『さよならジュピター』 なかったことということで

B000FHVUV6.jpg

『さよならジュピター』(1984) BYE BYE JUPITER 129分 日本 東宝、株式会社イオ

監督:橋本幸治 製作:田中友幸 原作:小松左京 脚本:小松左京 撮影:原一民 美術:竹中和雄 編集:小川信夫 音楽監督:羽田健太郎 総指揮:小松左京 特技監督:川北紘一 特技撮影:江口憲一 特技助監督:浅田英一 特技美術:寒竹恒雄 助監督:三好邦夫
出演: 三浦友和、マーク・パンソナ(マーク・パンサー)、キム・バス、ウィリアム・タビア、レイチェル・ヒューゲット、岡田真澄、平田昭彦、ポール大河、ディアンヌ・ダンジェリー、小野みゆき、森繁久彌

「さよなら木星、またきて四角」というのはとり・みきが『くるくるくりん』だかで使ったギャグだが、それはともかく当時のSFファン(少年時代の私を含む)は小松左京の「日本のSF映画の歴史を変える」という言葉を信じて公開を今か今かと待ち構えていた。なんてったって日本を代表するSF作家の一人小松の親分さんのいうことだ。期待するなという方が無理である。
 そして公開された。盛り上がっていたSFファンたちは......なにも言葉を発さなかった。かくして「なかった」とこにされてしまい、日本のSF映画は変わるどころかほとんど作られなくなってしまう。
 いろいろ戦犯はいるのだが、小松左京が書いた脚本にも問題がある。SFは知り尽くしている小松左京だが映画のことはあまり知らなかったようだ。じっくり読んでくれる小説と違い、映画は適当に盛り上がる部分を入れていかないと観客がダレてしまう。だがこの映画は終盤までほとんど盛り上がることが無いまま進む。数少ないイベントも、主人公の三浦友和と恋人の無重力エッチや、ジュピター教団が遊ぶビーチでの三浦友和のショボいジョーズ退治ぐらいで、どちらもトホホなのだ。
 では日本の映画界にSFが分かる脚本家がいたかというとこれも怪しい。アニメ畑の伊藤和典を平成ガメラシリーズで起用し成功したように、アニメ界から脚本家を連れてくればよかったのかも知れない。多分、東宝が許さないだろうが。
 監督の橋本幸治がどう考えてもSFにもSFXにも興味がなさそうなのが観ていて辛い。このおっさん分かってないんだろうな。その後『ゴジラ』(1984)を撮るが、今では消えてしまった監督だ。今作も『ゴジラ』も予算を注ぎ込んだ割りにはヒットしなかったろうし、それぞれSFファン・怪獣映画ファンからなかったことにされているっぽいので仕方ない。
『アウトレイジ』シリーズではすっかり渋くなっていた三浦友和が若い若い。22世紀の惑星軌道上の宇宙基地が主な舞台で、外国人も多く国際色豊かな顔ぶれなのに三浦友和は日本語で喋る。外国人の多くは英語でしゃべり、ドイツ語やフランス語(?)をしゃべる人もいて、それらには字幕が出る。どうやって言葉が通じているのかというとバッチサイズの小型万能翻訳機が開発されていてそれがリアルタイムに翻訳してくれるのだ。でも、三浦友和は基地では地位の高い主任だかでインテリという設定なのに翻訳機を落としてしまうと英語が分からないというのはどんなもんだろうか。世界大統領の森繁久彌まで日本語だからな。お前らの地位なら英語しゃべれよ。いっそのこと全編英語で撮れば良かったのにとも思ったが『スキヤキウエスタン・ジャンゴ』になっても困るか。それにしてもゲスト扱いの森繁なんだが、彼が名優扱いになったのはいつ頃からかね。昔は「喜劇社長」シリーズなどの喜劇役者だったと思うのだが。
 東宝特撮映画ということで平田昭彦がゲスト出演。太陽系遠部調査船に乗り込み最初にブラックホールと接触することになるが、ブラックホールに吸い寄せられてその引力でコールドスリープの容器に押しつけられるのだが、どう見ても自分でガラスに顔を必死で押しつけているだけ。岡田真澄は日本人俳優の中で唯一ちゃんと英語をしゃべる役。さすがですな。
 太陽系の外からマイクロブラックホールが飛んでくる。このままのコースでは太陽とぶつかり人類は滅亡してしまう。そこで外宇宙への宇宙船団による一億人の移住計画と共に、三浦友和が発案した木星をブラックホールにぶつけて軌道を変えるという計画を進めることになる。そもそも、三浦友和たちは『木星太陽化計画』として『太陽になり損ねた星』といわれる木星からエネルギーを取り出す研究をしていた。それを応用して木星内部で核融合を起こしロケットのように打ち出そうというのだ。
 ブラックホールに木星をぶつけるというアイディアは壮大だしSFである。実際、原作小説は面白いのだ。アメリカからも映画化のオファーがあってクリント・イーストウッド主演で話が進んでいたという噂も聞いたことがあるが、あれは小松左京のふかしだったのだろうか。
 ジュピター教団は自然を愛する活動を行う教団で、一部信者が過激な行動をしている。教祖のピーターはギターを抱えてフォークソングを歌うヒッピーオヤジ。22世紀にヒッピーはないだろと思うが、1960年代回帰でもあったんだろうか。唐沢なをきが『さよならジュピター』のパロディを描いていたがその中ではハナ肇演ずる「あっと驚くタメゴロー」オヤジの格好になっていた。こいつらの中の過激派が終盤に木星衛星軌道基地に乗り込んできて計画を阻止しようとしレーザーガンによる撃ち合いになるのだが、これがまた盛り上がらないことったら。わざとやってんじゃないかと思うレベル。
 日本映画としては始めてモーション・コントロール・カメラを本格的に使った作品のはずだが、これもいろいろ問題があったそうだ。本来ならば一コマ一コマ時間をかけて長時間撮影をしなければいけないところを、製作期間に余裕がないものだから照明をガンガンに当てることで撮影時間を短くしようとしたら照明の熱で宇宙船のミニチュアが溶けたとかいう話を聞いたことがある。結局、終盤の基地から宇宙船が何隻も一斉に発進するシーンは繰演で撮られている。いわゆる"吊り"である。上から細いワイヤーで吊しているという昔ながらの手法。『スター・ウォーズ』初期三部作では多くの宇宙船を光学合成で合成ラインも感じさせずに1枚画として映し出していたというのに。結局、円谷特撮から抜けてないんだよな。特技監督の川北紘一は円谷英二の弟子だが、その枠から出ていない。今年のハリウッド版『GODZILLA』公開に際してNHKで日本特撮の特別番組が放映されたが、いまだに職人芸のミニチュアがどうした、怪獣は着ぐるみじゃなきゃとか言ってんのな。おまいら世界から置いていかれてますよ。危機感持ってますか?
 唯一許せるSFXは木星が変形して飛び去っていくシーンのCGかな。あのCGは京大かどっかの大学に作ってもらったんだっけか。今観るともちろん全然大したことはないし、『スター・トレック2カーンの逆襲』(1982)でのジェネシス計画のシミュレーションCGの足元レベルだが、頑張っていたと思う。
 三浦友和の同僚として天才少年博士のカルロス(マーク・パンソナ)が登場するが、パーク・パンソナとは今のマーク・パンサーのこと。この所消えていたなと思ったらCMでスタミナコーヒーを宣伝してますな。かなりの棒演技が雰囲気をぶち壊してくれます。
 この作品が成功していれば日本のSF映画、SFX映画は確かに変わる可能性はあったのだが、興行的にどうだったかは知らないが作品としては明らかに失敗作なのでなにも変わらなかった。この作品で一番SFしているのは羽田健太郎によるテーマ曲だと思う。あれはジョン・ウィリアムズにも負けていない。
 この作品を観る時間と金があったら原作を読んだ方がいい。原作は面白いぞっ!

『マチェーテ・キルズ』 荒野の不死身マチェーテ

machetekills.jpg

『マチェーテ・キルズ』(2013) MACHETE KILLS 108分 アメリカ ALDAMISA INTERNATIONAL、A.R.FILMS

監督:ロバート・ロドリゲス 製作:ロバート・ロドリゲス、リック・シュウォーツ、サルゲイ・ベスパロフ、アレクサンドル・ロドニャンスキー、アーロン・カウフマン、イリアナ・ニコリック 製作総指揮:ボリス・テテレフ、ジェリー・ハウスファター、マーク・C・マニュエル、パリス・カシドコスタス・ラトシス、テリー・ダガス、アンソニー・グダス、サム・イングルバート、ウィリアム・D・ジョンソン、アルフォンソ・バラガン・Jr、ジョン・ポール・デジョリア 原案:ロバート・ロドリゲス、マルセル・ロドリゲス 脚本:カイル・ウォード 撮影:ロバート・ロドリゲス 衣装デザイン:ニナ・プロクター 編集:ロバート・ロドリゲス、レベッカ・ロドリゲス 音楽:カール・シール、ロバート・ロドリゲス
出演:ダニー・トレホ、ミシェル・ロドリゲス、ソフィア・ベルガラ、アンバー・ハード、カルロス・エステヴェス(チャーリー・シーン)、レディー・ガガ、アントニオ・バンデラス、トム・サヴィーニ、ジェシカ・アルバ、デミアン・ビチル、アレクサ・ヴェガ、ヴァネッサ・ハジェンズ、キューバ・グッディング・Jr、ウィリアム・サドラー、マルコ・サロール、ウォルトン・ゴギンズ、メル・ギブソン

 わはは、バカだ、バカ。ロバート・ロドリゲスも1968年生まれだから今年で46歳のオッサンだというのにあいかわらずガキのままというかバカだ。前作では一応メキシコからの不法移民問題などを扱っていたが、今回はそういったことはほとんど忘れられひたすらに不死身なマチェーテの活躍が繰り広げられる。
 真面目に映画を観ている人には怒られる作品かも知れないが、ロバート・ロドリゲス作品がバカだという理由で怒ってもしょうがないだろう。だって監督がバカなんだから。
 冒頭で謎の集団に恋人兼同僚の捜査官を殺されてしまったマチェーテ(ダニー・トレホ)。彼はアメリカ大統領(カルロス・エステヴェス)の依頼でメキシコの革命家を暗殺する任務に就く。革命家はワシントンにミサイルを撃ち込もうとしているのだ。
 アメリカ-メキシコ国境には高い壁が張り巡らされており、その上をヘリコプターで通り過ぎてメキシコに入国したマチェーテは革命家に接近するが、彼の心臓にはミサイルの発射装置が付けられていて、心臓が止まればミサイルが発射してしまうのだ。装置を解除できる人間はアメリカにいるヴォズ(メル・ギブソン)という男だけ。そこで国境の壁の下に極秘裏に掘られた密入国用の地下通路を使ってアメリカに戻るが・・・
 マチェーテの無敵ぶりに磨きがかかり、スターを取ったマリオ状態。マチェーテ(蛮刀)一本でマシンガンを持った敵の集団に立ち向かう。敵の撃った弾はマチェーテにはなかなか当たらず、当たって殺されたかと思ったら復活してくる。
 アクションはネタ的な要素が多くて、ヘリコプターのローターを使った殺し方として、相手の腹から引きずり出した腸をローターに巻き付け、引っ張られた相手がローターでバラバラミンチになったり、逆に自分をワイヤーでローターに結びつけて空中を回転しながら敵をマチェーテでぶった切っていったりと、もうやりたい放題。
 1944年生まれでもうお爺さんのダニー・トレホはさすがにあまりからだが動かないが、それを感じさせない。顔は相変わらずギラギラしてるしな。
 そっかー、革命家が悪役なのかと思っていたら、突然ヴォズの手下に革命家は殺されてしまい、心臓が取り出されて容器の中で鼓動を続けている。実はヴォズが真の黒幕で、彼はミサイル発射をきっかけに人類を滅ぼし、自分と仲間たちは宇宙に移住しておいて地球が浄化された頃に帰ってこようと計画していたのだ。うーん、なんかどっかで聞いたようなストーリー......あっ、『007ムーンレイカー』(1979)の悪人が似たようなことを企んでいたな。パクリというかオマージュというか。でもロジャー・ムーアとダニー・トレホじゃずいぶん違う。
 ヴォズは『スター・ウォーズ』のファンで、自分の兵器工場の中をランドスピーダーそっくりのカートで移動するし、ラストではマチェーテにやられて火傷を負った顔を仮面で隠し、ミシェル・ロドリゲスをカーボン冷凍してしまう。右手をファックサインのまま固まってしまったミシェル・ロドリゲス。
 ミシェル・ロドリゲスは右目が無く眼帯を付けているが、終盤のヴォズの手下である悪女との戦いで左目も失い盲目になってしまう。それでも戦いは心眼(?)で勝つのだが、次回作『マチェーテ・キルズ・アゲイン・イン・スペース』では座頭市のように戦うのだろうか。それともヴォズの科学力で人工眼を取り付けられるのか。映画の冒頭とラストに流される『マチェーテ・キルズ・アゲイン・イン・スペース』のフェイク予告編では左眼が復活していたから人工眼になるのかな。まぁあくまでもフェイク(嘘)の予告編なんだがロバート・ロドリゲスの場合は油断がならないからな。やるんならダニー・トレホが元気な内にやっとくれ。今作はコケたらしいから無理っぽいけど。
 マチェーテや仲間たちの活躍にもかかわらずついにミサイルが発射されてしまう。しかしその寸前にミサイルにしがみついたマチェーテは一緒に飛んでいく。『鉄腕アトム』の最終回ネタか。あるいはセガ・サターンの『せがた三四郎』ラストCMネタか。どちらも日本ネタだけど、何度も言うようにロバート・ロドリゲスには油断がならんからな。『鉄腕アトム』は『アストロボーイ』というタイトルでアメリカでも放送されていたから年齢的にロバート・ロドリゲスが観ていた可能性はある。YOUTUBEに『せがた三四郎』のCMがアップされているから、そちらを観たという可能性だって決して0ではない。ミシェル・ロドリゲスの「爆弾はとりあえず青いコードを切っときゃいいのよ」という言葉に従いマチェーテは青いコードを切る。その結果は観てのお楽しみ。
 前作では悪役だったトム・サヴィーニが味方として登場。この人も1946年生まれといい加減歳だろうに、全然元気。役者としてのみなのか、ヴォズの火傷した顔の特殊メイクなども担当しているのかは不明。ロバート・ロドリゲス作品『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)では股間にチンコ型銃を装着していたが、今作では娼館の女主人が付けて登場。彼女はブラジャー型マシンガンも装着している。
 カメレオンという素顔不明の変装名人な殺し屋が登場するが、それを演じているのがキューバ・グッディング・Jr、レディーガガ、アントニオ・バンデラスなどの有名人。肌の色どころか性別まで変わってしまうとはすごい変装だ。ルパン三世並みだな。それにしても実写版『ルパン三世』はどんな出来なのかね。目黒祐樹版じゃなくて小栗旬版ね。監督の北村龍平は嫌いな人なんだが。
 アメリカ大統領を演じたカルロス・エステヴェスとはチャーリー・シーンのこと。兄のエミリオ・エステヴェスは本名を使っているから、チャーリー・シーンの本名なんだろうな。カルロスって名前だったのか。ホセ・メンドーサのパンチで廃人になったり、ジェイソン・ボーンと死闘を繰り広げそうな名前だな。父のマーティン・シーンはなに・エステヴェスなんだろうか。
 敵にやられたマチェーテが荒野で目を覚ますシーンがあるのだが、比喩ではなく"ひび割れた大地"だった。荒れたお肌をアップにしたらこうなるんだろうなというぐらい深いひびが刻まれた乾ききった大地。

B00JTNGTFE.jpg

『リディック:ギャラクシー・バトル』(2013) RIDDICK 劇場公開版:119分、ディレクターズ・カット版:127分 アメリカ UNIVERSAL PICTURES

監督:デヴィッド・トゥーヒー 製作:ヴィン・ディーゼル、テッド・フィールド 製作総指揮:サマンサ・ヴィンセント、マイク・ドレイク、ジョージ・ザック 脚本:デヴィッド・トゥーヒー 撮影:デヴィッド・エグビー プロダクションデザイン:ジョセフ・ネメック三世 衣装デザイン:シモネッタ・マリアーノ 編集:トレイシー・アダムズ キャスティング:アン・マッカーシー 音楽:グレーム・レヴェル
出演:ヴィン・ディーゼル、カール・アーバン、ジョルディ・モリャ、マット・ネイブル、ケイティー・サッコフ、デイヴ・バウティスタ、ボキーム・ウッドバイン、ノーラン・ジェラード・ファンク、ラオール・トゥルヒージョ、コンラッド・プラ、ノア・ダンビー

 リディックシリーズ第三弾。1作目の『ピッチブラック』(2000)はデヴィッド・トゥーヒーらしいアイディアに溢れたB級SFで面白かった。しかし2作目の『リディック』(2004)は無駄に話を壮大にしすぎてデヴィッド・トゥーヒーの持ち味が殺されてしまい、正直駄作だと感じた。
 予算を注ぎ込んだ大作のはずの『リディック』があまりヒットしなかったのでこのシリーズも終わったかに思われた。だが、2013年になって突然帰ってきた。一時期、消えた俳優となっていたヴィン・ディーゼルが『ワイルド・スピード』シリーズで復活したのが大きかったのだろう。
 序盤はヴィン・ディーゼルの一人芝居が続く。製作もかねているヴィン・ディーゼルとしては自分の演技力をアピールしたかったのだろう。肉体派アクション俳優と思われがちな彼だが、実はちゃんと演技を学んでいる。「俺は演技が出来るんだ」と単なるアクション俳優から逃れようとしたのが一時期消えてしまった原因だと思うのだが、最近になって開き直ったようだ。個人的にはそれでよかったと思う。
 ストーリーは1作目に原点回帰した部分が多く、ある無人惑星に取り残されたリディックと彼を狙う賞金稼ぎたちとの戦い。そして雨が降ると現れるモンスターとの死闘である。ギャラクシー・バトルという壮大な邦題の割りには実は意外とこぢんまりとしている。デヴィッド・トゥーヒーにはこちらの方が合っている。
 賞金稼ぎのボスが1作目で死んだ賞金稼ぎの父親だったりと、ストーリーでも繋がっている。モンスターの頭部はどう見ても『エイリアン』シリーズのエイリアンのそれ。パクリの一種なのだろうが、それだけH・R・ギーガーのデザインが優れていたのだろう。ギーガーの汚点は『帝都物語』(1988)でのクリーチャーデザインだろうな。
 孤独なリディックが唯一心を許したのが無人惑星に住む狼もどき。この狼もどきの最後は愛犬家として泣ける。猫系じゃああはいかない。
 リディックの暗闇でも見える改造された目という設定もちゃんと活かされている。宇宙船やジェットバイクが登場するが、武器は相変わらず火薬式なんだ。1作目の賞金稼ぎがやっていた麻薬もモルヒネだということになっているが、もっと副作用の無い優れた麻薬が登場していてもいいのではないだろうか。
 リディックの賞金については「殺してきた場合には二倍」となっているのだが、普通は生きたまま捕まえてきた場合は二倍なのではないだろうか。殺してしまうのならば簡単で、生きたまま捕まえる方が難易度が高いと思うのだが。
 露骨に4作目に続くという終わり方なのだが、果たして製作されるのだろうか。ストーリーが無駄に広がりそうで個人的にはあまり期待が出来ない。

B00MQRKWTE.jpg

『アオイホノオ』 (2014)  11話 日本 テレビ東京

監督:福田雄一 チーフプロデューサー:中川順平 プロデューサー:山鹿達也、武藤大司、鈴木仁行、原田耕治、増田悟司 原作:島本和彦 『アオイホノオ』(小学館『ゲッサン』連載) 脚本:福田雄一 撮影:工藤哲也、吉沢和晃 音楽:瀬川英史 オープニングテーマ:ウルフルズ『あーだこーだそーだ!』 エンディングテーマ:柴咲コウ『蒼い星』 ナレーション:古谷徹 友情協力:カラー
出演:柳楽優弥、山本美月、安田顕、ムロツヨシ、中村倫也、浦井健治、黒島結菜、大水洋介、足立理、川久保拓司、川並淳一、今中菜津美、北尾貢次、市橋直歩、遠藤要、佐藤二朗、上地春奈、ぎたろー、竹富聖花、市川由衣、小嶋陽菜、濱田岳、葵わかな、きたろう
ゲスト出演:金子伸哉、山野海、今野杏南、太田恭輔、坂田聡、平子祐希、酒井健太、ベルナール・アッカ、鎌倉太郎、長谷川朝晴、山賀博之、武田康廣、豊田エリー、大西礼芳、赤井孝美、島本和彦、岡田斗司夫、山田孝之
(第10話)
声のゲスト出演:古谷徹、鶴ひろみ、井上真樹夫、野沢雅子、池田昌子、安原義人、松尾佳子、牛田裕子、あおい輝彦、田中亮一、置鮎龍太郎、山寺宏一、鳥海勝美、山口勝平

 島本和彦というマンガ家がいる。Twitterで早朝に「おはよう!」と挨拶していて、それに返答して何度か反応をもらったことがある。「『アオイホノオ』で先生が『七人の侍』について熱く語ったというのは事実ですか?」と尋ねて、「本当です」と答えてもらったことも。
『うる星やつら』のファンだったので(今でもファンだが)コミック雑誌は『少年サンデー』を読んでいたので島本和彦の『炎の転校生』などは好きだった。その後、『とつげきウルフ』辺りで一度離れたのだが、学生時代に後輩のM田が『仮面ボクサー』をボックス(部室)に持ってきて「最初に30年パンチを打っておけばよかった!!」に打ちのめされ、その後フォロアーとなった。実写映画化もされた『逆境ナイン』の「それはそれ。これはこれ」などの無意味に熱いセリフには現在の私の人格に割と影響を与えている。
 その島本和彦の学生時代である1980-1981年をモデルに"フィクション"として連載中の『アオイホノオ』を実写ドラマ化された。というか今日最終回だった。終盤は泣けた。
 主人公は島本和彦本人がモデルの焔 モユルという青年。彼は北海道からはるばる大阪芸術大学に入学し、マンガ家を目指している。同学年には後に『新世紀エヴァンゲリオン』などを撮る庵野ヒデアキや『プリンセスメーカー』の赤井タカミ、ついでに山賀ヒロユキなどの後のガイナックスを作り上げるメンツがいた。
 庵野が作り上げる自主制作アニメや特撮にモユルは毎回打ちのめされる。モユルはヒロインのトンコや津田にマンガやアニメについて細かい考察を説明するが、彼自身はまだ何もなしていないただの大学生である。そんな彼は無事にマンガ家としてデビューできるのか?
 できるのかっつったって、実際島本和彦はマンガ家になっているので決着は予想がついてしまう。最終回はラグビーのヘッドギアを付けたモユルが登場するのではないかと思っていたら当たった。この全11話は締め切り3時間前にウトウトしていたモユルが過去を見た夢だったのか。
 だがそこまでの展開がよかった。第1話から脚本も担当している監督の福田雄一の話術にはめられ、のめり込んでいた。悩み、時にのたうち回るモユル。20歳間近の青さ。だからタイトルは『アオイホノオ』である。
 二歩前進一歩後退でジリジリ進んでいくモユルに対し、庵野はどんどん前へ進んでいき、ついには伝説となっているダイコン3のオープニングアニメに着手する。このオープニングアニメは高校時代にビデオで観た。当時のアマチュアが作る物としてはかなりの出来だった。SF関係のパロディが満載で、当時SF好きだった私にはそれも嬉しかった。
 モユルはなんだかんだ言いながらも作品を完成させ、東京の小学館と集英社に持ち込みをする。小学館では手応えを感じなかったが、集英社の編集者MADホーリィにはプロの編集者を感じた。そしてMADホーリィから目をかけてもらうのだが、「車田正美のベタを見習え」というMADホーリィの言葉を「墨で塗るベタ」のことだと勘違いしたモユルは「ああ、見放されたんだ」と思い込み、ふと目にしたサンデーの新人賞に原稿を応募する。持ち込み時に対応した小学館の編集者は一度原稿を落選にするのだが、ある新人編集者が偶然モユルの原稿を読み、笑い出す。ここからなんか泣けてきた。
 モユルがおそらく新人賞の賞金で50ccのバイクを買いに行くのだが、バイク屋のオヤジが島本和彦本人が演じている。他にも赤井や山賀なども特別出演していたが、島本和彦が一番目立っていたし演技も上手かった。「若い頃は良かったなどと語るつまらない大人にはなるな。お前はそのバイクで明日に向かって走るんだ!」というオヤジの熱いセリフは福田の筆による物なのだろうが、島本的であった。そもそも、福田が島本のファンで通した企画である。それにしても島本和彦は西原の『画力対決』などに必ず帽子を被って出てくるので怪しいと思っていたのだが、額が後退している。
 ゲスト出演者の中では最終回の山田孝之もすごかった。あのダサダサ感はなんだ。あの人は『闇金ウシジマくん』も演じているが別人だ。というか、途中で缶コーヒーのCMが流れるのだが、その中で何人もの男を演じている。役者って凄いな。
 先輩だがずっと留年しまくって一回生のままの矢野ケンタローがモユルに鋭い指摘をするマンガサークルの代表役で登場するが、彼の在学中のデビューがドラマでは描かれていなかったのが残念。DVDでは何話かディレクターズ・カットにするというからそこで描かれるのか? 矢野健太郎のマンガは読んだことがなかったので、代表作らしい『ネコじゃないモン』を読もうと思ったのだが、廃版で古本しか出回っていない。古本を買っても作者にはお金が行かないので避けたいのだが、しかたなくamazonで古本を購入。Kindleなどの電子書籍や『絶版マンガ図書館』で提供すればいいのに。1巻目が画が古くさく(連載がかなり前だから仕方ないのだが)、デザイン学校生の青春模様が痒かったので読み進むのに苦労したが、一旦リズムを掴むと全13巻を楽しく読めた。Kindleで『邪神シリーズ』などがこの7月に配信されたので購入して「うーむ、ニャル子さん」とか言いながら読んでいる。
 オープニングのウルフルズの無意味に勢いのある歌もいいが、エンディングの柴咲コウの『蒼い星』がしんみりと聴かせる歌で余韻があって良い。最終回のエンディングはこれまでずっと一人で歩き続けてきたモノクロアニメのモユルが、仲間と出会う終わり方になっている。そこに流れる『蒼い星』。泣けるわ。
 キャプテン・ハーロックなどのマンガのキャラがモユルの幻想としてみうらじゅんの『アイデン&ティティー』のボブ・ディラン風に登場し、名台詞を言ってくれるのだが、それをアニメでそのキャラを担当した井上真樹夫などの豪華声優陣がやってくれている。これまた嬉しい。
 どうしようかなー、Blu-ray買っちゃおうかなぁ。と悩んでいる最中である。全話無圧縮で録画済みだが、ディレクターズ・カットが何話かあると言うからなぁ。

meitanntei.jpg

『迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険』(1988) WITHOUT A CLUE 112分 イギリス ORION PICTURES

監督:トム・エバーハード 脚本:ゲイリー・マーフィ、ラリー・ストロウザー 撮影:アラン・ヒューム 音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:マイケル・ケイン、ベン・キングズレー、ジェフリー・ジョーンズ、リセット・アンソニー、ポール・フリーマン、ナイジェル・ダヴェンポート、パット・キーン、ピーター・クック、ティム・キリック、マシュー・サヴェージ

 シャーロック・ホームズは原作小説が世界的に人気があり、映画として『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』(1976)や『新シャーロック・ホームズ/おかしな弟の大冒険』(1975)などパロディやパスティーシュ作品も多い。
 これはそんなパロディ作品の一つ。お気に入りの作品である。なにがいいたって主演のマイケル・ケインとベン・キングスレーがいい。2人ともイギリスを代表する名優なのにしょーもない作品にもホイホイ顔を出すことで知られている。『サンダーバード』(2004)なんかは少年時代にオリジナル版を再放送で観た身としてはつまらないの一言だったが、悪役として登場したベン・キングスレーが実に楽しそうだったと言うことだけで存在を認めている。
 マイケル・ケインはホームズ役なのだが、実はキンケイドという元三流俳優の飲んだくれ。本当の迷探偵はワトソン(ベン・キングスレー)なのだが、最初の事件の時に医大に職を求めていたため身分を隠そうと名探偵シャーロック・ホームズという人物を作り出した。ところがその事件を書いた『シャーロック・ホームズの事件簿』が思わぬ人気を集め、仕方なくキンケイドを雇って事件が起こる度に推理の内容や証拠などを覚えさせて名探偵を演じさせていたのだ。
 しかし、自分に人気があると思い上がったホームズに我慢が出来なくなったワトソンはついにホームズをベーカー街221Bの下宿から追い出すと、出版社には『犯罪博士ジョン・ワトソン』を売り込んだ。しかし、全然相手にされない。
 そこへポンド札の原版盗難事件が発生し、大臣自らベーカー街を訪れ事件の解決を依頼してくる。仕方なく再びホームズと手を組んだワトソンは事件に乗り出す。犯罪の裏には宿敵モリアーティー教授がいた。
 実はホームズは馬鹿だったというとんでもない設定。熱心なシャーロキアンは怒るだろうな。個人的にはホームズにはそれほど思い入れがないので単純にウケた。またマイケル・ケインの人前で堂々としている時と、酔っ払ってだらしなくなっている時の演技の差が笑えるんだ。やはり上手いね。
 ホームズにはうんざりし、製紙工場の火災現場を調査に行ったら警官に「ホームズの許可を得てから調べにきな」などと言われてムッとするワトソンがかわいらしい。推理力は優れているのだがカリスマ性がないのだ。その点、三流とは言え人前で演じてきたホームズにはかなわない。しかし、いくら知名度の低い俳優だったとは言え、ホームズとして人気になってその正体がキンケイドだと気付く人はいなかったのかね。いたとしても「そんなはずはないだろう」と自分の考えを否定してしまうのか。
 途中でワトソンがモリアーティー教授に撃たれ海の中に消えてしまう。彼が死んだと思い込んだホームズは無い知恵を絞って推理しようとするが、一晩考えて「敵はモリアーティー教授だ」ということが分かっただけ。本当に馬鹿だな。だが馬鹿は馬鹿なりに根性を出し、ワトソンの敵討ちのために頑張るのだ。
 ワトソンの正体を知っているのは下宿の大家ハドソン夫人と孤児からなる少年探偵団の遊撃隊だけ。その遊撃隊の隊員が河で半分だけ印刷された5ポンド札を見つけてホームズの所に持ってくる。本来ならば6桁の番号が印刷されているはずが3桁しか書かれていない。(ホームズは5桁だと思い込んでいてハドソン夫人に「6桁ですよ」と指摘される)その数字が聖書の詩篇の番号だと推理したホームズは誘拐された印刷工の居場所、すなわちモリアーティー教授の居場所を突き止める。
 そして乗り込んだホームズたちはモリアーティー教授とその手下を相手に戦うことになる。危機一髪の時に、死んだはずのあの男が帰ってくる。
 ホームズの場所の推理は当たっていたのだが、実はそれはたまたまで推理は全然的はずれなのが笑える。ホームズとモリアーティー教授の剣での戦いは結構盛り上がる。
 イギリスの羨ましいところは、1988年にロンドンの町中でロケしてそれなりに時代を表現できることだ。もちろん現代的な被写体が映り込まないようにここだという構図を選ばねばならないのだろうが、日本ではどう考えても難しい。古い建物がそのまま残っているし、広告看板などの規制もされているのだろう。
 ワトソンが怒った理由はホームズが勝手に「事件は解決した」と言ってしまったことだが、それを最後に上手く活かしている。
 これもDVDにはなっておらず、ビデオをDVDにしておいて助かった作品。でも、今回のために調べてみたら8月にスカパーのイマジカで放映されたんだな。ハイビジョンの『迷探偵シャーロック・ホームズ』、観たかった。知っていたらそのために1ヶ月だけスカパーに加入したのに。アメリカのamazonを調べてみたら海外ではDVDが出ているんだよな。うらやましい。

B00006JL94.jpg

『キング オブ ポルノ』(2000) RATED X 115分 アメリカ

監督:エミリオ・エステヴェス 製作総指揮:リチャード・バーグ、アラン・マーシル 原作:デヴィッド・マッカムバー 脚本:ノーマン・スナイダー、アン・メレディス、デヴィッド・ホランダー 編集:クレイグ・バセット 音楽:タイラー・ベイツ、スラッシュ
出演:エミリオ・エステヴェス、チャーリー・シーン、テリー・オクィン、ミーガン・ウォード、レイファー・ウェイゲル、トレイシー・ハトスン、ダニエル・ブレット、ニコール・デ・ボア、デボラ・グローヴァー

『レポマン』(1984)や『ヤングガン』(1988)などで反逆児を演じたエミリオ・エステヴェスがハゲの中年オヤジを演じていることにショック。1962年生まれだからいつまでも青年役ではないのは当たり前なんだが。
 エミリオ・エステヴェスとチャーリー・シーンが兄弟役を演じている。主人公のジェームズ(エステヴェス)が兄でアーティー(チャーリー・シーン)は弟。仲の良い兄弟だった2人は成長しミッチェル・ブラザースとしてポルノ映画を制作するようになる。そして1972年、伝説的作品『ビハインド・ザ・グリーンドア』を作ることとなった。
『ビハインド・ザ・グリーンドア』は名作ポルノとして知られており、ハル・ニーダムの『キャノンボール』(1980)の作中でジャッキー・チェンがスバル車内のビデオでこのポルノを観ようとして、相棒のマイケル・ホイに怒られていた。それぐらい有名な作品である、らしい。
 ポルノ映画業界の内幕ものとしては『ブギーナイツ』(1997)が思い出される。あちらもおもろうてやがて哀しきな内容だったがこちらもそう。大学で映画を学ぶジェームズはベトナム戦争反戦集会で上半身裸で踊っている女性をフィルムに収める。反戦集会と彼女の踊りをコラージュした短編映画は学生たちには好評だったが教授からはさんざん貶されてしまう。
 倉庫を借り、そこをスタジオにして仲間たちと「カサヴェテスの様に自由に撮ろうぜ」と創作活動を始めるが先立つものがない。そこで手っ取り早く金を稼ぐためにポルノ映画を作り始める。これが当たり、ジェームズはアーティーも仲間に加え、ミッチェル・ブラザースとしてポルノ映画を何本も世に送り出していく。
 何度もわいせつ物公開で警察に逮捕されるがそれにも懲りずに、ついにはアーティーの原案で『ビハインド・ザ・グリーンドア』の制作に取りかかる。最初はアーティー監督でスタートしたのだが、彼の失敗によりジェームズが監督を引き継ぐ。この作品は大ヒットとなるがマフィアに目をつけられ海賊版が各地で公開されるようになる。
 成功を手に入れていくジェームズに対し、麻薬に溺れ結婚生活も破綻するなどアーティーは問題のある生活を送っている。そしてついに兄弟の仲は決裂する。
 序盤はコミカルに始まるが、途中からシリアスになってくる。父親の「最後に頼りになるのは家族だ」という言葉に支えられていたのに、憎しみ会うようになる兄弟。まるで聖書のアインとカベルのようだ。そして最後は悲劇に終わる。
 実話を元にした作品である。ポルノ映画界という一種の裏社会を描いている。そういえばにっかつポルノも撮っていた消えた映画監督の曾根中生が先日亡くなってしまったな。
 内容のせいかアメリカでも劇場公開はされずケーブルテレビで放映された作品だそうだ。そのためか画面は4:3のスタンダードサイズ。今になってみると4:3というのは狭っ苦しいサイズだ。構図に凝れるという点ではビスタぐらいがちょうどいいのではないだろうか。シネラマまで行くと逆に自由度が低くなる気がする。
 観終わるとドッと疲れる。エンドロールには音楽がなくノイズ音が小さく流れる。あれは雨の音か?
 70年代のポルノ映画全盛期と、80年代に入りビデオが家庭に普及したためポルノ映画館が廃れていく様が描かれている。その中で苦しむ兄弟の愛憎劇。

71PyQoMJ+fL__SL1500_.jpg

『メン・アット・ワーク』(1990) MEN AT WORK 99分 アメリカ EPIC PRODUCTIONS

監督:エミリオ・エステヴェス 製作:カシアン・エルウィズ 製作総指揮:アーウィン・ヤブランス 脚本:エミリオ・エステヴェス 撮影:ティム・サーステッド 音楽:スチュワート・コープランド
出演:エミリオ・エステヴェス、チャーリー・シーン、レスリー・ホープ、キース・デヴィッド、ジョン・ゲッツ、ジョン・ラヴァチエッリ

 父マーティン・シーンの『地獄の逃避行』(1973)を思わせる『ウィズダム 夢のかけら』(1986)で監督デビューしたエミリオ・エステヴェスが2作目に撮ったのはスチャラカ脱力系コメディだった。
 サーフィンに人気のある海辺の町に住むエミリオ・エステヴェスとチャーリー・シーンはゴミ回収業で生計を立てている友人同士。そのうち資金を貯めて二人のサーフショップを開こうと計画している。そんな彼らが海中への有毒廃棄物投棄を巡って、市長選候補者が殺された事件に巻き込まれる。
 エミリオ・エステヴェスとチャーリー・シーンは実生活ではご存じの通り実の兄弟である。似てない兄弟だなといつも思うのだが、2人とも父マーティン・シーンの面影があるのでということは実は似ているのか。チャーリー・シーンの方が10センチほど背が高いのだが、これはチャーリー・シーンが高いのかエミリオ・エステヴェスが低いのか。印象としてはエステヴェスが小柄な気がする。
 缶ジュース(ビートたけしがCMに出ていたジョルトコーラ)で乾杯したり、殺し屋の2人組がカーラジオのチャンネルを争って変えまくったりする。私の第二回監督作品『茶の間の生活』は茶の間を舞台にした3人組のサイレント風コメディなのだが、缶コーヒーで乾杯したり、音楽を鳴らす鳴らさないでラジカセの前で揉めあいになるシーンがある。そのため監督・脚本のエステヴェスが「これがやりたかったんだろうな」と親近感を覚えたものだ。
 チャーリー・シーンは向かいのアパートに住む美人を双眼鏡で覗いていて、彼女を訪れてきた市長選候補者をエアガンで撃ってしまう。その直後に候補者が殺し屋に殺され、ゴミ捨て場のドラム缶の中ならその死体を発見した2人は死体を抱えてウロウロすることになる。
 覗きのシーンはヒッチコックの『裏窓』(1954)に似ているし、死体を抱えてウロウロするのは同じくヒッチの『ハリーの災難』(1955)を思わせる。エステヴェスはヒッチコックにインスパイヤされて脚本を書いたのか。死体を抱えてウロウロする死体系コメディとしては佳作『バーニーズ/あぶない!?ウィークエンド』(1989)などがある。私も自分たちが殺してしまったと思い込んだ死体を抱え、殺し屋に狙われているのに気付かないまま死体を海まで捨てに行くロードムービー風な作品の脚本を書いたことがある。ロケを多用しなければならないので映像化には至らなかったが、今思えば撮っておけば良かった。
 死体を発見したことでトラブルに巻き込まれる2人だが、あまり慌てることがなくマイペースで行動している。ここが面白くもあり、もっとャグを盛り込めたのではないかとも思い難しいところである。基本的に2人は無責任野郎なのでドタバタにならないのだ。チャーリー・シーンは向かいの美人を偵察に行っていつの間にか彼女を口説き始めるし。そんな場合じゃないだろうに。
 嫌味な警官2人組が出てくるが、こいつらがパンツ一丁にされて公園の遊具に縛り付けられるシーンは爆笑。靴下だけはちゃんと履いているところがおかしい。主人公たちだけではなく殺し屋や警官など2人組が好きな映画だ。

『ドラキュリアン』 僕らはモンスター討伐隊

801393_1.jpg

『ドラキュリアン』(1987) THE MONSTER SQUAD 82分 アメリカ TRI STAR PICTURES

監督:フレッド・デッカー 製作総指揮:ピーター・ハイアムズ 脚本:シェーン・ブラック、フレッド・デッカー 撮影:ブラッドフォード・メイ 特撮:リチャード・エドランド、スタン・ウィンストン 音楽:ブルース・ブロートン
出演:アンドレ・ゴウアー、ロビー・カイガー、スティーヴン・マクト、ダンカン・レガー、トム・ヌーナン、ライアン・ランバート、アシュレイ・バンク、ブレント・シャレム

 平日の昼間に観に行ったせいか、観客は私一人だった記憶がある。こんな楽しい映画になんで人が入っていないんだと怒ったんじゃなかったかな。なにしろ『ドラキュリアン』という邦題にセンスがない。『バタリアン』系を狙ったのだろうが、原題は『THE MONSTER SQUAD(モンスター討伐隊)』で『ゴーストバスターズ』のパロディになっているんだろう。この邦題のセンスは東宝東和かと思ったら日本ヘラルド配給だった。ヘラルドも意外とセンスがないな。
 12歳の少年を中心としたモンスタークラブがあった。基地は木の上に造られたツリーハウス。『スタンド・バイ・ミー』(1986)の冒頭に出てきたようなヤツだが、あちらよりかなり広くて子供たち6人と巨体のフランケンシュタインの怪物が一緒に入ることが出来る。
 100年前にトランシルバニアでバン・ヘルシングが善のアミュレットを使ってドラキュラを封印しようとしたが失敗。その後、どういう訳かアミュレットはアメリカの田舎町に移された。そして現在、アミュレットを狙ってドラキュラが町にやって来た。手下にフランケンシュタイン、狼男、ミイラ男、半魚人を連れている。怪物くんより登場モンスターが多い。
 そのモンスターたちの存在に気付いたモンスタークラブはモンスター討伐隊を結成し、戦いを挑むこととなる。
 フレッド・デッカーのオタク心満載で、基本ベースはモノクロ時代のユニバーサルホラー映画だろう。そこに登場したモンスターを使って好き放題にやっている。フランケンシュタインは池の畔で少女に出会うなどオリジナルへの敬意もちゃんとある。オリジナルではその出会いが不幸を招いてしまうのだが、こちらではフランケンシュタインと少女は友達になり、モンスター討伐隊に紹介する。敵同士のはずなのだが、仲良くなってしまう。ここら辺がほのぼのとしていて実に良い味だ。それがラストの別れのつらさを引き立てる。ほんとね、泣けるよ。
 主人公の少年ショーンは母親がガレージセールで買ってきたバン・ヘルシングの日記を手に入れるが、ドイツ語で書かれているので読めない。そこで「恐怖のドイツ人」と子供たちから怖れられているドイツ移民の家を仲間と共に尋ねる。実は「恐怖のドイツ人」は会って話してみるととてもいい人だった。バン・ヘルシングの日記を翻訳して子供たちに読んで聞かせたドイツ人が、彼らを送り出してドアを閉める時に手首に文字が刺青されているのがチラッと映る。どうやらユダヤ人でナチによって強制収容所に入れられていたようだ。
 モンスター討伐隊のメンバーは主人公と相棒、デブ、少し年上の不良少年。番外メンバーとして4-5歳ぐらいの男の子と女の子。そして愛犬がいる。不良少年は煙草を吸ったりして格好つけているが、登場シーンでは自転車に乗って現れる。タイヤを鳴らしながら出てきても正直ちょっと・・・・・・。だが彼はドラキュラ退治用の木の杭や、狼男退治用の銀の銃弾を作ったりと活躍する。ちなみに銃弾の原料となる銀は、ショーンが家から銀のフォークやナイフを持ちだしてきたのを溶かして作った。
 100年に一度、善のアミュレットは強度を失い壊すことが可能になるが、同時に呪文を唱えることで地獄(リンボ)への道を開いてそこにドラキュラたちを吸い込ませることが出来る。その呪文はドイツ語で、必ず処女が唱えなければならない。モンスター討伐隊は処女の女子高生を見つけてくるが、実は一回だけ男性経験があったので失敗してしまった。モンスターたちが暴れて町は大混乱。このままでは善と悪のバランスが崩れ、世界は悪のものになってしまう。その時、男の子が「彼女は処女?」と意外な人物を指さす。
 地獄へ通じる穴はSFXで表現されており、『死霊のはらわた2』(1987)のラストに登場したものとよく似ている。製作年度は同じ年だから偶然の一致だろう。SFX担当はリチャード・エドランド。フランケンシュタインや狼男などの特殊メイクはスタン・ウィンストンとなかなか豪華な顔ぶれ。『クリープス』(1986)と比べると予算も増えた感じ。製作のピーター・ハイアムズが頑張ったのかな。
 男の子のパジャマの絵柄が『ロボテック(超時空要塞マクロス)』だったり、ショーンの母親が「バン・ヘルシングってゴジラと戦った人でしょ」と言ったりして、日本ネタがちょこちょこある。ほんと、フレッド・デッカーってオタクだな。
 変身してしまうと理性を失い暴れてしまうことに悩んでいる狼男が、不良少年に銀の銃弾で撃たれて「ありがとう」と言い残して死ぬシーンも良いね。モンスターの悲哀も描かれている。ミイラ男や半魚人の最後は情けないが。
 アメリカではブルーレイにまでなっているのに、日本ではDVDすら出ていない有様。フレッド・デッカーが売れっ子監督になっていたら状況も変わっていたかも知れないが、『ロボコップ3』(1992)で監督・脚本をやった後どこへ行ってしまったのやら。
 モンスターもストーリーも結構みっちりと詰めているのに82分という短い尺でまとめた腕前はかなりのものだと思うんだが。

『クリープス』 宇宙ナメクジが脳に寄生する

2c5ef629-s.jpg

『クリープス』(1986) NIGHT OF THE CREEPS 89分 アメリカ TRI STAR PICTURES

監督:フレッド・デッカー 製作:チャールズ・ゴードン 製作総指揮:ウィリアム・フィネガン 脚本:フレッド・デッカー 撮影:ロバート・C・ニュー 音楽:バリー・デ・ヴォーゾン
出演:ジェイソン・ライヴリー、スティーヴ・マーシャル、トム・アトキンス、ジル・ホイットロー、ディック・ミラー、ウォーリー・テイラー、ブルース・ソロモン、ヴィク・ポリゾス、スザンヌ・シュナイダー、エリザベス・コックス

 オタク映画監督フレッド・デッカーの監督デビュー作。脚本も自分で書いている。
 映画が始まると、宇宙船の中でエイリアンが走り回っている。あるエイリアンが反乱を起こして、実験サンプルを宇宙に放出してしまったのだ。それが1959年の地球に落ち、カップルの男がそれを発見する。割れたカプセルの中から何かが飛び出して男の口に入り込む。その間に、精神病院から逃げ出してきた殺人鬼に斧で惨殺されているカップル女。
 そして時間は飛び、1986年現在になる。宇宙船が何だったのか、エイリアンの目的は何なのか。その後説明は一切ない。
 主人公の名前がロメロだの、ヒロインの名前がクローネンバーグだの、他にはカーペンター・フーパーやキャメロン刑事などホラー系の監督の名前が登場人物についている。この辺りのオタクなノリを楽しめるかどうかで評価が変わりそうだ。
 宇宙からやって来たのは人間の頭部に寄生し、脳みそを食って増殖すると頭を弾けさせて何匹も飛び出てくるナメクジ状の生物。色は黒くて、30センチほどの大きさがある。これが床や地面を微妙にニョロニョロしながら秒速1メートルぐらいの素早さで近づいてくる。主人公の友人の松葉杖を使っているフーパーがトイレで襲われるが、このシーンは怖い。
 宇宙ナメクジのあの動きはどうやって表現しているのだろうか。時代的にCGではないし、単に糸で引っ張っている感じだがどうしてちょっとうねるんだろう。下に楕円の車輪でも付いているのかな。
 主人公は冴えない大学生で、マッチョなベータ寮のアホ学生のガールフレンド、シンディ・クローネンバーグに惚れてしまう。ベータ寮の連中を見返すために死体安置所から死体を盗み出そうとするのだが、それが1959年以来冷凍保存されていたカップル男の遺体だったことから宇宙ナメクジによるゾンビ騒動が始まる。
 上映時間が短いので話はポンポンとテンポよく進んでいき、終盤のベータ寮の男子学生が女子寮のパーティーにやって来る途中で乗っていたバスが事故に遭ってしまう。そして宇宙ナメクジに乗り移られた男子学生はゾンビとなって女子寮を襲って来る。主人公のロメロはクローネンバーグを守れるのか!
 1959年に元恋人のカップル女を殺人鬼に殺されたキャメロン刑事(トム・アトキンス)が良い味を出している。過去をなかなか忘れることが出来ず、いまだに悪夢に見ている。それを宇宙ナメクジ退治で乗り越えていく。ラストは男の死に様だ。
 宇宙ナメクジに寄生されてからゾンビになるまでは個人差があるようで、友人のフーパーは結構意識を保っていて、自分の状況と宇宙ナメクジが火に弱いことをテープに吹き込んでから死んでいる。終盤では女子大生が襲われたかなと思ったら次の瞬間にはゾンビになっている。
 キャメロン刑事にショットガンで脅され火炎放射器を出してくる武器保安庫の警官役でジョー・ダンテ作品常連のディック・ミラーが出ているのも嬉しい。
 女子寮の寮母がテレビで観ている映画はひょっとして駄作として名高いエド・ウッドの『プラン9・フロム・アウター・スペース』(1959)か?
 日本では劇場公開後にビデオになったきりDVD化されていない。アメリカではブルーレイまで発売されているのに。amazon経由で買ったけど、日本語字幕がないのでビデオをDVDに焼いておいたのを観てからブルーレイを観た。セリフが分からなくてもあまり支障がない映画だけどね。日本でもブルーレイ出してくれんかなぁ。同じフレッド・デッカーの『ドラキュリアン』(1897)と一緒に。ちなみに『ドラキュリアン』もアメリカ版ブルーレイを持っているが、こちらはセリフが分からないとちと苦しい。ビデオをDVDにしたのを持ってるけどね。お盆に実家に帰り、押し入れを漁ってDVDが入った段ボールを持ち帰ったので整理しながら目に付いたのを観ている。スターチャンネルとかに加入していたので録画したはいいが時間の関係で観てないのがかなりある。

『廃墟の群盗』 町の名はイエロースカイ

B000Z7XI2U.jpg

『廃墟の群盗』(1948) YELLOW SKY 98分 アメリカ 20th CENTURY FOX

監督:ウィリアム・A・ウェルマン 製作:ラマー・トロッティ 原作:W・R・バーネット 脚本:ラマー・トロッティ 撮影:ジョー・マクドナルド 音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:アン・バクスター、グレゴリー・ペック、リチャード・ウィドマーク、ロバート・アーサー、ジョン・ラッセル、ハリー・モーガン、ジェームズ・バートン

 1867年の西部。銀行を襲った6人組の強盗は騎兵隊に追われ塩の荒野に逃げ込む。おかげで騎兵隊は振り切れたが、110kmの荒野を死にそうになってようやく町にたどり着く。しかし、そこは廃墟と化したゴーストタウンだった。
 原題の『YELLOW SKY』にはどんな意味があるのかと思ったら、単にゴーストタウンの町名だった。グレゴリー・ペックが「空が黄色いから強盗をしたんだ」とか言い出して不条理映画になるのかと期待したんだが。
 ゴーストタウンには孫娘のアン・バクスターとその祖父だけが住んでいた。どうやら金鉱を見つけてそれを掘っているらしい。その金に目をつけた強盗たちだが、リーダーのグレゴリー・ペックは二人に半分よこせと取引をする。それが手下のリチャード・ウィドマークらには気に入らない。全部欲しいのだ。そしてグレゴリー・ペックは二人側に付き、リチャード・ウィドマークらとの戦いが始まる。
 アン・バクスターがライフルを振り回し男と対等に撃ち合うじゃじゃ馬を演じている。グレゴリー・ペックはいつも通り、何を演じてもグレゴリー・ペックだ。
 元ギャンブラーで女に小型拳銃で撃たれた時の弾が肺に入ったままのリチャード・ウィドマークが実に味がある。いつものハイエナ笑いも披露してくれ、ラストには情けないほどにあっけなく死んでくれる。
 ゴーストタウンの中だけでほとんどの物語が進行する異色西部劇。途中でアパッチの大群が登場し、どうなるものかと思っていたらそのまま立ち去ってしまった。ありゃ、なんだったんだ。
 金を巡って醜い仲間割れを始め殺し合うが、ラストはかなり無理矢理なハッピーエンド。ここら辺は40年代だな。60年代なら、老人と孫娘を残して強盗たちは全滅してしまうところだろう。