"が"半純血の王子"と訳されるから更にややこしい。半純血ってなによ。半100%オレンジジュースみたいなものか。
 半純血の王子の正体は観てのお楽しみ。シリーズ1作目から登場していたあの人だ。いかにも悪人って面構えの人が実際に悪人だったなんてそのまんま過ぎると思うのだが。ここは一発ハグリッドだったりすると面白いのだが。
 で、半純血の王子っていったい何が説明されないまま次回作へ。もうちょっと説明してよ。意味分かんないよ。
 クィディッチにロンがキーパーとして出場しているのに驚いた。ロンはロンでがんばっていたのか。ハーマイオニーは勉強に頑張っているし、ある意味ハリーは血筋だけで手を抜いてないか?
 とはいえハリーの実力も上がっているようで、今回はダンブルドア校長の手伝いで駆け回ることになる。ただ手伝いと言えば聞こえは良いが手駒にされている気がしないでもない。
 ドラコ・マルフォイはドラコ・マルフォイで何かよく分からないことやってるし。こんなシーン、カットしちまえ。
 全体的にダークな雰囲気でラストの魔法対決ではついにダンブルドアが半純血の王子の手にかかって死亡してしまう。でも本当に死んだかは分からない。あのダンブルドアのことだから次回作では元気に登場してくるのかも知れない。「いや、こんなこともあろうかと思ってな......」
 ヴォルデモートは分霊箱と術で命をいくつかに分けて、別々の場所に保管している。その全てを打ち壊さない限りヴォルデモートは不死身である。
 いくつかはダンブルドアが見つけて破壊したが、まだ分霊箱はいくつあるか、どこにあるか分からない。
 ラストではハリーたち3人が、分霊箱を探すために学校を旅立つというシーンで終わる。非常に消化不良な終わり方だ。この中途半端な終わり方は『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のラストを思わせる。
 その割りにあまりワクワクしないのは困りもの。
 154分と今回も長い。この手の映画は2時間以内に収めろといっているのに。実際、すでに原作からかなりカットされているのだから、もう30分ぐらいカットするのもそれほど無茶な話じゃないと思うのだが。消化不良になるよりはずっといい。
 監督は前作に引き続いてデヴィッド・イェーツが担当。前作でも感じたが、少々野暮ったいところがあり、スマートさに欠けている。そして非常に鬱である。観客を楽しませる気がないのか。
 映像的にはハリーとダンブルドアが分霊箱を取りに行くシーンでの謎の怪物の襲撃とそれを追い払うダンブルドアの炎の魔法とロンの家襲撃事件、オープニングの橋の倒壊シーンぐらいで、後は全体的に地味である。

B000WGUSTA.jpg『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007) HARRY POTTER AND THE ORDER OF THE PHOENIX 138分 イギリス/アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:デヴィッド・イェーツ 製作:デヴィッド・バロン、デヴィッド・ハイマン 製作総指揮:ライオネル・ウィグラム 原作:J・K・ローリング 脚本:マイケル・ゴールデンバーグ 撮影:スワヴォミール・イジャック 視覚効果スーパーバイザー:ティム・バーク プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 衣装デザイン:ジェイニー・ティーマイム 編集:マーク・デイ 音楽:ニコラス・フーパー
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、ワーウィック・デイヴィス、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ブレンダン・グリーソン、リチャード・グリフィス、ジェイソン・アイザックス、ゲイリー・オールドマン、アラン・リックマン、フィオナ・ショウ、マギー・スミス、イメルダ・スタウントン、デヴィッド・シューリス、エマ・トンプソン、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、マーク・ウィリアムズ、ロバート・ハーディ、デヴィッド・ブラッドリー、トム・フェルトン、マシュー・ルイス、イヴァナ・リンチ、ケイティ・ルング、ハリー・メリング、ロバート・パティンソン、ナタリア・テナ

 すっかりダークな雰囲気でハードな物語が展開される。シリーズ初期のライトファンタジー風味からはえらく変わってしまった。
 ハリーもお年頃と言うことで東洋人のガールフレンドが出来る。ただし、途中で裏切りがあって別れてしまうが。キスシーンもあってハリーも大人になったものである。でも設定では14歳なんだよな。子役はもう14歳には見えないが。
 この作品でのハリーはかなり情緒不安定。怒りっぽいし激しい怒りを胸の中で燃やしている。ちょっと嫌な奴に見えてしまうシーンもある。
 不死鳥の騎士団とはシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)らヴォルデモートに対抗しようとする勢力が作り出した団体。現在ではハリー・ポッターを守るのを主眼に置いている。
 そして生徒たちが作り上げるのはダンブルドア軍団。命名の仕方が子供じみているが、こちらもヴォルデモートに対抗するのが目的で、ハリーを先生として呪文の訓練に励む。
 魔法世界も一つにまとまってはいなくて、特に魔法省の大臣が自分の地位に固執してダンブルドアが大臣の座を狙っていると思い込んでいて、ヴォルデモートの復活を信じようとはしない。
 そして嫌味な女教師をホグワーツに送り込んでくる。このオバサンが本当に質が悪くて授業はまともな物を行わないわ、ハリーたちに目を付けてことあるごとに虐めてくる。ケンタウロスに捕まって森の奥に連れ去られる消え去り方には拍手喝采であった。
 終盤は派手な魔法対決。杖をふるって魔法が飛び交う。あれだな、魔法使いに重要なのは早口言葉だな。相手より先に呪文を唱えきった方が勝ち。
 シリウス・ブラックの思いがけぬ死を糧にハリーは成長を遂げる。
 ハリーにあってヴォルデモートにないもの。それは守るものの存在だ。
 原作からかなりストーリーが割愛されているようで、ロンの父親が怪我をしているシーンの意味が分からなかったり、不思議ちゃんの存在意義があまりはっきりしないなど原作未読者にはつらい部分がある。
 前作のラストでヴォルデモート側の人間だったはずのマッドアイ・ムーディーが不死鳥の騎士団の一員であるのは何故なんだろうか。さっぱり分からない。
 世界観が重くなってきたので子供受けはどうなんだろうと思うが、CGなどの派手な画面だけでも楽しめるといえば楽しめる。
 個人的には嫌味な女教師による虐めが度を超していて、観ていて不快感があった。
 監督はこれが劇場映画デビュー作になるデヴィッド・イェーツ。全体的にもっさりした演出。もう少し軽快でも良かったと思うのだが。

B000AR94DW.jpg『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005) HARRY POTTER AND THE GOBLET OF FIRE 157分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:マイク・ニューウェル 製作:デヴィッド・ハイマン 製作総指揮:クリス・コロンバス、デヴィッド・バロン、マーク・ラドクリフ、ターニャ・セガッチアン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:ロジャー・プラット 美術:スチュアート・クレイグ 衣装:ジェイニー・ティーマイム 編集:ミック・オーズリー 音楽:パトリック・ドイル
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント。エマ・ワトソン。トム・フェルトン、スターニスラフ・イワネフスキー、ケイティ・ルング、マシュー・ルイス、ロバート・パティンソン、クレマンス・ポエジー、ロビー・コルトレーン、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ブレンダン・グリーソン、ジェイソン・アイザックス、ゲイリー・オールドマン、アラン・リックマン、マギー・スミス、ティモシー・スポール、プレドラグ・ビエラク、フランシス・デ・ラ・トゥーア、ロジャー・ロイド=パック、ミランダ・リチャードソン、デヴィッド・テナント、マーク・ウィリアムズ、ボニー・ライト、ワーウィック・デイヴィス、ロバート・ハーディ
 
 本格的に殺される人物が出てきて、これまでとカラーが変わってきた第4作目。
 監督は『フェイク』(1997)やジョン・キューザックとビリー・ボブ・ソーントンの『狂っちゃいないぜ』(1999)などを撮ってきたマイク・ニューウェル。お子様ファンタジー映画を撮る人じゃないだろうと思っていたが、出来た作品はお子様ファンタジーではなかった。
 ドラゴンとの空中戦や湖に潜っての水中人との戦いなど派手な画面はあるが基本的にダークな雰囲気だ。原作自体もこの頃からダークな面が増えていたのかも知れない。なんといってもイギリスだしな。その点では監督交代は理にかなっていたのだろうか。
 ついに悪の魔法使いヴォルデモートとハリー・ポッターの一対一の対決も用意されている。ただし、決着を付けるのはまだ早いのではなはだ消化不良な結末にはなっている。幼い頃のハリーをヴォルデモートが殺せなかったのはハリーの能力ではなく母親が命がけで守る呪文をかけていたという設定が良い。
 このシリーズで気に入らなかったのはあからさまな"ハリーびいき"なところで努力もしないで才能だけの奴がすごかったら面白くも何ともない。何かに付けハリーを贔屓するダンブルドア校長も「あんた小児同性愛者でハリーが好きなだけちゃうんかい」だ。そういえばダンブルドア校長はゲイだという噂も聞いたことがある。真偽は知らんがな。
 話の展開は更に早くなって着いていくのが精一杯。取りあえず、三校対決の魔法合戦が行われ、代表者は三人のはずがなぜかハリー・ポッターが四人目の代表者として選ばれてしまい、あれやこれやと苦労して難関を乗り越えていく映画だ。しかし、その難関を乗り越えていくヒントはある人物が目的を持って教えていたという内容。
 主人公グループのハリー、ロン、ハーマイオニーを演じている子役もだいぶと成長してきたがそのなかでもハーマイオニー役のエマ・ワトソンの成長が著しい。十代中頃の子は男の子よりも圧倒的に女の子の方が早いのだ。自分の中学時代を今になって考えると、女の子に対して自分はなんてガキだったんだろうと思い出す。
 途中で正装してのダンスのシーンがあるが、タキシード姿のハリーの似合わなさにくらべてハーマイオニーのドレス姿のしゃんとしていたこと。すっかり女性の顔である。お母さんから贈られた古くさいドレス衣装のロンは論外である。
 このダンスのシーンではその前に誰を誘うだのなんだのと青春時代を感じさせるエピソードになっている。そうかハリーたちも思春期か。で、ハーマイオニーが「なんでもっと早く私を誘ってくれなかったの」と怒っている相手はハリーなのかロンなのか。前作のフラグだとロンに立っていると思うんですがどうでしょうかね。
 個人的お気に入り人物は魔法教師のマッドアイ・ムーディ。演ずるのはブレンダン・グリーソン。ルトガー・ハウアーを思いっきり横に伸ばしたような外見で(今のルトガー・ハウアーがすでに全盛期と比べると横にかなり伸びているが)、ハリーの味方と思いきや意外な展開を見せてくれる。自分の悪事をハリーの前で全てしゃべってしまい観客に謎解きをさせてくれた後に警察ならぬダンブルドア校長らに押し込まれて捕らえられるという火曜サスペンス劇場のような展開を味合わせてくれる。
 言うのを忘れていたがスネイプ先生のアラン・リックマンは一作目からのファン。もったいない使い方をするもんだと毎回思っている。「トカゲヘッドにかけて!」
 出演者の中にゲイリー・オールドマンを入れておいたが、暖炉の中の火として顔が登場するだけで、ひょっとしたらモーションキャプチャーぐらいやっているのかもしれないが、本来は声の出演になるのではないだろうか。
 父親の骨やらハリーの血やらなんやらでヴォルデモートも本格復活したし、次回からはさらにハードな展開になるのであろうか。ハードといってもJ・K・ローリングではたかが知れてると思うが(1作目しか読んでないクセにこんなことを言ってますこの男は)、お子様向け映画でどこまでやってくれるかいい加減楽しみになってきた。
 取りあえず今回は157分という長さを感じなかったので出来は悪くないと思う。

B00008MSTU.jpg『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004) HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN 142分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:アルフォンソ・キュアロン 製作:デヴィッド・ハイマン、クリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ 製作総指揮:マイケル・バーナサン、カラム・マクドゥガル、ターニャ・セガッチアン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:マイケル・セレシン プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 編集:スティーヴン・ワイズバーグ 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ゲイリー・オールドマン、ロビー・コルトレーン、マイケル・ガンボン、リチャード・グリフィス、アラン・リックマン、フィオナ・ショウ、マギー・スミス、ティモシー・スポール、デヴィッド・シューリス、エマ・トンプソン、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、マーク・ウィリアムズ、トム・フェルトン、マシュー・ルイス、ワーウィック・デイヴィス、デヴィッド・ブラッドリー、ロバート・ハーディ、ジム・タヴァレ、パム・フェリス、ハリー・メリング

 前2作の監督クリス・コロンバスが製作に移り、新たに監督を後に『トゥモロー・ワールド』(2006)を撮るメキシコ出身のアルフォンソ・キュアロンにして再スタートした『ハリー・ポッター』3作目。
 子供たちも大部成長してきて、DVDのパッケージを見れば分かるが私服はユニクロで買ったような現代風の服装を着崩している。制服姿ばかりだった全2作と比べるとこのあたりの描写も大きな変化である。
 オオカミ男が好きなオレであるが、この作品にも人狼が登場する。これが映画史上もっとも格好悪い人狼である。筋肉が無く手足がひょろりと長くてこれを見てとっさに人狼だと当てられる人は少ないに違いない。人間から人狼への変身シーンがあったのがせめてもの救いだ。
 今回の豪華ゲストはゲイリー・オールドマン。アズカバンの牢獄から脱獄した脱獄囚シリウス・ブラックでハリー・ポッターの命を狙っているとされるが実は......中盤以降からしか出てこず出番は少ないがさすがに存在感があり印象に残る演技を見せてくれる。イギリスにこだわったこのシリーズは出演者もイギリス出身者が多く、ゲイリー・オールドマンもイギリス出身。『シド・アンド・ナンシー』(1986)のシドだしな。
 個人的にはもっと出番が欲しかったし、ハリーの命を狙う狂人として登場して欲しかった。
 ヒッポグリフに乗っての飛行シーンや、雨の中でのクィディッチの試合などイマジネーション豊かなシーンが豊富で、個人的に好きなのはロンドンでの魔法バスのシーンである。
 ラストは時間を遡って事件を解決するという、ドラえもんのタイムマシン的解決法で、タイムパラドックスを起こさないかと心配なんだが科学じゃなくて魔法だから良いのだろう。
 前作はバジリスクとの戦いという見せ場はあったが、今回は過去に戻って過ちを影から修正していくパターンなのでカタルシスのあるシーンは少ない。ハリーが魔法を唱える所ぐらいか。
 原作は未読だがかなり省略されているようで、ある先生が人狼と分かるシーンでハーマイオニーが「あの先生は人狼よ。だから授業を休んでいたんだわ」というシーンがある。原作では満月の日に授業を休講にしていたというエピソードでもあったのであろう。
 だからかなりストーリーは駆け足で進む。これまでより20分は短い142分だからなおさらだ。原作未読者お断りなんだろうか。原作が世界的大ヒットをしているから、原作ファンを相手にしているだけでも人が入るのだろう。でも、1作目しか読んでないけど、あの原作さして面白いとは思えないんだが。
 てっきりハリーとハーマイオニーがくっつくものだとばかり思っていたら、ハリーの友人ロンとハーマイオニーの手がくっついたり、ショッキングなシーンで左右に立っていたハリーではなくロンにハーマイオニーが抱きついたりとフラグ立ちまくり。そう言う展開になっていくのか。なにしろ言ったように原作は読んでいないし、映画も1作目以外は今回初めて観るのでファンの間では当たり前かも知れないことが分からないのだ。
 正直、ダンブルドア校長のリチャード・ハリス目当てで見ていたので、この作品からリチャード・ハリスの死によってマイケル・ガンボンに役者が変わっているため、個人的にテンションが落ちているのは否めない。でも、大きく長い白いヒゲのせいもあるが割と似た役者さんだ。リチャード・ハリスファンでなければ気に留めないだろう。

B000063UPK.jpg『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002) HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS 161分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:クリス・コロンバス 製作:デヴィッド・ハイマン 製作総指揮:マイケル・バーナサン、デヴィッド・バロン、クリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴ・クローヴス 撮影:ロジャー・プラット プロダクションデザイン: スチュアート・クレイグ 編集:ピーター・ホーネス 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、リチャード・ハリス、マギー・スミス、アラン・リックマン、ロビー・コルトレーン、フィオナ・ショウ、ジョン・クリーズ、トム・フェルトン、マシュー・ルイス、ケネス・ブラナー、ジェイソン・アイザックス、ミリアム・マーゴリーズ、マーク・ウィリアムズ、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、シャーリー・ヘンダーソン、ジェマ・ジョーンズ、サリー・モーテモア、ワーウィック・デイヴィス、ショーン・ビガースタッフ、アルフレッド・バーク、デヴィッド・ブラッドリー、ロバート・ハーディ

 2年生になって魔法学園ホグワーツに戻ってきたハリー・ポッターが今度は秘密の部屋についての事件を解決する!
 と言ってみたところでタイトルと観れば分かる内容に"!"を付けただけだ。安易な"!"の使用には気をつけねばならない。
 VFX映像のイマジネーションは前作より更にパワーアップしていて、巨大グモ軍団からの逃亡劇や、ラストのバジリスクとハリー・ポッターの戦いなどはかなりの迫力だ。
 空飛ぶ車や動く柳の木などファンタジーな映像も面白い。空飛ぶ車は最新型のスポーツカーなどではなくオンボロのファミリーカーなところが笑える。
 今回は豪華なことにケネス・ブラナーがまぬけな笑わせ役ロックハートで登場する。格好を付けた学校の先生でベストセラーを何冊も出しているのだが、実際に魔法を使わせるとてんでダメ。それには理由があったのだ。エンドロール後のオチにもうまく使われている。やはり上手い役者だ。これで格好いい役をやれば様になるのだから大したモノだ。『フランケンシュタイン』(1994)のフランケンシュタインと同一人物とは思えない。
 子供たちの演技も上手くて、ハーマイオニー役のエマ・ワトソンは特に上手い。薬の調合間違いで猫娘になってしまったハーマイオニーが可愛かった。
 物語の展開は早く、この巻から原作を読んでいないオレには話しについて行くので精一杯なところがあったが、そもそも原作ファンのための映画という位置づけなのだろう。それが良いか悪いかはどうとも言えない。
 最後の敵がハリー・ポッターの額に稲妻形の傷を付けたヴォルデモート。現世の姿としてではなく過去の存在として立ちはだかるのが興味深い。
 屋敷奴隷のドビーはうっとおしいやつだが憎めない。ハリーをホグワーツに行かせようとしなかったのは主人に命令されたからなのか、主人の計画を知ってハリーの命を助けようとしたのかがちょっとわからなかった。命令だと計画と矛盾してしまうので、主人に内緒でハリーを助けようとしたのだと判断している。
 学園にはジョン・クリーズ演じる"ほとんど首なしニック"のような亡霊がうろついているが、女子トイレに現れる"嘆きのマートル"は西洋版"トイレの花子さん"か。
 それにしてもやはり161分は長すぎ。この手の娯楽映画は2時間以内にまとめて欲しい。ストーリー収まらないけど。

B000063TJA.jpg『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001) HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE 152分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:クリス・コロンバス 製作総指揮:マイケル・バーナサン 原作:J・K・ローリング 脚本:スティーヴン・クローヴス 撮影:ジョン・シール プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ 音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、リチャード・ハリス、マギー・スミス、アラン・リックマン、イアン・ハート、ロビー・コルトレーン、リチャード・グリフィス、フィオナ・ショウ、ジョン・クリーズ、トム・フェルトン、ハリー・メリング、ワーウィック・デイヴィス、ジョン・ハート、マシュー・ルイス、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、デヴィッド・ブラッドリー

 J・K・ローリングの世界的ベストセラーの映画化。もちろん映画も大ヒット。
 それにしてもこのクィディッチというゲームのルールがイマイチよく分からない。基本的にはサッカーなのだが、ゴールを決めて点を稼いでもシーカーが金の玉を捕まえたらそこで勝ちというのがよく分からない。地道に点を入れてきた連中が馬鹿みたいではないか。
 お子様向けの小説が原作なので映画もお子様向け。驚くような楽しい映像が次々に繰り広げられる。先ほどのクィディッチや大型チェス盤の上で繰り広げられる魔法チェスなど観る者の目を楽しませてくれる。
 監督が『ホーム・アローン』のクリス・コロンバスなので取りあえず退屈はさせない。
 "賢者の石"がキーワードとして登場するが、その扱い方などはあまり上手くストーリーに活かされているとは思えなかった。"賢者の石"を巡る人々の動きの描写が下手くそで「だからなに」「どうなってるの」と思うシーンが多かった。話を複雑にするのと混乱させるのを勘違いしているからだろう。
 1作目だけは原作を読んでいるが、かなり忠実な映像化だったので、その辺りは原作の罪だろう。
 かなり厚めの本を忠実に映像化しているのでかなり無理をしている部分もある。強引にカットしたり、逆にここはカットすべきではないかというシーンが残っていたりする。考えてみれば一年間を描いているのだ、この作品は。
 あくまでもお子様向け映画なので大人の目で観ると粗も目立つが子供は楽しめるだろう。
 それにしては子供向け映画に152分は長すぎではないか。
 個人的に気に入った映画ではないしさして面白いと思わないが、ダンブルドア校長のリチャード・ハリス目当てで観て満足。ジョン・クリーズもゲスト出演しているのがうれしい。他にはジョン・ハートなど意外にキャストが豪華。子役たちの演技も達者なものである。
 ゲロ味や耳クソ味がある百味ビーンズは実際に商品化されて売っているらしいが一度食べてみたい物である。一度で充分そうだが。

B0000V4O7O.jpg『ドッグ・ソルジャー』(2002) DOG SOLDIERS 104分 イギリス KISMET ENTERTAINMENT GROUP

監督:ニール・マーシャル 製作:デヴィッド・E・アレン、クリストファー・フィッグ、トム・リーヴ 製作総指揮:ヴィク・ベイトマン、ハーモン・カスロー、ロメイン・シュローダー 脚本:ニール・マーシャル 撮影:サム・マッカーディ 特殊メイク:ボブ・キーン 編集:ニール・マーシャル 音楽:マーク・トーマス VFXスーパーバイザー:ボブ・キーン
出演:ショーン・パートウィー、ケヴィン・マクキッド、エマ・クレズビー、リーアム・カニンガム、トーマス・ロックヤー、ダーレン・モーフィット、クリス・ロブソン、レスリー・シンプソン

 場所はスコットランド高地。満月の日。陸軍の特殊訓練が行われていた。特殊部隊を相手に戦闘訓練をやるという物だ。その時、空高く打ち上げられた救助信号弾を目撃。発射地点に行ってみると、そこには何かに襲われ荒らされた特殊部隊の陣地があるだけだった。一人だけ生き残っていたライアン大尉を救出後、無線で連絡を取ろうとしたが無線が動作しない。そのうちに夜になり、何者かが彼らを襲ってきた。
 必死で逃げる彼らは通りがかった自動車の女性ミーガンに助けられ近くの農家に避難する。数十キロ圏内に人家はそこしかないのだ。だが、農家に人気はなく食事の支度もそのままに全員で家を出て行ったかのよう。その農家を謎の化け物たちが取り囲む。化け物の正体は人狼で、通常の弾薬では牽制にしかならない。一人また一人とやられていく兵士たち。

『ディセント』(2005)のニール・マーシャル監督デビュー作。
 ストーリーはいたって単純。人狼対近代装備の兵士たちの戦いだ。ありがちそうだが面白い発想ではある。人狼にアサルトライフルをサブマシンガンを撃ち込む、ショットガンを撃ち込む。人狼は不死に近いが兵士も訓練を受けた戦闘のプロだ。しかし、次第に乏しくなっていく銃弾の数。ジリジリと追い詰められ夜明けを待つ兵士たち。頼りになる近代兵器がほとんど役に立たない皮肉さ。
 役者たちの銃の扱いも手慣れていて、撮影前にそうとう訓練を積んだのではないだろうか。
 だが、ミーガンがなぜ農家に兵士たちを連れてきたのか、謎も多い。実は農家の人間こそ人狼であって、ミーガンはそれを知っていてこの家を選んだのだ。なぜなら彼女の正体は......とちょっとしたどんでん返しがある。結局彼らは最初から罠にはめられていたのだ。
 考えてみれば人狼だって普段は普通の人に混ざって生活をしているのだから、数十キロ圏内に家が一軒しかないところに人狼が出れば、そりゃそこの家の住人が怪しい。
 人狼に傷を負わされた嫌な男ライアン大尉が人狼になってしまうと古典的要素もちゃんと押さえている。古典的要素といえば狼男の弱点である銀。この銀がオープニングからちゃんと活かされているのはさすがだ。
 実は政府は人狼のことを知っていて、軍の上層部から人狼を生きたまま捕獲せよとの命令が下っていたのだ。主人公のクーパーたちはそのためのおとりだったのである。その割りには特殊部隊があっさりやられすぎだったりするがそれだけ人狼を生け捕りにするのは難しいのだろう。殺してしまっていいのならば銀の銃弾で撃ちまくればいいのだが。
 クーパーが立てこもった農家で仲間に「鍋でお湯を沸かせ。それからヤカンでもだ。お茶が飲みたい」こんな時でもお茶かイギリス人は。
 人狼の特殊メイクは低予算映画にしてはがんばっている。人狼スーツがなかなか迫力があり怖い。ただ、低予算ゆえか人間から人狼への変身シーンを見せてくれないのが残念だ。テーブルの下にかがみ込み、立ち上がると人狼になっているのだ。これはこれで一つの工夫であって制作者のセンスと頭の良さを感じさせる物だけど。人狼にCGを使っていないので同一画面で自然に格闘させることが出来る。予算の都合で特殊メイクになったのだとは思うが、何でもCGを使えば良いというわけではない。
 カメラワークが面白くセンスがある。暗くて見にくいシーンが多いが、これは低予算を感じさせないためにわざとだろう。
 エンディングでサッカーファンだった兵士が知りたがっていたサッカーの結末が新聞で知らされるところにユーモアを感じた。

B000V97J0E.jpg『肉の蝋人形』(1953) HOUSE OF WAX 85分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:アンドレ・ド・トス 製作:ブライアン・フォイ 原作:チャールズ・ベルデン 脚本:クレイン・ウィルバー 撮影:バート・グレノン、ペヴァレル・マーレイ 音楽:デヴィッド・バトルフ
出演:ヴィンセント・プライス、フィリス・カーク、チャールズ・ブチンスキー(チャールズ・ブロンソン)、フランク・ラヴジョイ、キャロリン・ジョーンズ、ポール・ピサーニ、ロイ・ロバーツ、アンジェラ・クラーク、ポール・キャヴァナー、ダブス・グリア

『肉の蝋人形』(1933)のリメイク。ちなみに再リメイクが『蝋人形の館』(2005)となる。もっとも1933年版は観ていないのでストーリーが分からないが、1953年版と2005年版はほとんど別物。

 舞台は20世紀になったばかりのニューヨーク。そこで蝋人形の館を営んでいる蝋人形師ジャロッド教授(ヴィンセント・プライス)は美と教養を主題にした蝋人形館を目指していた。そこへ興行主がやって来てもっとショックと恐怖に溢れた扇情的な蝋人形館にしろと言う。それでなければこの蝋人形館を燃やしてしまって保険金をかすめ取ろうと言い出す。二人は争い、興行主に火を着けられた蝋人形館は焼け落ちる。溶けていく蝋人形の数々は一大スペクタクルである。
 死んだはずのジャロッド教授が再び現れたのはしばらくしてからのことである。歩けなくなって車椅子に乗り、蝋人形師にとって大切な指が上手く動かなくなっていたが、代わりに二人の助手を雇い(その一人、イゴールが若き日のまだチャールズ・ブチンスキー名義だったチャールズ・ブロンソン)、ショックと恐怖に溢れた蝋人形館をオープンしたのだ。
 スーという女性は蝋人形館を観に来て驚く、ジャンヌ・ダルクの蝋人形が絞殺されさらに死体が盗まれた友人のキャシーそっくりではないか。なんと事故で精神に異常をきたしたジャロッド教授は死体を蝋に漬けて蝋人形に仕立てていたのだ。その秘密を知ったスーに魔の手が迫る。教授はスーをマリー・アントワネットにしてしまおうというのだ。ぐらぐらと煮え立つ巨大な桶に入った蝋。それがスーに注がれるのが早いか、助けが来るのが早いか。危機一髪である。

 もともとは3D映画として製作された。オレはDVDで観たので当然2D。3Dだけあって色々な物が画面の前に飛び出してくる。なかにはかなり無理矢理のも。85分の映画のクセしてインターミッションがあるのだが、あれは"INTERMISSION"の文字を飛び出せたかったからに違いない。ちなみに一番効果的だったのはフレンチカンカンで踊る女性がスクリーンに突き出すヒップだったのではないか。
 ジャロッド教授は火事で顔面に大やけどを負ってしまい不気味な顔になってしまう。これではヴィンセント・プライスを使う意味がないではないかと思ったら、蝋で作ったマスクを被ることで他人にそれを悟らせないという戦法に出た。蝋のマスクでどうやって表情を出すのかは謎だ。そこは天才蝋細工師ならではなのだろう。
 考えてみればジャロッド教授も被害者である。興行主の企みによって蝋人形館を火事にさせられなければ、精神異常にもならず大人しい蝋人形を作り続けたことだろう。ちなみにもちろんその興行主もジャロッド教授の餌食になり、首吊りの状態で新しい蝋人形の館に飾られている。
 ヴィンセント・プライスが格調高い演技で異常者を演じている。他の人がやったら嘘くさい設定もヴィンセント・プライスがやると見事にはまる。髯がまた良く似合うんだ。ダンディズムの極みである。この人に対抗できる人はなかなかいないのではないだろうか。クリストファー・リーか。
 新しい蝋人形館の怖ろしさは女性が気絶するほどで、その女性は表に出て呼び込みの芸を観てまた気絶するというギャグになっている。殺伐とした作品の中で、このシーンだけほっとした。
 チャールズ・ブチンスキー(チャールズ・ブロンソン)がその後のブロンソンと同一人物とは思えないほど顔が怖い。いや、その後も怖い系の顔だが悪人面ではない。この作品では人を殺すことなど何とも思わないような凶悪な面構えをしている。人間の顔というのは立場や状況でずいぶんと変わるものだ。
 ラストはジャロッド教授が警官と争ったあげく、沸騰した蝋がたっぷり詰まった桶に転落して茹で上がって死亡。こうして恐怖の事件は幕を下ろしたのであった。

B001LDC8HS.jpg『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(2007) KNOCKED UP 129分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ジャド・アパトー 製作:ジャド・アパトー、ショーナ・ロバートソン、クレイトン・タウンゼント 製作総指揮:エヴァン・ゴールドバーグ、セス・ローゲン 脚本:ジャド・アパトー 撮影:エリック・エドワーズ プロダクションデザイン:ジェファーソン・セイジ 美術:ローレン・E・ポリッツィ 衣装デザイン:デブラ・マクガイア 編集:クレイグ・アルパート、ブレント・ホワイト キャスティング:アリソン・ジョーンズ 音楽:ジョー・ヘンリー、ロードン・ウェインライト
出演:セス・ローゲン、キャサリン・ハイグル、ポール・ラッド、レスリー・マン、ジェイソン・シーゲル、ジェイ・バルチェル、ジョナ・ヒル、マーティン・スター、モード・アパトー、アイリス・アパトー、ジョアンナ・カーンズ、ハロルド・ライミス、アラン・テュディック、クリステン・ウィグ、ビル・ヘイダー、ロードン・ウェインライト、アダム・スコット、J・P・マヌー、モー・コリンズ、ケン・チョン、シャーリン・イー、スティーヴ・カレル、アンディ・ディック、ジェームズ・フランコ、エヴァ・メンデス、ジェシカ・アルバ

 主人公のベン(セス・ローゲン)は無職のダメ人間。悪友4人と一緒に、どの女優がどの映画のどのシーンでヌードを晒しているかというサイトを立ち上げるのを計画していて、映画を観てはマリファナを吸っている毎日。
 そんなベンがクラブでアリソン(キャサリン・ハイグル)という女性と出会った。彼女はテレビのレポーターでその日は新しい仕事に抜擢されて有頂天だった。すっかり酔っぱらった二人はその勢いでベッドインしてしまう。ところがベンがコンドームを付け損ねたものだから、アリソンは妊娠してしまう。
 中絶せず産むことを決意したアリソン。ベンは自分が父親になることについて戸惑うが、彼女と協力して出産に挑むことになる。二人は仲がよい時もあればケンカをする時もある。
 彼らが作ろうとしていたサイトと同じ内容の"ミスタースキン"というサイト(実在するサイト)がすでにあることを知り愕然とする5人組。
 ベンはこれまでの自分を反省し、就職して男の5人暮らしから抜け出し、アリソンと赤ちゃんと住めるアパートに移る。
 そしてついにアリソンに陣痛が訪れた。ところが主治医がサンフランシスコに行って3日後まで戻らないのが判明。慌てて新しい医者を捜し分娩室に入る。さあ出産だ。

 これはコメディではなくドラマだろう。ギャグや下ネタはあるがこちらはメインではないし量も少ない。それに下ネタと言っても5人組が馬鹿話でする下らない下ネタジョークで厳密にはコメディとしての下ネタではないのかもしれない。
 最終的にはデキ婚をすることになる二人だが、アリソンはベンの情けなさに不安があったことだろう。そもそもが望まない妊娠だ。その葛藤を乗り越えて彼を選んだのだ。正直、ベンとは別れてシングルマザーの道を選ぶ手もあったと思うがそれでは映画にならない。
 アリソンのお姉さん夫婦との対比も面白い。お姉さん夫婦は子供が二人いて一見ものすごく幸せそうに見えるのだが、お姉さんはストレスを抱えていたのだ。夫が浮気をしていると思い込み、尾行して家に乗り込んだら"バーチャル野球のトレードゲーム"だったというのが面白い。普通ならここでホッとして夫のことを許しそうだが、「私に黙って秘密を作って」と怒るのが夫婦の危機を表している。
 情けない男が美人と意気投合してベッドを共にするなんて嘘くさいが実際にはあることなのかもしれない。
 アリソンが妊娠時のホルモンバランスの崩れでヒステリックにベンに怒鳴りつけるシーンは怖い。お父さんはあんな体験をしているのか。そして一度は破綻した二人の仲だが、ベンの熱意と誠意で再び結びつく辺りは感動である。
 そしてベンはアリソンにプロポーズをする。ちゃんとした服を着て指輪の箱を手に持ってひざまずく。そして箱を開けると中は......空。「今はお金が無くて指輪が買えないけど、いつかきっと君に相応しい指輪をプレゼントするよ」ベンにしては気の利いたプロポーズだ。
 アリソンは美人なのにつわりでゲロを吐いたりトイレに座って大量に買い込んだ妊娠検査薬におしっこをかけたり、特殊メイクで大きくなったお腹を晒したりと体当たり演技。ジャド・アパトーは女性だろうと容赦しない。
 子供が生まれる直前の浴槽に浸かったアリソンとベンの会話や、生まれた後の二人の様子が実に微笑ましい。困難を乗り越えて二人の心は一つになったのだ。
 だが、子供は産まれてからが大変。その辺りは幸せそうなベン一家や友人・家族との映像でフォローされる。ベンの仕事がどれだけ続くか分からない。またマリファナを吸い始めるかも知れない。不安材料は一杯だ。でもそれもこれも家族のパワーで乗り越えていくんだろう。ダメ人間から独り立ちした男に成長したベンだ。それを信じようではないか。 最初に言ったようにこれはコメディではない。一人の男が成長するドラマなのだ。その証拠に130分近くもある。そのため、途中でちょっとダルくなる部分もあるが全体的にはまとまっている。
 アリソンとお姉さんが行ったクラブの門番の黒人の話には泣けてしまった。俺は意地悪であんたらを入れないんじゃない。上からの命令なんだ。黒人を入れられる比率も決まっている。それにあんたはオバサンだ。そしてそっちのあんたは妊婦じゃないか。こんなところは胎教に悪い。そんなことも知らないのか。

 それにしてもこの邦題はひどすぎる。配給は東宝東和だったそうだが、それもなるほどである。

B001FR1O0W.jpg『40歳の童貞男』(2005) THE 40 YEAR OLD VIRGIN 132分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ジャド・アパトー 製作:ジャド・アパトー、ショーナ・ロバートソン、クレイトン・タウンゼント 製作総指揮:スティーヴ・カレル、ジョン・ポール 脚本:ジャド・アパトー、スティーヴ・カレル 撮影:ジャック・N・グリーン プロダクションデザイン:ジャクソン・デ・ゴヴィア 衣装デザイン:デブラ・マクガイア 編集:ブレント・ホワイト 音楽:ライル・ワークマン
出演:スティーヴ・カレル、キャサリン・キーナー、ポール・ラッド、ロマニー・マルコ、セス・ローゲン、エリザベス・バンクス、レスリー・マン、ジェーン・リンチ、シェリー・マリル、カット・デニングス、ナンシー・ウォールズ、ジェリー・ベッドノブ、ミンディ・カリング、エリカ・ヴィッティナ・フィリップス、モー・コリンズ、ストーミー、ミキ・ミア、マリカ・ドミンスク、ジョナ・ヒル

 このところ製作関係で取り上げていたジャド・アパトーの初監督作品。
 ビデオレンタル屋でパッケージを見かけた時は、40歳の童貞男を徹底して下ネタでこけにしまくる映画だと思って特に興味が湧かなかった。今回、こうして観てみるとなんだかんだで40歳まで童貞でいてしまった男が愛を掴むまでの純愛物語であった。

 大手家電販売店の在庫主任のアンディ(スティーヴ・カレル)はフィギアやゲームに夢中な世に言うオタクである。しかし、毎朝の筋トレは欠かさないしちゃんとお風呂にも入る。一般社会にちゃんと溶け込んだオタクなのだ。
 そんな彼は40歳にして未だに童貞。これまでにも何度かチャンスはあったのだが、ことごとくそれをふいにして40にして童貞。
 職場の三人の仲間がアンディが童貞だと知ってしまったばかりに、アンディの童貞脱出大作戦を立てる。

 考え用によっては大きなお世話なこの作戦。アンディがそれで満足しているならそれで良いじゃないか。アンディ曰く、最初はあせっていたけど、今となっては無理矢理やる気はないと悟っている。悟らせときゃ良いじゃない。それとも男は女とやって一人前か?
 酒場で良い雰囲気になった女性は飲酒運転の常習犯で、助手席に座ったアンディは死ぬような思いをする。あげくにゲロを顔面にぶちまけられる。
 あげくに強迫観念に駆られたアンディは露店売り書店のヌード雑誌が目に飛び込んでしょうがなくなり、それから逃れるべく走り出すと性的なコマーシャルの載ったラッピングバスが横を走る。もう、どうしろっての。
 近所の店の"e-bay代理販売業"を営む女性と親しくなるが、童貞というハンディからなかなか積極的に出られない。
 女性にもてるようになるため、胸一面に生えた胸毛をワックスで取るシーンは笑った。あまりの痛さに普段は丁寧なアンディが女子店員に悪態をつく。それだけ痛いんだろう。
 アンディは決して悪い人間ではない、むしろ善人なのだが、ポロシャツの裾をズボンの中に入れてしまったり、七三分けの髪型など微妙にずれているのだろう。
 タイトルから考えるようなどぎつい下ネタは意外に少なかった。
 40歳で童貞なのも別に病気でもなければ異常でもない。ましてやゲイなわけでもない。ただ巡り合わせが悪かっただけ。そんな彼が一人の女性と出会って、自分が童貞だと打ち明けられずに悩む映画。ラストは恋愛映画だ。
 アンディが一番大事にしているフィギアが『600万ドルの男』の主人公ではなくその上司のフィギアだというのが良い。最終的にはオタクを卒業したアンディは子供の頃から集めていた『アイアンマン』などのフィギアを全て売り払って50万ドルの大金を手にするのだが、オレとしては最後までオタクを貫いて欲しかった。
 アンディの特技は手品(といっても子供だまし)なのだが、そのレパートリーの中に「耳が大きくなっちゃった」ネタがある。あれはマギー審司オリジナルのネタじゃなかったのか。審司にはがっくりだよ! まぁ考えてみれば素人でもやるいくらでもありそうなネタだが。
 エンディングのプチミュージカル"アクエリアスの時代"がなかなかに良い。
 とかまあいいつつも、オレは童貞じゃないよと付け加えずにはいられない。やっぱ、男にとって童貞か非童貞かというのは大きな問題なのだ。

B002PJ5R6G.jpg『エージェント・ゾーハン』(2008) YOU DON'T MESS WITH THE ZOHAN 113分 アメリカ COLUMBIA PICTURES

監督:デニス・デューガン 製作:アダム・サンドラー、ジャック・ジャラプト 製作総指揮:バリー・ベルナルディ、ロバート・スミゲル 脚本:アダム・サンドラー、ロバート・スミゲル、ジャド・アパトー 撮影:マイケル・バレット プロダクションデザイン:ペリー・アンデリン・ブレイク 衣装デザイン:エレン・ラッター 編集:トム・コステイン 音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ 音楽監修:マイケル・ディルベック、ブルックス・アーサー
出演:アダム・サンドラー、ジョン・タートゥーロ、エマニュエル・シュリーキー、ニック・スウォードソン、レイニー・カザン、ロブ・シュナイダー、イードゥー・モセリ、デイヴ・マシューズ、マイケル・バッファー、シャーロット・レエ、サイード・バッドレヤ、ケヴィン・ニーロン、ロバート・スミゲル、シェリー・バーマン、クリス・ロック、マライア・キャリー、ジョン・マッケンロー、ジョージ・タケイ、ブルース・ヴィランク、デニス・デューガン

イスラエルの諜報機関モサドの超凄腕エージェント・ゾーハン(アダム・サンドラー)は暴力沙汰ばかりの日々に飽き飽きしていた。そんな彼の本当の夢はアメリカに渡って一流のヘア・スタイリストになること。ただそれを両親に話しても「お前はゲイだったのか」とまともに取り合ってもらえない。毎夜、鋏を見つめ寂しそうなゾーハン。
 そんなある日、パレスチナのテロリスト・ファントム(ジョン・タートゥーロ)を捕獲せよとの任務が下った。ゾーハンが本気を出せばファントムを捕まえる事など難しい事ではないはずだが、ゾーハンは爆弾で爆死させられてしまう。実はこれはゾーハンの策略で、自分は死んだと思わせて飛行機の貨物室の犬のケージに入ってアメリカに渡ったのだ。
 一流のヘアサロンに自分を雇ってくれと頼み込むがまったく相手にされない。そこで当座の生活費だけでも稼ごうと友人の電気販売店に行くが、友人から「一度ここに入ったら抜け出せない。ここで働いているみんなは夢を持ってアメリカに来たがその夢を忘れてしまった」とさとされ、通りの向かいのパレスチナ人がやっているヘアサロンを紹介される。
「ユダヤ人のこの俺がパレス人の店で働く?」ととまどうゾーハンだがオーストラリア人を名乗っているので、その店の店主ダリア(エマニュエル・シュリーキー)に頼み込み掃除の下働きとして無給で雇ってもらう。
 そんな彼にチャンスが来た。一人のヘア・スタイリストが辞めてしまったためそのお客がゾーハンに回ってきたのだ。セクシーに髪を洗いカットするゾーハン。そしてその後はバックヤードでセックスのおまけ付き。
 ゾーハンの腕前とサービスが噂を呼び、店は大入り満員になった。若い女性には相手にされないが、オバちゃんには大人気。それにしても、若い女性が出てこない映画だ。ダリアと本人役のマライア・キャリー
 その頃、町を壊して一大ショッピングモールを建てようと企む大金持ちがいた。彼らはイスラエル系とパレスチナ系を互いに争わせて、町を乗っ取ろうというのだ。
 ゾーハンが生きているのを知り、とどめを刺しに来たファントムも一緒になって、彼らは乗っ取り屋に戦いを挑む。

 下ネタに次ぐ下ネタなので下ネタ耐性が弱い人には向かない作品。ただアダム・サンドラーの下ネタはやっていることのわりにそんなに下品には感じられない。人柄か?
 それでも、本国では長きに渡って戦いを続けているイスラエル人とパレスチナ人が一歩国を出ると、互いに力を合わせていくところにはちょっと感動した。
 ケンカになりかかってもちょっとした口げんかで済んでしまい本格的な暴力抗争には発展しない。
 笑いでパレスチナ問題を解決してしまうのだ。ただ、双方をかなり馬鹿にしたネタも多いのでちょっとやばいんじゃないこれ? というシーンもあった。
 イスラエル人とパレスチナ人が「どの政治家の奥さんとヤリたい」と真剣にしょーもない話をしているのには笑った。
 それでも軽いノリなので笑ってみる事が出来る。
 生きた猫を蹴って遊ぶ猫サッカーなんかクレームが来ないんだろうか。
 アクションシーンもあり、ゾーハンがビルから段差を使って飛び降りてくるスタントなどなかなかすごかった。往年期のジャッキーばり。エージェント時代のゾーハンの活躍は超人的で、キックで壁をぶち抜き後ろに潜んでいた敵を倒す。デザート・イーグルの弾を避け、そして手で受け止め、さらには鼻の穴で受け止める。
 ジェットスキーで逃げるファントムをバタフライで追いかけてなんと追いつく。
 ファントムも本当はテロリストよりも靴屋をやりたいというのが微笑ましくて良い。みんな戦争なんていやなのだ。暴力はたくさんなのだ。でもって、じつはダリアはファントムの妹という衝撃の事実が明らかになる。
 ゾーハンは熟女派なのか知り合った青年のお母さんとさっそくパコパコ。お客さんともパコパコ。最後には後ろ姿の自分の母親にまで声をかける始末。困った奴だ。
 ゾーハンを倒すためにアメリカに向かうファントムがロッキーのパロディで特訓するのだが卵をグラスに割ると中からヒヨコが出てくる。ヒヨコ2匹を一気飲みするファントム。
 そして肉を叩くのだが、そのままカメラがパンしていくと次にぶら下がっているのは生きた牛。叩いて牛が鳴き思わずビビっているファントム。
 最後には砂漠の真ん中に立つ銅像の下でガッツポーズ。この銅像は誰の何だろうか。アラファト?
 確かに下らない映画だが、ノリと笑いで楽しめる作品だ。だと言うのにこれまた日本未公開でビデオストレート。ほんと、アメリカンコメディファンには寂しい世の中だ。まぁこの作品の場合、扱っている題材が日本人向きではないので仕方ないのかも知れない。

 特別出演で『宇宙大作戦 スタートレック』のミスター・カトーことジョージ・タケイが出演。なんとゲイのパーティーの出席者。じつはジョージ・タケイは筋金入りのゲイなのである。2005年に公に公表し、20年来のパートナーもいるそうだ。そのことを知っているとこのシーンはよけいと笑える。

 作中でやたらと中東の清涼飲料水としてフィジー・バブレフというのが登場する。オレンジ色をした飲み物だ。美味そう、飲んでみたいと思ったが実在はしないらしい。残念である。

B0017XB4YA.jpg『ペナルティ・パパ』(2005) KICKING & SCREAMING 95分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:ジェシー・ディラン 製作:ジミー・ミラー 製作総指揮:ジャド・アパトー、チャールズ・ローヴェン、ダニエル・ルピ 脚本:レオ・ベンヴェヌーティ、スティーヴ・ルドニック 撮影:ロイド・エイハーン二世 音楽:マーク・アイシャム
出演:ウィル・フェレル、ロバート・デュヴァル、ケイト・ウォルシュ、マイク・ディッカ、ディラン・マクラフリン、ジョシュ・ハッチャーソン、ミュゼッタ・ヴァンダー、ティミー・ディータース、レイチェル・ハリス、ジム・ターナー

 (フィル)ウィル・フェレルはスポーツが苦手な軟弱な少年だった。そんな彼も恋をして結婚し一人の息子に恵まれた。その男の子はフィルの父親バック(ロバート・デュヴァル)が監督をやっているグラディエーターズに入っていたが、ずーっとベンチの補欠要員。そしてついにリーグ最下位のタイガースにトレードに出されてしまう。
 ひょんなことからタイガースの監督になったフィルは天才的ストライカーのイタリア人二人組を得た事で勝てるようになる。勝つ事に目標を見出したフィルはすっかり厳しい鬼監督となってチームを鍛え罵声を浴びせるようになる。

 歌手ボブ・ディランの息子というジェシー・ディランが監督をやっている。監督の腕前としては並み。特に冴えた感じはしない。
 すっかり負け犬根性が染みついていたウィル・フェレルが、チームが勝った事で調子に乗り子供たちが楽しくサッカーをやる事を忘れて父親のように勝つ事だけに熱中していく。そのためには反則もかまわないという考えだ。チームの子供たちからも助監督からも見捨てられたウィル・フェレルだが最後の最後になって考えを改め、サッカーを楽しむ事の価値を思い出す。
 これだけ書くとウィル・フェレルが嫌な奴みたいだが、実際途中の試合は回りが引くほどの悪態振りだ。だが、それもこれもコンプレックスがあったため。
 そのコンプレックスを与えたのが父親のロバート・デュヴァル。サッカーの神様ペレが外したシュートをウィル・フェレルが取っていたのにそれを横取りする形で取って今に飾ってある。息子を軟弱だと馬鹿にして一人前の男だと認めていない。
 リーグの最終戦はタイガースとグラディエーターズの試合。途中で選手に自由にやらせたウィル・フェレルは見事に勝ち、ロバート・デュヴァルはウィル・フェレルを立派な男だと認める事になる。『がんばれ!ベアーズ』のサッカー版かと思ったが、主役は子供ではなくあくまでウィル・フェレルとロバート・デュヴァルなのだ。
 ダメ選手だったはずの子供たちが自由にやらせてもらった途端、有能なプレイヤーになるのは予定調和。敵のキーパーの気をそらすためにミミズを食うシーンは良かった。前半で伏線を張ってるんだよね。
 ウィル・フェレルの悪徳監督振りがちょっと見ていて気恥ずかしく感情移入できなかったのが残念。一人だけテンションが高すぎてイライラしてくる。
 子供が大勢出てくるので対象年齢は低いのだろう。ファミリームービーともいいきれない気がするが。いつものジャド・アパトー関連作に登場する下ネタは一切登場しないし、ギャグの過激さも低い。狼の真似をしてチーム全員で吠えていたら犬が大群で襲ってくるシーンは笑った。
 助監督の元アメフトコーチは実際にNFLのシカゴベアーズのヘッドコーチとして、優勝に導いたマイク・ディッカが本人役で出演しているそうだ。意外に演技が上手い。
 ロバート・デュヴァルにはウィル・フェレルの息子と同い年の息子がいて、グラディエーターズの花形プレーヤーなのだが、この子がほとんど活かされていなかったのはもったいない。強引な父親ロバート・デュヴァルに反抗するなど上手くストーリーに絡められそうなのだが。

B001KZVILY.jpg『Mr.ボディガード/学園生活は命がけ!』(2008) DRILLBIT TAYLOR 102分 アメリカ PARAMOUNT PICTURES

監督:スティーヴン・ブリル 製作:ジャド・アパトー、スーザン・アーノルド、ドナ・アーコフ・ロス 製作総指揮:リチャード・ヴェイン 原案:エドモンド・ダンテス、クリストフォー・ブラウン、セス・ローゲン 脚本:クリストフォー・ブラウン、セス・ローゲン 撮影:フレッド・マーフィ プロダクションデザイン:ジャクソン・デ・ゴヴィア 衣装デザイン:カレン・パッチ 編集:トーマス・J・ノードバーグ 音楽:クリストフ・ベック
出演:オーウェン・ウィルソン、レスリー・マン、ダニー・マクブライド、ジョシュ・ペック、デヴィッド・ドーフマン、トロイ・ジェンティル、ネイト・ハートリー、アレックス・フロスト、ヴァレリー・ティアン、スティーヴン・ルート、エレン・シュワルツ、メアリー・パット・グリーソン、チャック・リデル、イアン・ロバーツ、リサ・アン・ウォルター、デヴィッド・ケックナー、セドリック・ヤーブロー、ジャレブ・ドープレイズ、アダム・ボールドウィン

 高校に入学したばかりの二人組は初日からロッカーに閉じこめられそうになっているいじめられっ子を助けたばかりに、三人揃っていじめっ子の標的になってしまう。
 あまりのイジメのひどさに彼らはボディガードを雇う事にするのだが、これが元陸軍を自称するホームレスのドリルビッド(オーウェン・ウィルソン)だった。海辺のシャワーを全裸で浴びて世間の注目を浴びている彼に本当にボディガードが勤まるのだろうか。

 イジメは日本独特だなんてことを言われるが、この作品を観ただけでイジメは世界共通だと言う事が分かる。それもかなり殴ったり蹴ったりとひどいイジメだ。
 そのイジメに対抗するにはプロを雇うしかないと彼ら3人がボディガードを面接する。言ってる事は大きいがどれもこれも要求額だけ高くてその割に実にしょうもない。そこへカナダへ行く旅費の300数十ドルだけを要求すしたドリルビットを彼らは採用する事になる。
 ドリルビットは実際にアメリカ陸軍にいたようだが教えは実にいい加減で、それでいて口先八丁で少年たちをすっかり煙に巻いてしまう。
 終盤ではそのいい加減な教えが役に立って少年たちがいじめっ子に敢然と立ち向かう姿が描かれていて感動的である。
 主人公の一人ウェイドが惚れてしまう女の子はハリウッド映画には珍しくアジア系の女の子。アジアの遺産研究会に所属していて、サークルで関ヶ原の戦いについて学んでいたりするシーンがある。
 ドリルビットが臨時教員だと勘違いされて、すっかりそのまま教職員室に入り浸って授業まで担当しているのはさすがにどうかと思うが、アメリカの高校というのはそれぐらいいい加減なんだろうか。まぁコメディだからなぁ。
 ボディガードの面接のシーンではアダム・ボールドウィンが登場。『マイ・ボディガード』のオマージュなんだろう。
 4人で写った写真をしみじみとドリルビットが見るシーンは実によい。ちなみにドリルビットは偽名で本名は別にある。
 このオーウェン・ウィルソンの正体不明っぷりがいい。もしかしたら本当に陸軍の歴戦の勇士だったのかもしれないし、ただのホームレスなプー太郎かもしれない。そのあいまいさが作品に深みを与えてくれる。
 ドリルビットのホームレス仲間が登場するが、これはもっと上手く活かせなかったかなともちょっと思う。主人公の家に忍び込んで家財道具を根こそぎかっぱらうところなどはいいのだが。
 英語のみで日本語吹き替えが収録されていないのが残念な一本。

B002PJ5R4S.jpg『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007) SUPERBAD 113分 アメリカ COLUMBIA PICTURES

監督:グレッグ・モットーラ 製作:ジャド・アパトー、ショーナ・ロバートソン 製作総指揮:エヴァン・ゴールドバーグ、セス・ローゲン 脚本:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ 撮影:ラス・オルソーブルック プロダクションデザイン:クリス・スペルマン 衣装デザイン:デブラ・マクガイア 編集:ウィリアム・ケアー 音楽:ライル・ワークマン
出演:ジョナ・ヒル、マイケル・セラ、クリストファー・ミンツ=プラッセ、ビル・ヘイダー、セス・ローゲン、マーサ・マックアイサック、エマ・ストーン、アヴィヴァ、ケヴィン・コリガン、エリカ・ヴィッティナ・フィリップス、ジョー・ヌネズ、ステイシー・エドワーズ、デヴィッド・クラムホルツ、マルセラ・レンツ=ポープ

 セス(ジョナ・ヒル)とエバン(マイケル・セラ)はてんで冴えない二人組の友達。今は高校三年生であと2週間で卒業である。そんな彼らが美人が主宰する卒業パーティーに誘われた。といっても、実は仲間のフォーゲル(クリストファー・ミンツ=プラッセ)が手に入れた偽のIDでお酒を買ってくるのが彼女たちの目的であった。
 フォーゲルはその偽のIDでお酒を買うがたまたま酒屋強盗に出くわしてしまい、二人組の警官に連れ回される事になる。はてさて、彼らの童貞卒業はどうなってしまうのか?

 邦題には『童貞ウォーズ』とあるが、彼らが童貞をいかに卒業するかについては意外と触れられておらず、それよりも如何にして未成年の彼らが酒を大量に買い込むかが焦点となっている。
 日本も最近では少し未成年にお酒を売る事が厳しくなってきたが、アメリカはもっと厳しい。ちょっとでも怪しいと思われたらIDで年齢を確認されてしまうことになる。同じようなシーンでは『ティーン・ウルフ』でマイケル・J・フォックスがビールの樽を買うのに散々苦労していたり、『パラサイト』で不良がお酒を買うための偽IDを売っているシーンなどでその厳しさが理解できる。
 ちなみに近所(といっても1kmはあるが)のローソンでアルコール飲料を買うとレジが「年齢確認が必要な商品です」としゃべる。だが、オレは一度もその年齢確認とやらをされたことがない。まぁ、どうみても40ぐらいのおっさんに年齢確認もないとは思うのだが、一度ぐらい年齢確認とやらをされてみたい。レジ近くで見ていると、どうみても10代の青少年にも平気で売ってしまう。こりゃまたどういう訳だ、世の中まちがっとるよー、まことに遺憾に存じます。ってなわけだが、案外いい加減な運用のされ方をされているようである。その店だけの問題かも知れないが、大体どこも似たようなモンなんだろう。年齢確認をしてごねられたらそれだけで面倒だ。もっと常識的になれば良いと思うんだが、これまでの運用の仕方を見るとなかなかそうはいかないのだろう。色々問題のあるタスポもそうだけど、それが当たり前になればうまくいくのだろうか。
 フォーゲルは二人組の警官にいわば拉致されてしまうのだが、この警官たちがバカで面白い。フォーゲルをすっかり仲間扱いしてしまうシーンには笑える。
 日本では劇場未公開だったのがもったいない青春冴えないコメディである。そもそも青春って言うのは大概は冴えないものだ。その冴えない3人組の冴えなさ具合が実に身につまされて可笑しくてしょうがない。
 セリフによる下ネタが多いので、人によっては嫌悪感を抱く場合もあるだろう。これに関してはしかたないとしか言いようがない。セスが子供の頃ひたすら書いていたペニスの絵には大笑いである。しかし、なんでそんなものに熱中していたんだか。バカだ。
 ラストは上手く収まるところに収まってキレイに終わる。もっとハチャメチャな終わり方でも良かった気はするが、映画としてはまとまっている。

B002P5XPO6.jpg『紀元1年が、こんなんだったら!?』(2009) YEAR ONE 97分 アメリカ COLUMBIA PICTURES

監督:ハロルド・ライミス 製作:ハロルド・ライミス、ジャド・アパトー、クレイトン・タウンゼント 製作総指揮:ロドニー・ロスマン 原案:ハロルド・ライミス 脚本:ハロルド・ライミス、ジーン・スタプニツキー、リー・アイゼンバーグ 撮影:アラー・キヴィロ プロダクションデザイン:ジェファーソン・セイジ 衣装デザイン:デブラ・マクガイア 編集:クレイグ・P・ハーリング、スティーヴ・ウェルチ 音楽:セオドア・シャピロ
出演:ジャック・ブラック、マイケル・セラ、オリヴァー・プラット、デヴィッド・クロス、ハンク・アザリア、クリストファー・ミンツ=プラッセ、ヴィニー・ジョーンズ、ジュノー・テンプル、オリヴィア・ワイルド、ジューン・ダイアン・ラファエル、ザンダー・バークレイ、ジア・カリデス、デヴィッド・パスクエジ、ハロルド・ライミス、カイル・ガス、ビル・ヘイダー

 ジャック・ブラック最新作なのに日本未公開でビデオストレートってどういうことなのよ。やっぱり日本はアメリカンコメディに冷たいわと思ったのだが、観て納得。これは劇場公開は厳しいわ。
 つまらないのではない。面白い死笑える。ただ、題材が旧約聖書なんだよね。ネタ的に日本での劇場公開は難しいだろう。それも寂しい話なんだけどね。
 とりあえず、この作品を観る前には旧約聖書を読んでおけ! というのはさすがにきついのでジョン・ヒューストン監督の『天地創造』(1966)を観ておくといいかもしれない。この作品に登場する人物や出来事についてかなり扱いは異なっているのだが触れられているので参考になると思う。一応旧約・新約聖書は目を通したオレだが旧約聖書の勉強については『天地創造』はかなり良い教科書だと思っている。

 この作品はかなり年代を飛んで描かれている。主人公のジャック・ブラックとその相棒のマイケル・セラは最初は紀元前1万年ぐらいの原始人として登場する。そして狩りではさっぱりで口ばっかりのジャック・ブラックが知恵の実を食べて村から追放されるところから物語は始まる。
 後ろを着いてきたマイケル・セラと共に出会ったのはカインとアベルの兄弟。ところが突然兄弟ゲンカをはじめてカインはアベルを殺してしまう。石で殴っても殴っても死なないアベルと意地になってさらに殴りつけるカイン。旧約聖書通りの展開だが無茶苦茶である。
 その後、息子イサクを神の生け贄に捧げようとしたアブラハムと出会い、追放された村がその後他民族に襲われ、住人は奴隷としてソドムに売られたと知った二人は、勇気を振り絞って仲間を助けるべくソドムに潜入するのだが、そこではハチャメチャな大混乱が待っていた。

 DVDのパッケージはてっきりジャック・ブラックと女性のペアだと思っていたのだが、実際は男のマイケル・セラとの二人写真だった。マイケル・セラは華奢でなおかつ女顔。オレが間違えたのも無理がないよな。ないよなきっと。
 ジャック・ブラックが意味なく他人のウンコを食ったり、逆さ吊りにされたマイケル・セラが小便を漏らしてしまい顔面が小便まみれになってしまうなどの下ネタも多少あるが気になるほどではないだろう。あっ、アブラハムがみんなを割礼しようとする割礼ネタがあったか。しかし割礼は何のためにするのだろうか。乾燥した土地のため衛生を保つためにやるのだとか色んな説があるが、結局は苦痛を神に捧げるという意味なのだろう。まだ幼児の頃にやられるというから日本人からするとなんじゃそりゃである。まぁ、包茎率が下がるってのはあるんだろうが、それにしても痛そう過ぎる。
 ソドムといえばソドミィ(男色)の語源になった町。というわけで、美少年のマイケル・セラは胸毛ボウボウで小太りの司祭長につけ狙われる事になる。ここで下ネタが来るかなと思ったら案外あっさりとスルーされた。下ネタ歓迎の映画でもゲイネタはちょっと扱いが違うのだろうか。個人的には別にゲイネタなんて観たくもないのでかまわないのだが。でも、マイケル・エラが胸毛ボウボウの司祭長の胸に香油を塗らされるシーンでは笑ってしまった。ほんと熊みたいな胸毛なんだよ。
 ジャック・ブラックとしては暴れたり無いのが少々不満だった。もっとバカでもっと弾けて良いはずなのだが意外とこじんまりと収まっている。ラストの「俺は神から選ばれた者なんかじゃない」と大衆を前に演説する辺りはそれなりに感動的なのだが、オレとしてはジャック・ブラックに感動を求めてはいない。その後がやっぱりバカなんでいいんだけどね。その後エジプトに行くジャック・ブラックはそこでどんな騒動をやってくれるんだろうか。やっぱりモーゼの出エジプト記に絡んでくるんだろうか。ちょっと続編を観てみたい。それにしても何年生きてるんだジャック・ブラック。

 監督はバカゴルフコメディ『ボールズ・ボールズ』(1980)を監督・脚本で撮ったハロルド・ライミス。昔はテレビでよく放映されていたんだが、最近ではさっぱり観る機会がない。DVDにもなってないし、これからもならないんだろうなぁ。
 『アニマル・ハウス』(1978)の脚本に参加した事でも有名である。俳優としても活躍していて、『ゴーストバスターズ』(1984)でゴーストバスターズの最初の三人組のビル・マーレイでもダン・エイクロイドでもない眼鏡をかけた一番科学者然としていたのがハロルド・ライミスだ。この人は才人で、コメディの脚本も書くし監督もやる、さらに出演もすると大活躍である。この作品でも監督・脚本・出演の三拍子だ。ただ、ちょっと過激さに欠けるかな。

 邦題の『紀元1年が、こんなんだったら!?』だが、実際にはこの映画は紀元1よりずっと前で終わっている。原題の『YEAR ONE』は最初の年とでもいった意味なのだろうか。邦題には少々不満が残るがビデオダイレクトだからこの程度なのかも知れない。
 ソドムの町で石投げの刑に処されたジャック・ブラックとマイケル・セラに思わず「罪なき者がまず石を投げよ」とあの男が登場するのかと思ったがそれはなかった。まぁ、時代が違うしな。
 この作品、シリーズ化して新約聖書時代までぜひやって欲しい。イエス・キリストとジャック・ブラックの掛け合いなど観たくてしょうがない。

B002PMB4GA.jpg『ディセント』(2005) THE DESCENT 99分 イギリス CELADOR FILMS

監督:ニール・マーシャル 製作:クリスチャン・コルソン 製作総指揮:ポール・スミス 脚本:ニール・マーシャル 撮影:サム・マッカーディ プロダクションデザイン:サイモン・ボウルズ 衣装デザイン:ナンシー・トンプソン 編集:ジョン・ハリス 音楽:デヴィッド・ジュリアン
出演:シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ、アレックス・リード、サスキア・マルダー、マイアンナ・バリング、ノラ=ジェーン・ヌーン、オリヴァー・ミルバーン、モリー・ケイル、レスリー・シンプソン、クレイグ・コンウェイ

 1年前の交通事故で5歳になろうとする娘を亡くしたサラを励ますために、5人の友達がケイビング(洞窟探検)を企画した。しかし、6人は落盤事故に遭い来た道をふさがれてしまう。ガイド役の女性ジュノが勝手に安全な洞窟ではなく前人未踏の洞窟に行き先を変更していたため、捜索隊が助けに来る事もないと知った彼女らは、絶望に立ち向かいながら断崖を越えたり水に浸かったりしながらも狭い洞窟を進んだ。しかし、その洞窟には謎の怪物が住んでいた。太古の昔に人類が洞窟に入り込んでそこに適応したと思われるその怪物は目が見えずコウモリのように耳で音を聴いて襲ってくる。一人一人、奴らの餌食になっていく彼女たち。果たして生き残る事が出来るのか。

 どことなく『地獄の変異』を思わせるストーリーだが、怪物との戦いよりも中盤までの狭い洞窟の中に閉じこめられて、果たして出口はあるのかという不安と戦うシーンが怖い。
 自分が閉所恐怖症だとは思わないのだが、この映画を観ると洞窟には決して入らない、いや近づきたくさえないと思わせてくれる。ケイビングはスポーツの一種だが、あんな物を好んでやる人間の気持ちが分からない。懐中電灯などの明かりが使えなくなったら真の暗闇。手探りで進むしかない。行き止まりになったり、どこか狭い通路でつかえて身動きが取れなくなったらどうするのだろう。匍匐前進で進まないといけない通路とかあるんだよ。ひょっと足を踏み外すと縦穴に落ちて足を複雑骨折したりするし。仲間の中に医者の卵がいるという設定はその辺りで上手く使われていた。
 ゲームのRPGでダンジョンを攻略するのは好きだが、実際の洞窟は断じてごめんである。ケイビングだけではなく世の中には危険なスポーツが色々あるが、ほんと変わった人はいるものである。スカイダイビングなんかパラシュートが開かなかったらどうするんだ。
 女6人ということで途中で別の洞窟に案内されていたと知った時などはドロドロとした仲間割れが始まるかと思ったが、意外とあっさりしていた。人間関係のゴタゴタはもっと描いても良かったのではないだろうか。終盤に一種の仲間割れがあるが、激しいのはそこぐらい。ただ、ジュノが仲間を呼ぶ声に近くにいた怪物が引き寄せられていって助かったサラともう一人がジュノの身を案じずに「自業自得よ」というところは怖かった。女ってやっぱ怖い。それにしてもオレが日本人だから何だろうが、今一つ彼女たちの区別が付かなくて困った。しかも洞窟の中で暗くて顔見えにくいし。
 下手に怪物を出さずに前人未踏の洞窟での女だけの遭難事故として描いても面白かったかも知れない。地底の食人怪物というのもありふれていると言えばありふれている。帰り道が無くなってパニックになる女性とか、怪物に襲われて他人を犠牲にしてまで一人だけ逃げようとする女性とか(似たようなのはいたが)があってもよかったかもしれない。
 洞窟という舞台設定なので照明はほとんど焚かれず実際に彼女たちが持っている明かりだけで撮っているかのような絵作りになっている。中盤まではそれで良いのだが、怪物たちが出てきてからはカメラが激しく動くようになるのでちょっと見にくい。だが、それが緊迫感を表現しているとも言える。
 ラストはちょっと凝っていて、一度は洞窟を脱出したサラだが......となっているが、あれはどちらが夢だったのだろうか。やはり脱出したのが夢? そして娘と向かい合い、誕生日のケーキのロウソクに火を灯す。母と娘はまた一つになったのだ。
 洞窟の中は一部を除いてセットだろう。それを暗くて良く映っていないのを良い事に散々使い廻していると見た。見た目より低予算な作品だろう。監督のニール・マーシャルはアメリカに招かれて面白いと噂の『ドゥームズデイ』(2008)を撮る事となる。まだ未観だがこの12月の末にはDVDが出るので楽しみである。でもこの間公開したばかりなんだよね。

B001B0Y1V2.jpg『スター・トレック/宇宙大作戦』(1966-1967) STAR TREK 1450分 アメリカ CBS TELEVISION

製作:ジーン・L・クーン、フレッド・フリーバーガー、ジョン・メレディス・ルーカス、ジーン・ロッデンベリー 製作総指揮:ジーン・ロッデンベリー 音楽:アレクサンダー・カレッジ
 出演:ウィリアム・シャトナー、レナード・ニモイ、デフォレスト・ケリー、ジェームズ・ドゥーアン、ジョージ・タケイ、ニシェル・ニコルス、ウォルター・コーニッグ、メイジェル・バレット

 先頃リメイク版が劇場用映画として公開された『スター・トレック』の1960年代にTVシリーズとして放映されたファースト・シーズン全29話である。1話50分構成で宇宙探査船NCC-1701・USSエンタープライズ号の脅威に満ちた冒険を描いている。
「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である」のナレーションで始まるこの物語はTVシリーズとしては見事なSFに仕上がっている。1960年代にはまだSFが市民権をどれだけ得ていたのか分からないが、かなりセンス・オブ・ワンダーに富んだ物語が展開される。
 TVシリーズとしては予算がかかっている方だろうがしょせんはTV。映画にはかなわない。その分、映像的にも工夫して宇宙船という舞台を利用してセットは使い回せるだけ使い回し、会話を主体とした展開となっている。
 オレが一番好きなエピソードは『おかしなおかしな遊園惑星』で、ある惑星に降り立ったドクター・マッコイがスーツを着た白いウサギとそれを追いかける金髪の女の子を見る。どう考えても『ふしぎの国のアリス』だ。しかしその惑星は無人のはずだったのだ。結論としては、宇宙人が作り出した遊園地だったというオチがきいている。ユーモアに溢れていてシリーズ中でも異色作である。
『400才の少女』も面白い。ある惑星で不老不死の技術を研究していており、それは不完全な形で実現してしまった。思春期までの子供だけが不死となり思春期を迎えると発病して死んでしまうのだ。その惑星に降り立ったカーク船長は子供たちのいたずらで通信機を奪われエンタープライズ号と連絡が取れない。このままでは発病して死んでしまう。無邪気な子供たちの怖ろしさを存分に描いたエピソードだった。
『危険な過去への旅』では薬を誤って過剰注射して精神に異常をきたしたドクター・マッコイが1930年のアメリカに飛んで歴史を変えてしまう。その歴史を正すべくカーク船長とミスター・スポックも過去に飛ぶが、歴史を修正する方法はカークが現地で愛した女性を見殺しにする事だったという悲恋。それにしてもカークは惚れっぽい。
 他にも面白かったエピソードをあげていくと程度の差はあれ全29エピソードになってしまう。

 このDVDではエンタープライズ号や惑星など1960年代のSFXで撮られたシーンをCGIで再現したシーンが別収録で入っている。CGI版で観るのも良し、オリジナル版で観るのも良しの二つの楽しみ方が出来るようになっている。
 中学時代に『宇宙大作戦』が深夜テレビで放映されていて、親に隠れてこっそり居間のテレビで観ていたオレはもちろんオリジナル版を選んだ。それに、CGIの出来があまり良くなくてゲーム機のCGIレベルでちょっとシラケてしまうというのも大きい。
 それにしてもカーク船長は船長のクセしてブリッジの船長席に座っているよりもなにかというと先頭に立って現場の惑星に飛び出して行く。あんたに何かがあったら船が大変だってのに困った船長さんだ。しかもかなり暴力的でなにかというと人を殴る。艦長にしては冷静さを欠いているのではないだろうか。
 その冷静さを埋め合わせてくれるのが副長のスポック。耳の尖ったバルカン人と地球人のハーフで、感情を持たず常に論理的に行動する。中学の頃にこのカーク船長とスポックのやおい本を読んだ事がある。今で言うBL(おっさんだけど)だ。この手の人たちは昔からいたんだなぁ。
 この二人に船医のドクター・マッコイを合わせたお笑い三人組(失礼)が物語を牽引する主要メンバーとなっている。
 ジョージ・タケイ演ずるミスター・カトーは日本だけの命名でオリジナルではヒカル・スールー。ヒカルという名前から分かる通り日本人の血も引いているが、アジア各国の混血児という設定らしい。
 通信士のウーラは黒人女性で、この頃テレビドラマのレギュラーに黒人が入っているのは珍しかった。これを観た子供時代のウーピー・ゴールドバーグが芸能人を目指したというのは有名なエピソードである。
 このようにエンタープライズ号のクルーたちは黒人、アジア系、ロシア系のチェコフなど各人種が集まってプロとして任務に当たっている。これは人種など意味が無くなった未来をイメージしているからである。
 エンジニアのスコットも何故か日本語吹き替えではチャーリーになっている。
 映画の冒頭はカーク船長の航海日誌で始まるのがお約束だが、この日付が宇宙暦なんたらかんたらとやたらと長い。使いにくくはないのだろうか。
 オレが観たのはDVDではなくBlu-ray版だ。『宇宙大作戦』は35ミリフィルムで撮影されているので、Blu-rayにしても遜色のない驚きの高画質である。フィルムの解像度は高いのだ。オリジナルネガがしっかり保存されていたのだろう。
 と、これで安心してはいけない。まだ本棚にはセカンド・シーズンが控えているし、まだDVDしか発売になっていないもののサード・シーズンまであるのだ。
 ファースト・シーズンは1日1話でほぼ1ヶ月かかったが、まだまだ先は長いのである。

B001RN8WA4.jpg『俺たちニュースキャスター』(2004) ANCHORMAN: THE LEGEND OF RON BURGUNDY 94分 アメリカ DREAMWORKS

監督:アダム・マッケイ 製作:ジャド・アパトー、製作総指揮:デヴィッド・O・ラッセル、ショーナ・ロバートソン 脚本:ウィル・フェレル、アダム・マッケイ 撮影:トーマス・アッカーマン プロダクションデザイン:クレイトン・R・ハートリー 衣装デザイン:デブラ・マクガイア 編集:ブレント・ホワイト 音楽:アレックス・ワーマン
出演:ウィル・フェレル、クリスティナ・アップルゲイト、ポール・ラッド、スティーヴ・カレル、デヴィッド・ケックナー、フレッド・ウィラード、クリス・パーネル、キャスリン・ハーン、セス・ローゲン、フレッド・アーミセン、ダニー・トレホ、ルーク・ウィルソン、ベン・スティラー、ジャック・ブラック、ヴィンス・ヴォーン、ティム・ロビンス、ミッシー・パイル、ジェリー・スティラー

 時代は1970年代、まだケーブルテレビが登場していなかった頃。サンディエゴのローカル局チャンネル4で花形ニュースキャスターを務めているアンカーマンのロン・バーガンディ(ウィル・フェレル)は実は「郷においては郷に従え」の意味も知らない格好ばかりのバカ野郎。
 そんな報道局に一人の女性リポーターのヴェロニカ・コーニングストーン(クリスティナ・アップルゲイト)が入ってくる。この時代、テレビ局は完全に男社会で女性のアンカーウーマンなど存在しなかったが、彼女はそれを目指していた。しかもチャンネル4のようなローカル局ではなく全国ネットのネットワークのアンカーウーマンだ。
 最初はギグシャクした二人だがいつしか恋人関係に。ロンがアンカーマンを務めヴェロニカがリポーターをやる。それで上手くいっていた。
 しかし転機は訪れる。アクシデントでロンがニュースの時間に間に合わず、ヴェロニカがアンカーウーマンを見事にこなしたのだ。このことで二人の仲は決裂。そしてニュースはロンとヴェロニカの二人体制になったのだが、ある事件をきっかけにロンはテレビ局を首になり転落人生に。

 テレビのニュース業界をネタにギャグまたギャグの連発。下ネタや動物虐待ネタもあるが気にしない気にしない。
 ウィル・フェレルの扮装が実に70年代風で、妙に生地がピシッとしたスーツと口ひげ。そして微妙な髪型で本人はきめきめなつもりなのが笑える。
 製作がDREAMWORKSというだけあってか、ロンとヴェロニカのベッドインのシーンが夢の国を飛び回るアニメーションで表現されていて独特である。それにしても作品自体はDREAMWORKSらしくないネタである。
 路地裏で突然ベン・スティラーやカメオ出演のティム・ロビンスなどライバル局数局とナイフや手榴弾まで使って決闘を始める。突然、網を引いた馬まで登場したのにはさすがに驚いた。何をやっとんじゃこいつら。とにかく細かいギャグの散りばめられている事。ルーク・ウィルソンは背後から刃物で左手を切断されて、さすがにこのシーンはギャグで事実じゃないんだろうと思っていたら、ラストのパンダの赤ちゃん出産シーンの取材現場でちゃんと左手がないままだった。あの決闘は事実だったのか。バカだなー。
 カメオ出演といえばジャック・ブラックも登場。ロンの転落のきっかけとなるバイカー役だ。ロンに食べ物を投げつけられてバイクで転倒し、怒ったジャック・ブラックはロンのペットの犬を橋の上から遙か下の川へと蹴り落とす。無茶をするもんである。こんな役にジャック・ブラックは実にはまっている。
 お気に入りの役者ダニー・トレホがすっかり落ちぶれたロンが酒をあおっている安酒場のバーテンで登場しているのも嬉しい。「これから女性はもっと社会に進出してくるさ」と重要な事をいうのだが、ロンから「スペイン語は分からん」と言われてムッとしているダニー・トレホがかわいい。
 どうやら70年代の女性キャスターについてのドキュメンタリー番組をウィル・フェレルが見て、それからアイディアを得てこの脚本を書き上げたらしい。ドキュメンタリー番組はさぞ真面目な物だったろうにどこからでもネタを見つけ出すのがコメディアンだ。
 アンカーマンはリポーターや記者などが取材してきた原稿を読むだけだから知識よりも見た目優先でバカでも出来るという立場でこの作品は作られている。実際のアンカーマンはどんな存在なのだろうか。
 最終的には男女のペアでアンカーマン・アンカーウーマンをやるというスタイルになる。『ロボコップ』シリーズで効果的に使われるニュースのシーンでも男女のペアだったが、アメリカのニュース番組はあのスタイルなのだろう。
 ラストはヒグマの檻に落ちたヴェロニカをロンとそのニュースチームが助けに飛び込む。ニュースを読む事よりも愛した女性を救う事に命を賭けたのだ。なかなか感動的である。そして真に感動的なのはロンの呼びかけで川から這い上がってきたペットの犬が(生きてたんだ!)ヒグマの母親を動物語で説得してしまうことである。
 エンドロールにはキャスト・スタッフ名の横でNGシーンが展開される。これはよくあるパターンだが、途中で意味なくハル・ニーダムの『トランザム7000VSパトカー軍団』(1ではないと思う)のNGシーンが挿入されていて個人的に大爆笑。エンドロールのNGシーンを開拓したハル・ニーダムへの敬意も感じるシーンであった。
 これだけ面白い作品なのに日本では未公開。実にもったいない。アメリカンなコメディは結局日本でウケないのかなかなかこれだと思う物があっても公開やDVD化してくれない場合が多い。どうも日本人は感動やドラマを上に見て、笑いを下に見る傾向があるのではないか。そのくせテレビでは手抜きでしょうもないバラエティ番組だらけ。本気で人を笑わせようと作られた作品から受けるエネルギーというのは大きな物である。感動よりも笑いや興奮だと思うんだがなぁ。

B002PJ5R48.jpg『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』(2008) STEP BROTHERS 98分 アメリカ COLUMBIA PICTURES

監督:アダム・マッケイ 製作:ジミー・ミラー、ジャド・アパトー 製作総指揮:ウィル・フェレル、アダム・マッケイ、デヴィッド・ハウスホルター 原案:ウィル・フェレル、アダム・マッケイ、ジョン・C・ライリー 脚本:ウィル・フェレル、アダム・マッケイ 撮影:オリヴァー・ウッド プロダクションデザイン:クレイトン・ハートリー 衣装デザイン:スーザン・マシスン 編集:ブレント・ホワイト 音楽:ジョン・ブライオン 音楽監修:ハル・ウィルナー
出演:ウィル・フェレル、ジョン・C・ライリー、メアリー・スティーンバージェン、リチャード・ジェンキンス、アダム・スコット、キャスリン・ハーン、セス・ローゲン、アンドレア・サヴェージ、フィル・ラマール、エリカ・ヴィッティナ・フィリップス、イアン・ロバーツ、ホレイショ・サンズ、ケン・チョン

 ブレナン(ウィル・フェレル)は39歳だというのに定職にも就かず母親と二人暮らし。デールは40歳だというのにこちらも定職に就かずに医師の父親と二人暮らし。ところがこの母親と父親が出会い頭に恋に落ち結婚してしまったものだからもう大変。ブレナンとデールは同じ部屋で暮らす事になったのだが、ウマが合わずにケンカばかり。ところがブレナンの弟デレクが新居を訪れたのだがこいつが実に嫌な奴。このことで二人は意気投合してすっかりダメ人間同士仲良しになってしまう。しかし、父親から1ヶ月以内に仕事を探せと命令されて......

 ダメ人間が実にダメ人間なので笑える。言動は子供並み。下らない事でケンカして、デールのドラムセットにブレナンが玉袋を出してこすりつける。(さすがに玉袋は実物ではなくて作り物のSFXだが)
 着ているTシャツもスター・ウォーズのヨーダの絵柄とか清涼飲料のマウンテンデューだとかで馬鹿馬鹿しさに輪をかける。意味もなくチューバッカのお面をかぶってるし。
 小学生たちのイジメにも負けるこの二人が終盤に向かって次第に大人になっていくところが見物である。最初は単なる社会人として登場するが、パーティーのバンドマンとして活躍するところが見所である。
 ブレナンは元々歌が上手いという設定なのだが、弟のデレクの策略によって幼い頃に人前で歌う事に抵抗を感じてしまうようになったのだ。そのブレナンがここ一番という時に大勢の観客の前で歌う歌が実に感動的である。映画の中の観客も妙に感動している。実際にウィル・フェレルが歌っているのだろうから実際にどれだけ上手いのかはオレにはよく分からないが映画としては感動した。
 それによって、離婚しかけていた両親が再びよりを戻すという設定もいい。
 小学生のイジメに本気で対抗するラストもバカバカしくて良い。ってゆーかヘリコプターで乗り付けるなよ。ガキ過ぎる。
 デレクの奥さんが本音ではデレクに飽き飽きしていて、そのデレクを殴りつけたデールに惚れてしまうという設定も面白い。
 子供じみた中年男が親元で定職にも就かずにブラブラ暮らしているというのが日本だけではなくアメリカでもあり得る状況だというのが興味深い。アメリカだと独立心が旺盛で早々と親元を立つというのがイメージなのだが色々あるのであろう。
 子供に犬の糞を舐めさせられたり、その他にも下ネタ満載なので見る人を選ぶだろうが、個人的にはこいつは押しである。ただ、主演二人の言動があまりにもガキ過ぎるのが気になる。
 悪役であるはずのデレクが最後には中途半端な扱いになってしまうのに不満が残る。あいつにはもっとどん底を舐めて欲しいものだ。このデレク役を演じる役者が本当に嫌な奴とやってくれるので嬉しい。
 ウィル・フェレルとしては期待していた物をそのままもらった感じで違和感は感じないがそれ以上の驚きは感じない。ジョン・C・ライリーにしても同じだ。
 ラストは結局ビジネスで儲けたもの勝ちかというアメリカの価値観で終わる。それにしてもいまさらカラオケボックスっていわれてもなぁ。

B002PJ5R4I.jpg『スモーキング・ハイ』(2008) PINEAPPLE EXPRESS 112分 アメリカ COLUMBIA PICTURES

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 製作:ジャド・アパトー、ショーナ・ロバートソン 製作総指揮:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ 原案:ジャド・アパトー、セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ 脚本:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ 撮影:ティム・オアー プロダクションデザイン:クリス・スペルマン 衣装デザイン:ジョン・ダン 編集:クレイグ・アルパート 音楽:グレーム・レヴェル
出演:セス・ローゲン、ジェームズ・フランコ、ダニー・R・マクブライド、ゲイリー・コール、ロージー・ペレス、アンバー・ハード、ビル・ヘイダー、ジェームズ・レマー、エド・ベグリー・Jr、ノーラ・ダン、クレオ・キング、ボビー・リー、ケヴィン・コリガン、クレイグ・ロビンソン、ダナ・リー、ケン・チョン、コニー・ソーヤー、ジャネッタ・アーネット
 
 裁判所の召喚状を配達している男デール(セス・ローゲン)がある豪邸の前に車を停めてマリファナの上物パイナップル・エクスプレスをプカプカやっていると、その豪邸で殺人事件が起こるのを目撃してしまう。その殺人には女性警官も関わっていたので警察に行く事も出来ない。
 そこでデールが逃げ込んだのはマリファナの売人ソール(ジェームズ・フランコ)の家。ところがパイナップル・エクスプレスを現場に落としてきてしまったのだが、こいつはソールしか扱っていない品。あっと言う間に居場所がバレてしまった二人は逃げ戸惑う事になるのだが。

 話としては殺人を目撃して命を狙われるというよくあるストーリーだが、良い意味でかなりくだらないコメディ映画。二人の会話の意味のなさが笑える。
 逃亡中もプカプカとマリファナを吹かしているので会話が支離滅裂。すっかりハイなんである。だら?っとした雰囲気が最高。逃げ込んだ森の中で意味なく馬跳びしてるし。なんだよ、それ。
 この映画を観るとマリファナを吸ってみたくなる事間違いなし。でも吸っちゃダメだよ、違法だから逮捕されてしまう。アメリカではこの映画みたいに市民権を得ているのだろうか。さすがに吸い過ぎだしモラルに反している気がするが。
 デールとソールが手をガムテープで縛られてしまい、デールのベルトのバックルでソールのテープを切ろうとするシーンは爆笑物。
 ところが一旦アクションシーンになると急に本格的になる。カーチェイスに銃撃戦。中盤のカーチェイスはソールがフロントガラスを足で割ろうとして足が抜けなくなったまま失踪するという笑いを含みながらもかなりの迫力だし、終盤の銃撃戦はバリバリ撃ちまくって本格的。
 レッドという麻薬の売人も仲間に加わり、最後はマリファナ三人組がヘラヘラしながら勝つ。そして男の友情で結ばれる。その友情に結ばれるシーンは食堂で飯を食べながら行われるが、ここでもまた意味のないダラダラした会話が繰り広げられる。レッドはソールに商品を卸していた売人で、最初は殺人犯の部下に脅されてソールを売るのだが、途中からデールとソールの味方になり最後には韓国車で敵のアジトに突っ込んできて大活躍。
 中年男のデールはつきあい始めて3ヶ月の女子高校生よりも結果としてソールを選んでいる。ちょっとホモっぽい雰囲気が漂う映画だ。そういえば、モーテルに批難したデールの恋人家族はその後どうなったんだろう。デールと恋人は電話でケンカになったがあの後別れてしまったんだろうか。
 殺人犯は犯罪組織のボス。そこで腕利きの2人にデールとソールを追わせるのだが、この2人腕利きのクセして間抜けでしょうがない。1人はソールにコーヒーポッドで殴られて火傷したのを延々根に持っているし。
 気になったのが、逃亡資金を稼ぐために学校に入り込んで中学生ぐらいの子供たちにパイナップル・エクスプレスを売るシーン。それはさすがにまずいでしょ。マリファナ推奨映画じゃないんだから。デールが自分がマリファナで年中ハイになっていることを自戒するシーンもあるわけだし。
『スパイダーマン』シリーズのハリー・オズボーン役のジェームズ・フランコがこんな間抜け演技が出来るとは思わなかった。コメディアンの才能があるね。

B002JPC8E0.jpg『ジャンボ・墜落 ザ・サバイバー』(1981) THE SURVIVOR 99分 オーストラリア

監督:デヴィッド・ヘミングス 製作:アントニー・I・ギネイン 製作総指揮:ウリアム・フェイマン 原作:ジェームズ・ハーバート 脚本:デヴィッド・アンブローズ 撮影:ジョン・シール 音楽:ブライアン・メイ
出演:ロバート・パウエル、ジョセフ・コットン、ジェニー・アガター、アンジェラ・パンチ=マグレガー、ピーター・サムナー、ローナ・レスリー、ラルフ・コッテリル

 珍しいオーストラリア映画。全てがオチに向かって収束していくオチ映画である。

 ジャンボジェット機が墜落し、乗員・乗客を合わせた300人ほどが全滅した中、機長のケラー(ロバート・パウエル)だけが奇跡的に無傷で助かった。しかしケラーは記憶喪失になっており事故当時の事はいっさい思い出せなかった。
 そんな中、事故現場を取材したカメラマンなどが顔が焼けただれた少女を見たりして悲惨な死を遂げていく。ケラーは女霊媒師のホッブス(ジェニー・アガター)の協力を得て墜落事件の真相に迫ろうとする。この事件には事故で死んだ乗客たちの霊が関わっているのだ。
 そしてケラーは意外な真実にたどり着く。真犯人を倒し自分の役目を終えたケラーは......

 何故カメラマンたちが惨殺されなければならないのかがちょっと分からない。霊たちが自分たちの悲惨な姿で商売をするカメラマンを許せなかったのだろうか。
 そして飛行機を墜落させた張本人の同機も分からない。飛行機は実は機内に持ち込まれた時限爆弾の爆発で落とされたのだが、営利目的でもないし復讐が目的だったわけでもない。ただ単に真犯人が狂っていたからだろうか。
 そのあたり、統合性が取れていない部分が気にかかる。

 ジャンボジェット機の墜落や炎上シーンはかなりの迫力で特に炎上シーンは実物大の飛行機のセットを燃やしておりかなり金もかかっていそうだ。事故後、調査のため墜落現場に放置された焼けただれた飛行機のセットが不気味である。

 真実を明かし復讐を遂げるケラーには全ての霊の代表としての重圧が肩にかかっていた。それらを含んだ意外なラストには驚かされる。オチ映画というとシャマラン監督が頭に浮かぶが、いやいやどうしてシャマラン顔負けである。

 作品の性質上、主人公の心理を深く描けないという欠点はあるがなかなか面白い映画であった。

B002HXO6P8.jpg『ゾンゲリア』(1981) DEAD & BURIED 94分 アメリカ

監督:ゲイリー・A・シャーマン 製作:ロナルド・シャセット、ロバート・フェントレス 製作総指揮:リチャード・R・セント・ジョンズ 原作:チェルシー・クィン・ヤーブロー 原案:アレックス・スターン 脚本:ロナルド・シャセット、ダン・オバノン 撮影:スティーヴ・ポスター 特殊メイク:スタン・ウィンストン 音楽:ジョー・レンゼッティ
出演:ジェームズ・ファレンティノ、メロディ・アンダーソン、ジャック・アルバートソン、デニス・レッドフィールド、ナンシー・ロック・ハウザー、リサ・ブロント、クリストファー・オールポート、ロバート・イングランド、マイケル・パタキ

 ゾンビ映画だが終盤まで観ないとゾンビ映画だと分からない異色作。
 この映画のゾンビはロメロ・ゾンビのような知能が無く人肉を貪るだけの物と違って知能があり普通の人間のように行動している。そこがラストの怖ろしさに繋がってくる。

 とある小さな港町で殺人事件が起こった。主人公の警官はその謎を追う。登場する葬儀屋は死体を綺麗に加工してまるで生きているかのようにしてしまう。実はこの葬儀屋は死体加工技術を極めてしまいついにはゾンビとして生き返らせることに成功したのだ。
 最後に追い詰められる主人公。そして衝撃の結末が。

『バタリアン』のダン・オバノンが脚本を担当しているだけあって普通のゾンビではなく常識外れなゾンビを誕生させた。ゾンビと言うよりも一種の改造人間のようなものであろうか。
『ゾンゲリア』といういかにもB級なタイトルで損をしているが、これは傑作である。
『ターミネーター』(1984)のスタン・ウィンストンが特殊メイクを担当していて、焼けただれた男や酸で顔を溶かされるドクターなどの特殊効果を堪能させてくれる。しかし、この作品の主題は視覚的なホラーではなく、主人公が精神的に追い詰められていく部分にある。殺人事件の謎は解けず、死んだはずの男がガソリンスタンドで働いている、自分の妻はブードゥー魔術の本を持っており授業で子供に教えている。何かがおかしい。そのおかしさの正体が掴めない。いらだつ主人公。
 ラストの町の人間が全員ゾンビだったと分かるシーンは実に怖ろしい。それまで普通の隣人だと思って接してきた人間が一人一人ゾンビとして現れる。それまでが淡々と物語が進められていただけにその盛り上がりときたら心底ぞっとする。
 町の人々がカメラを片手に町を通りかかったよそ者をよってたかって惨殺してしまうシーンも怖ろしい。彼らはそうして仲間を増やしていくのだ。
 オチは実に秀逸で、現在では似たような作品が乱作されているので予想できてしまうかもしれないが、当時はこのオチは読めなかったろう。読めたとしても充分に衝撃的である。
 人肉食いのゾンビ映画を求める人にはショッキングなゴアシーン部分で物足りないかもしれないが、従来のゾンビ映画の常識を覆す異色作で紛れもなく傑作である。監督のゲイリー・A・シャーマン(『WANTED/ウォンテッド』(1986)など)の演出も静かでその静けさがラストの衝撃を盛り上げる。

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