『ルパン三世 GREEN vs RED』 命題:ルパン三世とは

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『ルパン三世 GREEN vs RED』(2008) 79分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント、VAP

監督:宮繁之 アニメーション制作:東京ムービー 原作:モンキー・パンチ 脚本:大川俊道 キャラクターデザイン:西村貴世 メカニックデザイン:水村良男 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、納谷悟朗、片桐仁、平野綾

『ルパン三世』生誕40周年記念作品として作られたOVA。娯楽作であることを放り出して、話をややこしく分かりにくくすれば難解で高尚であると勘違いした、学生の作った自主映画のような作品だよな。
 ルパンが何十人、何百人と大量に存在する。そいつらは偽物なのか、だとしたら本物のルパンは誰なのか。そもそも"ルパンとはなんなのか"を語っているようだ。幻の『押井ルパン』の影響も見て取れるが、監督や脚本家にキレッキレだったころの押井のような才能があるわけでもなく、ただ単に意味不明なだけである。
 多数登場するルパンの中にはコンビニで万引きをしようとして捕まってしまうルパンもいるが、中心となるのはラーメン屋の店員でスリもやっているヤスオが緑のジャケットやワルサーP38を手に入れることで緑ジャケットルパンになっていく。そして民間軍事会社ナイトホークスの金庫室に保管されているダイヤ・アイスキューブを狙うが、その前に赤ジャケットのルパンが現れる。
 次元や五エ門にもどれが本物のルパンか分かっていない。というよりも組んで面白い仕事が出来るのが本物のルパンでいいじゃないかという考えのようだ。
 銭形警部は大量のルパンの手配写真を見て「こいつらは偽物だ」と言い切る。誰よりも本物のルパンにこだわりを持っているのは銭形であるのは言うまでもない。『生きていた魔術師』(2002)と続けて観たので、この6年で納谷悟朗の声が明らかに衰えて力が無くなっていることがショックだった。
 ヤスオを演じた声優は「聞かねぇ名だな、片桐仁とは」と思ったらラーメンズとか言う芸人の人だった。メチャメチャ下手ではないが、下手だ。耳障りでこういうキャスティングはやめて欲しい。ヤスオは客の入らないグリーン軒というラーメン屋の店員。店にいるのはヤスオだけだが、店主とは思えないので雇われの身だろう。店が流行っていないことにも何を感じるわけでもなく、ただボーッと毎日を過ごしている。そんな彼が緑ジャケットのルパンになっていく。店の数少ない常連客である古本屋『紅屋』に店主曰く「ルパンはルパンに生まれるのではない。ルパンになるのだ」だそうだ。
 そしてアイスキューブを巡って赤ジャケットのルパン(栗田貫一)と争うことになるが、それはどちらが本物のルパンであるかという戦いであった。
 1stから新ルパン三世、『カリオストロの城』などを思わせるシーンが登場するが、引用と言うよりは「これはどの作品か分かるか」という製作者の上から目線を感じる。エンディングは今井美樹の歌う『炎のたからもの』だが、どうにも慎みがないね。
 確かに『ルパン三世』は原作、アニメが長年続いているので色々なデザインや設定のルパンが存在し、ひょっとしたらルパンは一人ではないのではというアイディアは面白いのだが、そのネタを心引かれるものに出来ていない。
 最終的にはその中でもヤスオと赤ジャケットのルパンの対決となるわけだが、これも観念的に走ってしまいラストもオチてるんだかオチていないんだか。
 ルパン対策本部の刑事が原爆症であるという設定もとってつけたよう。アイスキューブの正体とかけているのだろうが、いきなり反核テーマを持ち出されてもな。
 監督と脚本家などの製作陣がルパンの大ファンで、入れ込みすぎて客観視が出来ていないのではないだろうか。自己満足の作品。

『ルパン三世 生きていた魔術師』 逆襲のパイカル

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『ルパン三世 生きていた魔術師』(2002) 48分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:浜津守 絵コンテ:浜津守 原作:モンキー・パンチ 脚本:葛城綾 キャラクターデザイン:平山智 作画監督:平山智 CG制作:ピー・アール・オー 美術監督:宮野隆 撮影監督:大坪聡 編集:T.D.B. 音楽監督:鈴木清司 音響監督:加藤敏 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟郎、野沢那智

 TVスペシャルではなくてOVAである。1stシリーズの第2話『魔術師と呼ばれた男』の続編になる。
 魔術師とはルパンに戦いを挑んできた謎の男パイカルのことである。パイカルは拳銃で撃たれても死なず、指先から炎を放ち、空を歩く。さすがのルパンも最初は苦戦するが、パイカルの技が魔術ではなく科学的に説明が付くことを調べ上げ、自らもその技術を身につけて再戦しパイカルを倒した。
 その死んだはずのパイカルが生きていて、ルパンに復讐するべく挑んでくる。
 1stシリーズの続編なのでルパンのジャケットは緑色。パイカルについての説明はないも同然なので、『魔術師と呼ばれた男』を観ていないとなにがなんだか分からないだろう。とりあえずルパンの命を狙っていることと、ルパンが集めている"天球の水晶"をパイカルも集めていて、お互いに持っている合計7本の水晶を賭け戦いを繰り広げることになる。
 天球の水晶にはある秘密が隠されていて、それを利用することで兵器になる。4本持っているパイカルは不完全ながらその技術でルパンを襲う。しかし、ルパンはある老人の力を借りてそれに対抗する。
 途中から次元のくしゃみが止まらなくなるのだが、あれは何なのだろうか。花粉症か?
 雰囲気もやはり1stに近く、シリアス度が高めで大人向け。というか子供は『魔術師と呼ばれた男』は観てないだろうから、ターゲットからしてオールドファン向けだろうな。
 一種のマルチエンディングになっていて、通常のルパンエンドの他に、銭形エンド、不二子エンド、謎の老人エンドも収録されている。

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『ルパン三世 princess of the breeze ~隠された空中都市~』(2013) 90分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:金崎貴臣 企画:船越雅史 原作:モンキー・パンチ 脚本:待田堂子、森田繁、日高勝郎 キャラクターデザイン:加々美高浩 美術監督:高峯義人 色彩設計:加藤里恵 撮影監督:川口正幸 編集:柳圭介 音楽監督:鈴木清司 音響監督:清水洋史 音響効果:倉橋静男 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、石川由依、宮本佳那子、神谷浩史、楠大典、菅生隆之、渡辺明乃、諏訪部順一、金田朋子、千葉繁

『ルパン三世』TVスペシャル第24弾。飛行船やら空賊などが登場する冒険活劇。飛行船はCGで描かれ、ルパンのベンツSSKと敵の車軍団とのカーチェイスもCGになった。カーチェイスは『頭文字D』のアニメ版みたいで、違和感を感じる。迫力はあったけどね。

 鎖国していたシャチハタ、じゃなくてシャハルタ共和国が開国し、オランダで記念パーティーが開催された。そこを空賊たちが小型飛行船で襲撃し、展示されていた水晶を奪おうとする。その水晶を狙っていたルパンと争奪戦になり、結果ルパンが水晶入りのバッグを手に入れるのだが、開けてみると中に入っていたのは赤ん坊だった。
 ルパンの真の狙いは、ルパン一世が書き残したシャハルタの隠し財産。水晶と赤ん坊を取り返すために空賊の少女ユティカがルパンに接近してきて、行動を共にすることになる。
 シャハルタで産出されるヘリウムを扱っている大企業の重役が、赤ん坊がルパンに誘拐されたと銭形警部に解決を依頼してくる。「ルパンは誘拐などしない」と思う銭形だが、ルパンを追い始める。
 重役の側にはヘリウム抽出技術を狙う不二子がいた。
 失われた水晶はどこにあるのか。そしてシャハルタの宝とは。

 飛行船などが数多く登場するのでファンタジー系かなと身構えた。クーデターが起きたシャハルタとヘリウムを狙う大企業のパートと、赤ん坊を抱えたルパン一家や空賊たちのパートがはっきりと分かれていて統一感に欠ける。脚本家が三人もいるから、それぞれの担当した部分が上手く噛み合っていないのではないだろうか。
 ゲストヒロインのユティカはそれなりに可愛くて、ルパンからは「お嬢ちゃん」と呼ばれて怒っているのだが、冒険の中で成長し最後には名前で呼ばれるようになる。
 シャハルタの王女ラーシャはユティカに瓜二つ。これ、実は双子なんだろうなと思ったら案の定。でも双子設定にさして意味が無い。
 全体的に「どこかで観たな」という印象がぬぐえず、あちこちから引用してきたと思われるシーンが多い。
 ゲストヒロインとしてのユティカは魅力的だったが、五エ門と不二子の扱いが悪すぎる。赤ちゃんの意味もあまりないし。いや、赤ん坊をおんぶして走り回るルパンたちの姿は面白いが、それだけなんだよな。
 キャラクターデザインが好みではなく、どうにも少女マンガチックだし、それでいて赤ん坊がまるで可愛らしくない。ウサギの糞のようなコロコロの赤ん坊のウンコは何なんだ。
 全体的にイマイチだが、駄作続きだった時期は脱したようで、単純に観て楽しめるレベルにはなっている。ここで満足せずに、さらに高みを目指して黄金期だった中期のレベルまで戻して欲しい。前作からまた視聴率が下がってるから、今年はやってくれるか心配だ。例年ならば11月頃に放映だろうから、そろそろ情報が入ってきてもよさそうなものだが。

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『ルパン三世 東方見聞録 アナザーページ』(2012) 92分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:亀垣一 チーフプロデューサー:藤本鈴子 企画:奥田誠治 原作:モンキー・パンチ 脚本:日高勝郎 キャラクターデザイン:須藤昌朋 美術監督:佐藤勝 色彩設計:海鋒重信 撮影監督:野口龍生 編集:岡田輝満 音楽監督:鈴木清司 音響監督:清水洋史 音響効果:倉橋静男 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、石井康嗣、井上麻里奈、永井一郎、朴路美、寺崎裕香、徳井青空、中村正、土田大、宮澤正

『ルパン三世』TVスペシャル第23弾。この頃のルパンは脚本が特に大きな弱点だったが、ある程度改善されている。序盤のいきなりな出来事から始まり、話を転がせていってそれなりに上手く着地している。ただ、全体的に詰め込みすぎで、120分作品ならもっと上手くまとまっただろうなと感じさせる。

 イタリアのジェノバで老考古学者が殺され、マルコ・ポーロが書いた"東方見聞録"の失われていた最後のページ、アナザーページを刻み込んだ石版が盗まれた。駆けつけた警備員達が見かけたのはルパンの姿だった。ルパンが殺人を犯したのか。だが銭形は断言する。
「奴はそんなつまらない殺しはしない」
 アナザーページには隠し財宝の鍵が記されているという。ルパンは次元と共に老考古学者の孫娘リサを連れ、マルコ・ポーロの足取りを追うことになる。
 その頃、五エ門は日本の岩手県の山奥で修行をしていた。「剣を極めるには、剣を捨てる必要があるのではないか」。迷う五エ門の前に一人の僧侶が現れ、彼を寺に連れて行く。そこには三姉妹が住んでいた。
 全く別々に思われる二つのストーリーが、後半になって一つのストーリーとなっていく。
 お宝の在処は? そしてお宝の正体は一体何なのか。

 銭形以外の警察組織からは殺人犯として追われる身となったルパン。だがそれを気にもかけずに、イタリアから北京、そして奥州平泉へと舞台は移っていく。
 序盤でルパンを追ってきた謎の黒ずくめの男たちがフッっと姿を消されてしまうので、またSF系かファンタジー系かと嫌な予感がしたが、今回はそういった超科学や超自然現象のトンデモな方向へは進まない。これだけで個人的には評価する。SF系でも『ルパン対複製人間』ぐらいしっかりした出来ならいいんだが、TVスペシャルにはその方面への期待は出来ないからな。
 ルパンたちはリサと出会った時にとっさにICPOの捜査官だと嘘をつく。近くにケンタッキーフライドチキンらしき店があり店頭の人形を見て、「俺はカーネル警部。こっちはサンダース刑事だ」とかなり苦しい嘘なのだが、リサは祖父を亡くしたショックが抜けきっておらず、また元々気が小さくて自分に自信が無い性格だったので、それを素直に信じてしまう。アナザーページには「東と西が出会う時」という記述があったが、その西はリサを意味しているとルパンは考える。何故そう思ったか説明がないのは残念で、リサを連れて行く必然性が感じられないのだが、まぁ目をつぶろう。
 マルコ・ポーロが東洋で仕えたフビライ・ハンの先祖チンギス・ハンは大陸に逃れた源義経というトンデモな説がある。この作品の中でもその話は出てくるが、それはあり得ないという展開になっている。ただ、マルコ・ポーロの足取りを追っている内に、日本の奥州平泉へとたどり着く。ここでルパンサイドのストーリーと五エ門サイドのストーリーが交わる。
 毎回毎回、お宝は結局手に入らないというパターンだが、今回はちゃんとお宝を得ることが出来る。ただし、それは不二子が満足するような物ではなかった。なんというか、道徳の教科書のようなお宝だ。ネタとしては上手くオチている。
 旅を続ける内にリサが甘さを捨てそれまでの弱さから抜け出していく。この心の動きがちゃんと描かれている。若干セリフに頼りすぎな点もあるが、合格点の範囲内だ。彼女の成長がこの作品のテーマでもある。
 そしてもう一人成長というか悟りに近づくのが五エ門である。斬鉄剣を抜いて「毎度毎度、つまらぬ物を斬っている自分」に疑問を感じていたのだが、ラストでは何のために刀を抜くのかについてその意義を掴む。
 銭形が活躍しているのも嬉しい。納谷さんの体調不良のため出番が少なくなっていた銭形だが、山寺宏一に変わってからは元気はつらつで全力を注ぎ込んでルパンを追いかける。それでもルパンが老考古学者を殺したとは微塵も思っていないし、終盤である人物から自分のワルサーP38で撃たれて川に流れていった時も、「ルパンが自分の拳銃で殺されるような奴だったら、100万回は逮捕している」とルパンの実力を認める発言をしている。黒ずくめの男たちに襲われた時には、柔道技や投げ手錠などで簡単に倒してしまう。
 残念なのは敵側のボスがあまりに小物感があって、てっきり幹部の一人ぐらいだろうと思っていたので「こいつがボスかよ!」と拍子抜けしてしまった。軍需産業の新興企業の社長で、武器を売るために戦争を起こそうというのが計画だ。なぜマルコ・ポーロの宝を探しているのかよく分からないし、キャラクターに魅力が無い。『AKIRA』のSOLに似た熱線を発射してくる衛星兵器を持っているが、それも使いこなせずに最後はほぼ自滅。
 気に入らないといえば、キャラクターデザインの須藤昌朋という人は『名探偵コナン』のキャラクターデザインもやっていて、そのせいか脇役がコナン顔揃い。三姉妹なんか作品の中で浮いている。というか、五エ門といい雰囲気になる長女を除くと、あまり必然性を感じられない姉妹だったな。五エ門は純情なんだか惚れっぽいんだか。
 黒ずくめの男たちが使っているのがフランス軍の正式アサルトライフルであるFA-MASなのは珍しかった。あんまりスクリーンには登場しない銃だよな。フランス映画の『TAXi』の2か3で兵士が持っているのを観たぐらいな気がする。
 敵が軍事産業だから、装甲車や戦車、大型VTOL機などが登場する。だが、次元の特殊弾丸でやられたり、戦車は中国の橋を渡ろうとして橋桁が壊れて水中に落ちたり、大型VTOLに至っては、僧侶の放った気に後押しされたM19の銃弾でやられてしまう。ちなみに、この僧侶の正体は・・・・・・
 個人的には結構面白く感じたのだが、視聴率はまたもや前作より落ちた。一度離れたファンを取りもどすのは難しいから、しばらくは苦しい戦いが続きそうだ。問題はそれまでに打ち切られないかどうかだよな。シリーズが終了したらモンキー・パンチ先生がガクッと気落ちしてもしやなんてことになるかもしれないから先生が元気な内は続けるべき。昭和12年(1937年)生まれでもうお年なんだから大切にしなきゃ。
 それにしても、マンガ家は手塚治虫や石ノ森章太郎、藤子・F・不二雄などのように早死にする印象があるが、モンキー・パンチややなせたかし、そしてもはや妖怪じゃないかと噂される水木しげるみたいに長生きする人は歳を取っても現役でやってるよな。まぁ座りっぱなしで健康にはよさそうじゃないし、締め切りなどでストレスは抱えそうだし、心身ともに酷使しそうな職業だよな。

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『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』(2011) 92分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:滝口禎一 アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム 絵コンテ:滝口禎一 企画:菅沼直樹 エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治 プロデューサー:中谷敏夫、尾崎穏通、岩佐直樹、竹内孝次 原作:モンキー・パンチ 脚本:土屋理敬 キャラクターデザイン:佐藤好春 総作画監督:佐藤好春 作画監督:白井裕美子、中田博文 美術監督:山子泰弘 色彩設計:磯部知子 撮影監督:宮川淳子 編集:笠原義宏 音楽監督:鈴木清司 音響監督:清水洋史 音響効果:倉橋静男 音楽:大野雄二 制作進行:栗栖千佳、鳥枝太郎、大隈真一 制作担当:山路晴久
声の出演:栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、清水理沙、渋谷はるか、石田彰、斎藤志郎、野沢雅子

『ルパン三世』TVスペシャル第22弾。アニメ化40周年となるこの作品から五エ門が浪川大輔、不二子が沢城みゆき、銭形が山寺宏一に交代し、若返りが図られた。これで1stから残っているのは次元役の小林清志だけになった。(『風魔一族の陰謀』は除く)
 声優交代の話を聞いて久しぶりにTVでリアルタイム視聴したのだが、当時の感想は「なんじゃこりゃ。つまんねー」だった。今回観直してみると、以外と面白かった。シリーズ前半の充実度にはかなわないが、この頃のシリーズは駄作が続いていたからな。それらに比べるとマシだったのだ。
 キャストに関しては、当時はやはり違和感があったものの、もう慣れてしまっているので今回は特に気になる点はなかった。交代組は当時かなり緊張したのだろうか。

 ルパンは藤堂という老婦人に不二子を人質に取られ、"人魚の鱗"という宝玉を盗み出すことになる。だが銭形の警戒をかいくぐり盗み出したのは真っ赤な偽物。本物は氷室という男が持っているのだ。人質に取られていたはずの不二子は藤堂とグルで、ルパンは人魚の鱗と、それと対になる竜の鱗を盗み出す。
 二つの宝玉は八百比丘尼の伝説に関係があるのだが、そのお宝にたどり着くにはもう一つの鍵が必要だった。
 その鍵は美沙という若い女性。その美沙を助け出したいと思っている麻紀という14歳の少女がルパンに弟子入り志願してくる。
 八百比丘尼の宝とは何なのか。謎はある孤島を示していた。

 視聴率はついに15%を切ってしまった。この頃は迷走して駄作続きだったんで、それもやむないことだろう。だが、この作品はストーリーに若干の難はあるものの、テレコム・アニメーション製作だけあって作画は安定しているし、なにより動きがいい。ルパンの魅力の一つはアクションシーンだが、こいつはやっぱり動いてナンボだ。
 今作のルパンはある思いを抱えている。それは、「ルパンとは一体何か?」である。お宝を盗むのになんで予告状を出してわざわざ仕事を困難にしているが、ただ金儲けのためならばそんなことをせずに黙って盗めばいいではないか。自分が"怪盗"であることに疑問を覚えているのだ。その理由の一つには、ルパン一世が八百比丘尼の宝に挑戦したのだが、何も盗んでいないということがあった。今回の事件はルパンにとって自分を見つめ直す機会でもあったのだ。終盤で孤島の洞窟に仕掛けられた罠をかいくぐり、宝を見つけたルパンは落ちていたルパン一世の日記を見つけ、わだかまりを吹き飛ばした。
「楽しんだ方が面白いじゃん」
 予告状を出してわざわざ困難にするのも、ルパン一族にとって怪盗とは一種のゲームなのだ。難易度が高ければ高いほど、達成した時の満足感が大きいのだ。
 今作はダブルゲストヒロイン。もっとも美沙はともかく、14歳の麻紀をヒロインと呼んではルパンがまるでロリコンのようだ。ロリコンルパンは『カリオストロの城』で充分。だが、打算なして美沙を助けるために必死に突っ走る麻紀に14歳という年齢は合っている。
 全体的にキャラが立っていて、ルパン一家はもちろん悪役の氷室もちゃんと悪役している。野沢雅子が声を担当した藤堂はすぐに殺されてしまうのでゲストだな。
 問題は終盤。ある人物が八百比丘尼の子孫で、怪我をしてもすぐに直ってしまうのはまだ我慢するが、洞窟の奥で眠りについている八百比丘尼の血を注射した氷室がハルクもどきの怪物になってしまうのはさすがにやり過ぎ。お子様にはいいのかもしれないが、もうちょっとリアル路線でもよかったのではないだろうか。なんだかんだいってルパンのファンは年齢層が高いと思うのだが。
 怪盗というアイデンティティに自信を取りもどしたルパン。彼は一種のダークヒーローである。これからも怪盗としてもヒーローとしても活躍して欲しい。
 だが、この後に2作続編があるのだが、順調(?)に視聴率が落ちてるんだよね。打ち切りにならないか心配だ。毎年11月頃に放映されているようだが、今年はやってくれるのだろうか。もうすぐ小栗旬主演による実写映画版『ルパン三世』が公開される。ルパンという作品の価値はまだまだあると思うので、最近の弱点である脚本に力を入れて楽しめる娯楽作を作って欲しい。

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『ルパン三世 the Last Job』(2010) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:アミノテツロ 絵コンテ:アミノテツロ プロデューサー:中谷敏夫、尾崎穏通 原作:モンキー・パンチ 脚本:大川俊道 キャラクターデザイン:平山智 音楽監督:鈴木清司 音響効果:倉橋静男 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、平野綾、朴路美、津嘉山正種

『ルパン三世』TVスペシャル第21弾。サブタイトルの『the Last Job』はどういう意味なのか。長く続いたTVスペシャルもついに終了か。駄作が続いたし、最初の頃は20%を越えていた視聴率も10%台に後退。そうか、そういうことか。と思ったらまだ続くのな。結局、意味不明。

 ドイツでナチスの隠し財宝が発見され、その中から日本からヒトラーに贈られた『地獄如来像』が発見される。国宝級とも言われるその地獄如来像を狙うルパン一家。しかし、地獄如来像には更なる秘密が隠されていた。

 今回の敵は風魔忍軍。といっても『風魔一族の陰謀』の風魔とは関係ない。なんと16世紀のローマの異端科学者が国を追われて日本に流れ着き、山賊と出会って仲間となり忍者になった。『ローマ』と『ふーま』、ちゃんと共通点がある。伝説の天狗や鬼は山中に隠れ住むローマ人を見た日本人が考え出したんだそうだ。確かに、漂流した外国人を天狗や鬼と思ったという説は聞いたことがあるけどね。
 ローマ人科学者は地獄如来像の中に隠された六角の石にレーザーで真のお宝の在処を刻み込んだ。レーザーを当てると、それが映し出される仕組みになっている。悪党のボス曰く、「16世紀のローマ人科学者ならばレーザーを作り出すのも可能だろう」。いや、どう考えても不可能ですから。オーバーテクノロジーにもほどがあります。でもこんなもんで驚いていちゃいけない。真のお宝の正体は現代科学でさえ不可能な超オーバーテクノロジーだ。それが判明した時にはさすがに頭を抱えたぞ。
 ケチはいくらでもつけられるが、それでも出来としてはここ数作の中ではましな方。これでましなのだから初期の頃からどれだけ劣化したか分かりそうなものだ。
 地獄如来像の強奪シーンや、敵である風魔忍軍との戦いなどアクションは結構あるが、どこかで観たようなことを繰り返しているだけで新しさが感じられない。惰性で描かれている感じだ。
 銭形警部役の納谷悟朗の体調がかなり悪くなってきたようで、出番がかなり少なく声の衰え感も強い。ほとんどゲスト出演のような感じ。もう納谷悟朗は年に一度の銭形役しかやっていないような状況だったそうで、2013年3月5日に83歳で亡くなることになる。
 風魔忍軍の中に次元のライバルがいるのだが、過去にどんな因縁があったのか語られず、そのためザコ感があってしょうがない。次元の命を狙う理由があるならちょっとしたセリフでいいから語って欲しい。それでなければ単なる次元を倒して名を上げようとしている殺し屋で良かったのではないだろうか。
 ルパンが地獄如来を狙うのもイマイチ説明不足。いつものように不二子にねだられたわけではなく、単に欲しかったからなのか。でも国宝級レベルのお宝じゃ、ルパンが狙う獲物じゃないな。もっと大物を狙うのがルパンじゃないのか。
 TVのレポーター神楽坂飛鳥がルパンの強奪作戦を中継するのだが、彼女の正体はICPOの捜査官で銭形の助手。かと思いきや、さらに風魔忍者の正統なる末裔。風魔忍軍とは詳しい理由は分からないが敵対関係である。実は彼女がお宝の鍵であった。演じているのは人気声優"だった"平野綾。いたなぁ、そんな人。忍術で銭形を仮死状態にし、死んだことにされた銭形は中盤は退場しているが、納谷さんの体力を考えたスタッフの策なのだろうな。彼女が使う忍者犬の虎太郎が買い主以上に大活躍。なにかというとルパンのケツに噛みつくし、倒れたルパンの頭に小便を引っ掛けたりする。ルパンも落ちたな。
 飛鳥には姉がいて、風魔忍軍に潜り込んでいる。もちろん最後には風魔忍軍を裏切る。ダブルゲストヒロインというわけだが、あまり意味はなかったな。話を混乱させただけだ。彼女に時間が割かれていて、ルパンたちの活躍シーンが減らされているという弊害がある。
 次作からはルパン一家の内、五エ門、不二子、そして永遠のライバル銭形の担当声優が交代になり、それぞれ浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一に交代になる。はっ、ラストジョブとは旧キャストにとって最後の仕事だったと言うことなのか。

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『ルパン三世 sweet lost night ~魔法のランプは悪夢の予感~』(2008) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:アミノテツロ アニメーション制作:東京ムービー 絵コンテ:アミノテツロ 企画:奥田誠治、藤本鈴子 プロデューサー:中谷敏夫 原作:モンキー・パンチ 脚本:大川俊道 キャラクターデザイン:平山智 総作画監督:平山智 美術監督:飯島由樹子 撮影監督:野口龍生 編集:佐野由里子 音楽監督:鈴木清司 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、納谷悟朗、銀河万丈、田中美里、萩原聖人、佐々木敏

『ルパン三世』TVスペシャル第20弾。ついに20作目か。今作は結構面白かった。ただ、この頃の作品が「ヒデェ」ばっかりだったので対比でよく見えているのであり、TVスペシャル全体で考えれば、平均点以下だろう。

 不二子のおねだりで、砂漠から発掘されたアラジンの魔法のランプを手に入れたルパンがランプをこすってみたところ、なかから美人の妖精が現れ、「人生の半分と引き替えに何でも願いを叶えてあげる」という。ルパンが妖精にキスをしようとすると午後の7時になり、次の瞬間海辺にいたはずなのに、突然都会の車が走り回る道路の真ん中に立っていた。時刻は午前7時だった。一体何が起こったのか。
 実はランプはある科学者が作った記憶を操作する装置で、ルパンはそれによって午後7時から午前7時までの記憶を失ってしまうのだ。そのためルパンにとって体感時間は一日が12時間。つまり人生の半分が失われたわけだ。妖精の正体はドリューという科学者の助手の妹で、彼女はランプのせいで3年分の記憶を失っている。
 人間的な感情を消し去って理想的な兵士を作り上げようとガーリック大佐という軍人もランプを狙っている。
 五エ門は雑念を消されてしまい、すっかり悟りモード。不二子はいつもの様子だし、まともなのは次元ぐらいだ。

 記憶を失っても何があったか確認出来るように、ルパンは起きた出来事をマジックペンで身体に書き込んでいく。んー、『メメント』(2000)のパクリ? あっちは刺青だったけど。
 ルパンが怪盗として活躍するのは序盤のランプを奪い出すところだけで、後はヒーロー役である。ランプが保管されている建物に侵入するのだが、今回は銭形が冴えていてルパンの行動を読んで先回りで罠を仕掛けており敏腕ぶりを発揮する。もちろん、最後には盗まれてしまうのだが。
 銭形も途中で記憶を失ってしまうのだが、これはランプのせいではなく頭を強く打ったため。口調も変わって「僕は」などといっている。病院を抜け出して彷徨っている内にどんどん服装がみすぼらしくなり最後には難民状態に。もちろん、もう一度頭を打つことで記憶が戻る。話の流れとしては銭形は記憶喪失にせずにストーリーに絡ませた方が面白かったと思うが。
 面白い話は記憶に残るし、つまらない話は逆の意味で記憶に残る。この程度の出来の作品は記憶に残らない。べつにランプに記憶を操作されたわけではないのに。

『ルパン三世 霧のエリューシヴ』 時をかけるルパン

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『ルパン三世 霧のエリューシヴ』(2007) 92分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:増田敏彦 アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム、トムス・エンタテインメント 演出:池添隆博 プロデューサー:中谷敏夫、尾崎穏通 アニメーションプロデューサー:竹内孝次 原作:モンキー・パンチ 脚本:福島幸典、山田由香 キャラクターデザイン:平山智 総作画監督:平山智 美術監督:菅原清二 撮影監督:宮川淳子 編集:笠原義宏 音楽監督:鈴木清司 音響効果:倉橋静男 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏
声の出演:栗田貫一、小林清志、増山江威子、井上真樹夫、納谷悟朗、桑島法子、世古陽丸、渡部猛、石田彰、大久保祥太郎、楠大典、西尾由佳理、関根麻里、中村獅童

『ルパン三世』TVスペシャル第19弾。ルパン三世40周年記念作品である。そんな大事な作品なのに、こんな駄作でいいのだろうか。いや、よくない。

 ルパン、次元、五エ門の3人が、北海道の霧多布(モンキー・パンチの生まれ故郷)で"時をかけるお宝"を探している内に、光に包まれ500年前の世界に飛ばされてしまう。
 ルパンの子孫、ルパン三十三世に恨みを持つ未来の科学者・魔毛狂介(中村獅童)が長年の研究でタイムマシンを作り上げ、ルパン三世を殺すことでそれ以降のルパン一族、つまりルパン三十三世を消してしまおうというのだ。出前のスーパーカブでルパンを追っていた銭形警部も巻き込まれ、一緒に過去に飛んだ。
 そこでは敵対する二つの集団シャイン家とノース家が争っていた。シャイン家が天然ガスを産出する島に暮らしており、北海道の厳しい冬でも快適に暮らしており、ノース家はそれを狙っていたのだ。
 シャイン家が時をかけるお宝を所有していると思ったルパンは、女王のイセカに近づくが、そのお宝をお不三(関根麻里)という不二子に似た女盗賊も狙っていた。
 魔毛狂介の企みは成功してルパン一族は消滅してしまうのか。それともルパンたちは現代に戻ってこられるのだろうか。

 500年前の北海道に住んでいたのならアイヌ族だと思うのだが、服装や生活習慣などは明らかに違う。しかも、巨大な女神像を作る巨石文明を持っている。そこからして設定がメチャメチャ。
 ジャンルとしてはタイムトラベルSFになると思うのだが、あまりに脚本がいい加減。矛盾点が多くてタイムパラドックスなど気にしている様子もない。それだけの知恵が無いのではないだろうか。ルパンたちがシャイン家の牢に閉じこめられているシーンで、2人の見張りが突然雲のように消えてしまうのだが、それは魔毛狂介が更に過去に遡り2人の先祖を殺したから存在しなくなってしまったのだ。だというのにシャイン家の者は消えた2人の行方を心配しているし、その家族もいる。存在が消えてしまったのだから誰もその2人のことを知らないはずだし、家族もいるはずがない。序盤のカーチェイスのシーンでは、ルパンのフィアット500の近くを走っていた車の運転手が消えて危険な目にあうのだが、これも同じくSFとして成り立っていない。
 タイムトラベル物はSFの中でも難しいジャンルで、あの頭を使って綿密に書き込まれた脚本の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズですら細かいことを言えばおかしな点は幾つもある。だというのに、この作品の脚本家は頭すら使っていない。問題外である。
次元のM19の威力に驚いた両家。底なし沼にハマってしまったルパンたちはシャイン家に助けられる代わりにM19や斬鉄剣を取り上げられてしまう。シャイン家は試し撃ちなどで全弾撃ち尽くしてしまい、次元も予備の弾丸を持っていなかったので、残ったのはM19と6つの空薬莢だけだった。それでどうするのかと思っていたら、鉛を溶かして銃弾を作るのだ。それはまあ大目に見るとしても、火薬はどうやって調達したのだろうか。日本では化薬を作るのに必要な硝酸はほとんど取れないぞ。だから考えて脚本書けや。
 魔毛狂介役の中村獅童はさすが幼い頃から歌舞伎の稽古を受けてきただけあって、かなり上手い。声優は俳優の一ジャンルだから、演技が出来る俳優ならば声優をやってもまず上手くいく。
 それに対してお不三役の関根麻里は本人としては頑張っているのだろうが、正直言って下手。感情も込められてないし明らかに素人。それでも『プロメテウス』の剛力よりはマシだな。あれはひどかった。話がクソつまんねーのに関根麻里のせいで拍車がかかる。終盤で分かるのだが、お不三は不二子の先祖だったので、素直に増山江威子が担当すればよかったと思うんだけどね。不二子は現代に残ったままなので、序盤と終盤の計数分しか出番がない。不二子ファンはがっかりしたろうな。エンドロールの後には不二子の子孫が登場するが声は日本テレビアナウンサーだった西尾由佳理。こちらも負けず劣らず棒演技。アナウンサーの役で出すなら分かるが、これはないね。『セブンデイズ・ラプソディ』では本物の競馬実況をやっている人に競馬の中継をさせたが、これは素人声優だとしても正解だったと思う。あの独特の口調はなかなか真似出来ないわ。
 観るべき所は五エ門とイセカの淡い恋ぐらいかね。前作ではお笑いキャラだった五エ門だが、今作では渋い。ルパンは底なし沼にハマった時にワルサーP38を紛失してしまっているし、次元のM19は弾数が少ないので、斬鉄剣の活躍が目立つ。
 この作品は1stシリーズ13話の『タイムマシンに気をつけろ!』のアレンジである。魔毛狂介がタイムマシンを使ってルパン一族を滅ぼそうとしているのが同じぐらいで、ストーリーは別物。予習で『タイムマシンに気をつけろ!』を先に観たのだが、次元役の小林清志と銭形役の納谷悟朗の声が若い若い。小林清志は昔からあまり声が変わっていないイメージだったのだが、やはり張りが違う。納谷悟朗はこの作品の時点ではそろそろフガフガが入ってきているから特に目立つ。ルパン、五エ門、不二子は担当声優が変わっているので比較は出来ず。それにしても昭和43年の30分のTVシリーズに面白さで圧倒的に負けているってどうよ。時代が時代なのでルパンが「気違い」や「百姓」を連発。
 ルパンが終盤に魔毛狂介に対して謎解きをするシーンは、『カリオストロの城』の時計台で伯爵を相手に謎解きをするのとほぼ同じセリフ回しと演出。
 前作の『セブンデイズ・ラプソディ』もひどかったが、今作はそれ以上。

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『ルパン三世 セブンデイズ・ラプソディ』(2006) 91分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:亀垣一 演出:小倉宏文、浅見松雄、徳本善信 プロデューサー:中谷敏夫、尾崎穏通 原作:モンキー・パンチ 脚本:柏原寛司 脚本プロデューサー:飯岡順一 キャラクターデザイン:平山智 メカニックデザイン:水村良男 美術監督:飯島由樹子 色彩設計:山上愛子 撮影監督:大坪聡 編集:佐野由里子 音楽監督:鈴木清司 音響効果:糸川幸良 音楽:大野雄二 録音監督:加藤敏
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、伊瀬茉莉也、津嘉山正種、立木文彦、玄田哲章、秋元羊介、咲野俊介、安藤麻吹、姫野惠二、斉藤瑞樹、川鍋雅樹

『ルパン三世』TVスペシャル第18弾。ルパンが競馬の騎手に化けて大レースに出場し、本命と対抗馬の騎手を麻酔針で眠らせて、不人気馬を優勝させる。次元がマフィアの運営している何軒ものノミ屋からその5000倍もの配当になる大穴馬券を大量に購入させて、ざっと5億ドルを荒稼ぎする。
 と思ったら、これは6日後に本番を控えた計画をルパンが次元に説明していたのであった。天下のルパンともあろうものが、なんつーかセコい犯罪を企んでいる。泥棒じゃなくて詐欺だろ。
 最近、氷に凝っているというルパンがバーボンをロックで飲むためにコンビニにある銘柄の氷を買いに行くが、途中で悪党面の3人組に追われている少女を助ける。彼女ミシェルは大手警備会社MIXの社長令嬢で、家を抜け出してきていて、3人組は社長の手下だった。彼女はワルサーP38を使っていることからルパンの正体を見抜き、彼に仕事を依頼してくる。なんとMIXは裏で大手軍需産業を営んでいたのだ。その仕事のために母親の臨終の時にも戻ってこなかった父親を反省させるため、軍需産業を潰してくれと言うのだ。
 次元は昔の仕事仲間で、次元の恋人を結果的に殺したショットガン使いのライアットと組んでミシェルの父親ガズの開発した新型爆弾"N.D.W.(ニトロ・ダイヤモンド・ウェポン)"の製法を手に入れるため、MIXに潜り込む。
 不二子はニューヨークでの生活を面倒見てやった恩を五エ門にきせて、五エ門を部下扱いしてマディソン・スクウェア・ガーデンで開催される宝石展の宝石、中でも大統領が競り落とした巨大なダイヤ"女神のダイヤ"を盗もうと動いていた。
 今回は比較的バラバラになって、それぞれの目的で動くルパン一家。

 今作のゲストヒロイン・ミシェルはスタイルがいいが、実は16歳のショートカットの少女。家を一括購入出来るブラックカードを持っていて、最初はかなり生意気だ。だが、実戦の中に身を置くことで恐怖を覚え、ルパンに依存するようになり最後はルパンに惚れてしまう。ルパンが女性として魅力を感じるには若すぎるので最後は振られる。この少女とルパンの恋愛関係というのは実を言うと原作やこれまでのTVシリーズなどでは異色。結局、『カリオストロの城』で宮崎駿がやったことの二番煎じでしかない。宮崎はロリコンなのでクラリスはアニメ史に残るヒロインとなったが、ミシェルはどうにも薄っぺらい。
 ルパンの目的ももう一つはっきりしない。ミシェルを助ける以外には女神の涙を狙っているようなのだが、そんなに執着している雰囲気がない。ルパンは正義の味方ではない。それは結果であって、あくまでも本業は怪盗である。そこがどうもぶれている。キャラクター設定を明確にした方がいいのではないだろうか。
 キャラクターがぶれているのは五エ門も同じ。不二子にこき使われるのはまだしも、今回は完全にお笑い担当になっていて、ノリツッコミなどのギャグを言うのだ。五エ門は基本的にはストイックで、生真面目が和服を着て歩いているような男だろう。そのストイックさを逆にギャグとして使うのなら分かるが、吉本新喜劇のようなベタなギャグをやらせている。これもキャラクターへの理解が足りない。
 比較的ぶれていないのは次元である。恋人の仇(といってもクーデター時の事故死のようなもので、ライアットは守り切れなかったという内容である)のライアットと組んで動くのは、プライベートはプライベート、仕事は仕事とプロとして割り切っているのだろう。最後は復讐を果たすのだが、ライアットは死ななければならないほど悪人とは思えない。
 ぶれがないのは銭形警部と峰不二子である。銭形は例によってルパン逮捕しか頭になく、アメリカからタイまでやって来る。銭形がルパンがタイに行ったのを知っているはずはないのだが、どうして追いかけてこれたのだろうか。長年のカンか。
 不二子は宝石を奪うことしか頭になく、そのためには手を組んだ宝石商を裏切ることなど当たり前。しかし、相手の方が上手で裏をかかれてしまう。結局、宝石は一つも手に入らず、ミシェルをタイで入院している父親の元へ行かせるためJFK空港まで愛車のハーレーで送るのだが、ミシェルのブラックカードを使って免税店で買い物をするのが目当てらしい。
 ストーリーがつまらないし、キャラクターに魅力が無い。せめてアクションだけでも頑張ってくれればいいのだが、製作日数と予算が足りなかったのか満足の出来る内容ではなく、敵がフルオートで乱射してくる弾は主人公側には一発も当たらず、ルパンたちの撃つ弾は百発百中。成り行きで敵対関係になったルパンと次元が、撃ち合いをする振りをしてお互いに撃った弾を空中で命中させて誤魔化すという離れ業をやってのける。『フルコンタクト』のチョウ・ユンファか。
 CGが取り入れられたのはTVスペシャルでは初めてだと思うが、ミシェルを誘拐した3人組が高層ホテルの屋上から大型クレーンを使って逃げるのだが、このクレーンがCG。ただし出来はかなりトホホである。
 一番の悪党に思えるミシェルの父親がライアットに腹部を撃たれたのに助かってしまうが、地雷の大量生産などを行っているこのオヤジは死んでもよかったんじゃ。
 さすがに18作目ともなるとマンネリ化してネタが無くなってきたのだろうか。そして新しいネタを探して迷走してしまっているのが現在のTVスペシャルである。

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『ルパン三世 天使の策略 ~夢のカケラは殺しの香り~』(2005) 92分 日本 日本テレビ、トムス・エンタテインメント

監督:宮繁之 原作:モンキー・パンチ 脚本:前川淳 キャラクターデザイン:平山智 美術監督:宮野隆 撮影監督:下山真吾 編集:佐野由里子 音楽:大野雄二
声の出演:栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗、松井菜桜子、能登麻美子、新井里美、浅野まゆみ、田中敦子、永井一郎、穂積隆信

『ルパン三世』TVスペシャル第17弾。ロズウェル事件で墜落したUFOから作られたという不思議な金属"オリジナルメタル"を巡ってルパン一家と女だけのテロ集団"ブラッディエンジェルス"との対立が繰り広げられる。
 ブラッディエンジェルスの主要メンバー・ラッキークローバーは毒使いの"ポイズン・ソフィ"、銃火器の使い手"ボンバー・リンダ"、男装のジークンドーの達人"レディ・ジョー"、そして妖刀紅桜の使い手"辻斬りカオル"である。
 なんというか、ネーミングセンスがないな。オリジナルメタルやブラッディエンジェルスは昔の少年マンガみたいだし、ラッキークローバーのキャラ名は女子プロレスのリングネームのようである。
 ルパンの秘密兵器"超吸収スポンジ"と"超強力空気清浄機"にしろ、なんでも超をつければいいのかよ。
 そしてなにより、ラストまで謎であるはずのブラッディエンジェルスのボスが序盤で登場するなり「こいつ怪しいな」とピンときてしまう。なんかねー、もう21世紀なんだから。

 ルパン、次元、五エ門がエリア51に侵入し、オリジナルメタルを奪い出す。何に使うのかと思ったら、いつも通りルパンが不二子にねだられたから。今さらながら呆れる次元と五エ門。ところがこのオリジナルメタル、斬鉄剣を持ってしても傷一つつけることが出来ない。
 オリジナルメタルをアメリカの敵対国に大金で売ろうとしてブラッディエンジェルスがルパン一家を狙ってくる。ちなみに女だけのテロ集団という設定に特に意味はない。
 ルパンにはソフィ、次元にはリンダ、五エ門にはカオル、不二子にはジョーがそれぞれ目の前に現れ、それぞれ戦いになる。
 さらにオリジナルメタルを奪ったルパンを銭形警部が助手のエミリーを連れて追いかけてくる。
 南米沖の今は無人の廃墟と化した孤島で、最後の戦いが繰り広げられる。

 敵キャラのキャラクターの掘り下げが浅い。テロリストになった理由が語られるのはソフィアだけで、他の3人はただの殺人マニアにしか見えない。ボスに至っては高笑いを上げるだけの悪女。こいつがほんと極悪人で、最後はルパンから「俺の気の変わらないうちにどこかへ行けよ」と言われたのに、背後から拳銃を撃とうとして逆にルパンに射殺される。いくら極悪人とはいえ女性を撃ち殺すルパンはアニメ版では珍しいが、原作のルパンならばやるだろう。原作と言えば、銭形のフルネーム"銭形幸一"がアニメに登場したのは初めてではないだろうか。
 話はあまり面白くないが、アクションに関してはよく動いてくれる。リンダの最後が小屋の中に飛び散って充満した中での発砲による粉塵爆発だったり、一度は刃こぼれをした斬鉄剣の五エ門を追いつめたカオルが、達人の研ぎ師に研ぎ直してもらった斬鉄剣で紅桜を折られ、それが胸に突き刺さって血を流して死んでいくなど、女相手でも容赦しない。
 終わってみると、久々にゲストヒロインが登場していない作品だった。ゲストの女性キャラは大勢登場するが、全員悪党という女性不審な脚本家なのだろうか。
 銭形が活躍するのも嬉しい。なんとアメリカ軍のジェット戦闘機を操縦するし、(『カリオストロの城』ではオートジャイロの操縦も出来なかったのに上達したものだ)、終盤の戦いではルパンと共闘し、ブラッディエンジェルスのザコキャラ相手にM1911を撃ち、銃をはじき飛ばしていく。銃の腕は次元には劣るが、ルパンと大差ないとみた。
 アメリカも敵国もオリジナルメタルで兵器を作ろうと考えているのだが、斬鉄剣でも斬れないオリジナルメタルをどうやって加工するのか。それに必要な特殊な液体を持っているブラッディエンジェルスのボスは両方をセットで敵国に大金で売るつもりである。テロ集団とかいって、結局は金目当てなのだ。
 最初、ロズウェル事件とかUFOとか言いだした時には、トンデモ系な世界観に突入してしまうのかと懸念したが、それはなかった。ネタバレになるが、オリジナルメタルがUFOから作られたというのはアメリカによる他国に対するカモフラージュで、本当は自国で開発したのだ。最後に宇宙人が現れて「チャンチャン」で終わったらどうしようかと思ったよ。それじゃ『バビロンの黄金伝説』の焼き直しだ。
 全体的にはお子様向けな作りだと思うのだが、だったらボスやラッキークローバーの面々を殺すのはどうかなと。結構残酷だし。ちなみにレディ・ジョーだけは生き残って、銭形に逮捕されている。
 せめてオリジナルメタルの盗み方に怪盗物らしい工夫があったらな。あまりにあっけなく盗み出せてしまう。
 脚本は『プリキュア』とか『デジモン』などを書いている人。そりゃ、お子様向けにもなるわな。それでいて無理にハードボイルドをやろうとしているからまとまりがない。脚本にもっと力を入れてくれ。