『喪服の訪問者』 俳優関口宏、俳優柳生博

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『喪服の訪問者』 (1971) 270分 TVドラマ6回 日本 国際放送、日本テレビ

監督:石井輝男 プロデューサー:小坂敬 原作:シャーロット・アームストロング 脚本:田向正健 音楽:大野雄二 ナレーター:矢島正明
出演:丘みつ子、団令子、大塚道子、関口宏、柳生博、白石奈緒美、清川新吾、伊藤久哉

 関口宏が昔俳優だったとは聞いていたが、演技を観たのはこれが始めて。
 全6回のサスペンス・ミステリーである。
 関口宏は岡みつ子という可愛らしい奥さんがいて、大手銀行に勤めており、ロンドン赴任の内示をもらう。しかも新車を買ったばかりと幸せの絶頂期。
 奥さんとお祝いでホテルへディナーに出かけるのだが、帰り道に酔っ払いと軽い接触事故を起こしてしまう。医者へ連れて行こうとするのだが、酔っ払いは「いーからいーから」と屋台に飲みに行ってしまい、名刺を交換しただけだった。
 数日後、酔っ払いが死んだことを知った関口宏は酔っ払いの妻団令子に交通事故のことを打ち明ける。しかし、何故か責任を問おうとしない団令子は、新しいアパートが見つかるまではと関口宅に車椅子の姉共々転がり込んでくる。
 最初は親切に対応していた丘みつ子だったが、どんどん図々しくなっていく団令子たちに疑問を持つ。芦屋のお嬢さんだったという団令子の過去を調べると、芦屋は芦屋でも高級住宅地の高台ではなく、港の貧乏人だった。団令子は貧乏から抜け出すため、バーやキャバレーのホステスとして働き、大金持ちだとほらを吹いていた男と結婚した過去があった。そしてその夫も交通事故に遭い、2日後に死亡していた。
 そんな頃、関口宏に交通事故を目撃したとサングラス姿の柳生博が尋ねてくる。「クイズ100人に聞きました。この男は金を要求する気か?」と尋ねる関口宏に柳生博は「ハンマーチャンス」と答える。二大クイズ番組司会者顔合わせだな。
 要求額は500万円。いくら大手銀行の優良社員である関口宏とて簡単に用意できる金額ではない。
 関口宏のロンドン赴任に正式な辞令が起きた日、歌舞伎町で関口宏と丘みつ子は出会う約束をした。しかし、なかなか出会えない二人。丘みつ子が立っていると、首筋から血を吹き出した柳生博が「ばらしてやるぞ~」とすがりついてくる。
 丘みつ子も関口宏も柳生博を殺していない。団令子はなかなか会えない二人の電話と取り次ぐために家におり、アリバイがある。もちろん車椅子の姉が世田谷から歌舞伎町に行くことも出来ない。
 新聞やニュースでは「若い人妻風の女性が柳生博を殺した」と報じており、凶器の西洋カミソリと同じものがが関口宅からなくなっていた。そうか、関口宏は西洋カミソリでヒゲを剃っていたのか。安全カミソリを使っていればこんなことにはならなかったのに。
 まぁ、予想通り団令子姉妹が犯人で、終盤で家に閉じこめた丘みつ子を麻薬で殺しガス自殺に見せかけようとする。ひっしに逃げ回る丘みつ子の顔面に団令子がコショウをぶちまけて目潰しにする。そこから始まる延々としたスローモーション。石井輝男だなぁ。
どうでもいいけど、顔面にコショウが付着していたら偽装自殺だとバレるんじゃないだろうか。
 そこへ銀行を早退して飛び込んでくる関口宏。とっちゃんぼうやだが始めて格好良く見えた。
 そしてミステリーとして謎解きが行われるのだが、なんじゃそりゃ。ジョン・ウーの『狼たちの絆』(1991)のチョウ・ユンファかよ。姉が妹にダニのように寄生していたということだが、ある意味根性あるなぁ。
 色鮮やかなキャンドルライトが、綺麗だが不気味だったり色使いがどこかおかしい。歌舞伎町の柳生博殺人事件では隠しカメラでビルの屋上から捉えているんじゃないかというカットがあり、ちょっとヒッチコックっぽい。
 犯人は「絶対こいつらだろ」と丸分かりで、ミステリーとしてはいまいちだがトリックは凄い発想だ。外国ミステリー小説のドラマ化だそうである。
 団令子がアップになる度にレンズに紗がかかるのが笑える。

『怪奇十三夜 おんな怨霊舟』 悪党だらけ

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『怪奇十三夜 おんな怨霊舟』 (1971) 47分 日本

監督:石井輝男 脚本:大石隆一
出演:吉田輝雄、原良子、山本豊三、新井茂子、中原早苗

 日本テレビ系列で放映された怪談『怪奇十三夜』シリーズ第6作である。
 女郎屋ならぬ女郎舟があったようで、そこでヒロインが股を開いて頑張って病気の母親のために薬を送っていた。船頭は吉田輝雄。そこへ、ヒロインに一通の手紙が届く。彼女は文盲だったため吉田輝雄に代わりに読んでもらい、恋人が30両を溜めて一緒に故郷へ帰って店を開こうというものだった。
 吉田輝雄は今回は悪役で、恋人は小田原にいると嘘をつきヒロインを小田原に向かわせる。入れ替わりに舟に付いた恋人を愛人と一緒に接待をする。そして恋人が風呂に入っている隙に、背中を流す振りをして首を絞めて殺してしまう。
 愛人と一緒に死体を木の根元に埋めに行く。その穴には吉田輝雄がかつて殺した船頭のジイさんの死体があった。
 翌日、恋人に会えなかったヒロインが舟に帰ってくる。すると女郎舟の観察を奪ってヒロインも殺してしまう。
 その頃から、天井の人物絵から血が滴ってくるなどの異常が起きる。
 そしてヒロインの身を案じて尋ねてきた母親、美味い汁を吸おうとする目明かしなど次から次へと殺していく。
 こうして悪業を重ねた吉田輝雄と愛人は終盤になって怨霊の反撃を受け呪い殺されてしまう。
 どうということのない怪談話。脚本が石井輝男ではないので呆れるような展開もなく、ヒロインと恋人が善人で、後の登場人物はほぼ悪党という分かりやすい図式。
 石井輝男作品では善良な人物を演じていた吉田輝雄が悪党極まりない極悪人を演じている。
 そして全てが終わり、女郎舟は岸を離れどこかへ流れていく。

『怪奇十三夜 番町皿屋敷』 身分違いの恋

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『怪奇十三夜 怪奇十三夜』 (1971) 47分 日本

監督:石井輝男 脚本:西沢治
出演:中尾彬、藤田弓子、津川雅彦、藤岡重慶、城所英夫、石井富子

 1971年に13回にわたって日本テレビ系で放映された怪談話である。その内、2話を石井輝男は担当している。他には中川信夫なども撮っている。
 ご存じ『番町皿屋敷』である。旗本の中尾彬と魚屋津川雅彦の妹の腰元藤田弓子は身分違いの恋に落ちている。それでも一緒になるつもりなのだが、ある日、関ヶ原の戦いで恩賞として徳川家から贈られた10枚の絵皿の内、1枚が割れているのが判明する。
 下男とその女房の証言によると、井戸の所で藤田弓子が割っているのを目撃したとのこと。中尾彬の部下は藤田弓子が津川雅彦と中尾彬が家名を選ぶか自分を選ぶか確かめてみると話していたのを聞いたとのこと。
 自分の気持ちを確かめるために皿を割った藤田弓子に「手が滑って割ったなら仕方ない。しかし、気持ちを確かめようとするその心が許せない」と藤田弓子を手討ちにしてしまい、死体は井戸に落ちた。
 私が知っている番町皿屋敷の物語は、手を滑らせて皿を割ってしまったというのと、殿の気持ちを確かめるために皿を割るの2種類だったが、この作品はさらに工夫がしてある。
 藤田弓子が皿を割ったというのは嘘で、中尾彬を実力者の娘と結婚させるための一族の罠だったのだ。藤田弓子は全くの無実だったのである。
 中尾彬が筆で文字を書いているといつの間にか血文字になっていて、硯から血が溢れ出たり、刀をぬぐった半紙から血が溢れ出すなど奇妙な事件が続く。てっきり藤田弓子に恨まれていると思い込む中尾彬だったが、本当は仇をとって欲しかっただけだった。
 そして暗躍した9人の一族の元と中尾彬は対決する。一人斬り殺す度に、相手が藤田弓子に姿を変え、「1枚...」「2枚...」。そして見事9人を斬り殺し仇を討った中尾彬であった。
 ラストは井戸の周りを飛ぶ二匹の蝶に「あれは旗本と妹かも知れないな」と呟く津川雅彦であった。
 中尾彬が若い。首にネジネジも巻いてないし、顔立ちがキンキキッズの堂本剛に何となく似ている。藤田弓子が顔は丸い物の標準体型である。『めぞん一刻』(1986)で素のまま一ノ瀬さんを演じていた女優とは思えない。そして津川雅彦が二枚目。
『怪奇十三夜』は怪談だけに夏に放送され、DVDになっているが中川信夫の『怪談悲恋の舞扇』だけDVDになっていない。なにか問題があるのだろうか、中川信夫だからなぁ。
 本来の番町皿屋敷は寂しげな物語だと思うのだが、血が大量に飛び交うのが石井輝男である。

『怪談昇り竜』 黒猫の呪い

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『怪談昇り竜』 (1970) 85分 日本 日活、ダイニチ映配

監督:石井輝男 企画:児井英生、佐々木志郎 脚本:曽根義忠、石井輝男 撮影:北泉成 音楽:鏑木創
出演:梶芽衣子、ホキ徳田、大辻伺郎、内田良平、土方巽、加藤嘉、安部徹、佐藤充

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』で好き勝手にやり過ぎたのか、『殺し屋人別帳』(1970)などを撮っていた石井輝男。ちなみに『殺し屋人別帳』は渡瀬恒彦のデビュー作にして主演作だったはず。「趣味じゃねぇなぁ」という渡瀬のぼやきが印象に残っている。
 だが「やはり変な映画が撮りたい」という石井輝男は日活に行ってこの『怪談昇り竜』を撮った。梶芽衣子が主演でやはり美人で筋を通す男前。その梶芽衣子がやくざの出入りでホキ徳田の目をドスで切ってしまったところから物語は始まる。ホキ徳田が流す血をペロペロと舐める黒猫。
 梶芽衣子は黒猫の悪夢に取り憑かれてしまい、女囚として監獄入りしている時も毎晩悪夢を見て絶叫し同房の女囚を起こしてしまう。青大将の刺青を入れた女囚ににらまれるが、竜の頭の部分を彫った梶芽衣子の刺青に圧倒されてしまう。ちなみに、この頭の刺青に胸、胴、腹、尾の4つの刺青が合体して一匹の竜になる。
 数年後、釈放された梶芽衣子は立花一家の親分として縁日を取り仕切っている。そこにちょっかいを出してくるのが愚連隊の青空組。やつらのバックには安部徹を親分とする土橋一家がいた。
 そんな立花一家へ、梶芽衣子と同房だった4人の女囚が竜のパーツの刺青を彫って子分にしてくれとやって来る。迎え入れてやる梶芽衣子だったが、その裏である陰謀が進行しつつあった。
 めくら女のホキ徳田が土橋一家に現れ、座頭市張りの活躍でわらじを脱ぐとことになる。
 縁日で騒ぎが起き、流れ者の佐藤充がことを治めてくれる。佐藤充は梶芽衣子の叔父で今ではやくざから足を洗い料理屋をやっている加藤嘉の世話になり料理の配達などをしている。加藤嘉には娘がいて、佐藤充といい関係になりつつある。
 そんな中、土橋組が雇った女が縁日の出店にアヘンを隠して回って、それを土橋組が通報し立花組がアヘンの密売をしていた疑いをかけられてしまう。そのため一家は一度解散し、梶芽衣子と女たち、砂塚秀夫を残して他の組員にはわらじを履かせてしまう。
 そして土橋一家と青空組に立花一家の縄張りは奪われてしまう。
 竜の刺青を背負った女二人が行方不明になり、刺青の生皮だけが立花一家に届けられた。それには見世物小屋のせむし男土方巽が関わっているようだ。せむし姿で暗黒舞踏を踊る土方巽。土方巽はホキ徳田と関係があるらしい。
 加藤嘉の娘と佐藤充が土橋一家に誘拐され、アヘンをばらまいていた女も暗殺されて口を封じられてしまう。そして立花一家は土橋一家に殴り込む。
 ホキ徳田の以外(でもないか)な正体や様々な謎が明らかになり土橋一家は壊滅する。
 青空組の親分で詩人作家の内田良平が上半身は山高帽の洋装で、下半身は赤フン一丁という格好で笑わせてくれる。
『怪談』というほど怪談ではなかったが、エロ・グロ・ナンセンスに溢れた作品である。特に土方巽が踊っている見世物小屋では人間の手足を煮ていたり、生首の列に女と犬の獣姦ショーなどやりたい放題である。タランティーノも大ファンだそうだ。

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』 リージョンに注意

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『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』 (1969) HORRORS OF MALFORMED MEN 99分 日本 東映

監督:石井輝男 企画:岡田茂、天尾完次 原作:江戸川乱歩 脚本:掛札昌裕、石井輝男 撮影:赤塚滋 美術:吉村晟 編集:神田忠男 音楽:鏑木創 助監督:依田智臣
出演:吉田輝雄、由美てる子、土方巽、葵三津子、小畑通子、賀川雪絵、小池朝雄、英美枝、小山陽子、木山佳、田仲美智、笈田敏夫、近藤正臣、加藤欣子、高英男、片山由美子、金森あさの、宮城幸生、土橋勇、由利徹、大泉滉、上田吉二郎、桜京美、沢彰謙、河崎操、岡田千代、阿由葉秀郎、三笠れい子、大木実

 学生時代に『石井輝男特集』で観た。いやー笑った笑った。そして哀しき。
 外科医の卵の吉田輝雄が精神病院に入っているところから物語は始まる。精神病院というか、あれは気違い病院だな。女はみんな色情狂、男はみんな暴力的。そして坊主頭の男に殺されそうになった吉田輝雄は逆に男を絞め殺し、気違い病院から脱走する。
 偶然、記憶に残っていた子守唄を歌う少女と出会う。翌日、その子守唄から記憶を呼び覚まされる断崖をスケッチした絵を持って少女に会いに行く。少女はサーカスの一員だった。裏日本にヒントがあると言い残したところで少女は何者かに刺殺されてしまう。血まみれのナイフを手に持った吉田輝雄は犯人と思われ警察に追われることになる。
 裏日本への汽車の中で、自分そっくりの財閥の息子が死んだことを知った吉田輝雄は墓を掘り返して息子と入れ替わってしまう。生き返った息子に驚く寺の僧侶由利徹と大泉滉。二人の存在でシリアスだったのに突然ギャグになる。
 吉田輝雄は息子に成りすまして生活を送るが、息子が新聞などを読む時には眼鏡をかけていたり、左利きだったりと細かい点で失敗をしてしまう。飼い犬のシェパードも吉井輝男に吼えかかってくる。
 妻とそして屋敷内にすむ愛人などと偽者とバレないように演技を続けるが、執事の小池朝雄は何やら感づいているようだ。
 そして当主菰田丈五郎が暮らす孤島に様子を見るために渡ることになる。小舟を操縦するのは下男の大木実。そして孤島の恐怖に一行はさらされることになる。
 江戸川乱歩の『パノラマ島奇譚』と『孤島の鬼』を中心に『人間椅子』なども絡めた脚本となっている。
 予算はかなり少なかったようで、改造されたはずの孤島には奇形人間がいるぐらいで大仕掛けなどはない。しかし奇形人間って...。TV放映はおろか、日本ではDVDすら発売されていない。アメリカ版DVDが出ているが、私が以前買った時はリージョンオールだったが、現在はリージョン1となっているので、観るにはリージョンフリープレイヤーが必要になる。言語は日本語なので普通に観られるが、プレイヤーを買ってまで観る価値があるかというと、個人的にはあると思う。あくまで"個人的には"であるが。
 菰田丈五郎を演ずるのは暗黒舞踏の土方巽。『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』 (1969)では首斬り役人として登場し踊らなかったが、今作では断崖や波の荒い岩場などで踊りまくる。
 奇形人間たちは暗黒舞踏団の団員たちが中心のようだ。首輪をはめられて家畜のように登場したり、人形のように動きを止めていたり、せむし男やらなんやらで気味が悪いが笑える。
 女性とグチャグチャメイクをした男(近藤正臣)を腰でくっつけてしまった偽シャム双生児なども登場する。そしてその女性の意外な正体は...
 終盤になっていきなり大木実が「私は私立探偵の明智小五郎だ」と正体を明かし、謎を一つ一つ解き明かしていく。黒幕は土方巽でその手下が小池朝雄。小池朝雄は情報を集めるためにソファに入って人間椅子になり興奮していた変態さんだ。吉田輝雄を精神病院に入れたり、サーカスの少女を殺したのも小池朝雄。登場時は真面目な執事だったのが嘘のようである。
 そして吉田輝雄と愛しあうようになっていたシャム双生児の女性が吉田輝雄の兄妹だと暴露する。
 すでに深い愛に落ちていて別れられなくなっていた二人は打ち上げ花火に飛び込むと空高く打ち上げられる。兄と妹の首が宙を舞いながら「おかあさーん」と叫ぶ。散らばる手や足。当時の劇場内は爆笑と拍手の嵐であった。
 英語でコメンタリーが収録されているのだが、なんと言っているのだろうか。コメンタリー字幕はないんだよな。あっても読むのが無理そうだが。
『網走番外地』をイタリアで上映して石井輝男も参加した『石井輝男イタリアを行く』や、塚本晋也と川崎実へのインタビューなども収録されていて、かなり力を入れて作られている。DVDはアメリカのカルト映画マニアが作ったんだろうな。

『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』 女と犯罪

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『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』 (1969) 92分 日本 東映

監督:石井輝男 企画:岡田茂、天尾完次、佐藤雅夫 脚本:掛札昌裕、野波静雄、石井輝男 撮影:わし尾元也 美術:富田治郎 編集:神田忠男 音楽:八木正生 助監督:依田智臣
出演:吉田輝雄、中村律子、藤江リカ、石山健二郎、葵三津子、藤木孝、賀川雪絵、若杉英二、牧淳子、加藤嘉、沢彰謙、上田吉二郎、金森あさみ、由利徹、大泉滉、三笠れい子、小池朝雄、木山佳、松井みか、司れい子、田島千鶴、小畑通子、片山由美子、由美てる子、林彰太郎、林真一郎、蓑和田良太、土橋勇、土方巽
特別出演:阿部定

 自殺した妻の検死遺体から他人の精液が検出された夫の監察医吉田輝雄。彼は、「なぜ妻は自殺したのだ。精液は誰の物だ」から始まり、女性を犯罪について足を踏み入れることになる。要は狂言回しで、自殺した妻の謎とかはどーでもいいんである。
 資料を調べていく内に様々な女性が関わる犯罪事件を見つける。その一つが『東洋閣事件』。実際に犯行が行われたのは日本閣という旅館なのだが、なぜかこれだけ旅館の名前や登場人物が仮名になっている。
 妻が悪い男に騙され東洋閣を芸者屋にするため夫を殺害し、改装中の壁に塗り込めてしまう。しかし、壁に死体が塗り込めてあるという噂が立ったため壁を壊し、蛆だらけの死体を取り出すと山中に埋め直す。これでめでたしめでたしと思いきや、今度は男が他の女と肉体関係を持つ。そして妻が取った行動は...
 男を道具として利用し、役に立たなくなればあっさり殺してしまう。女はしたたかである。
 そして昭和11年に起きた阿部定事件。愛人を絞殺し、チンコとタマを切り取って持ち歩き3日後に逮捕された時でも大事そうに持っていたという奴ですな。大島渚の『愛のコリーダ』(1976)で有名だ。
 料理屋で働き始めた阿部定がそこの主人と愛欲関係に墜ち駆け落ちをする。そして拘束プレイで主人の喉を絞めている内に本当に死んでしまう。阿部定は主人を愛していたあまりチンコとタマを切り取って逃走。途中で別の愛人加藤嘉に「君はなんだか臭いね」と言われながらも逃げ続けるが逮捕される。この加藤嘉が作中で一人浮いている。いや逆に登場人物のほとんどが浮いていて加藤嘉一人が落ち着いているのかな。
 このエピソードでは本物のお婆さんになった阿部定が登場する。陸橋の上で隠し撮りのように吉田輝雄からインタビューを受ける阿部定は普通のお婆さんにしか見えない。「男は私に殺されて幸せだった。愛する人だから死体を持っていきたかったけどそれは無理だからチンコを切って持っていった。当たり前のことでしょう」と語る阿部定は最初の普通のお婆さんという印象から妙な存在感のあるお婆さんになっていた。
 この阿部定事件の影響を受けたのか、各地で局所切り事件が発生し、学生服を着た由利徹が愛人のお婆さんから学費を都合してもらいにやって来て、セックスに誘われあげくには嫉妬に狂ったお婆さんからハサミでチンコを切られたり、大泉滉がチンコを切られたり、日本はチンコ切りブーム。ここはコメディ仕立てになっていて、一服の清涼剤。
 そして戦後の食糧難の日本で、イモや米を餌にして女性を次々に強姦・殺害していった小平事件になる。小平義雄を演じているのは小池朝雄。このパートだけモノクロで撮られていて、獲物を狙う小平の目つきやなめ回すような口物が印象的である。それらの犯罪を刑事に自白する小平はもうまともではない。刑事コロンボの吹替から真面目な男、そしてこんな変質者までこなす優れた俳優だった。一見まともそうに見えるとは言え、おにぎり一個で若い娘が一人で男について行くなど食糧難は深刻だったんだろう。それを餌食にする小平は肉食獣のようである。
 最後は高橋お伝事件。親の決めた結婚をしたところ、夫が天刑病(ハンセン病)となってしまう。夫の特殊メイクは雑な仕事だがかなりグロテスク。そして雪の降る中、首斬り浅右衛門(土方巽)による日本最後の斬首刑が行われる。鮮血が雪に飛び散る。
 それらの資料を読み終えた吉田輝雄は、閉館ですよの声に「うん」と出ていく。でも多分何も分からなかったに違いない。

『徳川いれずみ師 責め地獄』 彫り師の執念

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『徳川いれずみ師 責め地獄』 (1969) 95分 日本 東映

監督:石井輝男 企画:岡田茂、天尾完次 脚本:掛札昌裕、石井輝男 撮影:わし尾元也 美術:雨森義允 編集:神田忠男 音楽:八木正生 緊縛指導:辻村隆 助監督:篠塚正秀
出演:吉田輝雄、小池朝雄、橘ますみ、片山由美子、藤本三重子、林真一郎、尾花ミキ、田中春男、矢奈木邦二郎、ユセフ・オスマン、ハニー・レーヌ、芦屋雁之助、佐藤晟也、賀川雪絵、牧淳子、葵三津子、由利徹、大泉滉、小田切恵子、水上富美、若杉英二、上田吉二郎、人見きよし、小田伸士、木山佳、三笠れい子、黒田のり子、高木恵子、美笹ゆき子、司みち子、五十嵐義弘、畑中伶一、岡田千代、清水正二郎

 初っぱなから女囚の処刑シーンから始まる。十字架に架けられているのを竹槍で貫かれたり、首まで土に埋められて首をノコギリ挽きにされたり、まぁ明らかに作り物めいているのでどちらかと言えば笑っちまうんだが、そんな残酷描写。で、これがストーリーと関係あるかというと何にも無い。そのまま終わって本編に突入する。
 夜である。墓場を一人の女が歩いている。そしてある墓を見つけると鍬で掘り始める。棺おけが出てきて中には男の死体がある。死体の腹を切り裂くと中から小さな鍵が出てくる。何の鍵かというと女の貞操帯の鍵だったのだ。
「これで女に戻れる」と喜び勇んで貞操帯をはずそうとするのだが、鍵が鍵穴の中で折れてしまう。「ヒー!」。なんじゃそりゃ。
 そうか、この女が何故貞操帯をされてしまうかまでを回想シーンで描く作品だな。でもタイトルの『徳川いれずみ師 責め地獄』とはどうつながるのだろう。
 実は、貞操帯の女もほんの脇役で大筋からはほとんど関係ない。
 吉田輝雄と小池朝雄の二人の彫り師が、師匠の彫五郎の名前を襲名すべく、女たちに入れ墨を彫ってそれを将軍に観覧してもらい勝負を決める彫り物勝負が行われる。
 彫五郎はこの勝負は吉田輝雄の勝ちだろうとにらんでおり、娘の橘ますみを吉田輝雄の嫁にする気でいる。
 そして彫り物勝負が行われ、将軍は小池朝雄が彫った骸骨の彫り物に圧倒され勝ちを言い渡すのだが、吉田輝雄が「恐れながら、その女に酒を一杯飲ませてください」と申し出る。
 酒を飲むとなんとおしろい彫りで観音様の姿が女の背中に浮かび上がった。「うーむ」と感心した将軍は「両社互角。勝負無し」としてしまう。吉田輝雄の方がスゴいと思うけどね。
 それから取り憑かれたように吉田輝雄と小池朝雄は女たちに入れ墨を彫っていく。刺青を入れられた女たちは長崎の出島に連れて行かれ、海外に売り飛ばされる。
 緊縛指導:辻村隆とあるように、緊縛シーンが豊富にある。縛って吊された女たちが竹刀で殴られこちらはさすがに本物の迫力で気圧されてしまう。おっぱいもいっぱい出てくるぞ。
 小池朝雄は遊館の女主人に麻薬を打たれて生きる彫り物マシーンに。吉田輝雄は橘ますみを失い、復讐に燃えて女たちを売り飛ばす異人の娘(16歳)の全身に刺青を入れる。
 で、貞操帯の女はなんだったのかというと、遊館の女主人の怒りに触れ、貞操帯をされてしまったのだ。女主人はバイなので女もいける口。貞操帯女を自分専用にしたのだ。しかし、男が貞操帯の鍵を飲み込んでそのまま死んでしまう。そこで墓を掘り返したというわけだ。女は遺体損壊の罪で十字架に架けられて海に浮かべられ周りに油をまかれて水上火あぶりの刑にあう。
 刺青がテーマな割りには作りが雑で、ほとんどがボディ・ペインティングにしか見えない。本当に刺青を入れるわけにはいかないんだろうけど。完璧主義の黒澤明がこの作品を撮ったら女たちに本当に入れ墨を彫らせていたかも。もっとも黒澤が撮る題材とは思えないが。
 あまりのくだらなさに、異常性愛路線に反抗した助監督がストライキを起こしたんだそうだ。当時の助監督は一流大学出だったりするからプライドが高かったりしたんだろう。
 ラストは女主人が折り曲げ竹に両足を縛られ、竹を縛っていた縄を切られ元に戻る竹の勢いで股が裂け血と肉片が飛び散って"完"。まったくなんて映画だい。
 牢屋から入れ墨を彫られるために女囚が連れ出されるのだが、その中に由利徹と大泉滉がいるというギャグがある。オカマかなと思ったが、女囚牢にいるし声は女性が吹き替えている。なんだかなぁ。
 下品だろうがくだらなかろうが、面白ければ良いというエネルギーが伝わってくる。観る人を選ぶ作品だけどね。

『異常性愛記録 ハレンチ』 変態一代記

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『異常性愛記録 ハレンチ』 (1969) 89分 日本 東映

監督:石井輝男 企画:岡田茂、天尾完次 脚本:石井輝男 撮影:わし尾元也 美術:鈴木孝俊 編集:神田忠男 音楽:八木正生 舞踊振付:花柳幻舟 助監督:篠塚正秀
出演:若杉英二、吉田輝雄、橘ますみ、カルーセル麻紀、尾花ミキ、三笠れい子、葵三津子、丹下キヨ子、南風夕子、賀川雪絵、宮城千賀子、花柳幻舟、有沢正子、林真一郎、小池朝雄、小島慶四郎、中村是好、由利徹、南利明、沢彰謙、上岡由美子、上田吉二郎、田村八十助、いそむらやすひこ、木山佳、片山由美子、水上富美、金森あさの、蓑和田良太、沢淑子、東京ゲイボーイズ

 京都のバーのママ橘ますみはお客の若杉英二と肉体関係を持ってしまったことから、延々付きまとわれている。「愛してるんだよ~ん」「結婚しようよ~ん」と迫ってくる若杉英二を橘ますみは何故か斬り捨てることが出来ず、ストーカー状態が続いている。
 いきなり羽毛に血がばらまかれ、そこから女性が立ち上がってくるオープニング。瞳の執拗なアップ。若杉英二の舌で舐め回す口元はまだしも、鼻の穴のアップの意味が分からん。
 若杉英二は妻子のいる身なので口では「離婚するから~」と言っているがはなはだ怪しい。
 とにかく若杉英二の変態振りを楽しむ映画。女性のパンティとブラをしてカルーセル麻紀にMとしていたぶられたり、外人女性の絡みを覗いて自分もハッスルしてセックスしたり。
 橘ますみはデザイナーの吉田輝雄と知り合い恋に落ち精神の安定を取り戻すのだが、それを再び若杉英二が破壊する。橘ますみがトイレにいる時に中に入ってきて「トイレの様子を見せて」と言ってくるわ、偽装ガス自殺をするわ、包丁を持ち出すわと丸っきり異常である。
 これが怖ろしいのが、石井輝男が知人から聞いた実話を元にしていると言うことだ。
 橘ますみに甘えていたと思ったら、突如暴力を振るって首を絞めたり水風呂に沈めたりとSでもあるようだ。
 若杉英二はそれまで普通の東映俳優だったのだが、この後石井輝男の異常性愛路線に数本出演したきり姿を消してしまう。もう普通の役は出来ないほどはまっていたのだ。
 橘ますみが他人や警察に助けを求めないのはイライラしてくる。バーのホステスではなくママなのだからそれなりに修羅場はくぐってきているだろうに、若杉英二の精神的支配下から抜け出そうとしないのだ。
 ラストは雷雨の夜、吉田輝雄のマンションで若杉英二と吉田輝雄が取っ組み合いになり、若杉英二が飛び出しナイフを出してくる。吉田輝雄ヤバし。ところがナイフが金属製の手すりに触れた時に雷が落ちて若杉英二は黒焦げの死体になってしまう。ハッピーエンドだと抱き合う橘ますみと吉田輝雄。
 だが「ダダッダダン、ダダッダダン。チャララーチャラチャラー」とターミネータのテーマ曲が流れ若杉英二の焼死体が立ち上がる。黒焦げになった顔面が崩れ去り中から金属製の頭蓋骨が現れる...なんてことはない。

『徳川女刑罰史』 近親相姦、レズ、SM

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『徳川女刑罰史』 (1968) 96分 日本 東映

監督:石井輝男 企画:岡田茂、天尾完次 脚本:荒井美三雄、石井輝男 撮影:わし尾元也 美術:鈴木孝俊 編集:神田忠男 音楽:八木正生 緊縛指導:辻村隆 助監督:牧口雄二、荒井美三雄
出演:吉田輝雄、渡辺文雄、中村錦司、橘ますみ、沢彰謙、上田吉二郎、芦屋雁之助、蓑和田良太、毛利精二、賀川雪絵、尾花ミキ、白石奈緒美、岡島艶子、小島恵子、英美枝、牧淳子、美松艶子、並木玲子、林真一郎、三笠れい子、沢たまき、小池朝雄、由利徹、南風夕子、三乃瀬愛

 石井輝男異常性愛路線映画シリーズ第三段。この辺りから石井輝男が趣味に走って行って壊れていく様子が実に楽しい。
 3つのエピソードからなるオムニバス映画だが、どれも近親相姦、レズ、SMと変態度が高い。
 まずはストーリーとは全く関係ない女囚の処刑シーンから始まる。辻村隆緊縛指導による縛りで木から吊された女囚が断首され胴体も真っ二つ。火あぶりになる女囚。そして2頭の牛で股裂きになる女囚。初っぱなから飛ばしてるねぇ。
 第一のエピソードは仕事中に頭部に事故を追った大工とその妹の物語。妹を狙っている大旦那が大工の治療費を見てやり、そして妹に迫ってきて処女を散らしてしまう。それを知った大工は、実は妹を女性として愛しており、近親相姦という畜生道に陥ってしまう。兄を愛していた妹もそれを受け入れる。だが、それが大旦那にバレ、大工は自害し、妹は大旦那に斬りかかる。
 結局お白砂にかけられた妹は、兄を殺害しただけなら遠島ですむのだが、命を捨てても兄との畜生道である近親相姦を打ち明けてしまう。そのため、海岸で逆さ十字架に架けられ、満ちてくる潮で溺死してしまう。
 このことをきっかけに役人の吉田輝雄が女囚の悲惨な最期を調べ始める。
 第二のエピソードは京から江戸にやって来た偉い尼さんが、格下の尼が同じ敷地内にある男寺の僧侶と密会していてそれを知ったことから起きる悲劇。偉い尼さんには部下の尼がいて彼女とレズビアン関係なのだが、どうしても男を味わってみたくなる。そして僧侶を誘惑して男女関係に持ち込むが、これはもちろんあってはならないことだった。
 嫉妬心から格下の尼さんを責めて、お湯に下半身を浸からせてそこにドジョウを何匹も放り込む。熱いお湯から逃れるために尼さんの秘所に入り込んでいくドジョウたち。
 結局、一番偉い尼さんが役人に訴え出て御用提灯が寺を取り囲む、尼さんは僧侶の首を切ってしまい、これであなたは私だけのものとすっかりおかしくなってしまい、寺に入ってきた役人に殺されてしまう。尼さんとレズビアンの相手だった尼はその様子を見て気がふれてしまう。
 そしてすでに死んだ尼や気がふれた尼など5人が磔獄門になるのだが、吉田輝雄はそれに疑問を抱く。
 第三のエピソードは江戸随一の彫り師である小池朝雄が苦悶の表情を浮かべる刺青を女郎に入れて悦に入っていたのだが、罪人を責める役人に「そんな苦悶の表情は嘘だ」と言われてしまう。
 由利徹の働く銭湯で素晴らしい肌の女性を見つけた小池朝雄はその女性を誘拐してしまう。そして役人が長崎の南蛮人を尋問に行くというので女性を連れてついて行く。白人女性が6人ほど、縛り上げられ竹刀で殴られたり、火であぶられたり、水攻めにあったりとキリスト教を布教しに来たんだろうと厳しい責めを受けている。それを見た小池朝雄はノリノリで苦悶にあえぐ女性の姿を刺青していくのだが、責めている鬼の姿だけがどうしても思い浮かばなかった。そして役人を刺し、その表情を見て「責める者も苦しんでいるのだ」と一世一代の彫り物を仕上げる。だが、その直後番人たちに襲われ命を落としてしまう。残されたのは苦悶の刺青だけ。
 うーむ、どれをとっても変態だ。それでいて、基本的には純愛がベースになっているのだが。
 第三のエピソードは白人少女に刺青を入れる『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969)の原形であろう。それにしても責め苦に遭っていた白人女性はどんな身の上の人だったんだろうか。白人ストリッパーとかなのかな。

『温泉あんま芸者』 女はいつもまっすぐよ

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『温泉あんま芸者』 (1968) 89分 日本 東映

監督:石井輝男 企画:岡田茂、天尾完次 脚本:内田弘三、石井輝男 撮影:吉田貞次 美術:矢田精次 編集:神田忠男 音楽:八木正生 助監督:本田達男
出演:吉田輝雄、橘ますみ、三原葉子、三島ゆり子、高倉みゆき、英美枝、賀川雪絵、応蘭芳、小島恵子、沢淑子、南風夕子、辰巳典子、工藤奈美、渚まり、三乃瀬愛、南道郎、芦屋雁之助、金子信雄、沢田浩二、上田吉二郎、南都雄二、由利徹、中村錦司、大河内好太郎、稲村理恵、美波節子、唐沢民賢、山本昌平、矢奈木邦二郎、熊谷武、人見きよし、茶川一郎、小島慶四郎

 あんま芸者というのは昼間はマッサージ嬢をやっていて夜になると着物に日本髪姿となりお座敷で芸者をやる、しかも同衾してくれるというアフターサービス付きな芸者。本当にそんなのがいたのか、フィクションなのかは不明。
 もちろん、三味線や踊りなどの芸をやるちゃんとした芸者衆もいて、両者は対決している。あるお座敷で一緒になったときは喧嘩になり、お客の提案で野球拳で決着を付けることとなる。
「やーきゅーうー、すーるなら。こういう具合にしやしゃんせ」
 と数十人の芸者がどんどん半裸になっていく様子は壮観。
 あんま芸者の顔ぶれが豊かで、三原葉子や太腿に蟹のハサミの刺青を入れて男を挟んでしまう芸者、冷え性で寝小便をしてしまう芸者、処女膜再生を繰り返す芸者など色々。そんな中、唯一客に身体を許さないのが橘ますみ。彼女は温泉街の医師吉田輝雄に惚れていて、診察で足を開き処女膜を見せつけることで吉田輝雄に愛をアピールする。だが吉田輝雄は朴念仁でそんな橘ますみの愛にピクリとも反応を示さない。まぁ処女膜を見せられて愛の告白だと思う人もあまりいないだろうが。
 ある日、妊娠した女性が働かせて欲しいと転がり込んでくる。あんま芸者の親方は仕方なくマッサージ嬢として使うことにするが、芸者たちが集団で温泉に入っていたところ、8ミリカメラで隠し撮りをしていた男がいて、この男を捕まえてみたところ妊娠女性の逃げ出した夫だった。ショックのあまりその場で出産してしまう。
 こうしてあんま芸者衆に恩を受けた夫婦だったが、芸者衆の現金や宝石などを盗み、病気で入院していた赤ん坊をおいて逃げ出してしまう。当然のごとく怒った芸者衆たちだったが、夫婦は「出来ごころだった」と頭を下げて帰ってくる。夫は窃盗の罪で警官に逮捕され、「私は元は焼き芋屋だったんですよ。これがせめてもの罪滅ぼしです」と「いーしやーきいも、おいも」と声を上げながら連行されていく。その後を赤ん坊を抱いた妻が「栗より美味いお芋だよ」と追いかけていく。ユーモラスだが感動的シーンでもある。
 由利徹は温泉街のお寺の和尚で、昔は廃寺寸前だった寺を観光寺に盛り上げた。どうやったかというと秘宝館のようにチンコ状の石や木細工、春画などを飾っているのだ。あんま芸者の一人といい仲なのだが、檀家衆から「これでは公然わいせつ罪ではないか」と糺弾されている。ラストは追放になってしまった由利徹だが、恋人に励まされて再び寺に戻る決心をする。
 そしてある芸者は東京でモデルになるために旅立ち、吉田輝雄は沖縄の無医村に向かう。その寸前に酔ったところを客に襲われ処女を奪われてしまった橘ますみは「私はもう汚れてしまいました」と吉田輝雄に告げていたが、「重要なのは身体じゃない。心だ」と吉田輝雄に励まされている。でも、橘ますみの愛に気付いているのかいないのか相変わらず朴念仁である。
 橘ますみは吉田輝雄に着いていくのかと思ったら、温泉街に残って真っ直ぐ生きることを誓う。
 オッパイもろくに見えない作品だが、公開当時に成年映画に指定されているので、今でも18歳未満は観ちゃ駄目なのである。
 橘ますみの純愛はそれなりに感動的なのだが、それ以上に半裸の芸者衆の野球拳や取っ組み合いの喧嘩、空き巣を追いかけて下着姿で温泉街を走る芸者衆などイカれた映像が強く印象に残る。バカだなぁ。
 ラストの処女を失ったことも吹っ切り、恋も捨て去り、真っ直ぐ生きていくことを選ぶ橘ますみの姿に生命力を感じる。他のあんま芸者衆もたくましく、女は実にタフである。そんな中、元教師の南都雄二が疲れ果てて妻の元から逃げ出してきて、かつての教え子だったあんま芸者と再会するものの、心臓発作を起こしてあっけなく死んでしまう。あんま芸者を利用して商談をしていた男たちは汚職で逮捕されてしまう。男は弱いね。
 これで2本目となる石井輝男の変態映画シリーズだが、ここまではまだまとも。しかし、次の『徳川女刑罰史』辺りからエンジンのコイルが暖まってくる。