『クレージーだよ 奇想天外』 地球は監視されている

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B00L47V97G.jpg『クレージーだよ 奇想天外』 (1966) 103分 日本 東宝

監督:坪島孝 製作:渡邊晋 製作補:五明忠人 脚本:田波靖男 撮影:宇野晋作 美術:村木忍 編集:武田うめ 音楽:広瀬健次郎、萩原哲晶
出演:谷啓、藤田まこと、植木等、吉田次昭、桜井センリ、ハナ肇、星由里子、高橋紀子、野川由美子、藤木悠、内田裕也、塩沢とき、進藤英太郎、山茶花究、二瓶正也、鈴木和夫、緒方燐作、安田伸、犬塚弘、柳谷寛、石田茂樹、草川直也、桐野洋雄、大村千吉、石橋エータロー、寺内タケシとブルージーンズ バンド、生方壮児、手塚勝巳、津田光男、渋谷英男、土屋詩朗、熊谷卓三、向井淳一郎

『2001年宇宙の旅』(1968)に先んずること2年、クレージーキャッツが宇宙に飛び出した。
 今回は植木等ではなく谷啓が主人公。α星人の谷啓は川で鳥を釣って、空を飛ぶ魚を撃ち落としてスチャラカに暮らしているが、地球人の宇宙進出で今日もα星に地球のロケットが打ち込まれた。
 長官の植木等に命じられて地球人の調査にやって来た谷啓は地球人に乗り移るとあれこれ調べ始めるのだが、どれもこれもピントの外れたことばかりだった。
 全体的に子供だましな感じの強い作品である。ギャグは不発だし、谷啓の人の良いキャラは魅力的な物の、主役にはちょっとパンチが弱い。
 核開発などの風刺モノなのだが、風刺にしては毒が少ない。内田裕也が相変わらず内田裕也なのには笑ってしまったが。
 発想は良いのだが、全体的に安っぽい作りで笑えない。これまで親しく過ごした人たちと地球人から抜け出てしまったため自分だと分かってもらえないラストはなかなか悲しくて良いのだが...
 α星人の連絡役藤田まことが若い。でも芸風が関西なんで浮いてるな。
 SF具合はジャケットの写真を見てもらえば分かるように子供だまし。

さらばアサッテ君

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 毎日新聞で連載されていた東海林さだおの『アサッテ君』が今年いっぱいで連載終了するそうだ。
 読んでいないので知らないが、一つの時代の終わりだな。
 というか東海林さだおは77歳にもなっていたのか。もう引退してもいい年だよな。
 東海林さだおのマンガはほとんど面白いと思ったことがないのだが、この人の文才はスゴい。家の本棚にはショージ君シリーズの緑の表紙がずらっと並んでいる。『丸かじり』シリーズはバイブルである。
「マンガも文章も紙と鉛筆さえあれば良いので同じようなものだ」と言っていた気がするが、いや違うだろう。天から二物を与えられる人もいるんだな。まぁマンガは好きじゃないけど。
 とにかくビールが好きな人で、学生時代にショージ君シリーズを読んだせいで私もビール党。おかげで一時は通風危険値を出してしまった。同じくビール党の椎名誠との対談が面白いんだよな。生前の中島らもと対談したこともあり、これも面白かった。
『アサッテ君』は連載終了でも良いけど、文章の仕事は続けてね。

B00L3NQ110.jpg『クレージーの 無責任清水港』 (1966) 94分 日本 東宝

監督:坪島孝 製作:藤本真澄、渡邊晋 脚本:小国英雄 撮影:小泉福造 美術:育野重一 衣裳:鮫島喜子 編集:武田うめ 音楽:萩原哲晶、宮川泰 殺陣:久世竜
出演:植木等、谷啓、ハナ肇、団令子、浜美枝、平田昭彦、中山豊、当銀長太郎、石田茂樹 法印大五郎、土屋嘉男、高橋紀子、横山道代、沢村いき雄、加藤春哉

 クレージーキャッツ版『清水の次郎長』物語。植木等はスーダラな任侠で博打で捕まり放り込まれた牢屋で森の石松こと谷啓と知り合う。そして出所して清水の次郎長であるハナ肇と出会い、任侠道を切って渉った大騒動に巻き込まれていくのだが...
 んーー正直あんまり面白くないね。クレージを清水の次郎長モノに巻き込んでいく前半では期待したのだが、それ以上に発展しない中盤以降は植木等の歌しか見所がなくて、これが寂しいのだ。本格任侠物として切ったはったの大騒動になってくれればまだ楽しかったのだろうが、それだと東映風で東宝ではないか。
 無責任任侠という植木等のキャラクターは立っているのだが、残念ながらそれを支えてくれる脇役が弱い。普段ならば目立つ谷啓やハナ肇が単に枠役になってしまっている。
『大冒険』(1965)でストーリーを無視したハチャメチャさで観客を魅了してくれた後だけに、ありきたりに収まってしまっているこの作品はちょっとつらい。平田昭彦の如何にも切れ者そうな大政なんかいいんだけどね。ほんと脇役だけど。
 所々笑えるギャグを挟みつつも、結局普通の映画でしかない。『トップ・シークレット』などのZAZギャグ集団を生み出すにはまだ日本は早かったか。やればZAZを先んじていただろうにもったいないなーと思うんである。
 主人公がメインストーリーに何ら責任を持たない無責任男、脇役も映画の展開よりギャグで目立つことが重要視する存在。意味がありそうで実は何にも無いストーリー。クレージー映画はZAZの20年先を行っていた可能性もあったのだが。
 日本映画は感動する映画、泣ける映画がウケる素地がある。最近亡くなられた高倉健も『君よ憤怒の河を渉れ』よりはボケカス山田洋次の『幸せの黄色いハンカチ』なんだろう。ここで『海へ See You』(1988)の桜田淳子の「来ちゃった」を押してくる人がいたら個人的に尊敬するのだが。あったなぁ『海へ See You』。
 高倉健を理想像とする日本男児は多そうだが、私はなんと言っても植木等である。「わかっちゃいるけどやめられない」「一つ山こしゃコンダラダホイホイ」な植木等が私の理想とする人格像である。本人は僧侶の息子で生真面目な人だったそうで植木等を演ずるのに悩んだそうだが、そのアンビバレンがまた良いんだよな。

『大冒険』 黒幕はアドルフ

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B00L3NPZZ8.jpg『大冒険』 (1965) 106分 日本 東宝

監督:古澤憲吾 製作:藤本真澄、渡邊晋 脚本:笠原良三、田波靖男 撮影:飯村正、小泉福造 美術:村木忍 編集:黒岩義民 音楽:広瀬健次郎、萩原哲晶 特技監督:円谷英二
出演:植木等、谷啓、ハナ肇、犬塚弘、石橋エータロー、桜井センリ、安田伸、アンドリュウ・ヒューズ、団令子、越路吹雪、ザ・ピーナッツ、森繁久彌、佐々木孝丸、高田稔、二瓶正也、伊藤久哉、柳永二郎、北龍二、村上冬樹、岡部正、由利徹、人見明、広瀬正一、大前亘、中村哲、桐野洋雄、荒木保夫、岡豊、伊藤実、清水元、松本染升、沢井桂子、井上大介、門脇三郎、一の木晶子、大友伸、ハンス・ホルネフ、渡邊晋、渡邊美佐

 世界中で大量の偽ドルや偽ルーブルなどの偽札が見つかる。このままでは通貨危機に陥ってしまう。
 そこで週刊誌のトップ屋の植木等は相棒の発明家谷啓を連れて幻のゴート札の震源地「言った奴は帰ってこないよ」というカリオストロ公国へFIAT500で侵入するのであった。
 むぅ、なにか違う気もするが世界中に偽札が蔓延するまでは本当である。そんな折り、植木等は隣人の発明家谷啓に総天然複写機を開発させる。ようするにカラーコピー機なのだが、二重にこの機械でコピーした偽札は色が薄くなってしまう。そこで日本にも偽札が入り込んだ事を知った植木は週刊誌に「日本にも偽札現る!」という記事を書き、これが大ヒット。極秘に偽札の調査をしていた警視庁は公開捜査に切り替え、刑事のハナ肇たちが飛び回ることになる。
「学生時代は特等生。それが今ではしがないサラリーマン。こりゃまたどういうわけだ、誠に遺憾に存じます」と植木等が歌いながら朝の体操をする。柱に渡した鉄棒でアクロバットを見せるなど本格的な体操で、背景には学生時代にスポーツ特待生として活躍した植木等のスポーツをしている写真が映し出される。これだけで作中の植木等の人並み外れた運動能力を説明している。
 偽札の謎に気付いた植木等は偽札偽造団と警察に追われることになる。そこで繰り広げられる一大活劇。植木等はビルからぶら下がったり、列車が走ってくる鉄橋にぶら下がりそこから落ちて下にいた馬に跨がって走り出したりとアクションの連続。突っ込んできた車はワイヤーアクションの大ジャンプで躱す。なんでもこのワイヤーアクションが日本で始めて本格的に使われたワイヤーアクションだそうだ。ビルの屋上から落とされて、途中で電線に引っかかるなんて沢田研二の『太陽を盗んだ男』だよな。
 女優陣としてはハナ肇の妹役の団令子が可憐である。植木等からプロポーズされているのだが、大企業の社長御曹司に木のある振りを見せたりとなかなかの悪女。
 そして偽札偽造団の女幹部越路吹雪が迫力のある悪女振りで魅了させてくれる。植木等を簡単に殺害命令を出したりと本当に冷酷な女幹部。
 脚本はアクションを繋ぐのに重点を置いていて、ストーリー的な面白さは今一つ。植木等のアクションが見せ場の作品である。しかし、植木等は運動神経が良いんだな。スタントマンをあまり使わない本人によるアクションが楽しませてくれる。
 そしてラストには無人島に作られた偽造団のアジトにUボートで乗り込む。水中を進むUボートは円谷英二特撮による物。艦橋は実物大の物が作られ、結構大仕掛け。そしてアジト内を植木等たちは逃げ回ることになるのだが、偽造団のボスが部下に命令を下している所に転がり込んでしまう。このボスこそ、戦後20年の間身を隠していたアドルフ・ヒトラー。一気に本格スパイ物になってくるストーリー。このアドルフ・ヒトラーが結構本人に似ている。実は死んでいなかったヒットラーが黒幕というのは手塚眞の『星くず兄弟の伝説』(1985)の元ネタなのだろうか。あったなー、星くず兄弟の伝説。星くず兄弟なんだかくず映画なんだか分かりゃしない。
 多分伊豆大島をロケ地とした一大爆撃戦も見事。今じゃやらせてもらえないんだろうな。
 監督は古澤憲吾。悪くないんだけど、もしも東宝組と言うことで岡本喜八が撮っていたら大傑作になっていただろうこと間違いなし。それぐらいに徹底したアクションコメディ。
 植木等はさすが主演だけあって良いんだが、頭がちょっとイッチャってる発明家の谷啓も見事なコメディアン振りを見せてくれる。後は警視庁の警部ハナ肇か。他のクレージーメンバーは正直目立ってない。植木等がスゴすぎる。

『香港クレージー作戦』 日本料理亭、香港に殴り込み

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B00L3NPYPY.jpg『香港クレージー作戦』 (1963) 92分 CRAZY CATS GO TO HONG KONG 日本 東宝

監督:杉江敏男 製作:藤本真澄、渡邊晋 脚本:笠原良三 撮影:完倉泰一 美術:村木忍 編集:小畑長蔵 音楽:神津善行
出演:植木等、ハナ肇、谷啓、犬塚弘、安田伸、石橋エータロー、桜井センリ、浜美枝、淡路恵子、中尾ミエ、リン・ツウォン、由利徹、有島一郎、柳家金語楼、塩沢とき、清水由記、人見明、進藤英太郎、マー・リー、石山健二郎、松本染升、世志凡太、古田俊彦、小川安三、土屋詩朗、細川隆一、佐藤功一、島幸子、丘照美、松原光子、浦山珠美、生方壮児、熊谷二朗

 脚本がさらに鋭くなった。と思ったら担当は笠原良三。さすがである。
 植木等は梱包材を扱っている会社の社員。課長から2000円の外回り経費の伝票に判をもらい浜美枝から経費をもらう。「2000円も!」と浜美枝が驚いているから、そんな物価の時代だったのだ。『先手必勝』では「もらう月給は1万なんぼ」とか歌ってるしな。
 だが、実際にはまともに外回りはせずに、喫茶店で各社の担当者に電話をかけて用件を済ませてしまう。そして空いた時間はアパートに帰って昼寝をすると、トルコ風呂(嫌らしいヤツじゃなくて、サウナ風呂の一種)で時間を潰す。ところが、トルコ風呂に来ていた社長に見つかり大目玉を食ってしまう。
 それでも反省しない植木は給料日と言うこともあってのん平横町に飲みにやって来る。「あの店はツケが溜まっているから来月だな。この店は再来月だ」とかウロウロしているところを日本料理屋の主人ハナ肇に見つかりツケを払えと店に連れて行かれてしまう。だが、店では香港の大会社がのん平横町を買って中華料理の店が並ぶビルを作るというので、それに断固として反対しているハナ肇とホルモン焼きやの谷啓、トンカツ屋が集まって立ち退き反対の決起集会を行っている。
 そこへ口を挟んだ植木は「俺に任せておきなさいって」と香港企業の社長にノンアポで会いに行く。社長は東京オリンピックが開催される1964年までには何としても中華料理ビルを建設したいと思っており、そこで植木は社長が香港に持っているビルの一つに日本料理店街を作ることを提案する。ハナ肇らを香港に連れて行き、日本料理にホルモン焼きは焼きがつくからすき焼き屋、トンカツ屋は油で揚げるから天ぷら屋にしてしまおうというのだ。
 当時はまだ近場の香港とは言っても一般庶民には海外旅行は夢であって、そんなところからこの企画が出来たのであろう。ただ香港なんでそう観光映画らしい作りにはなっておらず、ごみごみとした街角が映し出されるだけ。屋内シーンはありゃ日本でのスタジオ撮影だな。
 オープンをしたはいいものの、5日が過ぎても客が一人も来ない。そこで植木は楽器を買い集めて香港の通りでちんどん屋を行う事にする。
 ちんどん屋の件は新聞でニュースになった物の、日本料理亭の宣伝にはならず相変わらず客は来ない。そこで、張大人が主催する事前パーティーで"クレージーマウス"として演奏して、戦争以降一度も笑ったことのない張大人を笑わせることに賭ける。
 真面目なジャズ演奏家と思ったら、演奏に合わせてズボンが上がったり下がったりしたり、植木の前に谷啓のトロンボーンが伸び縮みしていらついた植木がトロンボーンをねじ曲げてしまったりと大爆笑の演奏。クレージーキャッツはそもそも進駐軍のキャンプ周りをしていた実力派ジャズバンド。それに様々なギャグを組み合わせた物だから進駐軍から「お前らはクレージーだ」と言われたのがバンド名の由来。今作でも本格的な演奏とギャグの組み合わせが見事である。
 そして幕が下りると、ついに張大人が大笑い。日本料理亭にやって来て日本料理を食べ上手い上手いと褒めてくれる。そして店は大繁盛することになった。今でこそ海外で日本食がブームで日本食レストランが存在するが、当時日本料理店が海外に進出していくというアイディアは画期的ではなかったのではないだろうか。
 日本料理亭が進出する前の段階で、立ち退き料などを使っても店を作るのに全部使ってしまって運転資金がないというのでハナ肇たちが悩むシーンがある。またもや根拠もなく自信満々の植木が大手ビール会社の社長に面会に行き、先日奥さんを亡くしたばかりだというので即席で僧侶に化けてお経を上げるシーンがある。実際に植木の父親は真宗大谷派の住職で本物のお坊さんの息子である。そんな植木が上げるお経は門前の小僧習わぬ経を読むなのかはしらないがなかなか堂に入っている。実は社長に出資を求めてきたんですよと言うシーンでは「坊主の息子ですがサラリーマンになってしまって、ハイ」とか言っているが、半ば事実である。ちなみに全く役に立たない豆知識だが私の家も真宗大谷派である。個人的には無宗教だけどな。
 ちなみに"無責任男"のイメージが強い植木等だが本人の性格は至って真面目で『スーダラ節』を歌うように言われたときにはなやんで僧侶である父に相談したそうである。父はしばし考えた後「わかっちゃいるけどやめられない。というのは親鸞聖人が言うところの人間の業の肯定であると語り、植木はそれで吹っ切れたそうだ。
  由利徹や有島一郎、柳家金語楼なども登場しているが、どれもシーンが少なくて残念である。柳家金語楼は例によって禿げ頭をネタにされている。
 女優陣は浜美枝に淡路恵子に中尾ミエ。ドラクエの大ファンとして有名だった淡路恵子はドラクエXがオンラインゲームになってしまったことを「あれは一人でやるからいいのよ」と最後まで否定的だった。でも、ドラクエXと一緒にWiiを買ってきて翌日になって電化製品の配線が出来る人に繋げてもらうのが待てずに、説明書と首っ引きで深夜までかけて自分で繋げてしまったパワフルお婆ちゃんでもあった。ファイナルファンタジーに淡路恵子は存在しないだろうな。
 中尾ミエは可愛らしく歌も歌い上手である。この人が現在では妙な迫力のあるお婆さん女優だからなぁ。時というのは冷酷である。
 この作品もヒットしたようで、クレージーキャッツは後にエンターテインメントの本場ラスベガスに乗り込んだり、メキシコに行ったりもする。
 気分が乗らないときなどはクレージー映画は特効薬である。何が良いったって植木等のバイタリティだ。植木のバイタリティは基本的に根拠がない。根拠があるバイタリティはその根拠が否定されてしまうと脆くも崩れてしまうが、植木の場合は否定しようにもするべき根拠がない。私は高校時代に「根拠がないのは良い自信」と悟ったのだが、基本的には同じ物だと思っている。

B00L3NQ11K.jpg『クレージー作戦 くたばれ!無責任』 (1963) 92分 日本 東宝

監督:坪島孝 製作:渡邊晋、安達英三朗 脚本:田波靖男 撮影:遠藤精一 美術:小川一男 編集:武田うめ 音楽:広瀬健次郎
出演:植木等、ハナ肇、谷啓、犬塚弘、安田伸、桜井センリ、石橋エータロー、浜美枝、藤山陽子、北あけみ、淡路恵子、山茶花究、清水元、佐田豊、上原謙、中北千枝子、石田茂樹、北川町子、田武謙三、東野英治郎、堺左千夫、瓜生登代子、千石規子、堤康久、記平佳枝、鈴木和夫、岩本弘司、大前亘、小川安三、西條康彦、鈴木孝次、当銀長太郎、清水由記、広瀬正一、権藤幸彦、坂本晴哉、芝木優子、古池ミカ

 植木等は製菓会社の社員。いつものようにハイテンション! かと思いきや、ぼんやりと起きてズルズルとスーツに着替え、バス停では割り込みしたヤクザに何も言い返せない。
 そんな植木等が、会社が新開発した興奮剤入りハッスルコーラを飲んだ途端、モノクロだった世界がフルカラーになりハッスルハッスル大ハッスルのモーレツ社員になってしまう。ハッスルコーラは今で言うレッドブルのようなものか。
 だが、興奮剤が入っているために清涼飲料水としての認可が下りずに、発売できない。そこで会社はハッスルコーラ販売専門の別会社を作って、いずれ首を切ろうと思っている社員を7名移動させてしまう。
 ペプシコーラを運ぶ大型トラックの列の横をオート三輪でハッスルコーラを運ぶ格差だが、すっかりハッスルしている植木らは必死になってハッスルコーラを売りまくるために奔走する。
 脚本の出来は『クレージー作戦 先手必勝』よりかなり面白く仕上がっている。大手菓子問屋の社長東野英治郎を拉致同然に温泉旅館に連れてきて、糖尿病のためインポになっている東野英治郎にハッスルコーラを飲ませて勃起させることに成功。そこへ彼の後妻を引き合わせようとするのだが、これがコメディ映画の常でなかなか上手くいかない。
 ラストは自分たちが興奮剤入りだと思って飲んでいたハッスルコーラが、清涼飲料水としての認可を得るためにその成分を抜いていたことを知る。つまり、一種の自己暗示で、自分の中の隠れていた力を発揮していたのだ。
 ハッスルコーラ部門を吸収し、7人を好待遇で本社に呼び戻そうとした悪徳専務に逆らい、7人は辞令を破って花吹雪のように捨て去ってしまう。
 そして専務たちに対して「くたばれ無責任」と歌いながら街中に消え去っていく。
 その後『クレージー作戦』の多くを手がける坪島孝の『クレージー作戦』デビュー作。この人抜きではクレージーキャッツの映画は語れない。
 ハッスルコーラが人気商品になり工場で大量生産されるシーンはペプシコーラが協力したのであろう。ペプシ宣伝映画でもある。

B00L3NPWVU.jpg『クレージー作戦 先手必勝』 (1963) 96分 日本 東宝

監督:久松静兒 製作:渡邊晋、森田信 脚本:池田一朗 撮影:玉井正夫 美術:清水喜代志 音楽:宮川泰、萩原哲晶
出演:植木等、ハナ肇、安田伸、谷啓、犬塚弘、櫻井センリ、石橋エータロー、池内淳子、中尾ミエ、柳家金語楼、淡路恵子、加東大介、馬野都留子、八波むと志、上原ゆかり、大森暁美、如月寛多、石田茂樹、柳谷寛、桐野洋雄、向井淳一郎、大村千吉、加藤春哉、清水由記、水の也清美、小桜京子、塩沢とき、田武謙三、若水ヤエ子、島津雅彦、若宮忠三郎、松村達雄、沢村貞子、沢村いき雄、佐田豊、津田光男、園田あゆみ、十朱久雄、上田吉二郎、高木弘、村上冬樹、三條利喜江、宮田芳子、池田生二、坂本九

 植木等はスチャラカ社員。あんまりスチャラカなものだから会社を首になってしまう。植木に惚れている飲み屋の女主人の所に転がり込んだのは良いが、ヒモになるのは植木のプライドが許さない。
 そんなある日、お祭りでケンカになりかかった神輿を上手く仲裁して、祭りの実行委員会から謝礼をもらった植木はよろずもめごと解決屋という商売を思いつく。そして犬のケンカの仲裁師ハナ肇や泣き落としの谷啓などもめごと解決を得意とするクレージーキャッツのメンバーを集め、会社を興す。クレージーキャッツの中ではやはり植木等とハナ肇、そして谷啓が目立っていて、安田伸や犬塚弘などは脇役っぽい扱いだ。
 そして最初はボロい事務所だったのが、マスコミに取り上げられ仕事の依頼が多数舞い込んでくる。銀座に事務所を移し、情報屋の中尾ミエを事務員に雇ってもめごとを解決していくのだが...
 段々と解決屋のメンバーが揃っていくところは『七人の侍』っぽい。肝心のもめごとにあまり面白いネタが無く、コメディとしてはちょっと笑いどころが少ない。ギャグも控えめで爆笑は出来なかった。
 二つのカメラ会社が土地を狙っている煎餅屋の主人が柳家金語楼。さすがに味がある。中尾ミエ(1946年生まれ)も可愛らしくて魅力がある。
 植木等の歌が想像していたよりも少ない。クレージー作戦シリーズも1作目だからまだフォーマットが完成していなかったか。
 最後はすべてを失ってしまう解決屋だが、元気よく町に飛び出していく。高度成長期のパワフルさだ。ラストには中尾ミエの婚約者として坂本九がちょっとだけ出演しているのも見所。
 ドラクエファンとして有名だった淡路恵子が悪女役で登場し、男たちはコロッと騙されてしまうのだが、あの魅力には負けてしまうよな。
 八百屋が夫婦喧嘩をしているというので仲裁に駆けつけるのだが、主人が投げたリンゴを植木が受け取り囓る。このリンゴがインドリンゴという高いリンゴらしくて植木は怒られてしまうのだが、妻が「私が投げたのはジャガイモとネギ」だよ。主人は「俺だってジャガイモだい」と話が逸れてしまう。インドリンゴという種類があるのか、リンゴは寒いところで取れそうな物だがインドのリンゴなんて美味いのかねと思ったら、国のインドじゃなくてアメリカのインディアナ州原産のリンゴだった。そういや、そろそろリンゴの美味しい季節だね。一日一個のリンゴで医者知らず。

B00NMHRSU8.jpg『ウォール・ストリート』 (2010) WALL STREET: MONEY NEVER SLEEPS 133分 アメリカ 20th CENTURY FOX

監督:オリヴァー・ストーン 製作:エドワード・R・プレスマン、エリック・コペロフ 製作総指揮:セリア・コスタス、アレックス・ヤング、アレサンドロ・キャモン キャラクター創造:スタンリー・ワイザー、オリヴァー・ストーン 脚本:アラン・ローブ 撮影:ロドリゴ・プリエト プロダクションデザイン:クリスティ・ズィー 衣装デザイン:エレン・マイロニック 編集:ジュリー・モンロー、デヴィッド・ブレナー 音楽:クレイグ・アームストロング 音楽プロデューサー:バド・カー
出演:マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、ジョシュ・ブローリン、キャリー・マリガン、イーライ・ウォラック、スーザン・サランドン、フランク・ランジェラ、オースティン・ペンドルトン、ヴァネッサ・フェルリト、マイケル・ジェネット、ナタリー・モラレス、シルヴィア・マイルズ、チャーリー・シーン

 前作とストーリー的に続いている。オープニングはインサイダー取引の罪で刑務所に収監されていたマイケル・ダグラスが出所するところから始まる。同時に出所した人々にはそれぞれ迎えが来たのに、一人取り残されてしまうマイケル・ダグラス。
 主役はマイケル・ダグラスの娘ウィニーとその恋人のシャイア・ラブーフ。ウィニーは父親に反感を持っているのに、恋人のシャイア・ラブーフが証券マンという所ですでに破綻している。大して人間的に魅力がありそうにも見えないしな。
 シャイア・ラブーフの会社の社長で彼の面倒を見てくれた人物が、会社に罠を仕掛けられ株価が暴落し倒産寸前になってしまう。地下鉄に飛び込み自殺した社長の仇をとるためにシャイア・ラブーフは敵陣に食い込んでいく。
 マイケル・ダグラスは長男を薬物中毒で亡くしてしまい、重要な身内はウィニーだけ。そこでシャイア・ラブーフに近づいてくる。しかし、マイケル・ダグラスの目的は別にあった...
 コマ落としやスローモーションなど映像テクニックが使われているが『ウォール街』(1987)ほどのスピード感はない。オリバー・ストーンも年を取ったのだろう。
 仇討ちや家族愛、裏切りなど様々な要素が放り込まれているが、今一つ上手く噛み合っておらず、あまり良い出来の脚本とは思えない。シャイア・ラブーフもチャーリー・シーンほど切れ味が無かったしな。
 家族愛も金も手に入れてハッピーエンドはそりゃないだろといったところ。

『ウォール街』 取引仮面インサイダー

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B00NMHRSU8.jpg『ウォール街』 (1987) WALL STREET 124分 アメリカ 20th CENTURY FOX

監督:オリヴァー・ストーン 製作:エドワード・R・プレスマン 共同製作:A・キットマン・ホー 製作補:マイケル・フリン 脚本:スタンリー・ワイザー、オリヴァー・ストーン 撮影:ロバート・リチャードソン プロダクションデザイン:スティーヴン・ヘンドリクソン 美術:ジョン・ジェイ・ムーア、ヒルダ・スターク 衣装デザイン:エレン・マイロニック 編集:クレア・シンプソン キャスティング:リサ・ブラモン・ガルシア、ビリー・ホプキンス 音楽:スチュワート・コープランド 舞台装置:レスリー・ブルーム、スーザン・ボード
出演:マイケル・ダグラス、チャーリー・シーン、ダリル・ハンナ、マーティン・シーン、ハル・ホルブルック、テレンス・スタンプ、ショーン・ヤング、シルヴィア・マイルズ、ジェームズ・スペイダー、ジョン・C・マッギンレー、ソウル・ルビネック、ジェームズ・カレン、リチャード・ダイサート、ジョシュ・モステル、ミリー・パーキンス、タマラ・チュニー、フランクリン・カヴァー、チャック・ファイファー、レスリー・ライルズ、ジョン・カポダイス、アンドレア・トンプソン、セシリア・ペック、ポール・ギルフォイル、アニー・マッケンロー

『プラトーン』は戦争映画の仮面を被った道徳映画だったが、今回は金融街を舞台にした道徳映画。
 若手証券マンのチャーリー・シーンがやり手のマイケル・ダグラスに学び成功を手に入れていくが、結局大切なのはお金ではなく家族愛や友情だというありきたりの結論にたどり着く。
 チャーリー・シーンと恋に落ちるゴージャスな女性ダリル・ハンナが、チャーリー・シーンがすべてを捨て去ることを決断したときに、彼に付いていかないのがリアル。
 チャーリー・シーンもこの頃はまともだったな。マイケル・ダグラスは強欲な野心家がよく似合っている。テレンス・スタンプの謎の投資家も良いし、チャーリー・シーンの先輩で「株はじっくり育てる物だ」と伝えるハル・ホルブルックも良い。一番はチャーリー・シーンの父親役のマーティン・シーンだろう。航空会社の整備士として長年働いてチャーリー・シーンを大学にやり、職場では労働組合の代表を務めるなど信頼を置かれている人物だ。金と成功に取り憑かれていくチャーリー・シーンを「俺は財布の厚さで人を判断しない」と諫めるのは好きなシーンだ。
 ダリル・ハンナがハーゲンダッツのアイスクリームを電子レンジらしき機械に入れているのは何なんだろうか。ちょっと溶かして食べるのかな。
 画面分割や細かいカット割り、長回しなどでスピーディーに見せてくれる。でもしょせんはオリバー・ストーン。嫌いなんだよな、オリバーくんは。

『リベンジ・マッチ』 30年振りの再戦が熱いぜ

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B00KMQUT8K.jpg『リベンジ・マッチ』 (2013) GRUDGE MATCH 113分 アメリカ WARNER BROS. PICTURES

監督:ピーター・シーガル 製作:ビル・ガーバー、マーク・スティーヴン・ジョンソン、マイケル・ユーイング、ピーター・シーガル、ラヴィ・メータ 製作総指揮:ジェーン・ローゼンタール、ケヴィン・キング=テンプルトン 原案:ティム・ケルハー 脚本:ティム・ケルハー、ロドニー・ロスマン 撮影:ディーン・セムラー プロダクションデザイン:ウィン・トーマス 衣装デザイン:メアリー・E・ヴォクト 編集:ウィリアム・ケアー 音楽:トレヴァー・ラビン
出演:ロバート・デ・ニーロ、シルヴェスター・スタローン、ケヴィン・ハート、アラン・アーキン、キム・ベイシンガー、ジョン・バーンサル、アンソニー・アンダーソン、ジョーイ・"ココ"・ディアス、LL・クール・J、デイン・ローデス、チェール・ソネン、ロイ・ジョーンズ・Jr、マイケル・バッファー、マイク・タイソン、イヴェンダー・ホリフィールド

『ロッキー』シリーズのシルヴェスター・スタローンと『レイジング・ブル』のロバート・デ・ニーロを戦わせてみたら面白くね? と原案のティム・ケルハーが思いついた。この人は本業は俳優のようだ。TVドラマ中心なんで知らない人だが。
 現役時代は死闘を繰り広げたスタローンとデ・ニーロは1984年にスタローンが引退したため決着が付かないまま30年という時が流れていた。黒人青年のプロモーターが二人を主人公にしたTVゲームを出そうと思いつき、ギャラを積んで二人を引っ張り出す。しかし、製作現場で二人は大喧嘩を始めてしまい、その光景がYouTubeに流されものすごい閲覧数になる。
 プロモーターは「これならいっそ本当に二人をリングで戦わせてみたら凄い人気になるはずだ」と考え、二人を説得しリングに上げることになる。1984年の決着にまだ未練がある二人もその考えに乗り、1946年生まれのスタローンと1943年生まれのデ・ニーロのリベンジ・マッチが開催されることになる。
 実は、1984年にスタローンがリングを去ったのは、デ・ニーロが自分の妻のキム・ベイシンガーと寝て子供を作ってしまったことにあった。スタローンとベイシンガーは離婚し、ベイシンガーは他の男性と再婚してしまった。そして試合に向けてトレーニング中のデ・ニーロの元に息子が現れ、トレーナーになる。
 スタローンのトレーナーはアラン・アーキン。さすがに老けたな。近代的なジムでトレーニングを積むデ・ニーロに対し、スタローンは廃車置き場で車を引っ張ったり巨大なタイヤを起こしたりと対照的だ。
 そしてついに試合が始まる。二人とも老体に鞭打って試合のシーンに挑む。徐々に盛り上がっていく会場。そして試合の決着は...
 監督がピーター・シーガルなのでコメディタッチだが、30年の男の確執を描いておりドラマとしても優れている。選手時代に築いた財産を数年で使い果たし造船工場で肉体労働をしているスタローンと、レストランや中古車屋などビジネスで成功しているデ・ニーロの対比も面白い。
 ラストにはマイク・タイソンとイヴェンダー・ホリフィールドがTVのインタビューに「試合しませんか?」と尋ねられている。マイク・タイソンはやる気だが、御免だというホリフィールドに「『ハング・オーバー!』シリーズに出してあげますから」と口説く。『ハング・オーバー!』の1作目にマイク・タイソンが出ていたが、あのシリーズは毎回有名ボクシング選手が出てくるという設定でもあるのか。2作目以降は観てないからな。今度確かめてみよう。