B00BHVSV20.jpg『ネバー・サレンダー 肉弾無双』 (2013) THE MARINE 3: HOMEFRONT 91分 アメリカ 20th CENTURY FOX、WWE STUDIOS

監督:スコット・ワイパー 製作:マイケル・J・ルイジ 製作総指揮:リチャード・ローウェル、マーク・ビエンストック 脚本:スコット・ワイパー、デクラン・オブライエン 撮影:ロン・スタンネット プロダクションデザイン:トロイ・ハンセン 編集:ダラス・プエット 音楽:ロバート・レヴェル 音楽監修:ダグ・バーンハイム 出演:マイク・"ザ・ミズ"・ミザニン、アシュリー・ベル、ニール・マクドノー、マイケル・エクランド、カミール・サリヴァン

 20世紀FOXとプロレス団体WWEが組んで作った『ネバー・サレンダー』シリーズの第三弾。原題で言えば『THE MARINE(海兵隊)』シリーズになる。
 退役した海兵隊員や休暇中で故郷に帰った海兵隊員が悪党が起こした騒動に巻き込まれ、結果的に奴らを全滅させてしまうのが毎回のパターン。『ハート・ブレイクリッジ』や『フルメタル・ジャケット』での過酷な訓練からみるに海兵隊員は強いのであろう。主役はアメリカWWEのスターレスラーで、今回のマイク・"ザ・ミズ"・ミザニンはリング上ではヒール(悪役)らしい。
 身体能力は高いのだろうが、それほど筋肉モリモリといった体型ではなくガタイのいいお兄ちゃんといったところ。1作目のジョン・シナ辺りと比べると肉体的には見劣りがする。顔つきもそこらのお兄ちゃんって感じで魅力に乏しい。
 肉弾アクションはほとんど無くて銃撃戦中心。逆に言えば現役プロレスラーを使っておきながら肉弾アクションを最終決戦などに持ってこないのは実にもったいない。悪党のボスが貧弱な時点で結末は見えてしまうのだが、ここはやはりプロレス技を使った格闘アクションでけりを付けて欲しかった。
 ザ・ミズは田舎の林業中心の街を出身で、一度は製材所に勤めたものの、物足りないので海兵隊に入ったという設定になっている。その間に両親は死んで、残った身内は姉と妹の二人だけ。そしてその妹がシアトルの金持ちを狙った爆破テロリストに拉致されてしまったために事件に突進していく。
 酒場で今では地元警察の署長になった友人と待ち合わせをしていた時に、絡んできた酔っ払いを思わず叩きのめしてしまったシーンは現役海兵隊員を感じさせた。
 ザ・ミズの帰郷にあわせて、姉妹がバーベキューをやって準備しているのだが、どう見ても食い物が不味そう。取りあえず肉が食えりゃ良いのかな。
 シリーズが進む毎につまらなくなっていく印象である。4を作るならば根っこから考え直して欲しい。

B00AA4G9JM.jpg『アーノルド・シュワルツェネッガーの鋼鉄の男(パンピング・アイアン)』 (1977) PUMPING IRON 85分 アメリカ WHITE MOUNTAIN FILM

監督:ジョージ・バトラー、ロバート・フィオレ 製作:ジョージ・バトラー、ジェローム・ゲイリー 撮影:ロバート・フィオレ 音楽:マイケル・スモール 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ルー・フェリグノ

 1975年に南アフリカで開催されたボディ・ビル大会ミスター・ユニバースに出場する選手達が自らを鍛えたり心理戦を仕掛ける姿などを描いたドキュメント・ドラマ。なぜドラマが付くのかというと観客を楽しませるために演出が施されているからだ。
 この作品の企画が出た時、出資者は「ボディビルダーが黙々とトレーニングを続ける作品なんか売れないよ」といい反応を示さなかった。そのため悪役を作ることにした。最初は後にTVドラマで『超人ハルク』のハルク役を演じたルー・フェリグノが候補に挙がったが、彼は幼い頃の病気で難聴であり、そのため常に父親が一緒におり善人顔だし相応しくないとなった。そこで名乗り出たのがアーノルド・シュワルツェネッガーである。「父親が死んだ時は大会の直前なので式には出なかったよ」とか「あいつのシャツを隠して精神的に追いつめてやったよ(子供のイジメか!)」とかインタビューに答えている。
 そこら辺に関しては映像特典に2003年のシュワルツェネッガーが真相はどうであったかについて話している。精神的に追いつめたり他のボディビルダーに嘘を教えたりは演出だったと答えながらも、マリファナを吸っていたシーンは本物だったとか、ステロイド(筋肉増強剤)を服用していたことなどは素直に認めている。だけどそれほど悪役に見えないんだよな。
 しかしまぁシュワルツェネッガーの若いこと若いこと。そしてその完璧とも思えるボディ。日本での実質的デビュー作『コナン・ザ・グレート』(1982)を劇場で観た時にはなんて筋肉なんだと驚いたものだが、あれでも全盛期よりは落ちてたんだ。
 シュワルツェネッガーが刑務所に慰問に行くシーンがあって、囚人達からポージングをするシュワルツェネッガーに拍手が沸き起こるのだが、お前ら男ばっかの生活の中でこれ以上筋肉観て面白いんかい。まぁアメリカの刑務所映画では休憩時間にグランドでウェイトリフティングをやっている奴は必ずと言っていいほど登場するから日本人には分からない筋肉への憧れがあるのかもしれない。サーカス物でも怪力男は定番だしな。
 自分を悪役に仕上げて結果一番おいしいところを持っていくというやり方は後の『ターミネーター』(1984)ではジェームズ・キャメロンがリンダ・ハミルトンを守るカイル役でオファーしたところ、脚本を読んだシュワルツェネッガーは「ターミネーター役ならやってもいいよ」と答えたらしい。本来のターミネーター役はジェームズ・キャメロンと親しいランス・ヘンリクセンだったそうで、顔半分が機械むきだしになっているラフ画を見たことがある。元ボディビルダーだから自分の見せ方というのを心得ているので、悪役のターミネーターが一番おいしい役であるというのを察したのであろう。
 そういえばこの頃のシュワルツェネッガーは右顎の付け根のところに大きなホクロがあるんだね。手術で取ったんだろうな。
 シュワルツェネッガーとルー・フェリグノ一家が一緒にテーブルを囲んで朝食を食べているシーンでは「ターミネーターと超人ハルクが一緒に飯食っている! 戦ったらどっちが強いんだろう?」と夢の対戦を想像。

B00BAMTI00.jpg『阿羅漢』 (1986) 南北少林/MARTIAL ARTS OF SHAOLIN 98分 中国/香港 SHAW BROTHERS

監督:リュー・チャーリァン 製作:アン・ツエカイ、リュー・イェユエン 脚本:ツ・ヤン・ピン 撮影:チャオ・アンサン 音楽:ジェームズ・ウォン 出演:リー・リンチェイ、フー・チェンチャン、ユー・チェンウェイ、ユエ・ハイ

昨日の『96時間/リベンジ』では格闘アクション分が不足していたので、格闘アクションだらけの『阿羅漢』を観る。ちなみに『あらかん』ではない、それでは嵐寛寿郎だ。『あらはん』と読む。主役は現ジェット・リーことリー・リンチェイ。他にも武術家がわんさか出る。監督のリュー・チャーリァンまで武術家だ。
 リー・リンチェイは1963年生まれなのでこの頃は23歳と肉体的にはもっとも充実していた時であろう。ハリウッドの影響でアクションスターといえば筋骨隆々なイメージだった日本において貧弱にも見えるリー・リンチェイの登場はエポックメイキングであった。技のキレという面ではあれぐらいの筋肉の付き方がちょうどよいのであろう。リー・リンチェイの場合、戦うための肉体ではなく技を見せるための肉体だ。元々がハリウッド指向だったブルース・リーの場合は筋肉にこだわっていて、筋トレを欠かさず行っていたというし、筋肉増強剤も使っていてその副作用で死んだという説もある。千葉真一だって意外に筋肉あるしな。
 とにかく格闘アクションが目当てなので、細かいストーリーとかカメラの構図やカット割りなんかは気にしない。所々のくだらないギャグで流れが中断されるがそれも愛嬌。リー・リンチェイが女装した羊飼いの娘なんかなかなか観られないぞ。あとは一つまみのロマンスを混ぜ合わせて出来上がり。
 邦題は『阿羅漢』だが原題は『南北少林』である。『少林寺』で鮮烈デビューしたリー・リンチェイ主演作なのだから素直に『南北少林寺』でいいじゃないかと思うが、そこを無駄に捻ってくるのがさすが東宝東和だ。少林寺にも南北の二つがあるとはこの作品で初めて知った。北少林寺で受け継がれている拳法が北斗神拳で南少林寺で受け継がれているのが南斗水鳥拳である。どこかでなんか別の物が混ざっている気がするがまぁいい。
 ストーリーは悪徳総督を北少林寺のリー・リンチェイと南少林寺の若者と少女が力を合わせて倒すというものである。この総督はリー・リンチェイと少女の両親の仇らしいのだが、それ以外にこれといった悪事をする描写がない。民に重税を課すとか、反逆者を皆殺しにするシーンがあると観客からも憎らしいという感情がわき上がってくるのだろうが、紫禁城の玉座でふんぞり返っていたり、船の上でふんぞり返っていたり、とにかくふんぞり返っている奴というイメージしかなかった。やはりアクション物には魅力的な悪役が必要である。
 肝心の格闘シーンは、スピード感はあるものの寸止め風の全力が込められていない感じの突きや蹴りで、どちらかというと演武を観ているかのようだ。見事の一言ではあるが、この時点での一発一発の痛そうな技の重さはジャッキー・チェンの方が上であったように思う。リー・リンチェイは相手の技をかわすのに対し、ジャッキーは技を食らって痛がるのが芸だしな。
 もっともこれに関してはリー・リンチェイのせいではなく監督のリュー・チャーリァンの責任だと思う。武術家だから武術映画が撮れるわけではなく、全体的に凡庸でアクションの見せ方も工夫がない。ジャッキー映画もユエン・ウーピンなどの武術家が撮っていたりするが、ジャッキーの場合は自分から率先してアイディアを出していたと聞く。
 武術を学んでいないがアメリカで映画を学んだツイ・ハークが盛りを過ぎたと言われていたリー・リンチェイと組んで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズでダイナミックなカメラワークとこれまでは補助的にしか使われていなかったワイヤーアクションを前面に押し出して大ヒットさせたのは興味深い。
 武術映画を撮るのに武術の経験は必須では無い。シルヴェスター・スタローンだってボクシング経験は無いだろう。だが元世界チャンピオンのガッツ石松が撮った『カンバック』(1990)と『ロッキー』のどちらを選ぶかといったらそりゃあ・・・。ガッツさんがいい人だってのは伝わってくるんだけどね。でも映画監督は善人よりも性格の悪い奴に向いた職業であると思うのだ。

B00APA14Y6.jpg『96時間/リベンジ』 (2012) TAKEN 2 92分 フランス/アメリカ EUROPA CORP.、20th CENTURY FOX

監督:オリヴィエ・メガトン 製作:リュック・ベッソン 脚本:リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン 撮影:ロマン・ラクールバ プロダクションデザイン:セバスティアン・イニザン 衣装デザイン:オリヴィエ・ベリオ 編集:カミーユ・ドゥラマーレ、ヴァンサン・タベロン 音楽:ナサニエル・メカリー 出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス、ファムケ・ヤンセン、ラデ・シェルベッジア、リーランド・オーサー、ジョン・グライス、D・B・スウィーニー、ルーク・グライムス、ケヴォルク・マリキャン、アラン・フィグラルツ、オリヴィエ・ラブルダン、ルネル

『96時間』(2008)の続編だからこんな邦題になってしまうのかな。でも、どちらかというとリベンジが悪役側にではなく主人公のリーアム・ニーソン側にかかってくる気がしてならない。リーアム・ニーソンが復讐するのな。実際には『96時間』で殺された悪役の身内がリーアム・ニーソンに復讐する話なのだが。前作ではパリで拉致された娘が無事に帰ってくる可能性の分岐点96時間が邦題となったわけだが、これは2作目の製作が発表になって配給の20世紀FOXはしまったと思ったのではないだろうか。
 前作では娘のキムからも元妻のレノーアからも距離を取られていたリーアム・ニーソンだが、今回はキムの運転免許取得のための練習につき合ったり、レノーアとも普通に会話するなど関係はかなり改善されている。レノーアは現夫と上手くいっていないようで復縁を予感させる。どうでもいいけど現夫は姿も見せない。
 キムがボーイフレンドと付き合い始めたと聞くと、さっそくCIAのネットワークを使って身元調査をするなどお父さんは心配症なのは相変わらずのようだ。
 リーアム・ニーソンが要人警護ためにイスタンブールでの任務が完了したところに、突然キムとレノーアが現れた。一緒に休暇を過ごしましょうというのだが、キムはともかく現夫と揉めているレノーアまで来ちゃって良いんだろうか。もう離婚が回避出来ないところまで関係が悪化しているのかもしれないが、離婚裁判になったら不利にならかいか?
 これでバカンスを楽しんでアメリカに帰ったならめでたしめでたしなのだが、それじゃあ映画にならない。『96時間』でキムを誘拐しリーアム・ニーソンによって壊滅させられた女子誘拐グループの身内が"リベンジ"のために襲ってきたのだ。 「お前によって殺された者は、息子であり夫であり父でもあった」と今回の悪役グループのリーダーは言う。そいらが殺されて当然の奴らだったとしても家族は家族なのだ。
 リーアム・ニーソンとレノーアを復縁させたいと考えているキムは「ホテルの屋内プールで泳ぎたいから」と詐って二人を街の観光へ送り出す。だが途中で襲撃を受けて二人は拉致されてしまう。その時にリーアム・ニーソンがキムにかける「ママとパパはこれから拉致される」は前作での「これからお前は誘拐される」の電話を思い起こさせる。
 二人とも頭巾を被せられ目隠しをされてしまうのだが、リーアム・ニーソンが秒数をはかりながら「右折した」とか「楽器が鳴っている」など外部の音を聴いておおよその位置と道順を把握してしまうのがさすがプロ。
 そんなプロを相手にしているのに悪役グループのやることがどうも行き当たりばったりだ。二人を地下室に監禁しているのにつきっきりの見張りも付けず、何をやっているかというとTVでサッカーを見て応援している。緊張感がまるで無い。
 案の定、リーアム・ニーソンは隠し持っていた小型携帯電話を使ってキムに連絡を取り、手榴弾を使わせて爆音で距離を測る。イスタンブールのあの特徴のある建物の屋根を伝ってキムは二人が囚われている建物を見つけ、煙突から拳銃を落とす。このオヤジが武器を持ったらもう敵う者なし。敵によって負傷させられ身動きが取れないレノーアに「必ず戻ってくるからな」と告げキムを助けに向かう。
 屋根の上を悪役に追われて逃げるキム。つい先日はジェームズ・ボンドがバイクでこの屋根を疾走しているのを観たが、製作費が違うのであろうこちらは人間の足で走る。『スカイフォール』は屋根の修繕費だけで結構いったんじゃないだろうか。雨はあんまり降らなさそうだから雨漏りの危険が少ないだけマシか。
 リーアム・ニーソンはキムを助け、キムが運転するタクシーでアメリカ大使館を目指す。序盤でキムが何回も運転免許試験に落ちているという説明があったから、さぞかしキムの運転は下手くそなんだろうなと思ったら激しいカーアクションをちゃんとこなしていた。異国情緒溢れるイスタンブールの街を車が突っ走る。何でもリアリティ重視で住人が普通に生活している中、ゲリラ撮影的に撮ったそうだが、おそらく道路封鎖をするだけの金がなかったのだろう。それにしてもイスタンブールは魅力的だ。2020年オリンピックはかなりヤバそうだ。東京の街並みなんて美しくも珍しくもないものな。
 キムをアメリカ大使館に保護してもらうと、リーアム・ニーソンはレノーア奪還に向かう。一人また一人と片付けていき、公衆浴場の台の上で悪役とにらみ合った時は震えが来たものだが、残念ながらそこから始まる格闘アクションに今一つ迫力が無い。相手役のアラン・フィグラースはアクション指導も行っている武術家なんだが、手でパチパチ叩き合っている感じで足技はなし。リーアム・ニーソンに肉体アクションを期待するのが間違っているんだろうけどね。最近のアクション指向で身体は鍛えているんだろうけど1952年生まれの還暦だし。
 ついに追いつめられたリーダーにリーアム・ニーソンは言う。
「お前にはまだ息子はいるのか?」
「二人いる」
「ならば田舎に帰って余生を送れ。お前を殺したところで、その息子達が復讐に来るだけだ」
 拳銃を捨て立ち去ろうとするリーアム・ニーソンにリーダーはその拳銃を拾って構える。おいおい、それ死亡フラグだぞ。そしてカチリと鳴る撃鉄。いや、拳銃の型を見るとストライカー形式か? リーアム・ニーソンが振り向き握っていた手を開くとそこには一発の銃弾が。伏線として部下キャラとの対戦時にマガジンが落ちているので、残っているのは薬室の一発しかない。それを素早く抜いていたのだ。もちろんリーダーは瞬殺。
 エンディングは桟橋先のカフェで三人仲良くテーブルに座っている。運ばれてきたのはジュースが三つ・・・と思いきや四つ。登場したのはキムのボーイフレンド。微妙な顔つきのリーアム・ニーソンだが受け入れたのは身辺調査で怪しいところがなかったからだろう。
 次回作『TAKEN 3』ではきっとリーダーの息子二人がリベンジにやって来るに違いない。というか、なんで今回の作戦には参加してなかったんだろうな。

B00BHALO52.jpg『白熱』 (1973) WHITE LIGHTNING 102分 アメリカ

監督:ジョセフ・サージェント 製作:アーサー・ガードナー、ジュールス・V・レヴィ 脚本:ウィリアム・ノートン 撮影:エドワード・ロッソン 音楽:チャールズ・バーンスタイン 出演:バート・レイノルズ、ネッド・ビーティ、ジェニファー・ビリングスリー、ボー・ホプキンス、マット・クラーク、ローラ・ダーン、ダイアン・ラッド、R・G・アームストロング

『白熱』といってもラオール・ウォルシュ&ジェームズ・キャグニーの1949年作品(傑作!!)ではなくてバート・レイノルズの方。
 アメリカ南部でゲイター(バート・レイノルズ)の弟が何者かによって殺され、そこに密造酒が絡んでいると知った囚人のゲイターが財務省と取引をして仮出所し、謎を解き明かすというハードボイルドアクションである。まだトレードマークの口ひげがないバート・レイノルズが男性フェロモン全開で暴れまくる。
 エンドロールがなくてオープニングクレジットにキャスト・スタッフの表記があるが、第2班監督がハル・ニーダムとなっている。もちろん『トランザム7000』のあのハル・ニーダム監督だ。この作品ではスタントマン上がりのアクション監督をやっていたのである。その後、何度もバート・レイノルズと組むことになる。
 ネッド・ビーティが珍しく悪人を演じており、密造酒を取り仕切っている保安官役で登場する。ワイロを部下に分け与えてやったり、騒動を起こす連中を取り締まったりと単純な勧善懲悪ではなく全くの悪人ではないのがニューシネマを感じさせる。
 オープニングのブロックにロープで縛られてボートに乗せられた青年二人が静かに湖面を進んでいくシーンはこれから何が起こるのだろうと期待させてくれるのだが、実は学生運動で集会を開いてその見せしめで殺されたという陰謀と呼ぶにはちょっと期待外れ。
 見せ場はラストのカーチェイス。ゲイターの乗った車をパトカーが追いかける。『トランザム7000』など後の作品と比べると正直チープだが荒野をぶっ飛ばす車の迫力は伝わってくる。
 それにしてもゲイターが考えなしなので潜入捜査など勤まるのかと思ったが、ネッド・ビーティ側が勝手に深読みして自滅してしまうのであった。
 いつ出るか、いつ出るかと待っていたがようやく日本でもDVD化された。続編でバート・レイノルズ初監督作品の『ゲイター』もついでに出して欲しかった。

B00B1NYC7M.jpg『007 スカイフォール』 (2012) SKYFALL 143分 イギリス/アメリカ

監督:サム・メンデス 製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 製作総指揮:カラム・マクドゥガル キャラクター創造:イアン・フレミング 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ジョン・ローガン 撮影:ロジャー・ディーキンス プロダクションデザイン:デニス・ガスナー 衣装デザイン:ジェイニー・ティーマイム 編集:スチュアート・ベアード 音楽:トーマス・ニューマン テーマ曲:モンティ・ノーマン 主題歌:アデル 出演:ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ベレニス・マーロウ、アルバート・フィニー、ベン・ウィショー、ジュディ・デンチ、ロリー・キニア、オーラ・ラパス、ヘレン・マックロリー

 ジェームズ・ボンド誕生50周年記念作品。監督が『アメリカン・ビューティー』などのサム・メンデスなのでアクションにはあまり期待していなかったが、その分ジェームズ・ボンドやMなどの人間性に迫った作品となった。
 初期から中期にかけてのジェームズ・ボンドは無敵のスーパースターだった。ワルサーPPK/Sを撃てば百発百中。格闘技もお手の物だし、もちろんQの作ったスパイ道具も使いこなす。そんなジェームズ・ボンドが死ぬはずがない。
 しかし今作のジェームズ・ボンドはオープニングのアクションで味方の女スパイの誤射により死んだことになってしまう。もちろん本当に死んでしまったら押井守作品のような意味不明の物になってしまうので実は生きていたのだが、MI6に出頭せず恋人をつくって酒に溺れる日々を送っていた。
 オープニングで奪われたのが、敵陣にモグラとして潜り込ませてあるスパイの名簿だった。犯人はその名簿から毎週5人ずつ公表していき、中には殺されしまう者もいる。犯人の目的は一体何なのか?
 なんなのかというと基本的にはMに対する復讐である。犯人のシルヴァは元はMI6のエージェントだったのだが敵に捕まり数ヶ月にもわたって拷問にかけられた。いよいよとなって奥歯にかくされたシアン化合物のカプセルを噛みしめたのだが身体が丈夫だったのか死ねなかったのだ。人質にした時点で毒物を持っていないか確かめそうな物だがそれはそれとして、シルヴァはMが自分を見捨てたと思って恨んでいる。いや、母親に見捨てられた子供のように恨んでいる。いわゆるマザコンだ。
 Mが女性になってずいぶん経つが、サッチャーが鉄の女だったようにMも意志が強く味方の犠牲もいとわない鉄の女だった。ボンドの誤射も女スパイに無理矢理撃つようにMが命令したからで、ボンドはそれに反感して酒に溺れていたのかも知れない。
 だから今回の戦いはスパイ合戦をしながらボンドが女とイチャイチャではなくMという母親を殺そうというシルヴァと守ろうというボンドの戦いである。ボンドは幼くして両親を亡くしているが、シルヴァも母親を早くにして亡くしているのかもしれない。マザコン同士のマザコン合戦である。そんなシルヴァになんであれだけ仲間がいたのだろうか。金かな。
 ボンドのスパイとしての適正結果も実は落第であり年齢を感じさせる物となっているが、ロジャー・ムーア・ボンドの後半に無理具合を思えばリアルではある。
 結局シルヴァはMと無理心中しようとしていたのだ。今作を持ってMは交代することになるがジュディ・デンチもさすがに年だから後はのんびり老後を過ごしてもらおう。次回作ではダニエル・クレイグの交代もありかな。
 50周年記念作品ということもあってか、アストンマーチン(助手席発射装置・マシンガン搭載)や久々のマネーペニーの登場も嬉しい。
 ただ、現代におけるスパイ(工作員)の存在意義が薄れているような気がする。昔は人類滅亡を目指した敵と戦ったこともあるのに、今回のシルヴァは小物感がある。一大悲劇と言えば一大悲劇なんだが。
 終盤のボンドの生家スカイフォールでの戦いはなんかペキンパーの『わらの犬』を思い起こさせる。番人役のジイさんが良い味を出していた。
 長崎は軍艦島で撮影されたシーンは短いながらも印象に残っている。
 ともあれ個人的にはジェームズ・ボンドは無敵のスーパーヒーローで、話は大袈裟で荒唐無稽な頃が一番好きだった。今ではその手の作品はアメコミヒーロー物が担ってるんだろう。

sekaiga.jpg『世界が燃えつきる日』 (1977) DAMNATION ALLEY 91分 アメリカ

監督:ジャック・スマイト 製作:ポール・マスランスキー、ジェローム・M・ザイトマン 製作総指揮:ハル・ランダース、ボビー・ロバーツ 原作:ロジャー・ゼラズニイ 脚本:ルーカス・ヘラー、アラン・シャープ 撮影:ハリー・ストラドリング・Jr 音楽:ジェリー・ゴールドスミス 出演:ジョージ・ペパード、ジャン=マイケル・ヴィンセント、ポール・ウィンフィールド、ドミニク・サンダ、ジャッキー・アール・ヘイリー、キップ・ニーヴン、ロバート・ドナー

 監督が『ミッドウェイ』(1976)のジャック・スマイトだから期待してなかったが、これが実際ハチャメチャで、子供の頃TVで放映されているのを観てなんであんなに興奮したのかと不思議になってしまう。やはり万能自動車ランドマスターの魅力かな。
 冷戦の時代、ついに核戦争が始まった。大陸間弾道ミサイルを撃ってきたのは敵国の方で、克明などは明らかにされていないが地図に表示されたミサイルの軌道を見るにソ連だろう。
 ジョージ・ペパードやジャン=マイケル・ヴィンセントらは大陸間弾道ミサイル迎撃基地にいて、40%のミサイルは撃ち落とした物の、残りの核弾頭はアメリカの大都市を軒並み破壊していく。
 地軸は傾き草木は枯れ、空は怪しく輝く異世界になってしまった中、ジャン=マイケル・ヴィンセントは軍を辞めバイクを乗り回している。こんな緊急時に軍を離れる事が出来るのかがまず謎だ。
 放射能汚染によるのだろうか、巨大サソリが基地の周りをうろついている。ジョージ・ペパードは船にもなる万能装甲自動車ランドマスターを2台作ると他に生き残りがいないか探索の旅に出ようとしていたが、基地で事故が発生し爆発してしまう。生き残った4人は遠くから定期的に聞こえてくる無線通信調べに出発した。その通信が人間がやっているのか、コンピューターが自動で流しているのか分からないまま。
 セリフによると核戦争から2年が過ぎているようであるが、途中で合流した女性や少年はシェルターに避難していたわけでもないのに放射能の影響を受けていないようである。そのくせして食肉ゴキブリは踏んでも潰れずあっと言う間に人間を白骨にしてしまう。冒頭の核戦争のシーンがオッと思うものの、フィルムライブラリーからの資料映像を使っているだけなので迫力があって当たり前。全体的にSFXの出来は良くない。
 大人、青年、女性、少年の4人組のロードムービーとしても力が抜けた感じだ。
 だがそれを覆してくれるのがランドマスターの勇姿だ。トレーラーを改造した密閉式の軍事車両で、製作費が1億ぐらいかかっているとか。車内にはシャワーも搭載されている。2台あるという設定になっているが、実際に作られたのは1台だけ。
 ラストに大雨が降ったら地軸が戻ってしまい、青空が戻ってくる。そうして平和に生き延びていた人達と出会って終わり。邦題の割りには『もえつきてない』なぁ。
 後はジェリー・ゴールドスミスの音楽ぐらいか。

B002ORLC0O.jpg『昨日・今日・明日』 (1963) IERI, OGGI, DOMANI 119分 イタリア/アメリカ

監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 製作:カルロ・ポンティ 脚本:エドゥアルド・デ・フィリッポ、ヴィラ・ヴィラ、チェザーレ・ザヴァッティーニ 撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ 音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ 出演:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、ジョヴァンニ・ルドルフィ、ティナ・ピカ

 ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニがそれぞれ別の役柄で出演する3本のオムニバス映画。
 1本目は、妊娠中と出産後6ヶ月の女性は逮捕されないというのを逆手に取った闇タバコ売りのソフィア・ローレンが次から次へと子供を産んでいくと言うもの。
 2本目は、富豪の婦人のソフィア・ローレンが愛人のマルチェロ・マストロヤンニとドライブに出かけるが、どうにも噛み合わず浮気の代償をとらされると言った話。
 3本目は神学生ジョヴァンニ・ルドルフィはアパートの向かいに住む美女ソフィア・ローレンが気になって仕方ない。ある晩、思い切ってデートに誘うのだが、ローレンは実はコールガールで、実業家の御曹司マストロヤンニが彼女との情事を過ごすためにやって来る。
 どれもソフィア・ローレンの魅力が満開である。迫力のあるボディに個性的な顔。  それと同じぐらいに、情けない男役のマルチェロ・マストロヤンニも良かった。  それぞれに個性溢れる人情三題噺である。

B003N4STE4.jpg『世界残酷物語』 (1962) MONDO CANE 91分 イタリア

監督:グァルティエロ・ヤコペッティ、フランコ・E・プロスペリ 脚本:グァルティエロ・ヤコペッティ 撮影:アントニオ・クリマーティ、ベニート・フラッタリ 作詞:ノーマン・ニューウェル 作曲:ニーノ・オリヴィエロ 音楽:リズ・オルトラーニ

『世界残酷物語』という割りにはそれほど残酷ではない。1962年のドキュメンタリー映画としては充分に残酷だったのかも知れないが。
 世界各地の民族の奇妙な風習が語られる。土地が痩せているので5年間待つだけ待ってお祭りになると豚を屠殺しまくって食いまくる部族や、飛行機を崇拝する未開人、女性からマッサージを受ける日本人などである。
 海岸で方向を間違えて内陸へと進んでいきついには息絶えるウミガメのエピソードは実に悲惨だ。息絶えたウミガメはひっくり返っているのだが、周りに乗り上げるような物はない。これはヤコペッティがひっくり返したのではないだろうか。どうみてもやらせというシーンは多い。
 TVが発達した今では居間に居ながらにして世界の奇妙な風習などを見ることが出来るが、この作品の頃は映画館に出向いてみる物だった。ヤコペッティのドキュメンタリーは手を加えている時点で劇映画と行っていいものだろう。
 台湾では犬を食っていて、アメリカでは犬用の墓地があり、その墓に犬がオシッコをひっかけているという構図が皮肉だった。

B005KOK5NI.jpg『アンツ』 (1998) ANTZ 83分 アメリカ DREAMWORKS PICTURES

監督:エリック・ダーネル、ティム・ジョンソン 製作:ブラッド・ルイス、アーロン・ワーナー、パティ・ウートン 脚本:トッド・アルコット、クリス・ワイツ、ポール・ワイツ 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ、ジョン・パウエル 声の出演:ウディ・アレン、シャロン・ストーン、シルヴェスター・スタローン、ジーン・ハックマン、アン・バンクロフト、クリストファー・ウォーケン、ダン・エイクロイド、ジェニファー・ロペス、ダニー・グローヴァー

 ウディ・アレンが他人の監督作で主役を演じたのは『ボギー!俺も男だ』(1972)『ザ・フロント』(1976)とこの『アンツ』だけだと思うが、『アンツ』が他の作品と異なるのはCGアニメーションでウディは声優として参加していると言うことだろう。
 オープニングではいきなり精神分析医に掛かっているウディ。「君は自分が無意味な存在であることを認識することでブレイクスルーを果たした」と実に胡散臭い精神分析医だ。
 ウディの所属する巣ではメガトンネルの拡張工事を行っており、これが完成すれば食料の配分などがより豊かになるのだと陣頭指揮をとっているジーン・ハックマン将軍は言うのだが、実はその影に大いなる陰謀がかくされていた。
 ウディは相変わらず自分には子の仕事は向いていないのではないかと思案中。そんなある日、お忍びで庶民の生活を見に来たシャロン・ストーン王女と酒場で出会い、ダンスを通じて親しくなる。
 働きアリの他に労働階級としては兵隊アリがいて、ウディと2秒差で産まれたのがシルヴェスター・スタローンもそんな兵隊アリの一人だ。もちろん筋骨隆々。シャロン・ストーン王女ともう一度会いたいウディは友人のスタローンに頼み込んで一日だけ働きアリと兵隊アリの役割を替わってもらうことにする。ところがなんと、強敵シロアリ軍との戦いに駆り出されてしまう。
 ウディのことを目にかけていた古参兵のダニー・グローヴァーは首だけになって死に、実に過酷な戦いが繰り広げられた。
 そんな中、ジーン・ハックマン将軍に迫られて巣を抜け出してきたシャロン・ストーン王女はウディと共に昆虫の楽園、昆虫トピアにたどり着く。ようは人間のゴミ捨て場なのだが、それがおいしそうなご馳走に感じられる。
 安住の地を得たかに思われたウディたちだったが、兵隊アリのクリストファー・ウォーケンにシャロン・ストーン王女が連れ去られてしまう。巣に帰されたシャロン・ストーン王女は母親のアン・バンクロフト女王と再開するが、そんな彼らを一網打尽にして殺そうというジーン・ハックマン将軍の計画が遂行間近となっていた。ダン・エイクロイドの蜂が運んでくれたおかげで時間を節約出来たウディだったが、果たして間に合うのか?
 ウディ演ずるアリが実にウディそのままで笑える。スタローンなんか、実写の演技よりも吹替の方が上手いんじゃないの。とにかく豪華な声優陣に驚く。声優も俳優の仕事の一部だから、優れた俳優は優れた声優である確率が高いのだ。
 残念なのは昆虫たちの外見が可愛らしくなく、時にグロテスクであること。ピクサーの『バグズライフ』はこの作品を徹底的に研究して作られたに違いない。
 ラスト、地上に出たカメラが引いていくと、そこはニューヨークの公園だったことが分かる。うむ、やはりウディときたらニューヨークか。

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