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『ルパン三世 天使の策略 ~夢のカケラは殺しの香り~』(2005) 92分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:宮繁之 原作:モンキー・パンチ 脚本:前川淳 キャラクターデザイン:平山智 美術監督:宮野隆 撮影監督:下山真吾 編集:佐野由里子 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、松井菜桜子、能登麻美子、新井里美、浅野まゆみ、田中敦子、永井一郎、穂積隆信

『ルパン三世』TVスペシャル第17弾。ロズウェル事件で墜落したUFOから作られたという不思議な金属"オリジナルメタル"を巡ってルパン一家と女だけのテロ集団"ブラッディエンジェルス"との対立が繰り広げられる。
 ブラッディエンジェルスの主要メンバー・ラッキークローバーは毒使いの"ポイズン・ソフィ"、銃火器の使い手"ボンバー・リンダ"、男装のジークンドーの達人"レディ・ジョー"、そして妖刀紅桜の使い手"辻斬りカオル"である。
 なんというか、ネーミングセンスがないな。オリジナルメタルやブラッディエンジェルスは昔の少年マンガみたいだし、ラッキークローバーのキャラ名は女子プロレスのリングネームのようである。
 ルパンの秘密兵器"超吸収スポンジ"と"超強力空気清浄機"にしろ、なんでも超をつければいいのかよ。
 そしてなにより、ラストまで謎であるはずのブラッディエンジェルスのボスが序盤で登場するなり「こいつ怪しいな」とピンときてしまう。なんかねー、もう21世紀なんだから。

 ルパン、次元、五エ門がエリア51に侵入し、オリジナルメタルを奪い出す。何に使うのかと思ったら、いつも通りルパンが不二子にねだられたから。今さらながら呆れる次元と五エ門。ところがこのオリジナルメタル、斬鉄剣を持ってしても傷一つつけることが出来ない。
 オリジナルメタルをアメリカの敵対国に大金で売ろうとしてブラッディエンジェルスがルパン一家を狙ってくる。ちなみに女だけのテロ集団という設定に特に意味はない。
 ルパンにはソフィ、次元にはリンダ、五エ門にはカオル、不二子にはジョーがそれぞれ目の前に現れ、それぞれ戦いになる。
 さらにオリジナルメタルを奪ったルパンを銭形警部が助手のエミリーを連れて追いかけてくる。
 南米沖の今は無人の廃墟と化した孤島で、最後の戦いが繰り広げられる。

 敵キャラのキャラクターの掘り下げが浅い。テロリストになった理由が語られるのはソフィアだけで、他の3人はただの殺人マニアにしか見えない。ボスに至っては高笑いを上げるだけの悪女。こいつがほんと極悪人で、最後はルパンから「俺の気の変わらないうちにどこかへ行けよ」と言われたのに、背後から拳銃を撃とうとして逆にルパンに射殺される。いくら極悪人とはいえ女性を撃ち殺すルパンはアニメ版では珍しいが、原作のルパンならばやるだろう。原作と言えば、銭形のフルネーム"銭形幸一"がアニメに登場したのは初めてではないだろうか。
 話はあまり面白くないが、アクションに関してはよく動いてくれる。リンダの最後が小屋の中に飛び散って充満した中での発砲による粉塵爆発だったり、一度は刃こぼれをした斬鉄剣の五エ門を追いつめたカオルが、達人の研ぎ師に研ぎ直してもらった斬鉄剣で紅桜を折られ、それが胸に突き刺さって血を流して死んでいくなど、女相手でも容赦しない。
 終わってみると、久々にゲストヒロインが登場していない作品だった。ゲストの女性キャラは大勢登場するが、全員悪党という女性不審な脚本家なのだろうか。
 銭形が活躍するのも嬉しい。なんとアメリカ軍のジェット戦闘機を操縦するし、(『カリオストロの城』ではオートジャイロの操縦も出来なかったのに上達したものだ)、終盤の戦いではルパンと共闘し、ブラッディエンジェルスのザコキャラ相手にM1911を撃ち、銃をはじき飛ばしていく。銃の腕は次元には劣るが、ルパンと大差ないとみた。
 アメリカも敵国もオリジナルメタルで兵器を作ろうと考えているのだが、斬鉄剣でも斬れないオリジナルメタルをどうやって加工するのか。それに必要な特殊な液体を持っているブラッディエンジェルスのボスは両方をセットで敵国に大金で売るつもりである。テロ集団とかいって、結局は金目当てなのだ。
 最初、ロズウェル事件とかUFOとか言いだした時には、トンデモ系な世界観に突入してしまうのかと懸念したが、それはなかった。ネタバレになるが、オリジナルメタルがUFOから作られたというのはアメリカによる他国に対するカモフラージュで、本当は自国で開発したのだ。最後に宇宙人が現れて「チャンチャン」で終わったらどうしようかと思ったよ。それじゃ『バビロンの黄金伝説』の焼き直しだ。
 全体的にはお子様向けな作りだと思うのだが、だったらボスやラッキークローバーの面々を殺すのはどうかなと。結構残酷だし。ちなみにレディ・ジョーだけは生き残って、銭形に逮捕されている。
 せめてオリジナルメタルの盗み方に怪盗物らしい工夫があったらな。あまりにあっけなく盗み出せてしまう。
 脚本は『プリキュア』とか『デジモン』などを書いている人。そりゃ、お子様向けにもなるわな。それでいて無理にハードボイルドをやろうとしているからまとまりがない。脚本にもっと力を入れてくれ。

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『きみに読む物語』(2004) THE NOTEBOOK 123分 アメリカ NEW LINE CINEMA

監督:ニック・カサヴェテス 製作:リン・ハリス、マーク・ジョンソン 製作総指揮:トビー・エメリッヒ、アヴラム・ブッチ・カプラン 原作:ニコラス・スパークス 脚本:ジャン・サルディ、ジェレミー・レヴェン 撮影:ロバート・フラッセ 音楽:アーロン・ジグマン
出演:ジェームズ・ガーナー、ジーナ・ローランズ、ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、ジョーン・アレン、ジェームズ・マースデン、サム・シェパード、ヘザー・ウォールクィスト、ケヴィン・コナリー、デヴィッド・ソーントン、ジェイミー・ブラウン、スターレッタ・デュポワ

 この作品を初めて観た時は、ニック・カサヴェテス監督作は『ジョンQ 最後の決断』(2002)と『アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン』(2006)しか観ていなかったので硬派で社会派なニック・カサヴェテスがロマンス物も撮るのかと思っていたら、最後には認知症という社会問題も織り込まれた大人のロマンス物だと分かった。
 物語の語り手は19日に86歳で亡くなったジェームズ・ガーナー。調べたところこれが遺作らしい。2008年に脳卒中で倒れ以後は車椅子生活だったようだ。飄々とした味の俳優で私が映画館に通い詰めていた80年代後半から90年代前半の時期には劇場用映画にほとんど出演していなかったので、『大脱走』(1963)の調達屋や『夕陽に立つ保安官』(1968)の腕利き保安官などの旧作で知り、後に『マーヴェリック』(1994)や『スペースカウボーイ』(2000)などでスクリーンでお目にかかることになる。
 カーマニアだったそうで、運転技術もかなりの腕前だったとか。それで『グラン・プリ』(1966)の主役のF1レーサーを演じたのか。

 映画はデューク(ジェームズ・ガーナー)がカルフーン(ジーナ・ローランズ)に恋人たちの物語を読み聞かせているところから始まる。場所はどうやら老人ホームのようだ。孤独な老婦人のカルフーンに同じホームの住人であるデュークが一種のボランティアとして読み聞かせを行っているのだろうか。
 物語は、第二次世界大戦前から後にかけてのある恋人たちのお話である。田舎に夏休みの休暇でやって来たお金持ちのお嬢様アリーが地元の材木工場で働く青年ノアと出会い二人は恋に落ちて愛し合うようになる。
 しかし、夏が終わると二人は引き裂かれ、ノアは毎日一通ずつアリーに手紙を書いて送るが、アリーの母親がその手紙を郵便物から抜いてしまいアリーには渡さず彼女はそれについて知らずじまい。1年が経ち365通目で手紙を書くのをやめてしまったノアは第二次世界大戦に陸軍兵士として出征する。そして友人を戦闘で亡くしながらも生きて帰ってきたノアは父親のフランク(サム・シェパード)が家を売って作った金を元手に、アリーとの最後の思い出の場所である朽ち果てかけたお屋敷を買うと改築を始めた。壁は白く、雨戸は青に、アリーが言っていた姿に屋敷を直していく。
 都会に戻りニューヨークの大学に行ったアリーは、3年生の時に看護師に志願し戦場で傷ついた兵士の看病にあたる。そこで出会った全身をギプスで固められた負傷兵にデートに誘われ、「怪我が治ったらね」と返事をする。そして戦争は終わり、女友達と街を歩くアリーの前にその兵士が現れる。彼はハンサムで教養があり、しかも南部のお金持ちの実業家の息子だった。時給40セントの肉体労働者でホイットマンの詩を愛するものの教養のないノアとは正反対。手紙が届いていなかったので、ノアは自分のことを忘れてしまったと思い、ノアとの日々を一夏の恋としてしまっていたアリーは元兵士と恋に落ち、今度の出会いは良心も祝福してくれ、愛し合うようになった二人は婚約し結婚式も間近となった。そんなある日、ウェディングドレスの試着をしていたアリーは、新聞に掲載された新しく作られたようなお屋敷とノアの写真を見る。

 ある人物が認知症なのだが、ちゃんと会話が出来て一見普通に見える。それはおかしくないかという人もいるかも知れないが、そういうタイプの認知症もあるのだ。認知症というと、ご飯を食べたことを忘れて「昼ご飯はまだかいの?」と言ってきたり、表に出たまま徘徊して行方不明になって大騒ぎになったりというのが一般的な印象だろうが、日常生活は割と普通におくれるタイプもある。家の父親の晩年がそのタイプの認知症で、会話はちゃんと出来る。お客さんなどにも一見普通に会話しているようなので相手には分からない。しかし、同居している家族には明らかに発病前の父親とは変わってしまったことが分かる。服をちゃんと着たり脱いだりが出来なくなり、何日も同じ服のままでも平気だったり、買い物に行くとお金を払うのを忘れて万引きとして捕まったり、先物取引のセールスマンに愛想だけ良く「はいはい」と答えて引っかかったりと手を焼くことになった。発症当時は母親がまだ健在で面倒を見ることが出来たのだが、母親が病死後は私と弟で面倒を見ることになり、症状が悪化するとそれも難しくなったのでグループホームに入ってもらうことになった。「家族で面倒を見ないなんて愛情がない」などと言う人もいるが「無理なものは無理」。その無理を押し通すと共倒れになるだけで、下手をすると思い込んで一家心中などになってしまうかもしれない。れっきとした病気なので専門家や専門施設に頼るのは当たり前だ。
 ノアがカルフーンに物語を読み進めていく内に変化が起き、ついにはある愛が甦る。だが愛は安易な奇蹟など起こしてはくれず、その愛は数分で消えてしまう。
 愛は病気の前では無力なのだろうか。いや、真実の愛は真実の奇蹟を起こす。そんな時もある。
 ノアとカルフーンの関係が、ノアの子供たちが老人ホームに遊びにやって来た瞬間に分かるシーンには思わずあっと言わされた。原作小説があるようだが、そちらは語り手のノアの一人称なのだろうか。そのスタイルで行った方が面白いものに仕上がると思う。
 映画は基本的に三人称なので、心理的な内容をそれとなく観客に知らせることが難しい。細かい描写や演出の積み重ねで登場人物の心理を描いていくことになるのだが、映画慣れしていない人などには分かってもらえない場合もあり、セリフで説明する方向に逃げてしまうこともあるがそれは安易だ。日本のTVドラマをほとんど見ないが、たまに見るとあまりに安易な演出にうんざりしてしまうのだが、視聴者への分かりやすさに重点を置くとそうなるのだろう。それから中島らもが『明るい人生相談』の中で語っていたのだが、描写の積み重ねによる演出は小道具などでお金がかかる。それを一言のセリフで済ませれば安いし時間もかからないのだ。
 日本の老夫婦と違うのは平気で「愛している」ということを口に出すところ。日本ならば「長年付き添っていれば言わなくても分かるだろう」なのだろうが、アメリカでは口に出して確認することを恥ずかしいと思わない。むしろ当たり前なのだ。ハリウッド映画で育ってきた様な私にはそんなアメリカ人老夫婦の在り方は美しく感じられる。もっともその老夫婦になる前に離婚してしまうケースが多いのがアメリカだ。とか言っていたら日本の離婚率もシャレにならなくなってきているからな。
 脇役にも存在感があって、特に老人ホームの太めな黒人女性職員などは印象に残る。優れた監督は脇役の扱いも上手いと思うのだ。出番は少ないがサム・シェパードも良かった。昔から渋い人だったが、歳を取ってさらに渋さが増している。
 最初は俳優としてスタートしたニック・カサヴェテスだが監督もやるようになり、ニューヨーク・インディペンデント映画の父ジョン・カサヴェテスの息子だけあってか骨太な良作を作り出している。俳優としては今一つ個性に乏しくてパッとしなかったが監督としての資質は父親の血を引いているようだ。
 ジョン・カサヴェテスはおしどり夫婦だったことでも有名で、その相手は大女優のジーナ・ローランズ。そう、この作品の重要登場人物の一人カルフーンを演じた人である。ということは当然、ジーナ・ローランズはニック・カサヴェテスの実の母親。
 小学生の授業参観で母親がやって来て勉強中の自分の姿を見られるのは恥ずかしくて嫌だったが、自分の仕事現場を母親に見られるというのはどんな気分なのだろうか。しかも、自分はその仕事の責任者で母親もその仕事については熟知している。「あー、なってないわね」とか「あー、才能ないわね」とか思われそうでニック・カサヴェテスは怖くないんだろうか。
 監督デビュー作の『ミルドレッド』(1996)ですでにジーナ・ローランズを主演にしているので、よっぽど自信があるか開き直っているかのどちらかなんだろう。
 ジョン・カサヴェテス作品はそのほとんどがこの間ブルーレイになったが、ジーナ・ローランズを主演にした『グロリア』(1980)はまだDVDだけなんだよな。暗黒街のボスの愛人であるグロリア(ジーナ・ローランズ)が同じアパートに住むギャングに家族を殺され一人生き残った少年を守り抜くという、リック・ベッソンの『レオン』(1994)などに強い影響を与えた作品で、ジョン・カサヴェテス作品としては数少ない一般向け作品なのでこいつもブルーレイ化して欲しい。なんで撮ったか分からないピーター・フォーク主演の『ビッグ・トラブル』(1986)はDVDが出てるから別にいいや。分からないと言ったけど、ジョン・カサヴェテスとピーター・フォークは親友同士だったんでその縁なんだろうな。

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『地平線から来た男』(1971) SUPPORT YOUR LOCAL GUNFIGHTER 90分 アメリカ UNITED ARTISTS

監督:バート・ケネディ 製作:ビル・フィネガン 製作総指揮:バート・ケネディ 脚本:ジェームズ・エドワード・グラント 撮影:ハリー・ストラドリング・Jr 音楽:ジャック・エリオット
出演:ジェームズ・ガーナー、スザンヌ・プレシェット、ジャック・イーラム、エレン・コービイ、ダブ・テイラー、チャック・コナーズ、ジョーン・ブロンデル、マリー・ウィンザー、ジョン・デナー、ヘンリー・ジョーンズ

『ルパン三世』特集の途中だが、19日にジェームズ・ガーナーが亡くなったので追悼として。観て文を書いたのは7月11日なのだが、なにか虫の知らせでもあったのだろうか。『大脱走』(1963)の調達屋や『スペースカウボーイ』の牧師兼老宇宙飛行士とか良かったよな。遺作はニック・カサヴェテス監督作『きみに読む物語』(2004)だろうか。

『夕陽に立つ保安官』(1968)という作品がある。監督はバート・ケネディで主演はジェームズ・ガーナー、助演がジャック・イーラム。そして原題は『SUPPORT YOUR LOCAL SHERIFF』。この作品の姉妹編だな。ストーリーに繋がりはない別の物語で、植木等主演の『日本一の○○男』みたいなものかと。
 観たのは25年ぐらい前なのでほとんど覚えていないが、金鉱が見つかり荒くれ者が集まってきた町で、流れ者のジェームズ・ガーナーが保安官になる。この男が凄腕のガンマンで、「銃の腕前を見せろ」とワッシャー(ボルトやネジを留める時に間に噛ます真ん中に穴の開いた金属の円盤。いわゆる座金)を中に放り投げられたのでそれを撃つ。だが、ワッシャーはそのまま落ちてくる。「なんだ、全然ダメじゃないか」と言われると「いや、その穴の中を銃弾が通ったんだ」と不敵な笑顔。そこで穴に絆創膏を貼って投げると、落ちてきたワッシャーの絆創膏には穴が開いていた。本人の言う通りだったのだ。
 でジャック・イーラムが保安官助手になるなど色々あって、最後はジャック・イーラムが「ジェームズ・ガーナーは恋人とオーストラリアに行ってしまったよ。今では俺が保安官だ」で終わる。この終わり方が、バート・レイノルズとドリー・パートンの『テキサス1の赤いバラ』(1982)で保安官助手だったドム・デルイーズが語るシチュエーションとそっくりだったのでそこも強く覚えている。後は忘れてしまったが。『夕陽に立つ保安官』も『テキサス1の赤いバラ』も日本でDVDが出ないかな。出ないだろうな。

 今作もゴールドラッシュに沸き返る町が舞台。二つの鉱山会社が金鉱の本脈を目指してそれぞれ掘り進んでいる。ジェームズ・ガーナーは酒場の女主人と汽車で旅行中に彼女から逃げ出して町にやって来た。酔った勢いで胸に「愛してる」と彼女の名前のタトゥーを入れてしまったのでそれを消そうと医者を探している。
 この男、ギャンブルに眼がなくて思わず23番に4500ドルなどの大金を賭けてしまい、オケラになる。そこで知り合ったジャック・イーラムを腕利きのガンファイターであるスウィフティ(チャック・コナーズ)に仕立て上げ、町の実力者を騙して5000ドルを巻き上げる。
 しかし、ジャック・イーラムはそのすべての造作がひん曲がった怖ろしい顔に似合わず銃が下手。しかも自分の偽物が現れたと聞きつけたスウィフティが町にやって来る。どうする凸凹2人組。
 そして、ニューヨークの大学に行きたがっているお転婆娘ペイシャス(スザンヌ・プレシェット)とジェームズ・ガーナーの恋の行方は。

 邦題はシリアスっぽいが、実際はコメディ仕立てのパロディ西部劇。ただ思っていたよりもギャグは少ない。『夕陽に立つ保安官』も記憶に残っているギャグはワッシャーぐらいだから、そういう作風なんだろう。でもバート・ケネディはギャグてんこ盛りのコメディも得意で、ハルク・ホーガン主演の『マイホーム・コマンドー』(1991)はメチャメチャ面白い。
 ジェームズ・ガーナーがギャンブル狂という設定はTVシリーズの『マーヴェリック』のパロディかな。メル・ギブソン、ジェームズ・ガーナー、ジョディ・フォスターで1994年に映画化されている奴だ。TVシリーズの方はそれこそ大昔なんで、話に聞いただけで観たことはないけど。
 飄々としてつかみ所の無いジェームズ・ガーナーとまともには見えないジャック・イーラムのコンビが楽しい。ジャック・イーラムは『キャノンボール』シリーズで肛門医を演じていた人だ。うーん、この説明はもう若い人には伝わらないか。セルジオ・レオーネの『ウエスタン』(1968)のオープニングで、銃口で蝿を捕まえていた男。とりあえずテリー伊藤なんか足元にも及ばないやぶにらみが特徴。
 ジェームズ・ガーナーは性懲りもなくこの町でも酒場の女主人に嘘をついてたぶらかすのだが、逃げ出してきた元の恋人の女主人が彼女の友達で、町にやって来たので大慌て。ひげ剃りの石鹸泡を顔に塗りたくって誤魔化そうとするが・・・・・・。うーん、やっぱりパンチが足りないかな。
 チャック・コナーズが「卵のような」と噂される丸坊主の頭で登場したのは衝撃があった。この作品のために頭を剃ったのか。しばらくは他の仕事も出来ないだろうに入れ込んでるな。まぁ、元が短髪気味の人だから数ヶ月の我慢だろうけど。
 ラストはスザンヌ・プレシェットを連れて汽車で旅立つジェームズ・ガーナー。汽車の最後部ではジャック・イーラムがその後の話をして、最後に「次はマカロニウエスタンに出るぞー」と大はしゃぎ。
 観終わってみると、ちょっとしたことをきっかけで始まる酒場の大乱闘や、鉱山でダイナマイトが爆発するのを知らせに「爆発するぞー」と現れる男など好みの部分も多い。爆発のたんびに町中の建物が地震みたいになる。

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『ルパン三世 盗まれたルパン ~コピーキャットは真夏の蝶~』(2004) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:うえだひでひと 原作:モンキー・パンチ 脚本:大川俊道 キャラクターデザイン:平山智 メカニックデザイン:水村良男 美術監督:鈴木朗 撮影監督:遠藤泰久 編集:田熊純 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、浅川悠、中田浩二、青野武、八奈見乗児、入江崇史、水内清光、品川徹

『ルパン三世』TVスペシャル第16弾。毎年一作が恒例になって久しく、なんというか『寅さん』化してきているような。出来としては所々見るところはあるものの、全体的に凡庸。そもそもなにが"盗まれたルパン"なのか。ただ誘拐されただけじゃん。

 ルパンの模倣犯(コピーキャット)が現れる。犯人はベッキーという若い美女。ルパンが狙っていたお宝を積んだトレーラーを先に盗んでしまい、取り返そうとしたルパンをコンテナを檻にして、追跡する銭形の前から連れ去ってしまう。ベッキーの左上腕には蝶のタトゥーが入れてあった。
 マルコヴィッチという悪党の前に連れてこられたルパンは、不二子を人質にされ、盗んだ者がみんな謎の死を遂げる宝石"ブルズ・アイ"を警備厳重な博物館から盗んでくるように命令される。次元、五エ門と共に老人に化けて博物館に入場した3人は、夜の侵入に備えて細工を施してくる。
 そして見事ブルズ・アイを盗み出すのだが、マルコヴィッチとの待ち合わせ場所に行く途中にベッキーにブルズ・アイを盗まれてしまう。ベッキーについての情報をICPOの上司マーフィーから聞かされた銭形は走法の逮捕を誓う。
 ベッキーのアジトに乗り込み、ブルズ・アイを取り返しマルコヴィッチに会いに行くが、不二子が人質になっているとは真っ赤な嘘で、例によって裏切りであった。しかし、そのブルズ・アイは偽物で、本物のブルズ・アイはまだベッキーが持っていた。
 ベッキーの正体は、過去にルパンのパートナーだった女怪盗キャットの娘だった。彼女から本物のブルズ・アイを手に入れたルパンは、ブルズ・アイの中に発信器があることを掴み、盗んだ泥棒を見つけ出して殺すための道具であったことを知る。
 次元の敵として銃を乱射しまくるトリガーハッピー男のサンタナ、五エ門の敵として青竜刀と指弾を操る白竜が現れ、激しい戦いになる。
 実はマルコヴィッチの目的は、ルパンがこれまでに奪ってきたお宝を集めた"ルパン・コレクション"であった。それに誘惑された不二子は再びマルコヴィッチと組む。
 そしてフランスの小さな田舎の村で最後の戦いが始まった。

 全体的に小さくまとまってしまったという感じの作品。ブルズ・アイの正体は興ざめだったし、ルパン・コレクションも最初は「おっ!」と思わせてくれるが、終わってみたら「なんだそりゃ」だった。
 マルコヴィッチの裏には影で操っているボスがいることが示唆されている。そのボスが誰かは登場人物の言動などで大方見当が付いてしまう。なによりも脇役なのに某ベテラン大物声優が声をあてている時点で何かあると分かる。だからといって真の黒幕にマイナーな声優を使うのもあれだから、仕方ないのであろう。ハリウッドのサスペンス映画などでも、脇役の中に1人だけ有名俳優が混ざっていると、大体その役はなにか秘密があるが、それと同じようなものだろう。
 ベッキーはルパンとキャットとの間に生まれた娘なのだろうか。それを匂わせているシーンもあるが、やはり違うなとも思えるしどっちつかずだ。不二子のことをベッキーが「あんな不誠実な女なんて」とルパンに言うが、ルパンは「裏切りは女の特権さ」と気にもしていない様子。不二子の裏切りをいちいち気にしていたら、とてもじゃないがつき合っていられない。
 終盤の戦いでは次元のM19がトラブルを起こして使えなくなってしまい、サンタナ相手に苦戦するのだが、パイプを利用して即席ライフルを作って倒す。ライフリングが切っていないため、前回りの状態で回転しながら飛んでいく銃弾がリアルだった。
 五エ門は白龍の青竜刀を叩き切るが、白竜の指弾のせいで居合いの間合いに入れなくて、なかなか倒すことが出来ない。白竜は持っていた鉄の弾がなくなっても、そこら辺に落ちている石を使って指弾を撃ってくる。そこで弾にするものが何も無い場所へ誘い込んで勝利する。マシンガンの連射を受けながらも、弾丸を斬って敵を倒す五エ門が苦戦する指弾はかなりの修行の成果らしく、五エ門は倒した白竜を見下ろしながら無常を感じる。
 ルパンは動き回ってはいるものの、盗みのアイディアにしても独自性がないし、ハードボイルドキャラなのかギャグキャラなのかの統合性も取れておらず、主役なのに魅力に欠ける。
 ルパンを相手にする敵役がまたショボいので、盛り上がってくれない。小物感に溢れていて凡庸だった今作のルパンだが、そんなルパンの相手にもならない。
 全体的にアクションシーンが多くよく動いてくれるし、銃器の描写もしっかりしている。デジタル作画で作られた今作は多少手抜きが感じられるが、一般のTVアニメよりは作画はしっかりしている。それにしても煙草を吸う人が多いアニメだ。これでは欧米に輸出出来ないな。
 エンドロールが終わった後にも話がちょっと続くが、結局ルパン・コレクションというお宝とは、ルパンにとって頼りになる仲間ルパン一家のことであった。

『ルパン三世 お宝返却大作戦!!』 ガウディの夢

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『ルパン三世 お宝返却大作戦!!』(2003) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:川越淳 演出:佐野隆史 プロデューサー:小野利恵子、尾崎穏通 原作:モンキー・パンチ 脚本:柏原寛司 脚本プロデューサー:飯岡順一 キャラクターデザイン:平山智、小林利充 メカニックデザイン:斉藤良成、水村良男 撮影:林コージロー 美術:宮野隆 色彩設計:原田幸子 音楽監督:鈴木清司 音響監督:糸川幸良 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、山寺宏一、北村弘一、五十嵐麗、りの、八奈見乗児

『ルパン三世』TVスペシャル第15弾。ルパンの同業者で、亡くなったばかりの老怪盗マークが盗んでどこかに隠している"トリックダイヤ"を手に入れるために、マークの遺言で彼が盗んできた物を元の場所に返していくというストーリー。だからタイトルは『お宝返却大作戦!!』なのだ。正直、お笑い系かと思ってしまう今作だが、いやなかなかハードボイルドでアクションもふんだんにあり、そして笑わせてもくれる。こいつも傑作だと思う。

 トリックダイヤとはロシアのツングースカに落下したUFOの破片だと言われているが、本当のところの正体は謎である。それをガウディが手に入れ、サグラダ・ファミリアの塔の天辺に設置した。幼い頃のマークはガウディからトリックダイヤの秘密を聞かされていて、成長し怪盗になってから盗み出したのだ。
 マークは怪盗といっても、ベーブ・ルースの記念ホームランをキャッチした観客が座っていたベンチなど、奇妙な物を集めるのが趣味だったようだ。そしてルパンに遺言を残しており、トリックダイヤの在処を教えるから、自分がこれまで盗んできた物を返しに行って欲しいと依頼してくる。
 ルパンはヨーロッパ中を飛び回り、ローマの真実の口や、ヨーロッパで始めてコーヒーを出した喫茶店のコーヒーメーカー、ムーラン・ルージュの踊り子が着ていた初期の衣装などをレプリカから本物へと取り替えていく。世界が舞台という設定は『新ルパン三世』を思わせる。
 グルジアマフィアのボスでセコい手段で強欲に稼ぐことから"ラッツ"とあだ名されるイワンもトリックダイヤを狙っている。
 ルパンとラッツの間で暗躍する不二子。彼女は誰の味方なのか。もちろん、お宝の味方である。
 トリックダイヤの在処は。そしてトリックダイヤをサグラダ・ファミリアに設置することでどんなお宝が登場するのか。

 今回のゲストヒロインはアニタという駆け出しの建築家で、マークの姪である。ルパンとの接触はほとんどなく、ラッツの手下の女殺し屋ミーシャに背中を撃たれた五エ門を助けたことから事件に関わる。『カリオストロの城』のクラリスなどのような守られる存在ではなく、仕事が上手くいかずに落ち込んでいたが自立した一人の女性である。
 ミーシャもゲストヒロインと言ってもいいだろう。モーゼルを操るこの殺し屋は、五エ門の知り合いを射殺したことから二人は対立することになる。ラッツからは「お前は弾よけだ」と言われているのだが、ラストではルパンに撃たれたミーシャをラッツが庇い、二人してサグラダ・ファミリアの塔の上から墜落死する。冷徹な女性だが、内心ラッツと愛し合っていたのだ。
 今作の銭形は冴えていて、序盤のラッツの大金庫に忍び込んだルパンが監視カメラに細工しているのにいち早く気付いたり、何度もルパンの先回りをして逮捕に成功する。しかし、その度に爆弾で監獄を破壊されて逃してしまう。カッコイイ役かと思いきや、ムーラン・ルージュではルパンに踊り子の格好に女装させられ、舞台に立たされるという相変わらずのお笑い要員である。
 普段は無敵な五エ門がミーシャの弾丸に傷を負わされるのはショックだった。さすがの五エ門も背中に目は付いていないのか。背中側の右肩を撃たれたため、終盤では左手で斬鉄剣を操る。助けてくれたアニタといい関係になるのかと思ったが、今回の五エ門はミーシャに再戦する気持ちが先行しており、恋に落ちるようなことはなかった。TVスペシャルではギャグ要員としても活躍する五エ門だが、今回は友人の敵討ちもあるので全体的にシリアス。
 次元のM19がシルバーメタリックになっていたのがかなりショックだった。なんでだろうか。格好いいけど、いつもの黒いM19の方がやはり黒ずくめの次元には似合っている。ラッツに捕らえられ拷問を受けるが、撃たれた時に縛り付けられていたロープに命中させて切断するなど、小技も見せてくれる。ラッツの手下のトカレフはオートマチックピストルのマカロフ使いなのだが、.357マグナムのM19の威力は認めるものの、6発しか装填出来ないのでリボルバーを馬鹿にした発言をする。しかし、マカロフは8連発なのでそんなに違いはないのだが。それでも弾数の有利さから次元を追いつめるが、次元がトカレフの近くの木箱などに乱射して破片でマカロフをジャムらせてしまい倒された。ルパンと次元は一緒に行動することが多いが、この作品では次元がラッツに捕らえられてしまうので、別行動のシーンが多い。
 不二子はルパンが手に入れるはずのトリックダイヤを色仕掛けなどで手に入れようとしていて、4つの犯罪組織を相手にオークションをかけている。しかし、トリックダイヤが手に入らなかったためにボロボロになってルパンの前に現れる。弱音を吐く不二子はいつもとイメージが違うが、腹の中ではなんとかしてルパンからトリックダイヤを奪い取ろうと考えている。今作の不二子は悪女っぷりが足らず、個人的には物足りない。
 トリックダイヤはUFOの破片と言われているのは最初に言ったが、独特なカットをされていて中に入った光は内部で反射し続け外に出てこない。だから黒く見える。
 ラスト、マークに指定された時間にサグラダ・ファミリアの塔の天辺に設置したところ、朝日を受けて輝きだしとんでもないお宝が現れる。それはルパンでさえ盗めないお宝だった。
『お宝返却大作戦!!』というサブタイトルがタイプライター風に表示され、TVシリーズを思い起こさせる。
 ルパンたちはローマやフランス、ドイツ、スペインなどに行くのだが、その土地にあったアレンジの曲を大野雄二が作り上げている。やはりルパンには大野サウンド。8月に公開される小栗旬の実写版『ルパン三世』は諸事情により大野サウンドではないそうだ。なんか、それだけでガッカリである。
 カーアクション、銃撃戦なども豊富で絵はよく動き作画も安定している。この作品以降、徐々にTVスペシャルの出来は落ちていき、最近では目も当てられない状況になってしまった。

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『ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト』(2002) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:大原実 演出:のがみかずお プロデューサー:小野利恵子、大石祐道、尾崎穏通 原作:モンキー・パンチ 脚本:米村正二 キャラクターデザイン:米村正二 メカニックデザイン:石本英治 撮影:林コージロー 美術:宮野隆 色彩設計:西香代子 編集:佐野由里子 音楽監督:鈴木清司 音響効果:糸川幸良 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、森山周一郎、永井一郎、咲野俊介、小杉十郎太、朴路美

『ルパン三世』TVスペシャル第14弾。ルパン一家そして銭形警部の出会いを描いた、ハードボイルドタッチな大人向けの作品。1stシリーズで彼らの出会いは描かれていたが、それとは内容が違う。これまでの設定を無視したのか? それはラストまで観れば分かる。
 次元が女性記者エリナに彼らの出会いについて取材を受けていた。エリナは『ファーストコンタクト』というタイトルでルパン一家がいかにして出来上がったかについて本を書くつもりなのだ。最初はルパンにインタビューしていたのだが、話そっちのけで口説いてくるので、次元を頼ったのだ。
 路地裏で暗闇に気配を感じた次元はM19を抜くが、出てきたのは一匹の野良猫だった。
「猫か。そう言えば、あの時始めていった言葉が"猫か"だったな」
 そして時代は遡る。

 ニューヨークのガルベス一家は破壊出来ない合金"クラム・オブ・ヘルメス"の製造法が書かれた巻物の所有者であった。しかし、その巻物はクラム・オブ・ヘルメスで作られた密閉された筒の中に入っており、取り出そうにも取り出せないのだ。
 ガルベスファミリーの金庫に保管されていたクラム・オブ・ヘルメスを奪いに来たルパンだが、用心棒の次元に邪魔され、逃げ出すことになる。
 ルパンは犯罪者仲間のブラッドに次元についての情報をもらう。ブラッドには恋人がいて、それが峰不二子だった。後にブラッドはクラム・オブ・ヘルメスを盗み出すことに成功するが、ガルベスの手下に殺されてしまう。
 国際指名手配犯の不二子を追って、警視庁の銭形警部がニューヨークを訪れていた。だが、ニューヨーク市警は不二子に興味がなく、銭形は資料室の中に机をあてがわれる。資料室の主ジョージ刑事がいた。年老いたジョージは、資料調べをするだけで、犯罪と戦う気力を失っていたが、銭形と行動を共にする内に復活していく。
 不二子を探す内に、銭形はルパンと始めて接触することになる。その時は、これがその後延々と続く逃亡者と追跡者の関係になるとは両者とも思っていなかった。
 五エ門は日本で剣の修行中。投げられてきたいくつもの斧を斬るのだが、刀は刃こぼれしてしまう。やはり、伝説となっている斬鉄剣を手に入れる必要がある。斬鉄剣はニューヨークの大富豪が持っている。ニューヨークへと向かう五エ門は、斬鉄剣がクラム・オブ・ヘルメスで出来ていることを知っているのだろうか。

 主要メンバーがまだ若い時代の話なのだが、キャストの衰えが声から感じられるようになってきた。特に銭形役の納谷悟朗は「ルパンー」の怒鳴り声に張りがない。不二子もなんかオバさんが入っている。
 最初はルパン一家もそれぞれ対立関係だったのが、クラム・オブ・ヘルメスの謎を解くために筒の奪い奪われをしている内に、「こいつやるな」と相手のことを認めるようになってくる。
 不二子を追ってきた銭形も、ルパンと出会い不二子よりもルパンを追い始める。この作品での銭形は笑わしキャラ面は少なく、ニューヨークの犯罪街で刑事だと知った悪党どもが20人ぐらいで襲いかかってくるが、それを一人で片付けてしまう腕前の持ち主だ。ルパンの策略も見抜いたり有能な刑事である。ラストではルパンを追いたいという銭形に、ジョージが「ICPOに入りなさい。そうすればルパンを追って全世界を駆け回ることが出来る」と助言をする。その助言通り、銭形はICPOに所属することになる。
 このところ落ち要員だった五エ門も、今作ではストイックに剣の道を究めようとするサムライで、ルパンが大富豪から盗んだ斬鉄剣を手に入れると、飛んでくる拳銃弾や壁、自動車などを真っ二つにしていく。この世に斬鉄剣は2本もいらぬという理由で、巻物を燃やし、二度とクラム・オブ・ヘルメスを作れないようにするため、ルパンと戦う。
 不二子はブラッドの仇を討つためガルベスファミリーに侵入する。ガルベスに捕まって、バイクのライダースーツの胸元を開かれるシーンは、乳首は見えないが色っぽい。ちゃんと、ハーレーダビッドソンに乗っている。
 煙草や葉巻を吸っている人物が多い。最近のTVスペシャルの次元は、シケモクをただ咥えているだけのようだが、これも時代の流れだろう。
 ルパンと次元は相棒になり、五エ門と不二子は必要に応じて加わるというルパン一家が完成し、銭形はルパン逮捕に生き甲斐を見出す。
 だがここまで次元がエリナに語ってきた話は、実は・・・・・・
 ルパンがワルサーP38のスライドを口で引くのは1stのオマージュだろう。次元がスピードローダーを使うのはTVスペシャルでは初めて見た。ガルベスに捕らわれて、武装解除されたルパンと次元だが、次元のM19に並んで2つのスピードローダーがテーブルに置かれていた。ルパンの持ち物はワルサーP38の他に、これだけの物をどこに隠していたんだという量の秘密道具が置かれている。
 TVスペシャルの中でもかなり出来の良い作品である。ギャグはあるが他作品と比べると少なめで、かなりシリアス。
 ゲストヒロインのエリナが始めと終わりしか出てこないが、話の構成上仕方ない。

『ルパン三世 アルカトラズ・コネクション』 1963年

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『ルパン三世 アルカトラズ・コネクション』(2001) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:殿勝秀樹 演出:渡辺正彦 プロデューサー:小野利恵子、山下洋、尾崎穏通 原作:モンキー・パンチ 脚本:柏原寛司 脚本プロデューサー:飯岡順一 作画監督:小林利充、平山智 撮影:川田敏寛 美術:宮野隆 編集:鶴渕允寿 音楽監督:鈴木清司 音響監督:糸川幸良 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏
声の出演:栗田貫一、納谷悟朗、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、石田太郎、大塚明夫、滝口順平、立木文彦、沢梅陽子、緒方賢一、松井範雄、池田勝、川上とも子

『ルパン三世』TVスペシャル第13弾。ゲストヒロインがほとんど登場しない異色作。ルパンが女性相手に何度も電話しているので、存在はしているのだが登場するのは事件解決後のラストになってから。彼女の名はモニカ(川上とも子)で、大学の卒業論文のためにルパンにある物と引き替えにベッドを共にする約束をしていたのだが、やっとの思いでルパンがその物を手に入れてくるのだが、「永久就職するから、それいらないー」といって彼氏の車に乗って去って行ってしまう。出番、正味2分。

 21世紀には行って最初のルパン三世。ルパン一家が豪華客船で行われている違法カジノの売り上げを納めた大金庫を船底から金庫ごと盗み出そうとするが、銭形の妨害に遭い失敗。しかし、ルパンの目的は他にあった。過去にサンフランシスコ湾の6000mの海底に沈んだ"ヤンキー・スレード号"に積まれた小国の国家予算にも匹敵する金塊を求め、カジノ船が水中レーダーで調べていた海底図のデータが目当てだったのだ。
 金庫強奪に失敗してプリプリと怒っていた不二子だが金塊の話を聞いて目の色を変える。そして、いつもならばお宝に興味を示さない五エ門も乗り気だ。五エ門はスーザンというモデルに恋をしていて、彼女をスーパーモデルにするため金を必要としたのだ。
 ルパンはデータをPalm(懐かしいな)で解析するが、秘密結社"シークレットセブン"に誘拐されてしまう。シークレットセブンはその名の通り7人のメンバーから構成された犯罪組織で、アルカトラズ刑務所跡の地下を本拠地にしている。
 拷問を受けるルパンだが、どれも軽くかわしてしまい、ついには島からの脱出に成功する。代わりに不二子が連れ去られ、金塊の1割を条件にヤンキー・スレード号の金塊を回収するための深海潜水艇の作業員となる。
 ルパンを追う銭形。そして謎の黒服にサングラスの男たち。隠された秘密は単に金塊だけなのだろうか。

 銭形がカッコイイ。ヘリコプターを使いワイヤーで大金庫を釣り上げたルパンを、M1911でワイヤーを撃ち抜き金庫を取り返して犯行を阻止する。
 そして額を撃って自殺したルパンがいつもの特殊メイクであることを見抜いている。ラストのシークレットセブンのボスとの戦いは、ルパンとではなく銭形との間で行われる。ルパンを人質に取られながら、冷静にボスの肩を撃ち抜く銭形であった。
 銭形にはサンフランシスコ市警のテリー刑事(石田太郎)が同行している。ボサボサの頭にヨレヨレの服装で石田太郎声だと『刑事コロンボ』を想像させ、ボーッとしている振りをしていて実は腕利きのデカかと思ったら、思いがけない正体があった。
 シークレットセブンの各メンバーはあまり印象が強くなく、作品が展開するごとに一人一人やられていってしまう。ルパンを拷問するサドの中国人と、全身武器庫の暗殺者ハイエナ、そして五エ門が懸想していたスーザンぐらいか。
 黒服にサングラスの男たちは、服装からしてFBIかCIAの連中だと思ったが正解。身分証を落とすシーンがあるが、一人は確実にCIAであった。彼らは何故ルパンやシークレットセブンを狙うのか。何か公になっては困ることがあるのか。
 その現時点では公になっていけない事柄が、何故かヤンキー・スレード号の金塊の一つに隠されているのだが、どうしてそんなことになっているのかは謎。
 アルカトラズ島の地下にはシカゴの街並みが再現されており、囚人達はそこで自由に過ごしていた。所長や看守は犯罪者に買収され見て見ぬ振りをしていたのだ。この設定はあまり意味はない。地底の街並みというのは異様な光景で、個人的には映像的に満足だ。
 アルカトラズに向かうクルーザーに次元と五エ門、そしてスーザンが乗っていて、そこへハイエナがボートで乗り付けてきて、二対二の戦いになる。時間としてはそれほど長くないが息詰まる戦いだ。
 ルパンと次元がケーブルカーに乗っていてCIAの黒い車に襲われるシーンも面白かった。拳銃を持ってケーブルカーに乗り込んできたルパンたちに乗客や運転手は逃げ出してしまう。そして、ルパンはケーブルを撃って切ってしまい、サンフランシスコの坂道を暴走する。まるでその様子はスティーヴ・マックイーンの『ブリット』(1968)を思わせる。作中で、「まるで『ダーティーハリー』か『ブリット』ですな」という言葉も発せられる。
 ラストシーンは事件解決後のリラックスしたルパン一家の私服姿が見られる。五エ門もいつもの和服ではなく、Tシャツに短パン姿というレアな格好だ。
 次期大統領選や、1963年の事件を扱っており、TVスペシャルの中でも出来の良い方だと思う。

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『ルパン三世 1$マネーウォーズ』(2000) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:殿勝秀樹 原作:モンキー・パンチ 脚本:柏原寛司 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、納谷悟朗、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、小山茉美、松本梨香、中田譲治

『ルパン三世』TVスペシャル第12弾。今回はゲストヒロインが二人体勢。一人はTVスペシャルで多く見られる少女系のサンディで駆け出しのジャズシンガー・サンディ。もう一人は何と敵のボスで大銀行バンク・オブ・ワールドの頭取シンシア。サンディは正直話のきっかけに過ぎず出番もあまりないが、シンシアは頭も切れ美人でとある野望を抱いている。声を担当している小山茉美がなんとも色っぽくそしてカッコイイ。

 ニューヨークの美術品オークションに1カラットにも満たない指輪が出品された。ところがなんと落札者たちがどんどん値をつり上げていく。そして老人に変装したルパンは100万ドルを提示するが、電話でオークションに参加していたシンシアに100万1ドルで落札されてしまう。
 その指輪はルパンがサンディにねだられていたものなのだが、実はナポレオンやレーニン、ヒットラーなどの独裁者の手を渡った不思議な力を持つブローチの在処を示すものだった。
 シンシアから指輪を奪おうと、バンク・オブ・ワールドの大金庫を狙うルパンと次元だったが、シンシアの部下でスペツナズ出身の傭兵ナビコフとの戦いになる。
 五エ門は宗教の宗主である美女に恋心を抱いており、布教活動を手伝っていて、ルパンたちの計画に乗ってこない。
 不二子はハリウッド映画に投資をしていて、「泥棒よりも投資で稼ぐのが現代風よ」と珍しくお宝に興味を示さない。独裁者になれるブローチなので不二子にとっては価値を感じないのだろう。
 シンシアは新しい金儲けの手段として戦争を起こすことを計画しており、そのためにブローチで独裁者を作り出そうとしている。戦争になれば石油の値段が上がるので石油プラントに出資するのだが、それはルパンがでっち上げたインチキプラントだった。

 カーアクションに銃撃戦、飛行機になるスバル360などの秘密兵器など派手な部分もあるが、全体的には大人向けの雰囲気の騙し騙されの大がかりなコンゲーム。大野雄二のジャズが全編に流れ、アダルト感を醸し出している。
 ナビコフの撃った銃弾でルパンは死んでしまい、次元、五エ門、銭形に見守られながら埋葬される。ルパン逮捕という生きがいを失った銭形は涙を流しながら辞表を書く。ライバルとしてルパンに思い入れを持っている銭形なのだ。もちろん、実はルパンは生きている。
 次元がエレベーターシャフトを登っている時にM19を落としてしまい、ルパンのワルサーP38を借りて使ったり、質屋で仮の銃を都合したりする。敵が次元のM19を手に襲いかかってきて、無事に奪い返す。
 ナビコフがあっけなく死にすぎるが、今回は投資やマネーゲームに重点が置かれているのでそれほど気にならない。
 ラストはルパンの罠にはまり一文無しになってしまったシンシアが、ブローチが入った水でいっぱいのコップに1ドル硬貨を互いに入れていき、水を溢れさせてこぼれた方が負けというでブローチは勝ったものの物になるというゲームをやる。『さらば友よ』(1968)でチャールズ・ブロンソンがやっていたやつだな。
 そして勝ったルパンが立ち去ろうとするところをシンシアが後ろからリボルバーで撃とうとする。しかし、ルパンが親指で跳ね上げた1ドル硬貨が撃鉄に挟まって銃が撃てない。このラストの流れは必見である。文無しになってしまったシンシアだが、その1ドルでまたのし上がっていくのだろう。ルパンに心を奪われたようだが、彼女は弱くない。かなりタフな女性だ。このラストシーンは必見。
 不二子はシンシアから巻き上げた金を持って一人で逃げてしまうが、それを全部株に注ぎ込んで、こちらも一文無しになってしまう。だが、不二子もそんなことではへこたれないであろう。彼女は言わずと知れたタフウーマンだ。
 五エ門が斬鉄剣で金庫や追いかけてくるジープを斬るなどの便利な道具扱いで、最後には宗主に集めた浄財を持ち逃げされてしまう。TVスペシャルの五エ門はお笑いキャラになっている場合が多いが、個人的には気に入らない。無敵すぎるから使いにくいんだろうけど。
 敵を追跡中のルパンが近道をするためにセントラルパークを突っ切るのだが、これは『ダイ・ハード3』(1995)のパクリ・・・・・・いや、オマージュか? 舞台の多くはニューヨークで、遠景が映るとまだ国際貿易センタービルが建っているのが見える。
 独裁者になる気はないルパンはブローチをある人物にプレゼントしてしまう。その人物は元々実力があったが、ブローチの力も加わり一気にトップに上り詰めていく。
 製作会社の名前がまた変わって、今回から"トムス・エンタテインメント"になった。 20世紀最後のルパンとして、前作のように怪人も出てこず、アクションも頭脳戦も水準は保っている。21世紀になってからは出来がひどいのが混ざってくるからな。

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『ルパン三世 愛のダ・カーポ/FUJIKO's Unlucky Days』(1999) 91分 日本 日本テレビ、東京ムービー

監督:ワタナベシンイチ 演出:高瀬節夫 プロデューサー:山下洋、尾崎穏通 アシスタントプロデューサー:大石祐道 原作:モンキー・パンチ 脚本:藤田伸三 作画監督:平山智、小林利充、をがわいちろを 美術監督:明石聖子 撮影監督:長谷川肇 編集:鶴渕允寿 音楽監督:鈴木清司 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏 監督補:殿勝秀樹
声の出演:栗田貫一、増山江威子、小林清志、井上真樹夫、納谷悟朗、戸田恵子、森山周一郎、千葉繁

『ルパン三世』TVスペシャル第11弾。前作の『炎の記憶』は銭形メインだったが、今作は峰不二子に焦点を当てている。ゲストヒロインのロザリアはあまりルパンと接触せず、不二子と一緒にいるシーンが多い。

 不二子がルパンにスイス銀行を建物ごと盗み出してもらう。彼女の目当ては"コロンブス・ファイル"。そこには謎の秘宝"コロンブスの卵"の在処が記されているのだ。コロンブスの卵か。あのテーブルに立てたってヤツだったら歴史的価値はあるがもう腐ってるんじゃないか。いや、苦労の末発見したコロンブスの卵は確かに卵形だったが、とんでもない力を秘めたお宝だった。
 コロンブス・ファイルを狙って悪の配下ナザロフとその手下が、ルパンと不二子を襲う。戦闘用ヘリに狙われた不二子は、コロンブス・ファイルを渡す振りをして燃やしてしまう。内容は全部記憶していたのだ。怒ったナザロフの攻撃で不二子は崖から転落し、ルパンがワイヤーで一旦は引っ掛けるものの、ワイヤーが切れて森に落ちてしまい行方不明になってしまう。
 その後、海中に沈んだ財宝を引き上げるトレジャーハンターのロザリアの家に不二子が現れた。彼女は記憶を失っていたが、深層心理にコロンブスの卵の在処が残っていたのかどうにかしてギリシャにたどり着いたのだ。
 ルパンと再会しても不二子の記憶は戻らず、自己紹介されて「ルパンさん」とさん付けで呼ぶようになっていて、警戒心を解かない。
 不二子を狙ってナザロフと手下達が襲って来る。次元、五エ門と合流したルパンは不二子を守り、コロンブスの卵を手に入れるべく動き出す。
 例によって銭形が埼玉県警のボートに乗って現れ、ルパン逮捕を試みる。
 コロンブスの卵は誰の手に入るのか。そしてロザリアと悪の黒幕の意外な関係とは。

 長期連載マンガで、ネタが詰まった時に使われる記憶喪失がルパン三世TVスペシャルにも登場した。記憶を失ってすっかりおしとやかになった不二子はこれまでと違った魅力があるが、やはり男を手玉に取る悪女であってこその不二子。そのアイデンティティを奪ってまで作る作品だったかどうか。
 記憶喪失ネタはよくあるパターンのまま展開し、『ルパン三世』ならではの新しい展開を見せてくれない。『FUJIKO's Unlucky Days』というほど不二子が困ることもないし、やはり使い古されたネタだ。
 コロンブスの卵は人間の肉体に作用して強化人間を作り出したり、気象コントロールをして大竜巻を暴れさせるなど不可思議な力を持っている。というか、二つの作用があまりにかけ離れすぎていて意味不明。
 終盤では車椅子生活の黒幕がコロンブスの卵の力で巨漢の怪人になり、立ち上がって襲って来る。いきなり怪人かい! TVスペシャルもこの頃から駄作が混ざってくる。この作品は異色作であるし、駄作気味だと思う。
 ナザロフを担当しているのは千葉繁。例によってハイテンションな人物で、かんに障るけたたましい笑い声を上げながら襲って来る。悪役としては珍しくラストでも死なない。代わりに銭形に逮捕されているが。
 コロンブス・ファイルに書かれていた内容は謎としても簡単で、どうしてこれまでコロンブスの卵が発見されなかったのか謎である。
 素直に魅力的な悪女としての不二子にフィーチャーすれば良かったのではないだろうか。

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『ルパン三世 炎の記憶 ~TOKYO CRISIS~』(1998) 92分 日本 日本テレビ、キョクイチ東京ムービー

監督:篠原俊哉 演出:雄谷将仁 プロデューサー:中谷敏夫、山下洋、尾崎穏通 原作:モンキー・パンチ 脚本:藤田伸三 キャラクターデザイン:平山智 作画監督:平山智、清水義治 美術監督:宮野隆 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、納谷悟朗、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、山寺宏一、林原めぐみ、中島誠之介、鷹西美佳、古市幸子

『ルパン三世』TVスペシャル第10弾。毎回、書き出しには悩んでいるんだが、このシリーズは"『ルパン三世』TVスペシャル第何弾"で始められるから楽でいいな。
 今年はエルニーニョ現象で冷夏になるとか言われているが、7月にもなるとそれなりに暑い。序盤でルパンがかき氷に缶ビールをかけて食っていたがあれは美味いのか。すごく微妙な気がするが。試してみようにもかき氷機ないし、断酒中だし。

 今回のお宝は徳川の隠し財宝。大政奉還時に新政府に取られないよう徳川幕府が隠したのだ。その在処は最後の将軍・徳川慶喜を写した二枚の乾板、「巽の慶喜」と「乾の慶喜」に記されているという。ルパンは銭形が運搬中の「巽の慶喜」を奪おうとするが、銭形の活躍で失敗。「巽の慶喜」は大実業家のマイケル・スズキ(山寺宏一)の元に届けられる。
 マイケル・スズキはテーマパーク"アクアポリス"を東京湾の人工島に建設しており、併せて江戸東京美術展を開催するため「巽の慶喜」を取り寄せたのだ。対になっている「乾の慶喜」も手に入れようとしており、彼は徳川の隠し財宝のことを知っているのだろうか。それともそれ以上の秘密があるのか。
 今回の主役は銭形警部。序盤からルパンを逮捕出来なかったものの「巽の慶喜」は守り通し本来の設定である腕利き刑事を披露する。そんな銭形を雑誌『TOKYO LIFE』の女性記者まりあ(林原めぐみ)が密着取材することになる。親子ほども年の離れた二人だが、銭形は次第に彼女に心を寄せていく。そして彼女は銭形に今は亡き父親の面影を重ねる。
 首都高で「乾の慶喜」を運搬中の輸送車が何者かに襲われ、警備中の銭形は応戦するが、乾板を狙っていたルパンも謎の集団も奪うことが出来ず、代わりに峰不二子がヘリコプターで乾板を持ち去る。ヘリコプターにはなぜか五エ門も乗っていた。
 首都高での騒動は死人は出なかったものの、何台もの車を巻き込み怪我人が出る事故となり、銭形は責任を取らされ警視総監から休職命令を突き付けられる。警察手帳、手帳、M1911を警視総監に返した銭形は、屋台でまりあを相手に安い酒をヤケ飲みする。酔いつぶれた銭形をまりあは安アパートまで送っていく。部屋はゴミだらけで、シンクには洗い物がたまっている。そんな男住まいの中で、ただ一つ飾られた十手だけが輝いていた。銭形の先祖・銭形平次が使っていた十手である。
 ルパンと不二子が手を組みマイケル・スズキの持つ「巽の慶喜」を盗み出そうとするが、謎の集団はマイケル・スズキの部下だった。この男はただの実業家ではなく、とある悪事を企んでいたのだ。その悪事の手段としてまりあが誘拐され、銭形のアパートも放火され全焼する。焼け落ちたアパートの前で呆然とする銭形だが、燃えあとにキラリと光る物を見つける。掘り出してみるとそれは銭形平次の十手だった。愛銃M1911の代わりに十手を握りしめると、まりあ救出に向かう銭形だった。

 今回のゲストヒロインまりあはルパンの相手ではなく銭形。演ずるのは林原めぐみ(1967-)。悪役のマイケル・スズキ役の山寺宏一(1961-)と当時としては比較的若手の中でも群を抜く実力者を揃えた。山寺宏一は現在でもアニメや洋画の吹き替え、早朝の子供向け番組の司会などで活躍しているが、林原めぐみは結婚・出産以降極端に仕事を減らしている。ちなみに山寺は部下のゴンドウ役も演じていて一人二役をこなし、二人だけの会話のシーンもある。さすが「七色の声を持つ男」。
 ゲストとしてテレビ東京系の人気番組『お宝鑑定団』の焼き物鑑定士・中島誠之介が江戸東京美術展の展示物鑑定士役で特別出演している。お決まりのセリフ「良い仕事してますねー」のほか多少喋るが、思っていたよりは上手い。素人声優としてはだが。サブタイトルの『炎の記憶』などの題字も書いている。キャラクターデザインは本人そのまんま。
 そのサブタイトルの『炎の記憶』というのがイマイチ分からない。まりあが亡くなった父親のことなどを少しずつ思い出していくのだが、その鍵となるのが炎というわけでもないし、火事のシーンはあるが記憶とは結びつかない。
 銭形に出番を取られて、ルパン一家はあまり活躍しない。ルパンはともかく、次元は虫歯が痛くてM19を撃っても外す。歯医者に治療に行ったのだが、その最中にルパンが運転する車が首都高から飛び込んできてそのままになってしまう。大事な時には毎回痛み止めを忘れてきて役に立たない。終盤で悪役に左頬を殴られ、虫歯が抜けたことでようやく復活する。
 五エ門は斬鉄剣を盗まれてしまい(どうやら女絡みらしい)、取り返すために不二子を手伝っている。斬鉄剣のない五エ門はこちらもほとんど役に立たない。斬鉄剣は江戸東京美術展の展示物倉庫に保管されており、そのために不二子と手を組んだと言うことになっているのだが、なぜルパンに頼まなかったのだろうか。女絡みだから言い出しにくかったのか?
 不二子は『TOKYO LIFE』の編集長として登場。マイケル・スズキに色仕掛けで近づこうとするが失敗。おいしいところはまりあに持って行かれている。
 主役扱いの銭形は休職になってもまりあと共に怪しいと感じたマイケル・スズキの本社ビルを望遠鏡で張り込む。携帯コンロでインスタントラーメンを作って鍋からそのまま食べていたが妙に美味そうだった。ヤケ酒で酔いつぶれた翌朝には、冷蔵庫の中に「二日酔いにはこれが一番」とメモが貼られた鍋を発見。中にはまりあが作った味噌汁が入っていた。このぉこのぉ。ルパン逮捕には失敗するが、マイケル・スズキに誘拐されていたまりあを取り戻し、警視総監から返却していた三つ道具を帰してもらい休職が解かれる。その際、まりあがM1911をひったくって父親の仇であるマイケル・スズキに銃口を向ける。でも撃鉄が起きてないぞ。M1911はシングルアクションだから、それだと引き金を引いても弾は出ないぞ。
 エンドロールの最中に、銭形がまりあに「お前の作ってくれた味噌汁を飲みたいな」と古典的告白をするが、まりあは「お父さんのような銭形さんのために作ってあげる」とまるで気付いていない。結局父親を思い出させてくれた人でしかなかったのだ。
『ルパン対複製人間』の銭形は結婚していて女の子もいるという設定だったのだが、あれは一作限りの設定か。ルパンシリーズは一作限りの設定というのが結構多い。TVシリーズを合わせるとかなりのエピソード数になるので統合性が取れない部分も出てくるのだろう。モンキー・パンチの原作自体かなり設定がいい加減だからな。次元は殺し屋だったり、相棒だったり、部下だったり、幼なじみだったり、時には刑事だったりする。
 例によってお宝はルパンたちの手には入らず、それどころか判明した隠し場所に向けてトンネルを掘るのだが、そこはとんでもない場所だった。というか、ルパンも江戸時代の地図だけじゃなくて現代の地図でも確認しておけよ。
 まりあには特殊能力があり、そのためマイケル・スズキに狙われたのだが、その特殊能力があまり活用されていなかった点は残念。